10月から11年2回目の最低賃金引き上げ−内外企業の最低賃金を統一−

(ベトナム)

ハノイ発

2011年08月29日

政府は8月22日、国内・外資系企業の最低賃金を引き上げる政令70号(70/2011/ND−CP)を公布した。2011年10月5日から施行する。最低賃金の引き上げは、11年に入って2回目。今回の引き上げで国内企業と外資系企業の最低賃金が統一された。

添付ファイル: 資料PDFファイル( B)

<高インフレで27〜69%の賃上げ>
政令は10月5日施行となっているが、10月1日からの給与分に適用される。今回の引き上げは1月(一部地域は7月1日)に続き、11年に入って2回目と、異例だ。その背景には10年末から続くインフレがある。

11年7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比22.2%上昇した。特に、食料品は32.6%と上昇が著しく、当地日系企業関係者によると、平均月給が約200万〜300万ドン(1ドン=約0.004円)の工場労働者は、生活が苦しくなっている。日系企業からは、ストライキを未然に防ぐために、年1回(通常は毎年1月)の昇給以外に、もう1回給与を上げた方が良いのでは、という声も出るほどだ。

今回の引き上げは2つの特徴がある。1つは、国内企業と外資系企業の最低賃金が統一された。これまで国内・外資系それぞれについて、地域により4区分の最低賃金が定められていた(添付資料参照)。政府はWTO公約に沿って、12年までに両者の最低賃金を統一するとの見解を示しており、それが実現する。

2つ目は今回の最低賃金の適用期限が11年10月1日から12年12月31日までの時限になっていることだ。国内企業は47〜69%、また外資企業は30%前後の高い上昇率になっている(表参照)。これは、12年中にもう1回最低賃金が引き上げられるのではないか、という企業経営者側のコスト増加の不安に、政府が配慮したと考えられる。

地域別最低賃金(月給)引き上げ比較

<最低賃金の地域区分も変更>
当地日系企業、特に製造業は最低賃金の上昇を見越し、高めに賃金を設定しているケースが多いが(特に地域2、地域3の企業)、中には、地域指定が地域2から地域1に変更され、大幅な給与改定を余儀なくされる企業もある。また、国内企業、特に建設関連の企業はインフレによる金融引き締めで不動産建設がほとんどストップして収益状況が厳しい中、最低賃金が引き上げられ、一層経営が苦しくなるという声も出ている。

(佐藤進)

(ベトナム)

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