海外発トレンドレポート

UAEにおける医療機器市場調査
(ドバイ発)

2023年12月26日

1.サマリー

UAEにおける医療機器市場は着実に拡大しており、堅調に成長することが見込まれている。これまで、UAEでは医療機器をはじめとした精密機械類の製造は基本的に行われておらず、ほとんどを輸入に頼っていたが、今後は、国内における製造業の発展を推進する政府方針による後押しもあり、医療機器の国産化が進む可能性がある。なお、医療機器の現地商流は、完成品を現地販売代理店がメーカーから輸入し、代理店がその完成品を病院へ納入するというのが一般的な流れである。また、軽微なアフターケアおよびメンテナンスは代理店が担当し、本格的な修理等が必要な場合にはメーカーが対応する場合が多い。したがって、UAEでのビジネス展開には、信頼できる代理店の選定が最重要である。

2.市場規模・成長見通し

UAEにおける医療機器市場は、Statista社によると※12024年で約24憶米ドル、なかでも、心臓病用機器が約4億米ドルとなっている。また、同社は2024年から2028年の同市場の成長性を約5.9%で見込んでおり、2028年には約31億米ドルになるとの予想を発表している。その他、米国の市場調査会社であるMarkNtel Advisor社も、UAEにおける医療機器市場に関する調査結果※2を一部公開しており、2023年の市場規模が約19億米ドル、2024年から2030年にかけて、年平均8.9%で成長すると見込んでいる。両社による2023年時点での市場規模の試算結果と成長性の見込みについては多少差があるものの、総じて、(1)市場規模は20億米ドル前後、(2)今後も1桁台後半の成長ペースで拡大傾向にある点については、共通認識が得られているという状況である。

UAEの医療ヘルスケア産業振興の具体的な取り組みとして、ドバイ政府は2002年に医療関係に特化したフリーゾーンである「ドバイ・ヘルスケア・シティ(DHCC)」を開設している。以降、現在に至るまで、大型の総合病院やクリニックも含め178の医療機関がオープンし、4,400名以上の各種医療専門家がDHCCにて勤務している。

3.国内生産/輸入状況

UAEにおける主要な医療機器の輸入額※3は、2022年には約11億米ドルであった。中でも、HSコード9018(医療用又は獣医用の機器)が約7億米ドルと最も多く、次いで9022(エックス線、アルファ線、ベータ線又はガンマ線を使用する機器)が約2.0億米ドル、9021(整形外科用機器、補聴器その他器官の欠損又は不全を補う機器、人造の人体の部分及び副木その他の骨折治療具)が約1.6億米ドルとなっている。それぞれの2018年~2022年にかけての年平均成長率は、4.5%、6.0%、5.8%となっている。日本はUAEにおけるHSコード9018(医療用又は獣医用の機器)に該当する製品の輸入元としては、米国、中国、メキシコ、ドイツに次ぐ5位で、輸入額は約4,660万米ドルである。

なお、UAEでは製造業は盛んではないが、2022年10月には、UAE政府が医療機器を現地で製造するため、大手製薬会社と医療会社の間で2億6,000万ディルハム(7,079万ドル)相当の産業協定を締結したと発表した。この提携に基づき、UAE最大の医療提供者の1つであるピュアヘルス社は、アブダビ医療機器会社(Abu Dhabi Medical Devices Company)、アブダビ・ポート・グループ(Abu Dhabi Ports Group)、およびアブダビ・ポリマーズ・カンパニー(Abu Dhabi Polymers Company, 通称ボルージュ社)と協力して、アラブ首長国連邦に約3,000万米ドルを投じて、医療用品(医療用注射器、投与装置、採血管の生産)の生産ラインを設立する予定である。

UAEでは2031年までにUAEを世界の産業ハブとして位置づけるための「オペレーション3,000億ディルハム」というプログラムが2021年より推進されている。これは、同国のGDPに対する産業セクターの寄与を現在の1,330億ディルハムから3,000億ディルハムに増加させる10年間の包括的な戦略であり、重点分野には石油化学やプラスチック等の他、ヘルスケア、バイオテクノロジー、メディテクノロジー、医薬品が含まれている。UAE政府としては、今後、更なる投資を通じて、国内の産業育成に努めていく方針を打ち出しており、医療機器についても、国内製造の比率が増加していく可能性があると考えられる。

4.主な流通ルート(輸入/国内生産からエンドユーザーまで)

UAEにおける医療機器の流通ルートとしては、各メーカーが輸入代理店を選定し、その輸入代理店を通じて、国内の病院やクリニックに販売を行う、または、2次代理店を通じて、製品を流通させるという形を取るのが一般的である。大手の病院等では入札案件が行われており、メーカーが直接入札することも不可能ではないが、現地におけるアフターサービスの体制構築等を考えると、代理店を選定し、アフターサービスの提供も含めて、代理店に任せるという形式が最適と考えられる。代理店を選定するにあたっては、現地の病院やクリニックに対して強い販売網を持っていることや、安定した財務基盤を持っていること、必要なアフターサービスを提供するだけの技術的知見を有すること等をしっかりと確認することが肝要である。

5.関連規制、規格・認証等

UAEの保健予防省(Ministry of Health and Prevention, MOHAP)が公開している医療機器登録ガイドライン(Medical Device Registration Guideline)によると、UAEに医療機器を輸出しようとする製造業者は、有資格の現地代理人または代理店を通して登録を行わなければならないと定められている。また、その際に提出する必要書類として、製品の基礎情報のほか、安全面に関するデータや効能に関するデータ、適合証明書等の提出が求められるため、現地代理店と密にコミュニケーションを取り、登録を進める必要がある。なお、詳細な登録の手順及び費用、必要書類等を示した資料はMOHAPのウェブサイト※4より取得することができる。

6.日本の中小企業へ参入時のアドバイス・留意点等

UAEでは国際展示会が多く開催されており、国外から多くの出展者・来場者が集まり、UAEのみならず近隣のGCC諸国や、中東北アフリカ(MENA)市場のゲートウェイとして機能している。

ドバイでは毎年1月~2月にかけて、中東地域において最大の医療機器関連展示会である「アラブ・ヘルス(Arab Health)」が開催されている。Arab Health2023には、世界から3,300社が出展し、世界各国から13万人を超える来場者が訪れた。Arab Healthでは医療・病院用機器をはじめ、各種医療技術の紹介、ヘルスケア用品、衛生用品、医薬品、製薬・製剤、福祉・介護関連、リハビリ用機器等のメーカー及び販売店等が出展しており、また、多くの現地代理店候補も出展、来場することから、代理店を探索している企業にとっては、非常に良い機会となっている。


作成
ジェトロ・ドバイ事務所
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本レポートは、日本貿易振興機構(ジェトロ)ドバイ事務所が委託先Cross Reach ME FZ LLCに作成委託し、2023年12月に入手した情報に基づき作成したものです。掲載した情報は作成委託先の判断によるものですが、一般的な情報・解釈がこのとおりであることを保証するものではありません。本レポートはあくまでも参考情報の提供を目的としており、提供した情報の正確性、完全性、目的適合性、最新性及び有用性の確認は、読者の責任と判断で行うものとし、ジェトロおよびCross Reach ME FZ LLCは一切の責任を負いません。これは、たとえジェトロおよびCross Reach ME FZ LLCが係る損害の可能性を知らされていても同様とします。

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