集合住宅改修や冷蔵庫購入に補助金−欧州各国の省エネルギー政策−

(ハンガリー)

ブダペスト発

2010年08月02日

政府はエネルギー政策2008-2020と国家省エネ行動計画で、省エネルギー政策を推進している。住宅・ビル、輸送、発電を優先分野として位置付け、アパートや住宅の省エネ改修や、省エネ型冷蔵庫、洗濯機の購入に補助金を支給している。

<住宅・ビル、輸送などで毎年省エネ1%増へ>
政府の省エネ政策推進の後ろ盾となるのは、08年議会で承認されたエネルギー政策2008-2020と国家省エネ行動計画だ。前者はエネルギー政策の基幹で、エネルギー安全保障、国際競争力向上、持続可能な成長促進を主要3本柱としている。後者は前者の省エネ部分を推進するために策定され、08〜20年に住宅・ビル、輸送などで毎年省エネ効果1%増を目指すとしている。さらに、10年3月に発表されたEU新成長戦略・環境分野「3つの20」に関連して、省エネの自国目標は10年8月中に定める方針だ。

国家開発省によると、省エネを推進する優先分野として、住宅・ビル、輸送、発電を挙げている。省エネの自国目標は、住宅・ビルで20年までに15〜20%、輸送では5〜10%の省エネ達成を掲げている。

公共施設を含む住宅・ビル分野での省エネ促進は、補助金支給というかたちで既に実施されている。財源は温室効果ガス(GHG)の余剰排出権枠(AAU)売却益やEU補助金などだ。

アパートや住宅の省エネ改修の補助金支給は09年から始まった。対象分野は、a.窓、ドア、b.壁、床の断熱、c.ビルのエンジニアリングシステム、d.暖房や太陽光発電など再生可能エネルギーの導入、e.夏季の断熱資材、などだ。申請対象者は、改修が必要なアパートの管理企業・組織、アパートを保有する自治体や個人。なお、国内第2の都市デブレツェンのコンクリート製プレハブ集合住宅(アパート)で、改修後の断熱効果を測定したところ、改修前に比べ40%の省エネ効果があったと確認された。

集合住宅、個人宅ともに補助金の利用は可能で、利用件数は増加しているようだ。経費の一部を国が負担する仕組みで、経費総額の3割または原則最大50万フォリント(1フォリント=約0.4円)に加え、条件付きで追加額が支給される。この制度を所管する環境・水利省(現国家開発省)によると、プレハブ集合住宅の改修申請では09年末までに945件が承認され、合計補助額は152億フォリント、3,400トンのGHG削減に相当するという。

緊縮財政策や経済危機の影響で、国内の建設業界は受注が減り、厳しいビジネス環境にあるため、この制度の活用は地域の雇用維持の面からも期待されている。なお、対象分野に高度の技術は必要なく、参入している企業のほとんどが地元企業だという。

<冷蔵庫、洗濯機の購入補助に申請殺到>
高齢者、大家族、身体障害者などを対象とした、省エネタイプの冷蔵庫、洗濯機、電球などの購入補助制度、買い替え補助制度もある。10年3月から始まった同補助制度の受付期限は、当初10月までとなっていたが、申請総額が予算額10億フォリントを超えたため、4月下旬に早くも受け付けを中止した。購入商品の省エネ効果によって補助額は異なり、A+、A++クラスは最大7万フォリント、Aクラスは6万フォリントが支給される。制度実施により2,000トンのGHG削減、2,600メガワット(MW)の電力消費削減を見積もる。

電球の買い替え補助も10年3月から始まり、補助額は1家族最大で4万フォリントとなっている。これにより4,700トンのGHG削減、6.3MWの電力消費削減を目指す。両制度とも、地域の高齢者支援団体などの団体利用だけで、個人での利用はできない。

<省エネ車の普及は進まず>
他方、生産現場での省エネ促進については、「新ハンガリー成長計画−雇用と成長2007-2013」(NHDP)」の下、国家開発庁(NFU)所管で補助金を支給する制度が07年から始まっており、10年5月までに747組織(自治体、企業など)が申請、255組織を採択、約50億フォリントの支給が認められた。

新ハンガリー成長計画とは、主にEU構造基金を活用する国家成長計画で、地域格差の解消や先進国レベルに追いつくことを目的に、補助金支給を含めた各種成長補助事業を推進している。具体的には、a.経済発展、b.交通発展、c.社会再生(社会インフラ)、d.環境とエネルギー開発、e.地域開発、f.行政改革、の6分野で実施されている。環境とエネルギー開発分野の補助金は、国家省エネ行動計画の政府部門、工業分野への支援に利用されている。

輸送部門については、景気が低迷し、銀行ローン条件が厳しい中、新型乗用車の販売実績が年々低下しており、省エネ型乗用車の普及が進展しているとは言い難い。一方、公共部門では、緊縮財政が続くものの、今後エネルギー効率の高い自動車への買い替えが期待される。

最後に、発電分野の効率化については、国内電力需要の40%を賄うとされるパクシ原子力発電所(加圧水型4基)が12〜17年には30年の耐用年数を迎えるため、32〜37年まで耐用年数延長を図る。また、電力需要の増加に対応するため、2基の増設を計画しており、20〜25年の運転開始を目指す。増設計画にはフランス、ロシア、韓国が関心を示している。

一方、火力発電所は民営化の際、ドイツやフランスなどの資本が入っており、日本単独で当該施設の省力化ビジネスに参入するのは困難とみられる。

(本田雅英)

(ハンガリー)

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