脱税摘発へ税務情報交換を迅速化−開示権限が大統領から財務相に−

(フィリピン)

マニラ発

2012年01月24日

租税条約に基づく諸外国からの税務情報開示要求に迅速に対応するため、大統領令第56号が施行された。これにより、開示承認の権限は大統領から財務相に委譲された。大統領府は「国際的な脱税事件の摘発強化を図るのが目的」とコメントしている。

<外国からの開示要請に対応>
共和国法第10021号(税務情報交換法)の規定に従い、納税者の税務情報開示権限は、内国歳入庁(BIR)長官権限(金融機関関連情報)と大統領権限(納税申告情報)とに区分されていた。情報交換を迅速に行うことで、国際的脱税事件の摘発・阻止を図るため、大統領権限を財務相に委譲した。

大統領令第56号は共和国法第10021号の一部を改正するもので、2011年9月6日に公布・施行された。概要は以下のとおり。

○制定の目的
(1)適正な税務行政執行による国際投資環境への寄与
(2)租税条約締結国の国際的脱税防止活動への寄与
(3)諸外国からの情報開示要請増加への対処

○主な内容
第1条権限委譲:租税条約に基づく納税者の納税申告情報開示権限を大統領から財務相に委譲する。
第2条実施規則制定:情報開示に関する実施規則は財務相が定める。
第3条情報の使用と守秘義務:開示先は、条約締結国の当局のみとする。

なお、大統領令第56号の公布に先立ち、10年3月には、租税条約に基づく税務情報開示を認める共和国法第10021号が制定されている。概要は以下のとおり。

(1)法律の名称:税務情報交換法

(2)法律の目的:諸外国と締結した租税条約の規定に従い、政府の適正税務行政を確保し、外国投資の継続的促進を図る。また、租税条約締結国との間の国際的脱税に対処するため、政府は条約に定める税務情報交換規定を順守する。

(3)金融機関に対するBIR長官の調査権:租税条約に基づき特定の納税者の税務情報を求められた場合には、金融機関に対し預金残高その他の関連情報を求める権限をBIR長官に与える。BIR長官は、情報提供を求められてから90日以内に回答できない場合は、条約相手国にその旨通告しなければならない。

(4)租税条約に基づき、特定の納税者の納税申告情報を求められた場合には、大統領の命令により開示される。

(5)情報開示拒否に対する罰則:BIR長官により開示要求を受けた金融機関が開示拒否した場合には、5万ペソ(1ペソ=約1.8円)以上10万ペソ以下の罰金、または2年以上5年以下の禁固刑に処す。

(辻一郎)

(フィリピン)

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