海外発トレンドレポート

B2Bプラットフォームの活用とコロナ禍での調達活動(3) コロナ禍における海外調達業務と海外製品へのニーズ変化(中国・北京発)

2023年2月14日

新型コロナの調達業務への影響

海外調達ニーズおよび実績のある機械部品と化粧品業界各4社へのヒアリング結果によると、対象先の企業のほとんどが、すでに海外のサプライヤーと安定的な関係を構築しているため、新型コロナ禍でも調達面であまり大きな影響を受けておらず、調達方法や決済条件などの面でも大きな変化はなかったことが明らかになった。一方で、ロックダウン等による国際物流の停滞で、納品の遅延が目立つこととなり、調達頻度および調達量には変化が見られている。

機械部品を調達する企業では、部品の納品が遅れ、生産に大きな影響を及ぼし、製品の納期の延期を余儀なくされた。化粧品調達企業では、調達品の納品が遅れ、人気商品の在庫が不足した結果、業績にも悪影響を及ぼした。

こうした状況は新型コロナ規制の解除により、徐々に正常化していくと見込まれるが、今回ヒアリングを行った2022年12月時点では、企業の多くが調達頻度や1回のロットを増やしたり、あるいはこれまで受注後に調達していた物を事前にストックしておく方法に転換するなどの対策を採っている。また、ヒアリング先企業の中には、日本国内(大阪)に事務所を設置し調達活動を強化することでマイナスの影響を抑えていると回答した企業もあった。

海外製品に対するニーズの変化

機械部品業界

今回の機械部品関連企業4社へのヒアリングによると、各社とも今後、海外製品に対する需要は減少する見通しと回答している。その主な理由は以下のとおり。

コスト:

原材料価格や物流コストの上昇に伴い、機械部品や電子部品など海外製品の価格上昇が続いている。その結果、調達コストが大幅に上昇し、利幅を圧迫するようになってきている。今後はコストパフォーマンスを考慮し、中国国産品へ切り替えることも検討している。

納期:

中国政府は2022年12月に「ゼロコロナ」政策を緩和したが、国際物流に関しては依然として納期が不安定で、海外製品の調達リスクおよび難易度が高まっている。生産への悪影響を考慮し、部品等の性能を落としてでも、より安定した供給と短納期の中国国産品に切り替える選択をした中国企業も増えている。

中国製代替品の登場:

中国国産品の技術および品質の向上に伴い、独占的な技術を要する製品を除き、よりコストパフォーマンスの高い中国国産品に切り替える企業が増えている。

化粧品業界

今回の化粧品関連企業4社へのヒアリングによると、新型コロナが海外製品の需要に与える影響は限定的で、「ゼロコロナ」政策で短期的には販売および調達量が減ったが、基本的にはコロナ前の水準に回復しつつあるという。それよりも影響が大きいのは社会的なトレンドの変化で、中国で「下沈市場」と呼ばれる地方都市の市場勃興のほか、「国潮」と呼ばれる愛国トレンド、 「成分党」と呼ばれる化粧品の成分にこだわる消費者グループの台頭などが、海外製品の売上に大きな影響を及ぼしていると主張する。

下沈市場の拡大:

中国で「一線・二線都市」と呼ばれる大都市では消費力が高く、海外ブランドを好む傾向がある。しかし市場はほぼ飽和状態となっており、競争も激化し、市場シェアの獲得は困難を極めている。一方で、「三線・四線・五線都市」と呼ばれる地方都市は人口が多く、巨大な潜在市場となっているが、中国国産ブランドのほうが優れたコストパフォーマンスであるため多くの支持を集めている。

国潮トレンド:

中国では近年、「国潮」と呼ばれる愛国トレンドが広がっており、化粧品業界においても中国国産ブランドや製品が人気を集めている。海外ブランドの優位性は以前ほど顕著ではなく、中国消費者のニーズに寄り添った中国国産ブランドが、新しいコンセプトやデザイン等で人気となっている。

成分党:

コスメやスキンケアの成分や効果、化粧品の製造技術に注目する「成分党」と呼ばれる中国消費者が増えつつある。多くの中国国産ブランドがこうしたトレンドに着目するなか、「WINONA(薇諾娜)」や「QuadHA(夸迪)」など成分を前面にアピールする国産ブランドが人気となっている。一部の欧米ブランドも最新の製品をリリースしたり、日系ブランドも「素肌美」や「天然」といったコンセプトを打ち出して対抗するなど、中国消費者のニーズに応えようと努めている。

機械部品・化粧品業界共に、中国現地メーカー製品の品質向上により競争は厳しさを増しており、物価上昇なども相まってコストや価格に対する要求も強まっているのが現状で、いかに付加価値を高めた製品を投入できるかが海外メーカーにもより強く求められるようになって来ている。


作成
ジェトロ・北京事務所
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本レポートは、日本貿易振興機構(ジェトロ)北京事務所がキャストグローバルコンサルティング(株) に作成委託し、2023年2月に入手した情報に基づき作成したものです。掲載した情報は作成委託先の判断によるものですが、一般的な情報・解釈がこのとおりであることを保証するものではありません。本レポートはあくまでも参考情報の提供を目的としており、提供した情報の正確性、完全性、目的適合性、最新性及び有用性の確認は、読者の責任と判断で行うものとし、ジェトロおよびキャストグローバルコンサルティング(株) は一切の責任を負いません。これは、たとえジェトロおよびキャストグローバルコンサルティング(株) が係る損害の可能性を知らされていても同様とします。

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