統合がもたらす投資先としての魅力を政府は強調−太平洋同盟通商協定合意の反響−

(コロンビア)

ボゴタ事務所

2013年10月02日

太平洋同盟の通商協定の交渉が8月末、合意に達した。サントス大統領ら同盟加盟4ヵ国の代表は9月25日、ニューヨークで開催された太平洋同盟フォーラムで交渉の合意を発表し、4ヵ国の地域統合がもたらす社会開発・経済成長・競争力面へのメリットなどを説明した。当地の報道では、協定の調印は2013年11月ごろ、発効は2014年上半期内とされている。

<北米主要企業の代表に地域統合の魅力を語る>
コロンビア大統領府は9月25日の電子版ニュースで、サントス大統領、ピニェラ・チリ大統領、ウマラ・ペルー大統領、グアハルド・メキシコ経済相(メキシコ大統領は緊急災害対策のため欠席)の太平洋同盟4ヵ国首脳が9月25日、ニューヨークで開かれた太平洋同盟フォーラムで北米主要企業の代表者約200人超を前に交渉が合意したことを発表し、同盟を通じた地域統合がもたらすメリットなどを説明したと伝えた。

当地主要メディアは4ヵ国首脳が同フォーラムに出席する前から通商協定の効用などを報道していた。経済紙「ポルタフォリオ」(9月23日)は、タリフライン(関税品目数)ベースで92%の関税を即時撤廃し、残り8%については段階的な関税撤廃スケジュールを規定した通商協定が8月下旬にメキシコ市で合意に達したことを挙げ、各国首脳は米国大手企業家とのフォーラムで、太平洋同盟を通じた地域経済統合がもたらす社会開発・経済成長・競争力強化面でのメリットを強調するとの予測記事を大きく掲載していた。

政治経済紙「エル・ティエンポ」(電子版9月26日)は、米国企業が世界8番目の経済統合地域となる太平洋同盟地域に直接投資をする上でのメリットを説明し、投資を誘致するためのフォーラムだったと説明した。

サントス大統領は「太平洋同盟4ヵ国は2億人の若い消費者で活力にあふれており、購買力の向上でさらなる需要が喚起される。このために徴税機能と保健制度の4ヵ国統合を目指す」と地域の将来的魅力を語った。ピニェラ・チリ大統領は「40日以内に4ヵ国から成る自由貿易地域を決定する作業(通商協定への署名)を進めている」ことを明らかにした。ウマラ・ペルー大統領は「4ヵ国向けにさらなる外国直接投資を呼び込むためには、製品・環境基準・サービス基準などの品質改善努力が必要だ」と強調した。メキシコ大統領の代理で出席したグアハルド経済相は「小の合意(4ヵ国間の既存の2国間協定)が太平洋同盟の中に収束される」と語った。同電子版記事は、4ヵ国首脳の説明が北米主要企業参加者に好ましい印象を与えたと付け加えた。

<商工観光相はTPP交渉にも強い関心>
セルヒオ・ディアス・グラナドス商工観光相は、政治経済紙「ラ・レプブリカ」(9月23日)とのインタビューで、「(太平洋同盟)交渉終了のためのリーガルチェックの最中で、大統領署名は2013年第4四半期とみており、〔EUとの自由貿易協定(FTA)発効手順のように〕発効時期は2014年上半期を越えない」という見通しを挙げた。一方、ポリテクニコ・グランコロンビア大学のアンヘラ・モラ教授は「残り8%の関税品目(センシティブ品目)の無税扱いへの移行には5〜12年の移行期間が必要だろう」と、FTAによるコロンビアの中小企業への影響を踏まえたコメントを付した。

「エル・ティエンポ」紙(9月27日)は、現政権が対外経済開放政策から国内の農業・製造業分野強化への政策転換を発表したばかりであるにもかかわらず、担当閣僚(ディアス・グラナドス商工観光相)が環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉参加に大きな関心を示しているとの記事を掲載した。同商工観光相は同紙とのインタビューで、「コロンビアを除く太平洋同盟3ヵ国はこれからTPP閣僚会合への参加に臨むことになっており2013年中の合意が予想されているが、(私が)2012年1月にコロンビアのTPP交渉への参加意向を表明したにもかかわらず、コロンビアはいまだに招待を受けていない」と、これまで数々の国際経済協定を推進してきた責任者として、不満の表明とも受け取れる意見を述べている。

コロンビアはAPECへの加盟に現政権発足時から関心を示しており、TPP交渉にはAPEC加盟国や太平洋同盟加盟3ヵ国も参加しているため、コロンビアの出遅れに焦燥感を募らせているようだ。

(清水文裕)

(コロンビア)

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