緊縮財政の継続で懸念される景気への影響−2013年度予算案が国会で承認−

(ポルトガル)

マドリード事務所

2012年11月13日

2013年度の一般予算案が10月31日に国会で承認された。社会保険料率の引き上げ案に対する国民の強い反発を受け、政府が代替の増税策を盛り込んだものだ。2013年度の財政赤字をGDP比4.5%に抑えるために緊縮予算を余儀なくされたが、長期化する景気低迷への影響が懸念されている。

<増税で賄われる緊縮財政>
9月に2013年度予算案に盛り込まれる追加的緊縮財政策の一部を発表したものの、国民の強い反発を受けて社会保険料率(個人負担率)の引き上げを撤回した政府は、代替案の検討を行ってきた(2012年10月1日記事参照)

10月15日に国会へ提出された2013年度予算案は、歳入総額705億8,960万ユーロ、歳出総額780億8,360万ユーロで、74億9,400万ユーロの歳出超過が計上されており、13年の実質GDP成長率はマイナス1.0%と見込まれている(表1参照)。税負担はGDPの約36.8%と過去35年間で最も高く、公的債務の削減については、その8割が経費削減ではなく、増税によって賄われることになる(表2参照)。

表1政府の2013年経済予測(前年比)
表2主な歳入増と歳出減の内訳 

<「変更の余地なし」と財務相>
最終的には増税策による国民への負担を求めることとなった今回予算案に関してガスパール財務相は「〔EU、欧州中央銀行(ECB)、IMFのトロイカによる780億ユーロ支援の前提条件となる〕第5次審査をパスするための唯一残された政策であり、変更を加える余地は残されていない。この予算案を受け入れないということは、財政健全化プログラムを受け入れないということだ」と理解を求めた。

今回明らかになった所得税増税の主な内容は次のとおり。

(1)個人所得税の標準課税率を8段階から5段階に縮小(表3参照)。最高税率の課税対象額を15万3,000ユーロから8万ユーロに引き下げ。最低税率は11.5%から14.5%へ、最高税率は46.5%から48.0%へ引き上げ。
(2)被雇用者、年金生活者に対して追加税率4.0%を課税のうえ、源泉徴収する。
(3)自営業者への課税率を21.5%から25.0%に引き上げ。
(4)投資、キャピタルゲインへの課税率を25.0%から28.0%へ引き上げ。
(5)住宅ローン関連控除の減額。
(6)株式、国債、その他のキャピタルゲインに適用された税優遇措置の廃止。
(7)家賃収入に関しては、28.0%の固定税率を選択することができる。

表32013年個人所得税の税率

<通行税・法人税も増税>
また、所得税に加えて通行税〔自動車、ボート、飛行機は二酸化炭素(CO2)排出量に応じて1.3〜10.0%増〕、法人税(標準税率25.0%に加えて、750万ユーロ以上の利益に対して5.0%、150万ユーロ以上750万ユーロ未満の利益に対して3.0%の追加課税)についても増税策が盛り込まれている。

2013年度一般予算案は最大野党である社会党(PS)の反対を受けたものの、連立政権を組む民衆党(CDS)の賛成を得て10月31日に承認された。今後、個別の審議が行われ、最終採決は11月27日に行われる予定となっている。

(小野恵美、加藤辰也)

(ポルトガル)

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