日本企業など福祉機器・高齢者サービスを積極PR-瀋陽で介護福祉見本市が開催-

(中国)

大連事務所

2015年08月14日

 福祉機器・用品や高齢者サービスの専門見本市「中国(瀋陽)高齢者障害者用品展覧会」が7月18~20日、遼寧省瀋陽市で開催された。日本からは外国勢で最多の11社が参加し、高いプレゼンスを示した。出展企業からは、専門事業者の来場は少なかったが、現地市場に関する情報収集ができたとの声が多かった。ジェトロは見本市に合わせて、同市で「日中(瀋陽市)高齢者産業交流会」を開催し、日中の介護福祉関係者の交流を図った。

<外国企業の出展が増え、国際色強まる>

 見本市は今回で6回目で、瀋陽市老齢産業協会が主催し、瀋陽市民政局、瀋陽市老齢工作委員会弁公室などが支援した。約7,600平方メートルの会場に118社(中国企業100社、外国企業18社)が出展した。主催者によると、今回は日本や韓国など外国企業の出展が増えており、見本市の国際色が例年よりも強かったという。

 

 中国企業のブースでは、瀋陽市の地元企業が中心となって、福祉機器・用品、各種日用品、健康食品などを展示した。地元ロボットメーカーの瀋陽新松機器人自動化が開発した、高齢者の見守りが可能な介護ロボットも展示された。また、地元の老人ホームが多数のブースを構え、高齢者や家族向けに施設の紹介を行った。

 

 出展した日本企業は11社と、北京市や上海市での見本市に比べると出展規模は小さいが、今回の外国企業の中では日本のプレゼンスが目立っていた。医療介護浴槽、介護ベッド、車椅子、見守りセンサー、介護サービス管理システムなどの福祉機器・用品、高齢者用食品などの企業が展示と商談を行った。

 

<専門事業者より多い高齢者の来場>

 来場者数は発表されていないが、主催側によると、会期中は主に地元の高齢者のほか、瀋陽市の政府関係者や高齢者施設、福祉機器・用品販売企業の関係者らが訪れた。

 

 専門事業者より高齢者の来場が多いことは、中国各地の高齢者関連見本市で共通してみられる特徴だ。この特色を生かして、会期中に一般の高齢者向けのテスト販売や市場調査の実施に重点を置いた企業からは、出展目的を達成したとの声が多く聞かれた。一方で、専門事業者の数が少ないため、企業間の商談の場には向いていなかった、との声もあった。

 

 出展した地元企業に話を聞いたところ、「当社は3年連続で出展しているが、毎年、中低所得水準の高齢者の来場が多い」とのこと。同社は国外メーカーの介護用品を扱う瀋陽市の卸・小売企業。高齢者からの引き合いが多い製品は車椅子、つえ、床ずれ防止用品、入浴やトイレの介助用品で、購買につながりやすいのは中低価格帯、と話している。例えば、車椅子は約1,000元(約2万円、1元=約20円)、つえは約100元の商品が売れ筋だという。また、この見本市も他の見本市と同様に専門事業者の来場は比較的少ないものの、高齢者が多いことに加えて、瀋陽市の副市長をはじめとした民政部門の関係者が毎回訪れているため、幅広いネットワークを有する政府関係者に直接認知してもらえる良い機会だと語った。

 

 介護食品の市場調査が目的で出展した日本企業もある。同社は、介護食品を中国で生産し、現在は日本の介護施設向けに全量を輸出している。中国の介護施設ならびに高齢者の反応を探るため、初出展した。試食した高齢者からは「のみ込みやすいが、味が薄すぎる」などの声が多く、中国市場の開拓に当たってはメニューや味付けの面で改善すべき点が分かったという。

 

 また、医療介護浴槽を製造し、中国東北部での販路拡大を目指して出展した日本企業からは、多くの介護施設と意見交換ができて良かったと話す。中国東北部は日常的に浴槽につかる習慣があるため、製品が受け入れられる素地はあるという。同社製品は温度管理、滑りにくさ、使い心地などの面でさまざまなノウハウを蓄積しており、「地元の施設側は製品の品質や機能を高く評価してくれるものの、最低数十万元からという価格がネックとなり、要検討としたところが多かった」とコメントしている。

 

<注目を集めた中高所得層向けの介護施設>

 出展した高齢者施設の中では、生活や介護の質を重視する中高所得層向け施設が、とりわけ来場者の注目を集めた。

 

 日中合弁で設立した「長者匯」がその1つだ。日本のサンガホールディングス、日本アジア投資と香港泉輝企業国際が合弁で設立した「シニアコミュニティー(高齢者向け複合施設)」で、20156月から試験運営を開始している。施設の規模は1,000床(うち要介護者向けは400床、自立者向けは600床)と比較的大型の施設だ。自立支援型介護など日本式介護サービスを導入する一方、快適な老後生活を目指す自立者向けのエステサロン、図書館、球技場なども完備しており、日本式のきめ細かいサービスで他施設との差別化を図ろうとしている。1ヵ月の利用料金は介護費を除いて最低3,500元からで、地元の一般施設の平均料金が1,000元前後であることから、中高所得層をターゲットとしている。

 

 瀋陽市老齢工作委員会弁公室の田剣衛副主任によると、同市には「長者匯」のように、ハイレベルの医療と介護サービスを備え、中高所得層をターゲットとするシニアコミュニティーが4ヵ所ある。「長者匯」の近くで開業準備中の「合衆優年生活」もそのうちの1つだ。今回の見本市に出展しており、米国式認知症患者向けの専門サービスを重点的に宣伝していた。

 

 瀋陽市では2014年末現在、60歳以上の高齢者は152万人で、全人口に占める割合は20.8%に達した。一方で、同市の年金の平均支給額は約2,000元で、良質のサービスを求めて年金以上の金額を負担できる裕福な層は限定されている。中高所得層向けの施設が増えていくのに伴い、限られた入居者の獲得をめぐる施設間の競争激化が予想される。

 

<初開催の交流会で日中企業が活発な商談>

 なお、ジェトロは「日中(瀋陽市)高齢者産業交流会」と題するフォーラム・商談会を、初めて実施した。商談会には日本企業15社と中国企業35社が参加し、活発な交流が行われた。参加した日本企業からは「当社製品に興味を持ち、自社施設での導入や代理販売に意欲的な企業に出合えた」「瀋陽の高齢者産業に関する情報収集ができた」といった感想が聞かれ、パートナー候補企業の発掘や現地の情報収集などで成果があったようだ。

(呉冬梅)

(中国)

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