海外発トレンドレポート

高級化と多様化、キッズテックが人気-韓国におけるベビー用品市場調査
(韓国・ソウル発)

2023年11月14日

1.サマリー

韓国のベビー用品市場は細分化・多様化・高級化が進み、最近では両親や親戚だけでなく知人など10人が財布を開け、1人の子供のためにお金を使うことを意味する「10ポケット」という言葉が登場している。また、利便性やキッズテックなどのトレンドに沿った、保育の負担を大幅に軽減する革新的なベビー用品に注目が集まっている。日本製ベビー用品が韓国の消費者の多様なニーズに応え、韓国の市場に参入し他国の製品と競争するためには、近年拡大している個人輸入市場に注目する必要がある。

2.市場規模

日本と同様、韓国でも出生数は減少の一途をたどっている。 一方、ベビー用品の市場規模は、2010年の1兆3,400億ウォン(約1,474億円、1ウォン=約0.11円)から2020年には4兆ウォンまで急速に成長している。出生数が減っているにもかかわらず市場が成長し続けているのは、韓国人の結婚と出産のタイミングと関係している。韓国の平均初婚年齢は男性が33.7歳、女性が31.3歳でOECD諸国の中で最も高い(女性家族省、2023年統計における男女の生活)。また、1家族につき子どもが1人しかいないという傾向も強まっている。韓国の合計出生率は、2022年を基準として出産適齢期の女性1人当たり0.77人で年々低下傾向にある。つまり、韓国は晩婚化しており、子供はできるだけ1人、その結果生まれた経済的余地を子どもに集中的に投資する傾向にあることから、ベビー用品の市場規模も拡大しているということがわかる。

図1.出生数とベビー用品の市場規模

  1. 韓国の出生数は、2010年の47.0万人から2015年の43.8万人、2020年には27.2万人と低下している。
  2. ベビー用品の市場規模は、2010年に1兆3000億ウォン、2015年に2兆4000億ウォン、2020年に4兆ウォンと成長している。

出所:韓国統計局·現代経済研究所·ユアンタ証券研究センター

3.輸入状況

ベビー用品市場規模の拡大に伴い、輸入規模も成長している。ベビー用品の輸入額は2020年を除いて年々増加しており、韓国のベビー用品の総市場規模4兆ウォンのうち2022年のベビー用品の輸入額が 12億5,000万ドル(約1兆6250億円、1ドル=約1300ウォン)であったことを考えると、輸入ベビー用品が大きな割合を占めていると考えられる。

韓国では、2019年に韓国と日本の貿易摩擦の影響で日本製品に対する不買運動が広がった。その結果、ベビー用品の日本からの輸入額は2019年以降減少傾向にあったが、韓日関係の回復ムードにより、2021年から再び転換期を迎えている。 韓国の消費者の日本製ベビー用品に対する嗜好は依然として高く、日本製品不買運動前の日本製品の輸入量を考慮すると、韓日関係が悪化する前の市場規模への回復が今後のエントリーポイントとなるといえる。

図2.ベビー用品の輸入額推移

ベビー用品の総輸入額は、2013年に782万ドル、2014年に880万ドル、2015年に942万ドル、2016年に1028万ドル、2017年に1081万ドル、2018年に1126万ドル、2019年に1077万ドル、2020年に997万ドル、2021年に1188万ドル、2022年に1253万万ドル。そのうち、日本からの輸入は、2013年に46.5万ドル、2014年に45.0万ドル、2015年に52.3万ドル、2016年に54.7万ドル、2017年に68.0万ドル、2018年に68.0万ドル、2019年に50.9万ドル、2020年に34.4万ドル、2021年に40.1万ドル、2022年に387,000万ドル。

*HSコードで抽出した関税庁のベビー用品輸入データの分析
対象品目 : 調製粉乳, ベビー·チャイルド用食料品、均質化製剤, ベビー用コスメ, ベビー用乳首, ベビー服と部品, ベビーカーと部品, ベビーナプキンとナプキンライナー, ベビー用おもちゃ

出所:韓国関税庁

4.流通状況

まず、オフラインチャネルの種類としては、(1) 百貨店 、(2)ベビー用品専門店、(3)大型スーパー、(4)ベビー用品専用の倉庫型ディスカウントストアなどが挙げられる。このうち、百貨店はベビー服や子供服に力を入れ、高級化とプレミアム化が最も顕著になっている。また、ベビー用品専用の倉庫型ディスカウントストアは、比較的に店舗賃料が安いソウル郊外や地方を中心に運営されている。

他方でオンラインチャネルの種類としては、(1)オープンマーケット、(2)総合ショッピングモール、(3)メーカーやブランドの公式オンラインモール、(4)ベビー用品専用のオンラインモール、(5)テレビショッピングなどがある。特に近年に入り、海外の越境ECサイトからの個人輸入の増加を受け、個人輸入を新規事業として進めるECサイトが増えている。例えば、海外のベビー用品を豊富に取り揃えたプラットフォームや、海外の物流配送を活用できるプラットフォーム、オープンマーケットのセラー(小売業者または購買代行業者)との契約という形態を通じて、海外の越境ECサイトを介さず、自社のECサイトを通じて個人輸入ができるサービスを提供する韓国のEC事業者が増えている。

図3. 個人輸入によるベビー用品の購買金額

ベビー用品のオンラインショッピングの全体海外直接購買額は2014年は54,034百万ウォン、2015年は61,815百万ウォン、2016年は63,466百万 ウォン、2017年は54,054 百万ウォン、2018年は63,615 百万ウォン、2019年は64,278 百万ウォン、2020年は66,208 百万ウォン、2021年は97,043 百万ウォン、2022年は91001百万ウォン。そのうち、日本からの海外直接購買額は、2014年が7,942人、2015年が11,980人、2016年が14,520人、2017年が17,758人、2018年が18,707人、2019年が15,085人、2020年が14,700人、2021年が20178人、2022年が259億5,900万人。

出所:韓国統計庁

5.韓国の市場に参入する際に参考にできるトレンドとアイテム

購入者に占める男性の割合の増加

ベビー用品の主な購入者は依然として母親であるが、男性の育児休暇の増加と男性の家事分担の一般化による男性購入者の増加率も著しい。韓国でMZ世代(主に1980年代半ばから1990年代前半に生まれた「ミレニアム(M)世代」と、1990年代後半から2000年代後半の間に生まれた「Z世代」の2世代)と呼ばれる若い男性購入者は、2~300万ウォン以上の高価なベビー専用電気自動車の購入にお金を惜しまず、さらに革張りの座席やハンドル交換などに投資することも多い。特にベビーカーや電動乗用玩具、チャイルドシート、アウトドア用品は、関連するアクセサリーも多様化・細分化されているため、個人輸入などを通じての追加的な消費に繋がる。

ベビー用食品や容器の市場の拡大

女性の社会進出拡大により、ベビー用食品やベビー容器の市場が拡大している。また、近年では惣菜やフリーズドライ離乳食を求める消費者が増えている。特に離乳食は海外からの高品質製品は高価であるにも関わらず人気が高い。一方で、品質や安全性を最も重視される分野の一つであるベビー食器(離乳食容器を含む)については、ガラス密閉容器市場が注目されており耐熱強化ガラス製の製品が好まれる傾向にある。関連商品が続々と新発売される中で、アニメのキャラクターやブランドとのコラボ商品で差別化を図っている商品も多く見られる。

便利性+プレミアム=「便利ミアム」のベビー用品

韓国のベビー用品市場のさらに新しいトレンドはMZ世代向けの商品であり、代表的な商品としては自動粉ミルクメーカーやバウンサーなどがある。ベビーブレッツァ(27万9,000ウォン、米国ブランド)は、韓国で近年最も人気の高いベビー用品の1つで、自動粉ミルクメーカーをはじめ最近は離乳食メーカーまでそのラインナップを拡充している。また赤ちゃんの月数に応じて角度を調整できる組み立て式のバウンサーから、高価な電動バウンサーまで、親の代わりにあやす様々な商品が脚光を浴びている。こうした製品は利便性を高め保育の負担を軽減するだけでなく、既存市場にはなかった目新しい商品を求める親のニーズをターゲットにしている。

AI(人工知能)を取り入れたキッズテック産業の急成長

既存のベビー用品市場は玩具・ウェットティッシュ・紙おむつ・ボディケアなどが主流であったが、最近ではIoT(モノのインターネット)などの最先端技術を取り入れ、スマートフォンのアプリに注目されている。韓国のAI市場全体では、年平均成長率14.9%と様々な産業でAIの導入が加速しており、ベビー用品関連企業もIT技術を取り入れた様々な製品を導入している。赤ちゃんの泣き声を解析し、保育者とのコミュニケーションを支援するアプリケーション(例:Crying Bebe)がリリースされ、注目を集めており、その他にも20以上の子育てアプリケーションが利用されている。

6.関連法律及び制度

子供製品安全特別法

韓国では、子供が使用する製品による事故を防止し子供の健康の保持増進に寄与することを目的に、子供製品安全特別法が制定された。13歳未満の子供が使用する商品またはその付属品については、製造業者及び輸入業者は法律に基づいてKC認証(Korea Certification Mark、韓国の国家統合認証マーク)を必ず受ける必要がある。

KC認証制度

KC認証とは、子供製品安全特別法に基づいて実施される認証制度である。子供の安全のために、危険性、身体的安全性、化学物質安全性など、様々な安全要件を満たすことで、KC認証マークを付けることができる。KC認証の種類は、(1)安全認証、(2)安全性確認、(3)供給者適合性確認と、3種類があり、子供向け製品の製造業者と輸入業者は指定された試験及び認証手順を通じてKC認証マークを貼付することが義務付けられている。この3種類の認証制度は、子供への危険性の程度に応じて、対象品目と認証プロセスの手順が異なっている。特にベビー用品では購入者の安全性に対するニーズは重要な要素であり、近年安全認証マークがない輸入品の違法流通が増加していることにより、韓国国会が認証マークのない製品に対する制裁強化法案を推進している。同制度は、日本製ベビー用品を韓国に輸出するために確認しなければならない基本要件の1つである

図4. KC認証制度の対象品目とプロセス

KC認証制度は、子供に与える危険性が高い順に安全認証、安全性確認、供給者適合性確認の3つに分けられる。認証の種類にごとに、対象になる品目や認証プロセスが異なる。安全認証が必要な品目は子供用遊具や車用チャイルドシートなど4品目あり、製造・輸入業者は安全認証機関に申請をし、製品試験と工場審査を踏まえて認証書(認証番号)を発給してもらったうえで販売が可能となる。安全性確認が必要な品目は、ベビーカーやおもちゃをはじめ16品目あり、製造・輸入業者は安全認証機関に申請をし、製品試験と書類検討を踏まえて、申告確認書(申告番号)の発給を経て、販売が可能となる。最後に危険性が低い、供給者適合性確認で可能な品目の例としては、子供用メガネフレーム・サングラスや子供用家具など14品目あり、製造・輸入業者は自社もしくは第三者による製品試験を経て販売をすれば良い。

出所: 子供用製品の安全性に関する特別法施行令を編集


作成
ジェトロ・ソウル事務所
レポートの利用についての注意・免責事項
本レポートは、日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所が株式会社グローバルリサーチに作成委託し、2023年11月に入手した情報に基づき作成したものです。掲載した情報は作成委託先の判断によるものですが、一般的な情報・解釈がこのとおりであることを保証するものではありません。本レポートはあくまでも参考情報の提供を目的としており、提供した情報の正確性、完全性、目的適合性、最新性及び有用性の確認は、読者の責任と判断で行うものとし、ジェトロおよび株式会社グローバルリサーチは一切の責任を負いません。これは、たとえジェトロおよび株式会社グローバルリサーチが係る損害の可能性を知らされていても同様とします。 

アンケートにご協力ください

ジェトロでは、皆様の海外ビジネス展開のご参考とするべく、各国のニーズ・トレンド情報を収集しています。今後の参考のため、以下のアンケートへご協力頂けましたら幸いです。

お問い合わせ

本レポートに関するお問い合わせは以下のフォームよりお願いします。
担当:海外展開支援部戦略企画課(個別支援班)