EU、フラットパネルディスプレーの関税規則を修正

(EU)

ブリュッセル事務所

2013年10月01日

EUは9月26〜27日の閣僚理事会で、コンピュータ用に設計されたフラットパネルディスプレーのうち、これまで有税となっていた品目の輸入関税を無税とする修正規則を採択した。日本が2008年に米国や台湾と、EUの情報通信機器の関税措置をめぐりWTOに提訴、2010年9月に勝訴が確定した品目のうち、残っていたフラットパネルディスプレーの関税措置がようやく是正された。

<長年の関税議論がようやく決着へ>
9月26〜27日に開催されたEU競争(域内市場・産業・研究・宇宙)担当理事会はフラットパネルディスプレーの輸入関税を無税にする規則を採択した。今回採択されたのは関税と統計分類表、および共通関税に関する理事会規則2658/87の付属書Iを改正する規則で、CNコード(注)で8528 59の「その他のモニター」に分類され、14%の関税が賦課されていた、あるいは一時的に関税賦課が停止されていたフラットパネルディスプレーのうち、コンピュータ用に設計されたディスプレーの関税を無税に修正するもの。同規則は今後、官報掲載日から20日後に発効する予定。

日本政府は2008年5月、米国政府とともに(同6月に台湾も参加)、EUはIT製品の関税撤廃を定めた情報技術協定(ITA)で本来関税率が0%であるべき製品、具体的には、a.多機能複合機、b.パソコン用液晶モニター、c.セットトップボックスの3品目に対して不当に関税を賦課しているとしてWTOに提訴。同年9月にWTOパネル(紛争処理小委員会)が設置され、同パネルは3ヵ国の主張をほぼ認め、EUの措置はWTOの規定に違反すると判断した。EUが上級委員会に上訴しなかったため、2010年9月にはWTOパネルの報告書が採択され、日本、米国、台湾の勝訴が確定していた。

EUはWTOパネルで敗訴が確定したIT製品のうち、多機能複合機とセットトップボックスの関税を撤廃する修正規則を既に採択していたが、一部のコンピュータ用に使用されるフラットパネルディスプレーに対する関税だけが完全には撤廃されず、残っていた。

日本の経済産業省は9月27日、今回の措置によるEU向けIT製品の輸出拡大を期待するプレスリリースを発表している。

なお、フラットパネルディスプレーの関税をめぐる主な経緯は次のとおり。

フラットパネルディスプレーは欧州委員会規則634/2005および2171/2005などによって、CNコードの大分類8528に分類され、14%の関税が賦課されていた。ただし、欧州委員会規則493/2005によって、一部の製品には関税賦課の一時停止措置が取られていた。

一方、コンピュータに代表されるADP機器(自動データ処理機械)に使用されるディスプレーは8528 51 00に分類され無税とされたが、DVI端子付きなどのディスプレーはADP機器用とは見なされなかったため問題となった。しかし、2009年2月の欧州司法裁判所(現EU司法裁判所)の判決を受けて、EUはDVI端子付きディスプレーについてもADP機器用に分類するよう措置を変更していた。

(注)EUは対外的な「共通関税(Common Custom Tariff−CCT)」の設定のため、「合同関税品目分類表」(Combined Nomenclature−CN)と呼ばれる物品の分類表を設定している。詳細はジェトロ・ウェブサイトを参照。

(田中晋)

(EU)

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