インフラ整備が経済発展の要−日本・モンゴルビジネスセミナー−

(モンゴル、日本)

中国北アジア課

2012年03月28日

ジェトロは3月13日、日本とモンゴルの外交関係樹立40周年を記念した事業の一環として「日本・モンゴルビジネスセミナー〜バトボルド首相を迎えて〜」を東京で開催した。モンゴル経済の最新動向や外国企業の投資環境、豊富な埋蔵量を誇る鉱物資源の現状、その有効活用に向けたインフラ整備策について、モンゴル側がそれぞれ説明した。

<魅力ある投資地域に変貌>
○外国投資・貿易庁(FIFTA)副長官オチルホヤグ氏
モンゴル経済は近年、顕著な伸びを続けている。実質GDP成長率の推移をみると、2008年後半から09年前半にかけては国際的な景気低迷の影響を受けマイナス成長だったものの、09年後半にはいち早くプラス成長に転じた。直近では、11年の成長率が17.3%に達するなど大きな成長をみせている。1人当たりGDPは11年現在で3,070ドルだが、13年には5,649ドル、16年には1万ドルの大台を突破し、1万1,290ドルに達すると予測されている。モンゴル経済は一層の拡大が期待されている。

11年の対内直接投資額は98億2,600万ドルだった。10年の10億2,500万ドルから、9倍以上に急拡大した。投資額の内訳は、採鉱69%、サービス・貿易17.5%、金融2.3%、その他11.2%だ。

モンゴルは1997年にWTOに加盟した。その後も、海外との貿易・投資を活発化するよう、各国と協定を積極的に締結している。現在、二重課税の回避を目的とした租税条約は34ヵ国、投資保護協定は41ヵ国と、それぞれ2国間条約を締結済みだ。世界銀行の調査によると、モンゴルの投資環境は世界第86位にとどまっているが、モンゴル政府はOECDなどの協力も得ながら環境整備を続けており、投資環境は整備されつつある。

モンゴルは製造拠点としての魅力が大きい。現在、モンゴルの法人税は10%、付加価値税は25%と、アジア大洋州諸国の中でも低い税率を適用している。後者については、金属加工、練炭、再生可能エネルギー(RE)など、製造業にかかる多くの品目を免税扱いとするなどの優遇策も実施している。

このほか、2010年6月に施行したハイテク産業への支援策では、先端技術産業にかかる法人税の免税などの新たな優遇策を開始した。11年4月には、設備を製造する中小企業の付加価値税を免除する法案も可決している。

また、モンゴルで生産した最終製品は、一般特恵関税制度(GSP)により、7,200品目が免税扱いでEU向けに輸出できる。

1998年以降、日本からモンゴルへの投資案件は合計488件、投資額は22億4,600万ドルに達する。これは世界の対モンゴル投資の2.3%を占めている。投資の内訳をみると、サービス・貿易47.1%、軽工業19.4%、金融7.7%、建築7.4%、情報・通信6.7%、物流2.7%の順だ。現在までの投資額はまだ小さいが、現在締結を目指している経済連携協定(EPA)をはじめとする政府間パートナーシップの下、今後拡大することを期待している。

現在、モンゴルのGDPの構成比は、採鉱・採石23%、農林・漁業16%、卸・小売り15%、製造業8%、運輸8%、不動産6%、通信4%、その他20%。現状では採鉱・採掘業が中核だが、今後は工業、旅行、不動産など、さまざまな産業が発展の可能性を秘めているといえる。政府の誘致支援策の下、日本企業はこれらの分野で有利な投資条件を得られるだろう。両国は良好な互恵関係を築けると確信している。

<エネルギー生産大国として発展>
○鉱物資源・エネルギー相ゾリグト氏
モンゴルのGDPは年間10〜20%程度の成長が続いている。2016年には、1人当たりGDPは1万ドルを突破、現在の3〜4倍にまで増大すると予測されている。このペースでの成長が続けば、モンゴルの経済規模は20年ごろに先進国の下位レベルまで発展できると考えている。

エネルギー需要の90%以上は石炭で賄われている。03年から石炭は輸出製品になり、国内経済に大きく貢献してきた。

鉱山はモンゴル経済の基盤で、中でも、オユトルゴイ鉱山、タバントルゴイ鉱山が主要鉱山だ。ここ30年来、採鉱・採掘業の発展は目覚ましく、石炭関連を中心に大きく発展した。モンゴルには良質な石炭が豊富に埋蔵されており、今後数十年間、エネルギー生産の一層の活発化、エネルギー産業の飛躍的な発展が予想される。オユトルゴイ鉱山、タバントルゴイ鉱山は、モンゴル経済の活性化のための起爆剤として期待されている。

最近、ソフトバンクとモンゴルのニューコムグループがRE事業で合意したことが大きな注目を集めている。両社はモンゴルのゴビ砂漠で風力発電事業を行い、それにより生産した電力を海外に輸出する計画を立てている。

モンゴルは、太陽光発電では日本の4倍、風力発電は同8倍、双方合計では同12倍の電力を生産することが可能だ。中国やASEANをはじめとする東アジア地域の発展に伴い、エネルギー需要は拡大を続けている。今後20年間、石炭に加えてこうしたREの発展にも注力し、モンゴル経済の発展につなげたいと考えている。

<資源の効率的な活用に向けインフラを強化>
○FIFTAマネジャー・ジャルガルサイハン氏
モンゴルはロシアと中国の中間に位置し、地政学的にも両国の影響を大きく受けている。周辺には海がなく、海上輸送による物流手段がない。こうした地理的な要因は、障害面が際立ってしまう場合も少なくないが、経済的なメリットも大きい。例えば、中国、EU、ロシアなど周辺国間における貿易関係の中で、モンゴルが中間地点としての役割を果たすことができれば、大きな恩恵を受けることが可能になる。

モンゴルは現在、鉱山開発を中心とした自主的な経済発展の方向に向かっている。モンゴルの鉱山資源は、石炭、鉱石、銅、ウランなどを中心に世界上位の埋蔵量を誇っている。なかでもオユトルゴイ鉱山は363億ポンドの銅と2,020万オンスの金、タバントルゴイ鉱山は64億トンのコークス埋蔵量が確認されている。モンゴル政府(道路・輸送・市街開発省)は、こうした鉱山資源をいかに効率的に輸送するかというテーマの下で活動している。また、鉱山開発で生み出された資金を地方公共事業などに配分することで、新たな雇用を生み出す計画も立てている。

以下、近年の大規模プロジェクトとして、10年6月に打ち出されたインフラ建設計画の概要を紹介する。これは、地下資源や天然資源の効率的な活用、および市民の生活改善を図るために打ち出されたものだ。

まず、鉄道輸送に関しては、モンゴル国内に5,684キロの鉄道を新設する。新鉄道は国内輸送だけでなく、アジアやロシア、欧州をつなぐルートとしても考えられている。中国の北京からウランバートル経由でドイツのハンブルクへ運ぶといった輸送手段が一例だ。このほか、モンゴルから海上輸送へつなげる手段として、中国の天津港またはその他の港への約900キロの鉄道も建設する予定だ。

道路網については、現在国内には4万9,250キロの道路網がある。このうち1万キロが国道だが、舗装道路はその19.3%にとどまり、12%は砂利道、残り69%は未整備と、改善の余地が大きい。インフラ建設計画の中核事業として、a.5,572キロの国道を整備し、地方道のすべてを首都ウランバートルに結ぶ、b.アルタンブラグ、ザミン、ウランバートルへと抜ける990.4キロの高速道路を整備する、c.ウランバートル市内に350キロの道路、212キロの補装道路、7ヵ所の立体交差点を整備することが挙げられる。

住宅供給については、現在ウランバートルには120万人が居住、うち30%がアパート、70%はゲルで生活している。今後、ウランバートル市内に7万5,000戸、郊外地区に2万5,000戸、合計10万戸の公営住居を建設し、100万人に供給する計画だ。また、市民に健康的で快適な生活を与えるため、学校、スポーツ複合施設、緑地エリアを整備する。

航空輸送に関しては、モンゴルは地理的に中国、欧州、米国、東南アジアなどを結ぶ航空ルートの中間点に位置している。こうした地理的なメリットを生かし、航空ルートの拠点として発展を図りたいと考えている。

以上のことが実現すれば、経済発展だけでなく、国民生活の改善、あるいは深刻化する公害の改善にもつながる。モンゴルが今後も経済発展を続けていくために、インフラ面における環境改善は欠かせないポイントとなろう。

(米川拓也)

(モンゴル・日本)

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