コエーリョ政権が続投へ−カバコ・シルバ大統領が内閣改造案を承認−

(ポルトガル)

マドリード事務所

2013年07月31日

ペドロ・パソス・コエーリョ首相(社会民主党:PSD)による改造内閣が7月24日、発足した。連立与党を組む民衆党(CDS)からパウロ・ポルタス党首(前外相)が副首相に、同副首相の右腕といわれるピーレス・デ・リマ氏が経済相に起用され、両閣僚にEUやIMFとの財政支援プログラムの協議・調整に当たらせるとの方針が示された。これにより、7月1日のビトール・ガスパール財務相の辞任以降続いていた政治混乱は、ひとまず落ち着きを取り戻した。

<解散・総選挙は実施せず>
7月2日のポルタス外相辞任を発端に連立政権内の亀裂が表面化する中、政権存続に向けて連立与党内の調整が進められていた(2013年7月10日記事参照)。こうした中、アニーバル・アントーニオ・カバコ・シルバ大統領は7月10日に会見を行い、「野党の社会党(PS)を含めた主要3政党が『救国のための合意』に至ることを望んでおり、同合意には〔EU、IMF、欧州中央銀行(ECB)による〕トロイカの支援プログラムが終了する2014年6月の繰り上げ総選挙の可能性も視野に入れるべきだ」と述べた。この発言は、CDSのポルタス党首を副首相として起用するという連立与党間の合意を間接的に拒絶するものであり、関係者を驚かせた。
その後、大統領の意向を受けた主要3政党間の協議は1週間に及んだが、そもそも緊縮財政策に反対するPSを巻き込んでの合意形成は不可能との見方が大勢を占める中で進展はなく、7月19日、PSのアントーニオ・ジョゼ・セグーロ党首は協議が合意には至らなかったと発表した。

7月21日、主要3政党間の協議が不調に終わったことを受けてカバコ・シルバ大統領は、解散・総選挙を実施しないことを明らかにした上で、「政府は組合や企業団体との対話を深め、連立与党は永続的で疑念の余地のない調和のある政権運営を行うべきだ」との声明を発表し、内閣改造を承認した。

<緊縮財政および構造改革路線を堅持>
これを受けて翌22日、コエーリョ首相は、トロイカの支援プログラムを予定どおり2014年6月に終了させ、首相としての任期を2015年5月まで全うするとの声明を発表するとともに、改造内閣の閣僚名簿を発表した。ポルタス副首相は経済政策、トロイカとの交渉、構造改革担当の責任者となり、経済相には同副首相の右腕でCDS評議会議長のデ・リマ氏が就任した。同氏は大手飲料メーカーのウニセール(Unicer)の最高経営責任者(CEO)を務めるビジネスパーソンでもあり、経営者としての手腕に期待が寄せられている。

また、外相にはPSDのベテランで、社会労働相と国防相の経験があるルイ・マシェッテ議員が就任した。なお、今回の改造内閣では経済省からエネルギー部門が、農業省から環境・国土計画部門がそれぞれ切り離され、新たに環境・国土計画・エネルギー省が創設された。同相にはPSDの若手ホープとされるジョルジュ・モレイラ・ダ・シルバ副総裁が就任した。同氏は国連開発計画(UNDP)の気候変動イノベーション・ファイナンス部門のプロジェクトマネジャーを務めた経歴を持ち、環境・エネルギー政策に詳しいとみられる。

解散・総選挙が排除されて政局混迷が収束したことが好感され、7月22日の債券市場でポルトガル国債の利回りは低下した。他方、景気回復の兆しがみえない中で将来的な追加支援の可能性を警戒する見方も一部にあり、トロイカによる財政支援プログラムが予定どおり実行されるかどうかが今後の焦点となる。

(小野恵美)

(ポルトガル)

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