海外発トレンドレポート

ベトナムにおけるペット用品市場調査
(ベトナム・ホーチミン発)

2023年12月11日

1.サマリー

ベトナムは経済成長と共に、ペットを飼う習慣が定着しつつある。特にホーチミン市やハノイ市等の大都市圏においては、ペットを擬人化し、衣服やアクセサリーを買い求める人や、残飯ではなく、愛犬や愛猫の健康を気遣いペットフードを購入する人も増えつつある。

また、それに伴い、ペット用品を展開するチェーンストアも増加し、欧米・韓国・中国・日本などから輸入された商品を販売している。日本企業の戦える土壌が形成されつつあると言える。

2.市場規模・成長予測

ペットの飼育頭数の拡大

ベトナムは、経済成長によりペットを飼う習慣が普及しつつあり、犬と猫の飼育頭数が拡大しているが、狂犬病羅患者も依然として多い。2023年10月3日付地元日刊紙Saihon Giai Phong News※1は、「毎年、100人近くのベトナム人が狂犬病で死亡し、犬や猫に噛まれた40万人以上がワクチン接種を余儀なくされている。2023年の最初の9か月間で、国内の狂犬病による死亡者数は64人で、26の省と市で2022年の同時期と比較して21人増加しており、北部地域では25件の狂犬病症例が報告され、南部では15件、中部地域では9件、中部高原では15件となっている。特に中部高原地帯のザライ省は、国内で狂犬病による死亡者数が最も多い地域である(11人が死亡)。これらのほとんどは狂犬病ワクチン接種を受けていない犬や猫の咬傷が原因である。」と報じている。

このような中、政府は狂犬病根絶に力を入れている。2017年2月13日に発行された、首相議決No.193/QD-TTg「狂犬病の管理と根絶の国家プログラム フェーズ2017-2021」には、以下の主要な項目が含まれている。

  1. 「県、坊レベルで犬を飼っている世帯の95%以上をリスト化する。」
  2. 「狂犬病ワクチンを接種された犬猫の割合を全体の85%以上にする。」
  3. 「国家全体の70%の地域で、2年間連続で狂犬病の症例報告がなされない。」
  4. 「狂犬病のリスクが高い省数を60%減少させる。」
  5. 「フェーズ2011-2015と比較して、フェーズ2017-2021は狂犬病による死亡例を60%減少させる。」

上記目標達成のため、農業農村開発省と複数の中央省庁や地方自治体が共同で様々なタスクソリューションを実施し、2021年9月28日、農業農村開発省より、プログラムに対する結果が発表された。

農業農村開発省の本プログラムに対する結果発表(2021年9月28日)
  • 国内の飼い犬の総数は7,500,000頭以上、約4,900,000世帯で飼育されている。
  • ハノイ市、バックザン省、バックニン省、タイグエン省、タインホア省、ゲーアン省、ザライ省の7省市が最も多い。
  • 最大は、ゲーアン省(525,000頭)、ハノイ市(432,000頭)、タインホア省(383,000頭)。
  • ダナン市、フーイエン省、コムトゥム省、ドンタップ省、カントー市、ソックチャン省、アンザン省はいずれも40,000頭未満。
  • ダナン市は、国内で最も少なく、飼育頭数は23,000頭。
  • 2017~2021年8月までに、41の省市で、15,082頭の狂犬病を発症した犬を検出した。
  • 同期間の狂犬病死亡者数は、52の省市で、378人を記録した。(2012-2016:438人死亡)

予測される犬猫の飼育頭数および飼育世帯比率

上記の農業農村開発省の発表より、2021年の犬飼育頭数は全国で750万頭であり、地域別飼育頭数は北部~北中部が多く、中部やメコンデルタ地域の飼育頭数は少ない事が分かる。

東南アジア地域でペット産業関連の展示会を主催しているPet Fair Se Asiaによると、近年、猫の飼育数が大きく増加しており、2016年から2020年までの年平均成長率(CAGR)は3.7%(同期間での犬は2.8%)で、2016年290万頭から、2020年には340万頭に増加しているという。

また、犬の飼育世帯比率は2016年16.2%から2020年17.2%、猫の飼育世帯比率は2016年11.3%から2020年12.4%と増加している。

ペット用品(ペットフード)の需要予測

市場調査会社STATISTA※2によると、2023年のベトナムのペットフード市場規模は7,312万米ドル(約11億円)に達しており、2023年~2028年はCAGR8.47%と高い成長が期待されている。

従来、ベトナムでペットの餌は、人間の残り物を食べさせるということがほとんどであったが、ホーチミン市やハノイ市等の大都市圏で、特に若い世代を中心にペットのヘルスケアを考えペットフードを与えるという層が拡大している事がこの高い伸びに影響していると考えられる。

デスクトップリサーチでは、ペットフード以外の製品市場規模は判明しなかったが、前述のように、ペットのヘルスケアに気を配る層はペットを擬人化して考える人も多いため、大都市圏ではペット用品専門店が増加しており、アパレル製品、医薬品、オモチャなど様々な製品を販売していることから、ペットフードの伸びと比例して、その他の製品市場規模も拡大しているものと思われる。

図表1.ベトナムのペットフード市場規模推移と予測

2018年約4,039万USD、2019年約5,036万USD、2020年約5,754万USD、2021年約6,148万USD、2022年約6,655万USDと順調に推移し、以降、2023年約7,312万USD、2024年約8,002万USD、2025年約8,732万USD、2026年約9,503万USD、2027年約1億320万USD、2028年約1億980万USDと成長していく事が予測されている。

出所:STATISTA

3.国内生産、輸入状況

ペットフードに関しては、Pedigree、Royal Canin等の世界的大手ブランドや、タイ・日本・韓国などから輸入された海外製品が多く販売されており、ディストリビューター経由の正規流通品および非公式の並行輸入品が存在している。

ベトナムでの国内生産は、ホーチミン市ビンタン区のMaster Care外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの様な、ペットを擬人化して考えるアッパーミドル~富裕層に対して、安心安全なベトナムの自社工場で生産したペットフードを提供する企業も出てきているが全体で考えるとまだその規模は大きくないと思われる。

その他のペット用品では、Kim Binh Minh、Tran Danhなどの生産者が存在するが、これらは海外市場向けの製品を生産しており、国内販売はわずかと思われる。

  1. Kim Binh Minh外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
    2008年創業のペット用衣類、寝具、アクセサリー系を生産する企業で、日本・北米・ロシア市場向けに輸出販売を行っている。
  2. Tran Danh外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
    2006年に設立された企業で、衣類、寝具、アクセサリーなどを生産、日本・韓国・台湾・香港・スペイン・イタリア等に輸出販売を行っている。
    また、ヨーロッパ・日本・タイなどからペットフード、米国・カナダ・インド・エジプト・トルコ・台湾などから消耗品関連を輸入し、ベトナム国内で販売している。

4.主要メーカー/ブランド(日本企業の競合となり得る企業/ブランド)と価格帯

ペットフード

メーカー名
:Pedigree
商品名
:牛肉&野菜味のドッグフード 容量:500g 生産国:タイ
販売価格
:120,000ドン
メーカー名
:ROYAL CANIN
商品名
:X-Small 成犬用ドッグフード 容量:500g 生産国:タイ
販売価格
:166,000ドン
メーカー名
:ZENITH
商品名
:高齢犬用ソフト顆粒ドッグフード 容量:500g 生産国:韓国
販売価格
:100,000ドン
メーカー名
:PCG
商品名
:クラッシックペッツ牛肉味ドッグフード 容量:400g 生産国:タイ
販売価格
:25,000ドン
メーカー名
:PCG
商品名
:Smart Heartローストビーフ味ドッグフード 容量:400g 生産国:タイ
販売価格
:23,000ドン
メーカー名
:Master Care
商品名
:犬猫用豚味フレッシュフード 容量:500g 生産国:ベトナム
販売価格
:69,000ドン
メーカー名
:Master Care
商品名
:犬猫用乾燥フードオリジナルタイプ 容量:500g 生産国:ベトナム
販売価格
:5,500ドン

ドッグフードやキャットフードは周辺国のタイから輸入されている製品が多く、販売価格はブランドにより幅があるが、PCGの製品は安価でブランド認知度も高い。

犬猫用のアクセサリーに関しては、多くのペットショップで中国製・韓国製が販売されており、日本での販売価格と比較すると安価なものが多い。

5.売れ筋、最新トレンド

ペット用品の販売価格は安価なものが多いが、前述したようにホーチミン市、ハノイ市等の大都市圏ではペットを擬人化して考える層も出てきており、そのようなニーズに対応して、Master Care外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの様に、自社で安心安全なペットフードやその他のアクセサリー類を製造・PB商品化して販売するような企業も増えつつある。

6.ターゲットとなり得る購買者/ユーザー層(性別、年齢、所得、居住地等)とその購買行動

日本製品のターゲットとなりうるユーザー層としては、大都市圏に居住するアッパーミドル~富裕層クラスの収入を持ち、ペットをある程度擬人化して考えている20~30代のいわゆるZ世代、Y世代が対象として良いのではと考える。

大都市圏のZ・Y世代は、ヘルスケアに関心があり、外国文化や製品を求める傾向にあるほか、インターネットで日常的に商品を購入している為、ウェブマーケティングをうまく運用する事で、日本製品の持つ安心・安全・こだわり等を理解してくれる可能性があると思われる。

7.主な流通ルート(輸入/国内生産からエンドユーザーまで)

ベトナム国内で流通しているペット用品は、主に、「輸入品(現地法人・ディストリビューターが取り扱う)」、「国内生産品(メーカー)」に分かれる。販売チャネルとしては、「動物病院(院内使用・院内薬局)」、「ペットショップ(個人店・チェーンストア)」、「オンライン(オンラインペットショップ)」、「企業ユーザー(ブリーダー等)」に分かれており、商流としては、「輸入品」「国内生産品」とも、一次卸(ディストリビューターやメーカーが兼ねる事もある。)を経由して流れており、ケースバイケースで、二次卸、三次卸を経由する事もある。
  • 「海外メーカーの現地法人」、「国内メーカー」、「ディストリビューター」が輸入販売。
  • 一次卸は、ディストリビューターやメーカーが兼ねる事もある。
  • 大口需要家は、国内での購入以外に、海外から直接輸入しているケースがある。
  • 二次卸は、地域(地方の省)に設置された地域代理店という位置づけが多い。
  • 二次卸、三次卸は、県・坊レベルでの区分けだが、明確に販売範囲を管理されていない。

8.主な輸入/卸売/小売業者

ディストリビューター

会社名:
CÔNG TY TNHH CITYZOO(シティーズー)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
概要:
Royal Caninの独占ディストリビューターで、ベトナム全国700店舗以上のペットショップに対して、フード類やペットグッズ、アクセサリー、スナック等を配荷させている。
会社名:
CÔNG TY TNHH TRÂN DANH(チャンザン)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
概要:
2006年に設立された企業で、衣類、寝具、アクセサリーなどを生産、日本・韓国・台湾・香港・スペイン・イタリア等に輸出販売を行っている。
輸入販売企業としても有名であり、イナバ、REFLEX PLUS, MONGE, LE CHAT EXCELLENCE, CANADA CAT LITTER, BOXIECAT, KITTYMAX CAT LITTER等の製品を販売している。

小売店

会社名:
CÔNG TY PET MART VIỆT NAM(PET MART)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
概要:
様々なペット用品を取り扱う企業で、サービスの幅が広くペットの事であればなんでも相談できると人気になっており、全国で34店舗を展開している。
会社名:
PETMO(AEONベトナム)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
概要:
イオンが展開するペットショップで、ペットクリニック、トリミング、ホテル等のサービスや、ペット用品販売を総合的に行っている。

9.関連規制、規格・認証等

ペットフード

農業農村開発省の2016年6月30日付通達「25/2016/TT-BNNPTNT」によると、動物由来の動物飼料は輸入時に動物検疫の対象となる。

農業農村開発省の2014年9月5日付通達「30/2014/TT-BNNPTNT」によると、植物由来の動物飼料は輸入時に植物検疫の対象となる。

「潜在的に危険を引き起こす可能性のある製品および物品のリスト」を公布した、農業農村開発省の政令「39/2017/ND-CP」および、2017年12月25日付通達「28/2017/TT-BNNPTNT」の第 16条により、農業農村開発省の管理責任の下、家畜飼料は通関前に品質検査の対象となる。

農業農村開発省の通達「02/2019/TT-BNNPTNT」に従い、「ベトナムでの流通が許可されている動物飼料製品のリストに載っていないペットフード製品」については、輸入する場合、「政令 39/2017/ND-CP」に従い、流通登録を行う必要がある。

10.政府の奨励策や現地での輸入・流通時に適用されるメリット(FTA/EPAや補助制度等)

ペットフードのHSコードは、230910に分類され、肉が含まれるか否かで以下に分類される。 日本とベトナムのEPA(ベトナム経済連携協定)による特定原産地証明書である、フォームVJを取得する事により関税率を、WTO加盟国の通常関税7%から、0%にすることが可能。

同商品の関税率

HS23091010(小売用の犬猫フードで肉が含まれる)
通常関税:10.5% WTO加盟国:7% 日越EPA(ベトナム経済連携協定):0%

HS23091090(小売用の犬猫フードで肉が含まれない)
通常関税:10.5% WTO加盟国:7% 日越EPA(ベトナム経済連携協定):0%

11.中小企業に参入のチャンスがあると考えられる製品例、参入時のアドバイス、留意点

既にフード関連は、世界的大手企業の製品が全国のペットショップで販売されており、知名度も高い事から競合する事は難しいものと考えられる。

ただし、前述したように、大都市圏ではペットのヘルスケアを考える人々が増加しつつあるため、ペットの健康をサポートする為のサプリメント系商品などが面白いのではと思われる。

ベトナムは人用のサプリメント市場が新型コロナ流行以降で免疫力を高めるため、特に若いY・Z世代を中心に拡大しており、特に安心・安全のイメージを持つ日本製品が注目されている。ペット向けに関してもこのイメージを利用してマーケティングが可能ではないかと考えられる。

しかし、日本製品であればなんでも売れるというわけではなく、認知度の無い製品の拡販は難しいため、SNS広告等を利用し、ブランドの位置づけや日本や他の海外諸国での商品展開例やペットのヘルスケアに関する情報を発信することで、商品やブランド認知度を高める必要がある。


参考リンク


作成
ジェトロ・ホーチミン事務所
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本レポートは、日本貿易振興機構(ジェトロ)ホーチミン事務所が委託先MAI INTERNATIONAL ASSOCIATES JOINT STOCK COMPANYに作成委託し、2023年12月に入手した情報に基づき作成したものです。掲載した情報は作成委託先の判断によるものですが、一般的な情報・解釈がこのとおりであることを保証するものではありません。本レポートはあくまでも参考情報の提供を目的としており、提供した情報の正確性、完全性、目的適合性、最新性及び有用性の確認は、読者の責任と判断で行うものとし、ジェトロおよびMAI INTERNATIONAL ASSOCIATES JOINT STOCK COMPANYは一切の責任を負いません。これは、たとえジェトロおよびMAI INTERNATIONAL ASSOCIATES JOINT STOCK COMPANYが係る損害の可能性を知らされていても同様とします。

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