EU加盟国の公的債務残高、全体的に悪化続く−11年の最新値を発表−
ブリュッセル発
2012年05月02日
EU統計局(ユーロスタット)は4月23日、EU加盟各国の2011年の財政収支と公的債務残高の最新値を発表した。EU27ヵ国のうち、財政赤字がGDP比3%以内だった国は10ヵ国だったが、10年との比較では改善している。他方、公的債務残高は全体的に悪化傾向にある。
<10ヵ国だけが財政赤字の目標達成>
ユーロスタットの発表によると、EU27ヵ国とユーロ圏17ヵ国の08〜11年の財政収支の推移は表1のとおり。
EU27ヵ国のうち、安定成長協定に定められた「財政赤字をGDP比3%以内に抑える」との目標を達成したのは、11年はハンガリー、エストニア、スウェーデン、フィンランド、ルクセンブルク、ドイツ、デンマーク、ブルガリア、オーストリア、マルタの10ヵ国で、どちらかというと輸出主導型の国が中心だった。10年にこの目標をクリアしたのは5ヵ国だった(2011年10月26日記事参照)ことと比べると、緩やかながら改善の傾向にある。
他方、アイルランドの財政赤字はGDP比13.1%と、唯一10%を超えた。加えて、欧州債務危機の震源地のギリシャ(9.1%)、スペイン(8.5%)のほか、英国(8.3%)がワースト上位国として続いている。
<公的債務残高のGDP比、14ヵ国が目標値上回る>
EU27ヵ国とEU、ユーロ圏17ヵ国の08〜11年の公的債務残高の推移は表2のとおり。公的債務残高については、ユーロスタットが12年2月から四半期ごとの数値も公表しており、11年第3四半期の数値も今回、併せて発表された。
08年のリーマン・ショックと金融危機以降、加盟国の公的債務残高の増加は加速しており、11年は14ヵ国が安定成長協定で定められたGDP比60%の目標を超え、ドイツとハンガリーを除き、一段と悪化した。特にギリシャ、イタリア、アイルランド、ポルトガルといった債務危機にあえぐ国は、いずれも公的債務残高がGDP比で100%を超えている。
公的債務残高のGDP比が60%未満の13ヵ国でも、ラトビア、スウェーデン、ルクセンブルク、エストニアといった限られた国を除けば、11年も悪化傾向にある。EUとユーロ圏全体でみても80%を超えており、上昇傾向にある。
EUとユーロ圏にとって、欧州債務危機が一時的に小休止したかのような感もあるが、統計でみると、あらためて厳しい財政状況が浮き彫りになっている。EUは現在、「成長と雇用」の具体策を模索しており、加盟各国でどのように経済成長を実現させ、新規雇用を創出していくのかなど、いくつかの加盟国では政治的な不安定性が増す中、12年も難しいかじ取りの年となろう。
(田中晋)
(EU・ユーロ圏)
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