政策金利を8.50%に引き下げ

(ブラジル)

サンパウロ発

2012年06月07日

中央銀行は5月30日の金融政策審議会(Copom)で、政策金利(Selic)の誘導目標を9.00%から0.50ポイント引き下げ8.50%にした。2011年8月を転機に、Selicの引き下げが始まり、今回で7期連続の引き下げとなった。

<インフレのリスクは小さいと判断>
5月29〜30日に開催されたCopomで、Selicの誘導目標を9.00%から8.50%に下げると決定した。中銀のウェブサイトでは、Copomは現時点でインフレ上昇リスクは限定的で、グローバル経済の脆弱(ぜいじゃく)さによってインフレが抑えられていると判断。そのため、金融環境の調整期間は続くとし、今回の引き下げを全会一致で行ったとしている。

<市場は織り込み済み>
今回のSelic引き下げは、既に織り込み済みの感があった。引き下げ幅についても、ブルームバーグによると、同社が聞いた70人のアナリストのうち、61人は0.50ポイントの引き下げを予想しており、事前の予想通りとなった。

今回の決定によって、Selicは1999年のインフレターゲット導入後で最も低かった8.75%(2009年7月〜10年4月)を下回ることになった(図参照)。これまでSelicはインフレ率と連動するものとみられてきたが、最近の中銀の発表からも分かるとおり、世界経済の先行き不透明感に対応した動きをみせている。また、中銀が国内のエコノミスト100人を対象に定期的に行っているアンケート結果をまとめたレポート「フォーカス」(6月1日付)でも、12年の消費者物価指数(IPCA)の見通しは5.12%となっている。インフレ率は目標水準の4.5%±2%の範囲を安定的に推移しており、短期的には急激なインフレが起こる環境にはないと判断されているようだ。

政策金利(Selic)の推移

また、政府が11年8月からSelicを断続的に引き下げている理由の1つには、インフレ率に悪影響を及ぼさない限り実質金利を引き下げたいという意向があるとされている。新興国の実質金利と比べると、ロシア4.3%、中国3.1%、ブラジル2.8%というように、中長期的な目標とされてきた実質金利の引き下げを達成しているとみることもできる。

<金利引き下げは年末まで続行か>
以上の点から、今後もSelicの引き下げが継続される見通しが強く、次回Copom(7月10〜11日)では、さらに0.50%引き下げ8.00%に達するといわれており、年末に向けて7.75%まで下がるとの指摘もある。先述の「フォーカス」では、12年末のSelicの予想値を8.00%、13年末で9.38%としている。

(紀井寿雄)

(ブラジル)

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