海外発トレンドレポート

市場概要およびバイヤーへのインタビュー報告グリーンビルディング市場、緩やかに成長見込み
(香港発)

2023年3月2日

グリーンビルディングとは、環境への負荷を削減すべく総合的に環境性能が高まるよう最大限配慮された建築物のことを指す。このグリーンビルディングの実践は、すべての都市・国家においてカーボンニュートラルを達成するための計画の核心的な部分となっているが、香港ではその進捗が比較的遅れている。本レポートでは、グリーンビルディングに関する香港の現状、政府の政策概要およびその効果、ならびに民間セクターの取組みについて紹介する。また、香港のグリーン建材販売業者へのインタビュー結果を基に、香港市場参入に関心のある日本の中小企業への実用的なアドバイスについて取り上げる。

アジア太平洋地域の主要都市の中で、グリーンビルディング分野で遅れ

世界的な喫緊の課題である気候変動。これに対処するための国際的な枠組みとして2016年に導入されたパリ協定※1では、世界の気温上昇を1.5~2度以内に抑えようと、各国が気候変動対策に積極的に取り組むことを約束した。この目標を達成するためには、2030年までに温室効果ガスの排出量を45%削減し、2050年までに排出量「実質ゼロ」にする必要がある。中国の特別行政区である香港もパリ協定を遵守し※2、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目標に掲げている。

建物は環境に大きな影響を与え、世界のエネルギー排出量の39%※3を占めている。香港では、域内電力消費のうち9割※4が不動産開発によるもので、域内の温室効果ガス排出の6割※5を占めており深刻な状況である。グリーンビルディングは、カーボンニュートラルを達成するための欠かせない一歩である。

ここでは、都市のグリーンビルディング開発の指標として、グリーン認定を受けたグレードAのオフィスビルの割合を取り上げる。下図JLL(ジョーンズラングラサール、世界最大の総合不動産サービス会社の一つ)作成のグラフは、2050年までのカーボンニュートラル達成を目標とするアジア太平洋地域の主要都市※6の状況を比較したものである。香港では、グリーン認定を受けたグレードAのオフィスの割合はわずか21%であるのに対し、シンガポールでは80%と高く、他の主要都市でも25%を超えるなど、香港の進捗が相対的に遅れていることが分かる。

図表1:

出典:持続可能性の価値:アジアにおけるグリーンプレミアムの根拠(JLL) ※7

※JLLの原典では、アジア太平洋地域のほとんどの都市をカバーするが、本レポートでは比較しやすいよう2050年までのカーボンニュートラル達成を目標とする国の首都のみを抜粋

グリーンビルディング促進のための各種政府イニシアチブ、その効果には疑問符

香港政府はパリ協定以前からグリーンビルディングの推進に取り組んできた。香港政府は2011年4月、デベロッパーが総延床面積緩和制度(Gross Floor Area Concession)を取得するための要件※8を新しく設定した。この制度は、追加の総延床面積緩和措置を適用できるよう床面積を増やすことでデベロッパーにインセンティブを与えるもので、デベロッパーの間で人気が高い。特にBEAM plus認証※9への登録は、その主な要件※10のひとつである。BEAM plus認証は、香港グリーンビルディング評議会(HKGBC)が香港市場向けに開発した、建物の持続可能性に関する独立評価制度であり、現在では香港の主要なグリーンビルディング認証システムとなっている。この制度に登録したプロジェクトは、評価終了後にプラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズに格付けされ、制度要件をクリアしていてもブロンズ評価の最低基準に満たないプロジェクトは、「評価対象外」という判定を受ける。香港政府は建築面積が5,000平方メートルを超える新庁舎について、BEAM plusで「ゴールド」以上の評価を得ることを義務付け、政府自らをロールモデルとした※11

2016年にパリ協定署名後、香港政府は「気候行動計画2030+」を発表し、2030年までに炭素排出量を少なくとも26%削減することを目標としている。2021年には最新の「気候行動計画2050」を発表し、2050年までにカーボンニュートラル達成の目標を更新。この行動計画では建物に関する目標について、2050年までに商業ビルの電力消費量を2015年比で30~40%、住宅用ビルの電力消費量を20~30%削減し、2035年までに目標の半分を達成することが示された※12

その後、政府は廃棄物管理、グリーン輸送、グリーン金融など、脱炭素社会の実現に向けたさまざまなイニシアチブを発表してきた。しかし、政府はグリーンビルディングに対する強力で効果的な政策やインセンティブを発表していない。民間企業以外からのグリーンビルディングの主な取組みは、BEAM Plus 1.2からBEAM Plus 2.0への更新(2016年)と、CICグリーン製品認証の立ち上げ(2019年)である。最新のBEAM Plus 2.0※13では、建築物の持続可能性要素を評価するためのより包括的な基準をカバーしている。同時に、「特定スキーム」と呼ばれる別のアプローチも提供し、特定評価の申請についてより柔軟に対応することで同スキームへの参加を促している。CICグリーン製品認証は、建設産業審議会(CIC)が運営し、香港グリーンビルディング評議会(HKGBC)が管理する別の評価制度※14であり、カーボンフットプリントや温室効果ガス排出量などの要素について徹底した環境影響評価を行い、さまざまな建築・建設資材をグリーン製品として認証するものである。その目的は、建築・建設関係者が環境への影響を最小限に抑えた製品・資材の選択と調達について、十分な情報を得た上で意思決定できるようにすることである。

さらに、政府はグリーンビルディング開発の好事例を確立するため、努力を続けている。例えば、政府が2019年に初めて開始したグリーンボンド制度※15の収益の50%はグリーンビルディングに費やされているが、それらはすべて政府の建物や公立病院などの公共施設が対象である。また、政府は2022年の最新の政策演説で、2024-25年までに政府の建物・インフラ全体のエネルギー性能を6%以上向上させるという目標を掲げている※16

全体として、香港にはBEAM PlusやCICグリーン製品認証など、グリーンビルディングのための関連制度が一部存在するが、実質的なインセンティブがないため、グリーンビルディングの文化が健全に育っていない。多くのデベロッパーは、総延床面積緩和制度に適用するため、BEAM Plusの登録要件にある特定の節水目標や換気量達成など、最低限の環境対策しか行っていない。これは、新要件ではデベロッパーは何の評価も得ずにBEAM Plus認証登録を完了することだけを要求されていることが背景にある。「新要件は実際のグリーン設計のガイドではなく、デベロッパーが総延床面積緩和制度を適用するための近道になっている」※17という批判もあった。そこで、ある政府関係者によると、総延床面積緩和制度を適用するにあたり、デベロッパーがBEAM plusで一定の評価を得ることを義務付ける※18ことが最近検討されているという。しかし、現時点で政策変更の公式発表はなく、BEAM Plusへの参加は任意であることに変わりはない。これに対して、香港の隣国シンガポールでは、すでに2008年4月から新築および大規模改修中の既存建築物について、自国のグリーンビルディング評価システムであるグリーンマーク認証への参加を義務付けている※19。この認証制度では、すべての建物が最低基準のスコアを獲得する必要がある。

グリーンビルディングの開発を促進するための重要なイニシアチブとして、香港ではBEAM Plusスキームへの参加は少なく、グリーンビルディングの開発を促進する効果は限定的である。香港には約5万棟の既存建築物※20があるが、そのうちBEAM plusに登録されているのはわずか1%(500棟程度)※21である。登録の大半は新築建造物であり、古い既存建築物が多い香港では、現時点では環境保護への取組みに限界があると言える。

※8
news.gov.hk(2015年5月6日)「グリーンビルディングを推進するための政策・施策」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※9
香港グリーンビルディング評議会「BEAM Plusの紹介」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※10
本レポートで言及されていないその他の要件としては、特定の持続可能な建築ガイドラインに従うという一般的な現場管理に関するもので、革新的なグリーンビルディング設計の動機付けにつながるものではないと言える。グリーンビルディング開発促進の重要なイニシアチブの一つとして、ここではBEAM plusに関する要件のみを取り上げている。
※11
news.gov.hk(2015年5月6日)「グリーンビルディングを推進するための政策・施策」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※12
news.gov.hk(2021年10月8日)「香港政府は、香港の気候行動計画2050を発表した」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※13
CICグリーン製品認証外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※14
香港グリーンビルディング評議会(2016年3月24日)「BEAM Plus既存建物v2.0の正式販売を開始」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※15
香港政府情報サービス部(2022年)「グリーンボンドレポート2022」PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(11.9MB)
※16
香港行政長官の2022年政策演説(2022年)「カーボンニュートラルに向けた努力」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※17
サウスチャイナ・モーニング・ポスト(2018年6月19日)「香港はいつまでグリーンビルディングの後塵を拝するのか」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※18
HK01(2022年10月24日)「綠色建築評級後豁免10%總樓面面積 甯漢豪:正敲定細節明年公布(総延床面積10%減免後のグリーンビルディング評価 甯漢豪氏:年度発表に向け詳細協議中)」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※19
HKTDCリサーチ(2020年5月18日)「グリーンビルディングの発展と可能性:シンガポール」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※20
中国日報香港版(2023年2月10日)「建物の老朽化問題対処の必要性」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※21
香港グリーンビルディング評議会(2023年)「BEAM Plusプロジェクトディレクトリと統計」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

ESG開示が促す企業の環境意識の変化

ESG(環境・社会・ガバナンス)投資とは、社会意識の高い投資家が投資先を選別するための一連の基準を指す。香港証券取引所(HKEX)は、ESGの世界的な流れに乗り、投資に関するより多くのESG情報を求める投資家の要望に応えるため、2020年にESG開示の要件を強化した※22。香港の上場企業は、様々なESG問題に対する各パフォーマンスの情報を開示しなければならなくなり、この要件新設により民間企業はESGへの取組みを強化するようになった。

PwCが2022年に発表した最新の「ESG報告に関する調査」によると、ESG委員会を設置している香港の上場企業の割合は、2020年の30%から2021年には45%に増加し、ESGワーキンググループを設置している上場企業の割合は2020年の79%から2021年には85%に増加した。

図表2:

出典:2022年香港上場企業のESG報告に関する調査(PwC)※23

企業によってESGに関する組織の役割は異なるものの、一般的にESG委員会は「企業の社会的責任と持続可能性管理に関して取締役会が監督責任を果たすことを支援する役割」を、ESGワーキンググループは「委員会からのガイドラインに従ってワークプランを策定する役割」を担っている。多くの上場企業では既にESGワーキンググループを設置しているが(2020年時点79%)、より具体的なESG関連のKPI(key performance indicator、重要業績指標)や目標を設定するためESG委員会を設置することも多くなっている。香港では企業が具体的なESG関連のマイルストーンを設定するのに伴い、環境配慮型ソリューションへの需要が高まっており、グリーンビルディングはそのソリューションの一つと位置付けられる。

ヒアリング調査結果

【A社】(所在地:香港、面談者:事業マネージャー兼プロジェクトマネージャー)

  • 質問:

    現在取扱中の主な製品とその販売動向は。

    回答:

    現在提供する主力製品は環境配慮型の断熱塗料で、2~3年前から販売している。従来の断熱は、発泡スチロールやミネラルウール、発泡ポリウレタンなどの断熱材を重ねて使用する必要があるため、土地が狭く家賃の高い香港では、建設会社やデベロッパーが設置を敬遠してしまい、多くの顧客は建物の断熱に苦労している。適切な断熱工事を行わないと、夏場には熱伝導によって室内が暑くなり、エアコンの使いすぎにつながり環境に悪い。これに対して、当社の環境配慮型断熱コーティングを使用すれば、顧客は厚い断熱層なしで建物の断熱ができる。環境配慮型断熱材は特に新しいものではなく、既に他の国でも広く使われている。香港の顧客は、なぜかこのようなトレンドで革新的なソリューションについて時代遅れで、大企業の従業員でさえこのようなソリューションをこれまで聞いたことがなかったというから驚きである。

    空間を犠牲にすることなく断熱・省エネを実現することはもちろんであるが、それ以外の効果もあることが顧客の導入意欲を高めている。断熱コーティングは、防音効果やカビの発生抑制など、より快適な室内環境を実現する。例えば大規模な企業や組織のオーナーが特定のESG目標を達成する必要があるとすると、当社の断熱コーティングは、省エネと職場環境の改善を通じて「E」(=環境)と「S」(=社会。従業員が幸福で健康であることを含む)の両方に効果を期待でき、簡単に実行できるソリューションである。

    当社の製品は発売から2〜3年しか経っていないため、まだまだ発展途上の段階にあるが、潜在的な顧客の関心を喚起できており今後の販売見通しは楽観的である。

  • 質問:

    主要な顧客層は。

    回答:

    当社の顧客は、学校、不動産管理会社、ホテル、工場など、多岐にわたる。その多くは新築ではなく既存の建物やビルの改修改築で、より環境に配慮したリノベーションを行うため当社に相談に来る。

  • 質問:

    香港のグリーンビルディングやグリーン建材の動向は。

    回答:

    香港のグリーンビルディングの発展は一般的に、世界の他の地域と比較して遅いと考えている。他の国々はすでに新しい建築技術や製品を採用し始めているが、香港はまだ旧態依然としたやり方を貫いている。

    香港政府は、グリーン建材の使用に関する奨励をしていない。最新のBEAM Plus 2.0認証制度では、認証グリーン建材の使用に対するウェイトが低いため、グリーン建材の採用を促進することができない。BEAM Plus 2.0認証制度には、水使用、統合設計と建設管理、エネルギー使用など、さまざまな側面をカバーする複数の評価基準がある。デベロッパーは一定の基準を満たすことで、一定のクレジットを取得できるが、最大211クレジットのうち、認証グリーン製品を使用することで得られるクレジットは6クレジットに過ぎない。

    しかし、2022年にエコエキスポに出展した際に気づいたのだが、市場の変化も感じている。企業のESG・サステナビリティ部門としてブースに来る人が増えているのである。以前はESG・サステナビリティ部門というものはなく、少なくとも一般的ではなかった。また、多くの大企業がコロナ前と比較して、より具体的な持続可能性の目標を設定し、その目標を達成するためESGチームが各種取り組んでいるということが、来場者との交流を通して感じている。また、国際的な企業が香港におけるリージョナルおよびローカルオフィスについて、厳しいサステナビリティ目標を設定していると聞いている。

    こうした変化からも分かるように、グリーンビルディングは今後トレンドになると考えている。現時点では政府は売る側と使う側の両方に良いインセンティブを提供できておらず、香港市場における環境に配慮した建築物は限定的ではあるものの、それでも今後のトレンドになると考えられる。

  • 質問:

    先に述べたとおり、現在、市場にはグリーンビルディング製品の選択肢が不足しているが、香港市場に製品の導入を提案するとしたら、どの製品カテゴリーを提案するか。またその理由は。

    回答:

    まず、エマウォールやエナメルパネルは非常に優れた製品であり、B2B市場でも可能性があると考えている。実際、香港ではB2Cの顧客向けは、すでにエマウォールの使用がかなり浸透しており、傷がつきにくく掃除が簡単で磁気にも強いことから、一般家庭のキッチンの壁によく使われている。エマウォールもホーローパネルも、どちらもホーロー製である。ホーローは有害物質を含まず、製造工程で有機溶剤を使用しないため、環境にやさしい素材である。エナメルパネルは、香港のB2B向けでより広く使われており、例えば、幼稚園の教室に傷のつきにくいエナメルパネルを設置して子どもたちが自由に絵を描けるようにしている。B2Bの顧客層は、リーズナブルな価格であれば、さまざまなブランドや生産地のエナメルパネルや関連製品に興味を持つだろう。

    また、環境にやさしい床材ソリューションや製品を市場に投入するのも面白いかもしれない。これらの素材は、耐久性、弾力性があり、商業用にも適している。このような素材は他の地域では見かけるが、香港では見たことがない。

    さらに、断熱コーティングの販売業者として、ビル用ガラスのコーティングなど、さまざまな用途の環境配慮型コーティングの市場機会もあると考えている。

  • 質問:

    現地での導入実績がないことが、新製品が香港市場に参入する際のボトルネックになるのでは。

    回答:

    我々の感覚では、香港では多くの場合、顧客の進行中のプロジェクトに類似した導入実績があれば、現地での導入実績がなくても問題なく受け入れられることが多い。ただし、現地での導入実績を求めるケースもあり、特に香港政府や香港の大手デベロッパー案件では現地での導入実績は必須条件となる。この点からみると、新規参入の製品は、海外での導入実績を評価し調達手順がそれほど厳しくない中小のビジネスパートナーと協力するなどして、現地での導入実績を築くことから始めるのが良い。

  • 質問:

    B2Bの顧客は、日本の建築資材をどのように受け止めているか。

    回答:

    B2Bの顧客は、一般的に日本製の建築資材は信頼性が高く、耐久性があると考えているようだ。市場で調達が容易な中国本土の製品よりも、日本製品がはるかに高価であることを顧客は理解している。日本製品は、中国本土の同じ種類の製品と比べて、時には3〜4倍も高い場合があるが、香港の顧客の多くは、日本製品の価値を理解しており、良質な資材を求めて価格差を払うことを惜しまない。

まとめ:今後参入を検討する日本企業に向けて

香港のグリーンビルディング市場が成熟するには、まだ長い道のりがある。世界的なESGのトレンドは、香港のグリーンビルディングの発展を促進する重要な推進力となっている。しかし現時点では政府の支援政策が十分ではないため、成長は緩やかなものになると予想され、相対的にも遅れをとる香港市場では、最新トレンドや市場に出回る製品にまだ馴染みがない。裏を返せばグリーンビルディングの新しい製品カテゴリーを市場に導入することに関心のある企業にとっては、大きな市場機会となる可能性が高い。

日本の中小企業が市場に参入する場合、日本からの建築資材の販売経験のある香港の現地の代理店(ディストリビューター)と提携することを推奨する。一般的にB2B向けの建築資材は専門的かつ複雑で、またその影響範囲も大きいため、製品の機能性を十分に説明し、適切な顧客に対し適切な製品を紹介することが重要である。そのためには、現地代理店と提携するのが望ましい。基本的に香港の顧客はグリーンビルディング製品についてあまり関連知識がないため、現地代理店を通して新製品について説明し、その新製品の価値を顧客に理解してもらうことが重要である。また、具体的な製品の種類にもよるが、一般消費者向け製品とは異なり製品をユーザーに販売して終わりではなく、製品の性能を最大限に発揮させるため、顧客と現地代理店、そして日本のサプライヤーとの間で、何度もやり取りをする必要がある。香港と日本のビジネス文化をよく理解している現地代理店と提携することは、より円滑なコミュニケーションにつながり、また現地代理店の既存顧客のうち日本製品に関心を持つ企業に効果的にアプローチできる可能性もあるだろう。

輸入規制に関して、特に注意を要する規制はないが、コンクリート、セメント製品、メッシュ補強材など一部の建設資材については、香港の現地認証機関を通じて建設資材の製品認証を受ける必要がある。また一部の製品については、建築物条例に基づく防火試験報告書の取得が必要な場合がある。上記のような製品に関する厳しい要求事項とは別に、特に政府や大手デベロッパーの中には、国際的に認められたグリーン証明書を求める場合もある。ただし、基本的には製品に興味を持つ顧客側から必要要件が共有され、現地代理店パートナーもそれについてアドバイスやサポートをしてくれることが一般的であるため、認証についてはあまり懸念する必要はなく、日本側サプライヤーはこのような手続きや要件があることだけを認識しておくと良い。


作成
ジェトロ・香港事務所
執筆
ジェトロ・香港事務所プラットフォームコーディネーター 吉澤麻美
市場概要およびバイヤーへのインタビュー報告
環境意識の高い消費者は手頃な価格のサステナブル製品を追求(香港発)
レポートの利用についての注意・免責事項
本レポートは、日本貿易振興機構(ジェトロ)香港事務所が委託先YCP Solidiance Limitedに作成委託し、2023年2月に入手した情報に基づき作成したものです。掲載した情報は作成委託先の判断によるものですが、一般的な情報・解釈がこのとおりであることを保証するものではありません。本レポートはあくまでも参考情報の提供を目的としており、提供した情報の正確性、完全性、目的適合性、最新性及び有用性の確認は、読者の責任と判断で行うものとし、ジェトロおよびYCP Solidiance Limitedは一切の責任を負いません。これは、たとえジェトロおよびYCP Solidiance Limitedが係る損害の可能性を知らされていても同様とします。

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