フィッチ、国債格付けを投資不適格に

(ポルトガル)

マドリード発

2011年11月28日

格付け機関フィッチ・レーティングスは11月24日、ポルトガル国債の格付けを「投資不適格」とされる「BB+」に引き下げた。国内の景気後退で財政再建の実現がより困難になると見込まれるため、今後のさらなるの格下げの可能性も示唆した。また、同日には政府の緊縮財政策に抗議するゼネストが実施された。政府が歳出削減を継続できるかどうか注目が集まっている。

<格付け機関が相次いで国債評価引き下げ>
フィッチは11月24日、ポルトガル国債の格付けを「BBB−」から1段階引き下げ、投資不適格の「BB+」とした。ポルトガル政府が2012年予算案でマイナス2.8%と予測していた12年のGDP成長率を、EU委員会がマイナス3.0%へ下方修正したことも一因だ。景気後退により財政再建計画の実現性が危ぶまれるため、フィッチは見通しも「ネガティブ」とし、さらなる格下げの可能性も示唆している。

格下げの理由としてフィッチは「ポルトガルの財政収支の不均衡の大きさ、あらゆるセクターでの多額の債務、マクロ経済の見通しの悪さからすると、同国債はもはや投資適格には値しない」と説明している(「ウォールストリート・ジャーナル」11月24日)。

格付け機関ムーディーズは11年7月に、ポルトガル国債を投資不適格の「Ba2」に引き下げている。スタンダード&プアーズは11年3月に投資適格の最低レベル「BBB−」に引き下げ、10月もそのレベルを据え置いた。

<労組は今後もゼネスト実施の構え>
11月24日には、政府の緊縮財政策に対し、1年ぶりにゼネストが実施された。今回のゼネストは近年にない大規模なもので、リスボン市内3ヵ所で警察との小競り合いの中、火炎瓶が投げ込まれる事態になった。公共バス、地下鉄、国鉄、公営フェリー、郵便局、空港、航空会社、港湾、医療機関、国営銀行、裁判所、学校、ごみ収集サービスなどが大きな影響を受けた。

共産党系労働組合(CGTP)のジョアン・プロエンサ代表と労働総同盟(UGT)のカルバーリョ・ダ・シルバ代表は、スト参加者を約300万人と発表した。一方、政府発表では公務員のスト参加率は10.48%、参加者は約4万3,592人だった。なお、CGTPとUGTは共同で今後もゼネストを行うとしている。

政府は8月31日に公表した財政基本計画案で、10年にGDP比9.1%まで膨らんだ財政赤字を、15年には限りなくゼロに近づける目標を掲げている。また、トロイカミッション(IMF、欧州中央銀行、欧州委員会)との合意により、財政赤字をGDP比3%以下に削減するとしており、緊縮財政を15年まで続けることにしている(2011年10月13日記事参照)。今回のゼネストは今後の財政再建の道筋が決して平坦でないことを示したが、政府は「ゼネストは労働者の権利だ」と冷静に受け止め、大勢に影響はないとの公式見解を表明している。

(小野恵美、齋藤陽平)

(ポルトガル)

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