関税、規制、手続きなどの貿易関連情報アクセス窓口を一元化−ASEAN経済共同体発足へ向けた取り組み−

(ASEAN、タイ)

バンコク事務所

2014年12月08日

タイにおける輸入品目別の関税率や輸出入関連法、輸出入規制、貿易手続き、非関税障壁、発効済み自由貿易協定(FTA)ごとの関税引き下げスケジュール、原産地規則、輸出入に関わる税関との係争事例など、貿易に携わる企業が求めるあらゆる情報を集約して一元的に提供するウェブ版データベースの運用が始まった。企業にとっては、これまでさまざまな情報源にアクセスしなければ得られなかった情報が、単一のアクセス窓口から効率的に入手できるようになる。2015年末のASEAN経済共同体(AEC)の発足期限までに、加盟国が同様の情報構築を行って、ASEAN全体の貿易関連情報を包括するデータベースを始動させる計画だ。

<ASEANトレード・レポジトリー構築へのステップ>
タイ商務省・貿易交渉局(DTN)は11月27日、ナショナル・トレード・レポジトリー(NTR)と称するウェブサイトの運用開始を発表した。NTRには、輸出入にかかる関税や規制情報が集約され、誰もが簡単に無料でアクセスできる仕組みとなっている。NTRは、AEC発足に向けて加盟各国が進める主要な取り組みの1つであり、インドネシア、ラオス、マレーシアでも既に同様のNTRのシステム構築が完了している。

ASEAN加盟各国はASEAN物品貿易協定(ATIGA)に従い、2015年末を期限に、域内貿易関連情報のゲートウエーとなるASEANトレード・レポジトリー(ATR)を構築することを約束している。加盟各国におけるNTRの構築・運用は、ATRの本格始動に向けたステップと位置付けられる。

ASEAN事務局の公表資料によると、ATRには、関税品目分類表および品目別関税率、ATIGAの協定税率および原産地規則(品目別)、非関税障壁、関税法および関連規則、手続き書類、認定貿易事業者リスト、などのデータが集約されることになっており、ASEAN事務局および加盟国間でシステム構築の準備が進められている。そのため、ATRに向けて各国が構築するNTRには、少なくとも上記の最新情報が集約され、定期的に更新される必要がある。

<ユーザーフレンドリーなシステムに改善へ>
DTNのソムキアット・トリアッタナパン副局長によると、タイにおけるNTRは2013年3月に開発計画が国会を通過した後、商務省を中心に全38の政府省庁および関連機関によって導入準備が進められてきた。約1年半のシステム構築期間を経て始動したNTRは、ATIGAによる協定税率に加え、タイが2国間・多国間で締結し発効済みとなっている全てのFTA/経済連携協定(EPA)ごとに、それらを活用する場合の関税率(現行税率)、および将来的な関税引き下げスケジュールを一覧でき、かつ比較可能なかたちで表示できるシステムとなっている。また、品目別にFTA/EPAごとの原産地規則や輸入関連規制、必要手続きなどの情報を同時入手することも可能だ。

これまで、これらの情報を入手するためには、関税局(関税率照会)や各FTAの協定文および関税譲許表、商務省、規制管轄機関などの情報源にそれぞれアクセスする必要があった。今後は、NTRにアクセスすれば、上述の情報を一括で容易に入手できるようになり、FTA/EPA活用の利便性が大いに高まることが期待される。加えて、現地の調達・販売活動で、現時点もしくは将来的に最も有利なFTA/EPAを選択し、効果的に活用することが可能となる。

11月27日に、NTRの運用開始に合わせて開催された記念イベントに参加したチャチャイ・サリカンヤ商務相は「NTRの始動は来年のAEC発足に向けた着実なステップだ。包括的かつ最新の貿易関連情報の整備は最も重要なビジネス基盤だ。同システムの周知が徹底され、広く利用されることが重要だ」と話し、多くのユーザーへ利用を呼び掛けた。DTNは運用開始後も随時ユーザーからの意見や改善要望を取り入れ、よりユーザーフレンドリーなシステムに改善を図っていく方針だ。

(伊藤博敏)

(タイ・ASEAN)

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