12年から課税内容に大幅な変更−VAT税率は27%、欧州最高水準に−

(ハンガリー)

ブダペスト発

2012年01月05日

大幅な税制改正パッケージが2011年11月21日に国会で承認され、12年1月1日から施行された。主な改正点は、付加価値税(VAT)の税率引き上げ、新税の導入、増税だ。全企業の商工会議所への登録も義務化された。

添付ファイル: 資料PDFファイル( B)

<事故税導入で自動車強制保険料は30%上昇>
今回の税制改正で、VAT税率は25%から27%に引き上げられた。これまでも25%はEU域内では北欧などと並んで最高水準だったが、27%はEU域内で単独トップになった。

また、新しく事故税、文化税、ビジネス・エンターテインメント・ギフト税が導入された。事故税は、税率が年間自動車強制保険料の30%と大きい〔上限は日額83フォリント(1フォリント=約0.3円)〕。事故を起こした人だけが払うのではなく、自動車の保有者全員が払うもので、保険会社が徴収する。つまり、12年から自動車の強制保険料が30%増額される。税金のカテゴリーとしては国民健康製品税(チップス税)と同じで、収入は健康保険基金の特定財源になる(2011年12月28日記事参照)。自動車関係では、自動車登録税を除いて、社用車税や所有権の移転料も実質増税となった(改正後の税制一覧は添付資料参照)。

個人所得税は、雇用主負担の社会保険税分を個人所得に加算するグロスアップ方式の適用について、所得区分が設けられた。グロスで月額20万2,000フォリント以下の所得については、グロスアップ方式が廃止され、税率は16%になる。20万2,000フォリント超の場合はグロスアップ方式が適用され、雇用主負担の社会保険税(27%)を加算した額をベースに所得税を算出する。なお、グロスアップ方式は13年には廃止される予定。

このほか、福利厚生費についてはこれまで優遇税率適用の上限がなかったが、新たに上限が年間50万フォリントに設定され、これを超える分については27%の社会保険税を支払わなければならなくなった。食事券は月額1万8,000フォリントの支給上限が、5,000フォリントになった。レジャーに利用できるカードの支給上限も年30万フォリントとなり、宿泊、食事、レクリエーションの目的ごとに支給上限が設けられた。

<外国からの派遣駐在員の社会保険料支払いを義務化>
注意が必要なのは、外国からの派遣社員(駐在員)の社会保険料の支払いだ。これまで外国からの派遣社員には、ハンガリーでは社会保険料の納付義務がなかった。しかし12年からは、2年以上の滞在を予定する人(既に滞在中の人は12年1月1日から起算)については、社会保険料の支払い義務が発生することになった。

日本は現在、ハンガリー政府との間で社会保険に関する2国間協定を協議中だ。ハンガリー日本商工会は、a.両国間で社会保険協定の締結に向けて協議中のため、この規則の適用を見送るべきだ、b.確定していない滞在期間を前提として12年1月から社会保険料納付を義務付けるということには納得できない、c.直前まで社会保険庁から支払い基準・支払い方法について全く指示がなかった、などとして、社会保険庁の見解を求める文書を政府宛てに送付した。政府からは文書の受領を知らせる書簡が来たが、回答はまだない(11年12月27日時点)。

なお、今回の税制改正パッケージの一環として、12年1月からすべての企業にハンガリー商工会議所への登録が義務付けられた。年間5,000フォリントの会費を同商工会議所に納めなくてはならない。

(今津恵保)

(ハンガリー)

ビジネス短信 4f05109567c28