厳しい投資庁の審査、投資計画の事前確認が必須−アジアの卸小売りと物流への外資規制(14)−
ダッカ事務所
2014年02月03日
卸売・小売業に対する外資規制は明文化されていないが、投資庁の許認可を得る段階で投資案件は厳しく審査されている。運輸業は外資出資比率を49%までに制限され、さらに運輸業を含むサービス業8業種に対する登記差し止めの通達がある点にも留意が必要だ。
<審査は雇用や付加価値の創出を重視>
卸売・小売業について、外国企業の参入を禁止する明文規定はない。手続きは通常どおり、商業登記所にて社名承認、会社設立証明書の取得、投資庁から投資登録証を取得という流れとなる。
しかし、外資100%や合弁での進出の場合、商業登記所にて会社設立証明書を取得したとしても、その後の投資庁においてサービス業に対する審査が厳しく、登録が困難となることがある。投資庁の審査では、現地で雇用を生むか、付加価値を創出できるかという点が重視される。特に製造拠点をバングラデシュ国内に持たずに販売活動をする場合は、許認可の取得が難しくなることが想定される。審査基準が公表されていないため、事前に投資庁に確認する必要がある。
国内販売をする場合には、地場企業と販売代理店契約を結び、自社はバングラデシュへの輸出のみとするか、併せて駐在員事務所を設立し販売促進活動のサポートを行うのが一般的だ。
<運輸業の出資比率は49%が上限>
運輸業の場合には、出資額、出資比率についての規制がある。出資比率は49%が上限となっている。
しかし、2012年4月に、運輸業を含めたサービス分野8業種の外資投資について、商務省から商業登記所に対して「外資政策が策定されるまで、一切の外国投資を差し止める」との通達が出されている。これは、バングラデシュの民間人から、外資100%出資もしくは合弁を含む外国企業の直接投資は産業発展に寄与するが、バングラデシュ人の雇用創出につながらない場合が多かったり、利益が海外に還元されたりして、国益に反すると関係当局に対して適切な外資管理を求める訴訟が起こされたことがきっかけとなった。
商務省のサービス業8業種の規制を強化する通達では、アパレル調達事務所、貨物運送業者、輸入代理店、配達(クーリエ)サービス業者、海運会社、利益目的の教育機関、広告代理店、航空・鉄道の販売総代理店の8業種が登記差し止めの対象となっている。これらの業種に該当する際は、商業登記所において100%外資および合弁の現地法人設立の認可を得ることが困難になっている。こうした分野への投資を検討する場合には、事前に商業登記所と協議する必要がある。
<参入例のない日系の卸売・小売業>
現在、日系企業による卸売・小売業での参入はなく、外資参入の事例もほとんどない。日系企業を含む外資企業の参入は、投資庁での登録が困難となっていることに加え、物件の取得、不動産価格の高騰、輸入品に課せられる高額な関税、地場企業との競合がハードルとなっている。
こうした課題はあるが、人口1億5,000万人と市場の潜在性は高く、1人当たり所得は840ドル(2012年世界銀行調べ)と、毎年所得水準が上がり購買力も高まっている。内需を目指して参入する際は、事前に投資庁にビジネスプランを示し、規制の問題がないか確認する必要があるだろう。
(酒向奈穂子)
(バングラデシュ)
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