物品貿易の自由化率は品目の90%超に-中韓FTAが正式調印(1)-

(中国、韓国)

北京事務所

2015年06月10日

 中国商務部と韓国産業通商資源部は6月1日、韓国の首都ソウルで中韓自由貿易協定(FTA)に正式に調印し、共同記者会見を行った。中韓FTAは、双方の物品貿易の自由化率が品目の90%、貿易額の85%を超えているとしている。その概要と両国での反響を2回に分けて報告する。前編は、同FTAの内容と中国側の評価について。

<物品貿易やサービス貿易など17分野をカバー>

 中国商務部によると、中韓FTAは中国が今まで締結した全てのFTAの中でカバーする分野が最も広く、2国間の貿易額が最も大きいFTAであり、中韓の「利益バランスが基本的に取れ、全面的で高水準」という目標を実現した、としている。また同協定は、双方の物品貿易の自由化率が品目の90%、貿易額の85%を超えており、物品貿易やサービス貿易、投資や原産地規則など計17分野をカバーし、電子商取引、競争政策、政府調達、環境など「21世紀の貿易議題」が数多く含まれているとしている。なお、双方は協定が発効した後もネガティブリスト方式で引き続きサービス貿易に係る交渉を行うことと、参入前内国民待遇とネガティブリスト方式に基づく投資交渉を展開することに合意した、としている。

 

 1日夜に開催されたレセプションで、中国商務部の王受文副部長は「中韓FTA調印は重大な意義を持つ出来事であり、2国間の経済貿易協力関係の深化、中韓戦略的協力パートナーシップの全面的強化、地域経済の一体化と地域内の他のFTA交渉プロセスの推進にプラスの影響をもたらすに違いない」と指摘した。

 

 韓国産業通商資源部の尹相直(ユン・サンジク)長官は「韓中FTAを通じて、両国が約12兆ドル規模の地域経済体になり、両国経済に新しい活力を注入することを期待している」と述べた。

 

<中国側の有識者は高く評価>

 中韓FTAが中韓両国の経済や産業界にどのような影響を与えるのかについて、有識者のコメントは以下のとおり。

 

 「中韓FTA:両国経済にプラス効果、国民消費にも良い」と報じた中国新聞網(62日)によると、「中韓FTAにより、両国の経済発展はより広い範囲での相互促進、相互補完を実現でき、アジア太平洋地域、世界にもプラスの影響を与える。双方の長所に基づき、川上・川下を結ぶ整った産業チェーンの形成により、両国の産業の深いレベルの協力を実現できる」中国商務部国際貿易経済協力研究院国際市場研究部白明副主任)、「ネガティブリスト方式に基づき、自由化率90%となった中韓FTAにより、市場一体化の推進や人材、技術、産業などにおけるさらなる発展が期待できる」(中国国際経済交流センター地域研究部の馬慶斌副研究員)、「中韓FTAは地域経済一体化の推進に重要な役割を果たす。中韓FTAは東北アジア経済一体化の重要なてこであり、さらに日本を含めた中日韓FTAは東アジア経済一体化のカギとなる。中韓FTA締結は中日韓FTA交渉の効率を高め、交渉のプロセスを加速することができる」中国国家発展改革委員会対外経済研究所国際協力室張建平主任)と評価されている。

 

 また、「中韓FTA正式調印により、海運業界の発展が期待できる」とした「中国証券報」(62日)は、「中韓FTAにより、山東半島、山東省威海市、同省青島市、天津市など韓国と密接な経済貿易協力が行われている地域において、韓国企業の対中投資の拡大が期待される」中国商務部国際貿易経済協力研究院中国対外貿易研究部金柏松副主任)との声を紹介している。

 

趙薇

 

(中国、韓国)

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