海外発トレンドレポート

ベトナムにおけるベビー用品市場調査
(ベトナム・ホーチミン発)

2023年12月20日

1.サマリー

ベトナムのベビー用品市場は、経済成長と共に拡大を続けている。ユーロモニターによるとベビー&ママ用品市場規模は2021年約50兆1,000億ドン(1円=160.32ドン、約3,125億円)、2021年~2025年までのCAGR(年間平均成長率)は、約7.3%と予測されている。

従来は、中小規模小売店での販売がほとんどであったが、大都市圏を中心に多くのチェーンストアが積極的な出店を行い、モダントレード比率は約20%に達している。今後も伸びる可能性が高く、異業種から参入する企業も出てきている。

ベトナム国産ブランドは大手外資系企業のベトナム国内生産品や、ベトナムでも有数の企業が多く、全体的には国産ブランドのシェアが高くなっているが、安心安全のイメージからか日本からの輸入製品も根強い人気がある。

前述のとおり大都市圏を中心にチェーンストア化が進んでいるカテゴリーでもあり、日本製品を購入できるようなアッパーミドル層をいかに取り込むことができるかが鍵になる。

2.市場規模・成長予測

2023年11月13日付市場調査会社Vietdataの記事※1によると、統計総局が発表した2019年時点でのベトナムの子供の数は2,470万人と総人口の25.75%を占める。また、出産適齢期(15~49歳)の女性は約2,420万人で、毎年約150万人の子どもが出生している。経済成長に伴い消費も増え続けており、ユーロモニターによるとベトナムのベビー&ママ用品市場(離乳食・子供向け製品・子供服含む)は2021年には、約50兆1,000億ドン(約3,125億円)に達し、2021年~2025年までの5年間のCAGR(年間平均成長率)は約7.3%と予測されている。

この中で、いわゆるモダントレードの比率は20%であり、残りの80%はトラディショナルトレード(中小規模小売店)が占める。しかし、今後は大都市圏を中心にさらにモダントレードが伸びる可能性が高いと考えられ、AVA KIDS(携帯電話販売大手のモバイルワールドが経営)等、異業種から参入する企業も出てきている状況である。

モダントレードの代表的なチェーンは以下の通りである。

  1. Con Cung(コンクン)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
    全国に約700店舗を展開するチェーンストアで、売上・店舗数ともにNo.1企業。
    2025年までに小型店2,000店舗、大型店200~300店舗を出店、2023年の売上目標10億USD、2025年には20億USD(市場シェア30%)、その内、オンライン販売比率30%にすることを目標としている。
  2. Bibo Mart(ビボマート)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
    全国に125店舗を展開するチェーンストアで、Combi、Chicco、Fisher-price、Farlin、Hipp、DrBrownなど世界的に有名なブランドの製品を販売しており、新型コロナ前までは同社がベビー用品チェーンNo.1の売上であった。
  3. Kids Plaza(キッズプラザ)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
    2009年に設立、全国に157店舗を展開するチェーンストアで、10,000SKUを超える多種多様なベビー&ママ用品を展開している。

3.国内生産、輸入状況

乳児用粉ミルク

2022年5月23日付商工省傘下の新聞Cong Thuong※2に、ニールセンIQが調査した、2021年度の粉ミルクメーカー市場シェアが掲載されている。それによると、図表1に※印で示した国産メーカーTOP4社の合計は42.8%で、中でもビナミルクは22.3%を占めABBOTTを抑え1位となっている。

図表1.ベトナムの粉ミルク市場シェア(2021年)

各社のシェアは第1位のビナミルク22.3%を筆頭にABBOTT20.60%、Vita Dairy8.10%、Nutifood7.2%、Mead Jonhson6.8%、ネスレ6.5%、FCV5.2%、その他23.3%。

出所:Cong Thuong

また、その他に含まれるが、明治、森永乳業、グリコ等の日本メーカーの製品も安心安全のイメージから高い人気を誇り、多くのチェーンストアや中小規模小売店でも販売されている。

紙おむつ

ベトナムの紙おむつ市場は、「Huggies」というブランド名で展開しているキンバリークラーク、「パンパース」のP&G、「Bobby」というブランド名で展開しているDianaの外資系3社が大きなシェアを占めているといわれているが、いずれも国産品および輸入品を取り扱う。

そのうち、Dianaはもともと1997年に設立されたローカル企業で、おむつのBobbyと、生理用品のDianaというブランドの製品を展開しておりそれぞれ業界2位と認知度の高い企業だったが、2011年にユニ・チャームがタイの子会社経由で株式の95%を取得した。ユニ・チャームの2019年の統合レポートによると、紙おむつ市場シェアの約51%を占めている。

4.主要メーカー/ブランド(日本企業の競合となり得る企業/ブランド)と価格帯

乳児用粉ミルク

メーカー名:ビナミルク
商品名
:Optimum Gold 2 容量:800g 生産国:ベトナム 対象:6ヵ月~1歳
販売価格
:369,000ドン
商品名
:Yoko Gold 1 容量:850g 生産国:ベトナム 対象:0~1歳
販売価格
:449,000ドン
商品名
:Colos Gold 1 容量:800g 生産国:ベトナム 対象:0~1歳
販売価格
:449,000ドン
メーカー名:ABBOTT
商品名
:Grow 1 容量:900g 生産国:アイルランド 対象:0~6ヵ月
販売価格
:359,000ドン
商品名
:Grow 2 容量:900g 生産国:アイルランド 対象:6ヵ月~1歳
販売価格
:339,000ドン
メーカー名:森永乳業
商品名
:はぐくみ 容量:850g 生産国:日本 対象:0~6ヵ月
販売価格
:539,000ドン
商品名
:チルミル 容量:850g 生産国:日本 対象:6~36ヵ月
販売価格
:475,000ドン
メーカー名:明治
商品名
:Infant Formula 容量:800g 生産国:日本 対象:0~12ヵ月
販売価格
:549,000ドン
商品名
:Growing Up 容量:800g 生産国:日本 対象:12~36ヵ月
販売価格
:475,000ドン

紙おむつ

メーカー名:ユニ・チャーム・Diana
商品名
:BOBBY(パンツタイプ)M 容量:76枚 生産国:ベトナム 対象:6~10kg
販売価格
:319,000ドン
商品名
:BOBBY(パンツタイプ)L 容量:68枚 生産国:ベトナム 対象:9~13kg
販売価格
:319,000ドン
商品名
:BOBBY(パンツタイプ)XL 容量:62枚 生産国:ベトナム 対象:12~17kg
販売価格
:319,000ドン
メーカー名:花王
商品名
:メリーズ(パンツタイプ)M 容量:58枚 生産国:日本 対象:6~11kg
販売価格
:385,000ドン
商品名
:メリーズ(パンツタイプ)L 容量:54枚 生産国:日本 対象:9~14kg
販売価格
:385,000ドン
商品名
:メリーズ(パンツタイプ)XL 容量:44枚 生産国:日本 対象:12~20kg
販売価格
:385,000ドン

乳児用粉ミルク、紙おむつとも、国産製品は日本製品よりも割安で販売されているが、安心安全のイメージの強い日本製品も人気がある。

5.売れ筋、最新トレンド

ベトナム国産品も大手外資系企業のベトナム国内生産品や、ベトナムでも有数の企業が多いため、全体的には国産ブランドのシェアが高くなっているが、安心安全のイメージからか日本製品も根強い人気がある。

前述したように、大都市圏を中心にチェーンストア化が進んでいるカテゴリーでもあり、日本製品を購入できるようなアッパーミドル層をいかに取り込むことができるかが鍵になる。

6.ターゲットとなり得る購買者/ユーザー層(性別、年齢、所得、居住地等)とその購買行動

日本製品のターゲットとなりうるユーザー層としては、大都市圏に居住するアッパーミドル~富裕層クラスの収入を持つ層が中心である。現在・今後の子育て世代である大都市圏のZ・Y世代は、外国文化や製品を求める傾向にあるほか、インターネットで日常的に商品を購入しているため、ウェブマーケティングをうまく運用することで、日本製品の持つ安心・安全・こだわり等に理解を得られる可能性があると思われる。

7.主な流通ルート(輸入/国内生産からエンドユーザーまで)

ベトナム国内で流通しているベビー用品は、主に、「輸入品(ディストリビューターが取り扱う)」、「国内生産品(メーカー)」に分かれる。販売チャネルとしては、「MT(モダントレード)」、「TT(トラディショナルトレード)」があり、MTは、コンビニエンスストア・スーパーマーケット、ベビー用品チェーン等のチェーンストアを指し、TTは、個人経営の雑貨屋、食料品店、ベビー用品の中小規模販売業者を指す。商流としては、「輸入品」「国内生産品」とも、一次卸(ディストリビューターやメーカーが兼ねる事もある。)を経由して流れており、ケースバイケースで、二次卸を経由する事もある。
  • 大都市圏のTTやMTはディストリビューターやメーカーが直接販売しているケースも多い。
  • 大都市圏以外の地域にあるTTは、二次代理店が入っている事が多い。
  • ディストリビューターの本社はホーチミン市かハノイ市にあることが多い。
  • 北部・南部両方に強い輸入卸は多くは無く、本社地域にセールスが偏る会社が多い。
  • ディストリビューターとのやり取りは英語がほとんどであり、日本語を話す企業は少ない。

8.主な輸入/卸売/小売業者

ディストリビューター

会社名:
CÔNG TY TNHH SẢN XUẤT THƯƠNG MẠI DỊCH VỤ LÊ MÂY(レマイ生産&貿易&サービス)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
概要:
チュチュベビー、はくばく、森永等のディストリビューターを行っている企業で、丸亀製麺やココ壱番屋をベトナムで展開するロータスフードのグループ会社。
会社名:
CÔNG TY TNHH DƯỢC PHẨM HOÀNG DƯƠNG(ホアンズオン)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
概要:
雪印メグミルクの粉ミルクや、健康補助食品のグーンアップのディストリビューターとして全国の販売店向けに卸売販売を行う企業

9.関連規制、規格・認証等

粉ミルク

粉ミルクを輸入する際、企業は輸入する粉ミルクの種類を明確に分類する必要があり、多くの食品安全法の施行を規制する法令15/2018/ND-CP によると、下記2種類に分類される。

  1. 生後36ヵ月までの乳児用粉ミルク
    輸入時に申告が必要であり、政令15/2018/ND-CPの第 13 条によれば、自己開示手続きの受領証明書が付与された製品は、食品安全性検査および動物検疫検査が免除される。
  2. 生後36ヵ月以上の幼児用の粉ミルク
    生後36ヵ月以上の幼児用およびその他の種類のミルクについては、政令15/2018/ND-CPの規定に従い、企業は自己開示手続き、食品安全性検査、動物検疫を実施する必要がある。

10.政府の奨励策や現地での輸入・流通時に適用されるメリット(FTA/EPAや補助制度等)

乳幼児用粉ミルクのHSコードは、1901.10.20に含まれ、日越EPA(ベトナム経済連携協定)の特定原産地証明書フォームVJを取得する事により、関税率を0%にする事ができる。

同商品の関税率

HS1901.10.20
通常関税:15% WTO加盟国:7% 日越EPA(ベトナム経済連携協定):0%

11.中小企業に参入のチャンスがあると考えられる製品例、参入時のアドバイス、留意点

紙おむつ、粉ミルクなどの製品は既に世界的大手企業の製品が様々な販売店で売られている状況であり、それらの知名度の高さから、新規参入はなかなか難しいと考えられる。

しかしながら、従来中小規模小売店がメインであった市場が、大都市圏を中心にチェーンストア化され、大型店化している状況から、乳幼児用の栄養補助食品やベビー服、カトラリーや玩具等はまだ需要があると思われ、安心安全のイメージのある日本製品の入り込む余地は十分にあると考えられる。

ただ、日本製品であればなんでも売れるというわけではなく、認知度の無い製品の拡販は難しいため、SNS広告等を利用し、ブランドの位置づけや日本や他の海外諸国での商品展開例や子育てのお役立ち情報などを発信することで、商品やブランド認知度を高める必要があると思われる。



作成
ジェトロ・ホーチミン事務所
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本レポートは、日本貿易振興機構(ジェトロ)ホーチミン事務所が委託先MAI INTERNATIONAL ASSOCIATES JOINT STOCK COMPANYに作成委託し、2023年12月に入手した情報に基づき作成したものです。掲載した情報は作成委託先の判断によるものですが、一般的な情報・解釈がこのとおりであることを保証するものではありません。本レポートはあくまでも参考情報の提供を目的としており、提供した情報の正確性、完全性、目的適合性、最新性及び有用性の確認は、読者の責任と判断で行うものとし、ジェトロおよびMAI INTERNATIONAL ASSOCIATES JOINT STOCK COMPANYは一切の責任を負いません。これは、たとえジェトロおよびMAI INTERNATIONAL ASSOCIATES JOINT STOCK COMPANYが係る損害の可能性を知らされていても同様とします。

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