海外発トレンドレポート

UAEにおける日本食レストラン市場調査
(ドバイ発)

2024年2月26日

1.サマリー

UAEでは日本食レストランの人気が高まっており、新型コロナウイルス感染症の影響も限定的で、店舗数が約340店舗まで拡大している状況である。いわゆる海外でイメージされる日本食である寿司や天ぷら等の本格的な和食を提供する中~高価格帯のレストランが多く存在しているほか、近年では、うどんやラーメン、日本式のパンといった商品を専門的に販売する日本食レストランも増加傾向にあり、こうした店舗によって、日本食の選択肢がさらに広がっている。今後もこのトレンドは継続し、日本食レストラン市場は拡大すると考えられる。

2.市場規模・成長見通し

UAEにおいて日本料理を提供する飲食店は、2013年時点で約 140店舗だったが、2022年には、約160%増となる約340店舗にまで増加している※1。新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、2020年には多くのレストランが営業を制限され、閉店したレストランも多かったにもかかわらず、日本食レストランの店舗数は増加傾向にある。

3.国内生産/輸入状況

UAEは食料自給率が約17%と低く、日本食レストランに限らず、大半の食材については、日本を含む海外からの輸入品である※2。特に、日本からの輸入量が多い食材は、水産物(ブリ、まぐろ、かまぼこ、カニカマ、トビコ、海苔)、調味料(醤油、マヨネーズ)、畜産物(ハラル認証取得済み和牛)等が挙げられる。高級店であれば、多くの食材を日本から輸入しているが、手頃な価格帯のレストランでは、類似する商品を中国やタイ等、より安価に調達できる国から輸入している傾向が強い。

4.主要メーカー/ブランド(競合情報)と価格帯

UAEにおける日本食レストランは主に価格帯で分類することが可能であり、低価格帯のレストランについては、現地発のブランド(オーナーがUAE人や中国人、韓国人であるケースもある)が多く、また、チェーン店では、英国発の“Yo!Sushi”や“Wagamama”といった外国発の日本食レストラン店舗もある。こうした低価格帯の日本食レストランについては、日本人のイメージする和食とは異なるメニューが提供されている場合が多々あるが、日本人の谷内シェフがオーナーを務める“BENTOYA KITCHEN”は、1997年の創業以降、ドバイの日本食レストランとして確固たる地位を築いている。谷内シェフは日本食及び日本食文化をアラブ首長国連邦内外に広めた功績が認められ、2021年には農林水産省が定めた「日本食普及の親善大使」にも任命されている※3。また、現地発のうどんチェーンである“Maru Udon”や日式ベーカリーの“Yamanote”等、専門店として和食を提供する店舗も多数存在している。

中価格帯の代表的なレストランには、UAE国内で唯一、日本国内にて飲食事業を展開している株式会社KIDS HOLDINGSが展開する木村屋(Kimuraya)、茂木屋(Mogiya)、久寿屋(Hisaya)等の本格日本食を提供する居酒屋レストランチェーンが挙げられる。同社は日本の居酒屋カルチャーを世界に伝えるべく「安くて旨いに国境なし」をコンセプトに本格和食を提供している。

高価格帯のレストランについては、“Zuma”, “Roka”, “Nobu”, “Sushi Samba”といった海外発の日本食フュージョンレストランが多く挙げられる。また、これらの店舗と類似したコンセプトでUAEにて創業されている店舗も多数存在している。このほか、オーセンティックな和食を提供する“Tomo”や“Miyako”、ミシュラン一つ星を獲得している寿司レストランである”Hoseki”等が挙げられる。

5.売れ筋、最新トレンド

近年では、日本食レストラン全般の人気が高まっており、低価格帯~高価格帯のレストランがバランスよく拡大している状況である。現地在住の欧米人はもとより、UAE人についても、日本食はヘルシーであるというイメージも相まって、多くの顧客がレストランを訪れている。

6.日本製品のターゲットとなる購買者/ユーザー層と購買行動

低~中価格帯のレストランではホワイトカラーのオフィスワーカーなど、中流層が主な顧客層となっており、高価格帯のレストランでは、企業のエクゼクティブや、ビジネスオーナーといった富裕層がメインターゲット層となっている。一部のレストランにおいては、アルコールも提供されており、UAE在住の非イスラム教徒がアルコール類を注文するシーンも多く見られる。

7.主な流通ルート(輸入/国内生産からエンドユーザーまで)及び主要事業者

日本食材については、現地の日本食専門輸入卸経由で輸入されているケースが多い。日本食専門輸入卸の最大手は日本のコスモトレードアンドサービス社の子会社である“Summit Trading”で、水産物、畜産物をはじめ、幅広い食材、調味料等を日本から輸入し、現地のレストランに販売している。同社のほか、日系輸入卸では、“JFC”や“Fuji Middle East”が日本食品の輸入卸事業を展開している。そのほか日系以外にも、“Taste Master”, “1004 Gourmet”, “Deans”等、日本から商品を輸入し、卸売を行っている事業者は多数存在している。さらに、日本食専門ではないが、特定の食材(水産物や畜産物等)を取り扱っている輸入事業者が多数存在しており、“Chef Middle East”, “Classic Fine Food”などが挙げられる。これらの輸入卸は日本国内にパートナー企業となる輸出者がいるケースが多く、それらの輸出者が国内にて商品を調達し、輸出されているというのが、主な食品の流通ルートとなる。

8.関連規制、規格・認証等

日本食材のUAEへの輸出に関しては、事前に商品登録が必要で、さらに英語とアラビア語のラベルを貼るなどの対応が日本側に求められる。そのため、輸出者となる場合には、現地輸入者と密なコミュニケーションを取り、現地の規制※4※5に対応する必要がある。メーカーは、輸出する商品の英文規格書や、商品ラベルについて準備を行うことが推奨される。

また、UAEへ畜産物を輸出する場合には、ハラル認証※6を取得することが求められる。そのため、現地で特に需要が高まっている和牛についても、国内でUAEのハラル認証を得た屠畜場で処理されたものでなければ輸出することができない点は留意が必要である。


作成
ジェトロ・ドバイ事務所
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本レポートは、日本貿易振興機構(ジェトロ)ドバイ事務所が委託先Cross Reach ME FZ LLに作成委託し、2023年12月に入手した情報に基づき作成したものです。掲載した情報は作成委託先の判断によるものですが、一般的な情報・解釈がこのとおりであることを保証するものではありません。本レポートはあくまでも参考情報の提供を目的としており、提供した情報の正確性、完全性、目的適合性、最新性及び有用性の確認は、読者の責任と判断で行うものとし、ジェトロおよびCross Reach ME FZ LLCは一切の責任を負いません。これは、たとえジェトロおよびCross Reach ME FZ LLCが係る損害の可能性を知らされていても同様とします。

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