海外発トレンドレポート

展示会出展時の留意点-取引を成功させるには(米国のデザイン・日用品分野最新トレンドシリーズ(3))
(米国・NY発)

2023年2月14日

日本企業が海外展示会に出展する際の、会場での留意点をバイヤーにヒアリングし、支払い、発送、コミュニケーション等、必要と思われる詳細情報をまとめた。

(左)SHOPPE OBJECT(右)NY NOWの会場の様子(筆者撮影)。

会場でのバイヤーとのコミュニケーション

  • 質問:

    米国の展示会で日本企業がバイヤーとのコミュニケーションで工夫してほしい点は?

    M氏:

    商品の説明ができて、卸価格や最低ロット、出荷計画などについて即答ができる人がブースにいてほしい。企業担当者が必ず会場にいる必要はないと思うが、製作者の顔写真など、ブースで商品のバックストーリーがこちらに伝わる工夫はほしい。

    S氏:

    会場で待たされるのは、困るだけでなくオーダーへの意欲が下がる。英語に不慣れな点はあまり気にしない。会場でオーダーして、注文書のコピーを持って帰り、請求書をE-mailで送ってくれるのか、いつ、どのように支払うのかが明確なことが重要。基本的な重要事項のコミュニケーションが、長く付き合える取引先になるかどうかの大きなポイントになる。

    例えば、SHOPPE OBJECTのオンラインサイトSHOPPE ONLINEで気に入ったプレートを見つけた時に、3サイズあると書いてあるのにSサイズの価格だけしか載っていなくて問い合わせが必要だった。こういった時間のロスは回避してほしい。

    C氏:

    ミニマムロット、卸売価格、出荷計画など、全てを分かりやすく表示すべき。

支払い方法

  • 質問:

    現状への不満や、希望はあるか。デポジット(手付金)についてどう思うか。

    M氏:

    海外発注の場合は30%〜50%のデポジットはフェアだと思っている。支払い方法はクレジットカードが望ましい。

    S氏:

    海外発送であっても、発送直前に全額を支払いたい。デポジットが必要なブランドとの取引は基本、していない。どうしてもその商品がほしいと思っても、頻繁なオーダーは経理上控えている。海外への支払い方法はクレジットカード、PayPal、Stripeを使っている。銀行振込は手数料が高いので避けたい。対日本ではなかったが、以前ハッキングにあってデポジットを偽の支払い先に銀行振込みした経験があり、支払い面で安全が保証されているBtoBプラットフォームのFaireをよく利用するようになった。

    C氏:

    クレジットカードが一番望ましい。デポジットがあると、注文を見送る要因になることが時々ある。しかし、その会社を信頼し、商品を望んでいる場合は(無理のない範囲で)デポジットを支払っている。

    Y氏:

    自社のBtoBサイトで決済できるようにしたところオーダーが増えた。大手から、大きいロットのオーダーでディスカウントを要求されたケースがあったが、ディスカウントを受け入れつつ手数料(ハンドリングチャージ)を追徴することを交渉して、先方から了承をもらった。

希望期間

  • 質問:

    注文から受け取りまでの期間について何か希望はあるか?

    M氏:

    海外取引の場合は、通常はオーダーから納品までの期間を2ヶ月取っている。ホリデーシーズンのオーダーは希望納期が遅れると致命傷なので注意してほしい。特にホリデーシーズンは紛失等の事故が多いので、米国の祝日カレンダーを確認してシッピングプランを立ててほしい。

    C氏:

    オーダーの際に、いつも在庫があればベストだが、1~2ヶ月待つのは問題ない。小規模の事業者ではあれば、たまにあるが、4ヶ月以上の在庫切れは長過ぎる。

発送方法

  • 質問:

    日本から発送する際の注意点や希望は?

    M氏:

    特に指定はないが、その都度一番安い方法で送ってほしい。

    C氏:

    EMS、DHL、FedEx、ヤマトすべて対応可能。キャリア(運送会社)と交渉すればディスカウントがもらえるはずなので、その努力をしてほしい。

その他、展示会会場で希望する事由

  • 質問:

    日本製品の説明表記や展示するサンプル等について希望はあるか。サイズは米国寸法(インチ、ポンド、オンス)の必要はあるか。食洗機や電子レンジ、オーブン等で使用可能かどうかの表記は必要か。

    C氏:

    米国で販売する場合、米国の寸法で表示されていた方が便利だが、どうしてもその必要があるかというと、そうでもない。食洗機、電子レンジ等で使用可・不可は重要なことなので、展示会でも記載しておくべき。素材の表記も必要。後から質問しなくても済むように心がけて欲しい。

    M氏:

    会場での展示は、例えば色の数が多い商品は、5色を商品サンプルで見せて、残りは小さなスウォッチにするとかして全ての色見本を展示してほしい。寸法をインチ表示にする必然は特に感じない。

    S氏:

    サイズ違いのある商品は、可能な限り、全サイズのサンプルが見たい。

日本企業との展示会後のフォローアップ面、その後のコミュニケーションについて

  • 質問:

    過去に日本企業とのコミュニケーションで苦労したこと、印象に残っている事由、あるいは米国内や他の国の企業と異なる日本企業の良い点などがあれば知りたい。

    M氏:

    日本の企業とのコミュニケーションでは嫌な思いをしたことはない。商品を受け取る際に、スタイルナンバー別、またはわかりやすいように箱の中の商品に印を付けてほしいといつも思うが、日本の企業はそれを伝えなくてもやってくれている。メールのコミュニケーションは、シンプルな要点だけの英語の回答でも良いが、もう少しコミュニケーションができると、本当はうれしい。ショップとのオープンなコミュニケーションは、国内外問わず大事だと思う。気になることがあればバイヤーに気軽に質問してほしい。フィードバックを聞くのはいいことだと思う。ショップはブランドにとってチアリーダー(支援者)でもある。

    S氏:

    やり取りはメールを希望している。Zoom等のオンラインミーティングは基本的に断っている。日本の企業とのビジネスに限らず、小さな小売店にとっては、ミニマム金額よりも、一つの商品に対するミニマムオーダー数が気になる (少ない方がオーダーしやすい)。日本企業とのビジネスで気になるのは送料の高さ。食器などはオーダー金額の倍の送料がかかったことがあり、販売価格を上げざるを得なかった。

    私は、ひと月に1日だけを注文する日に当てていて、その時にすべての情報がそろっていないと注文が数ヶ月先延ばしになってしまう。本当なら年に何度もオーダーしたい、すぐに売り切れてしまう人気商品の日本のブランドがあっても、注文に手間がかかり、思うように入荷から販売ができないのは残念なことだ。スプレッドシートを使うオーダーは時間がかかって後回しになってしまいがち。簡単に注文できるブランドに私はオーダーしている。

    C氏:

    メール以外に、Zoom、FaceTime、通話をすることもある。日本とのやり取りで一番大変なのは言葉の壁。リードタイムが長すぎたり、ミニマムオーダーの金額が高すぎたりすることもある。また、送料が非常に高くなることがある。

まとめ

日本と異なり、現地バイヤーは会場でオーダーをすることが大半である。ブースでのやり取りには雑談はほとんどなく、バイヤーからの質問に即答できないベンダーに対するバイヤーの評価は厳しい。オーダーへの意欲が下がらないよう、万全を期して展示会には望んでほしい。支払い方法は、海外ブランドであればバイヤーはデポジットに対して理解があると思っていたが、インタビューの結果、デポジットは、注文ができない要因になるケースがあるようだ。バイヤー側からするとデポジットを払ったにもかかわらず、納品がないと不安になるほか、数カ月前にデポジットを払いその分の売上げが入ってこない点が煩雑な資金管理となってしまう面もある。なかなか難しいとは思うが、この点を改良できないか、特に金額が小さい取引に関しては検討すると良いのではないか。


作成
ジェトロ・ニューヨーク事務所
執筆
中小企業海外展開現地支援プラットフォームコーディネーター 上野朝子
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本レポートは、日本貿易振興機構(ジェトロ)ニューヨーク事務所が委託先 上野朝子 に作成委託し、2023 年 2 月に入手した情報に基づき作成したものです。掲載した情報は作成委託先の判断によるものですが、一般的な情報・解釈がこのとおりであることを保証するものではありません。本レポートはあくまでも参考情報の提供を目的としており、提供した情報の正確性、完全性、目的適合性、最新性及び有用性の確認は、読者の責任と判断で行うものとし、ジェトロおよび 上野朝子 は一切の責任を負いません。これは、たとえジェトロおよび 上野朝子 が係る損害の可能性を知らされていても同様とします。

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