外資出資割合算出方法、最高裁に再審請求

(フィリピン)

マニラ発

2012年01月17日

外資規制の対象となる企業の外資割合算出方法について2011年6月末、従来の実務慣行(外資比率=外資株数/発行株総数)を否定する最高裁判決が出た。発行株総数ではなく、議決権のない優先株を除いた株数に占める外資割合を算出するという内容だ。この判決に対して、再審請求が行われており、まだ最終決着はついていない。監督官庁の証券取引委員会(SEC)は当初、最高裁判決を受け入れる方針だったが、経済界からの反発で、反対の姿勢に転じている。

<議決権なし優先株での外資規制逃れが困難に>
国内最大手の電話会社「フィリピン長距離電話」(PLDT)が、発行株式の6.4%に当たる11万株を香港の投資会社に売却しようとしたところ、議決権のある普通株総数の外資比率が50%を超えるため、株式売却の差し止めを求める訴えが起こされていた。11年6月29日の最高裁判決は、外資比率算出上の「資本」について「議決権のある普通株のみをいい、議決権のない優先株を含めない」と判断した。

法律は、外資比率の上限を定めるだけで、比率算定上の詳細規定はない。多くの外資系企業は実質経営権確保のために、議決権のない優先株を発行した上で、フィリピン側が保有、議決権のある株式の過半を外資が所有するという形式により、外資規制(注)を逃れてきた。SECもこの形式を認めてきた。

<SECは再審請求に同調>
最高裁判決に基づき、SECはいったん、すべての公益法人の外資比率を見直し、上限を超えている企業については、是正を命じるとの考え方を示していた。しかし、その後、経済界が大混乱に陥ると商工会議所などが反発したことを受け、また、上場株式から多額の外資流出が懸念されることも考慮し、この判決に反対する姿勢に転じている。

PLDTはこの判決を不服として、再審請求を行っている。SECもこれに同調し、最高裁で再審理が行われている。一方、PLDTは、この再審判決を待たずに外資比率是正のための増資を検討している。12年3月22日に特別株主総会を開催し、フィリピン人を引き受け先とする議決権付きの優先株を1億5,000万株発行すると公表した。

(注)フィリピンの外資規制は、共和国法第7042号に基づき、大統領令として公表される「外資ネガティブリスト」により、業種ごとに外資比率の上限が定められている。現在有効なネガティブリストは、10年2月5日に公布された大統領令858号で、原則2年ごとに見直される。

(辻一郎)

(フィリピン)

ビジネス短信 4f13e33fd3ab8