海外発トレンドレポート

アニメ・映画等のIP商品、消費の主役はZ世代
(中国・上海発)

2023年2月3日

市場概況及び関連統計

市場概況

中国のIP商品化市場全体をみると、プラスの面では、近年、スマートフォン等の普及により、アニメをはじめとするコンテンツ市場が大きな成長を遂げた。特に海外の人気アニメ、映画等の作品が中国でも成功し、ファンの間で商品化への期待が日々高まっている。ディズニーやワーナーといった米国の巨大IPライセンス企業は、すでに長い時間をかけて中国市場に浸透した。更に、2017年に中国国家文化部から公布された「国家“十三五”時期文化発展改革規划綱要」でアニメや芸術の商品化市場育成が明確に宣言されたことを背景に、コンテンツの商品化は、IPとそれを商品化する業界同士の連携を促進するビジネスモデルとして、今後も関心を集め広く受け入れられていくと予想される。そのような背景下、商品化業界に人気アニメ作等を送り出している日本のIPライセンス権利会社も、近年、積極的に中国に進出して、中国市場からかなりの収益を獲得している。

一方、マイナスの面では、2020年以降、新型コロナ流行の影響で、オフラインイベントの中止・延期が頻発し、市場全体の先行きに不透明感を増している。肌感覚として、最近、販売費をカットする企業も増えている。その影響で、IPを活用した商品化を積極的に検討する企業が若干減少する傾向にある。また、後述するが、IP商品化の代表であるブラインドボックスの問題点も指摘されている。

関連統計

中国でのIP商品化における主力の玩具市場規模(ブラインドボックス、フィギュア等)は、2020年に229億元(1元=約16円、当時)を記録し、2015年と比べて約4倍に拡大した。2022年には478億元まで成長する見通しである。

中国の玩具市場規模の推移(2017~2023年)

中国におけるIPを活用した玩具の市場規模は、2015年の63億元から2020年の229億元へと毎年増加している。2022年は478億元に達する見通し。

出所:華経産業研究「2022年中国潮玩行業現状分析」により作成

国別にみると、ディズニーやマーベルなど、世界的に人気の高いキャラクターを有する米国が首位(32%)を占め、近年勢いを増している中国(第2位、29%)と日本(第3位、9%)がこれに続いている。

中国商品化権利者の国別割合(2019年度)

2019年度の中国におけるIP商品のIP権利者の国別割合を見ると、米国が最大で32%、次いで中国が29%、日本9%、EU8%、英国7%、韓国5%、その他10%となっている。

出所:中国玩具和嬰童用品協会「中国品牌授権行業発展白皮書」より作成

国産IPの商品化が拡大している理由について、現在、中国において消費を支えている「Z世代」(おおよそ1995年~2009年生まれの世代)が、人気IPの周辺商品に対して出費を惜しまないためだと言われている。

更に、中国企業側も、米国や日本の成功経験を参考にし、より市場ニーズに合わせた商品開発で成功したと考えられる。近年、日本のIPライセンス経験豊富な企業やプロフェッショナルが、中国現地メーカーと共同開発するケースが増えており、成功した事例も多い。例えば、2022年9月に中国レジャー施設運営の海昌海洋公園控股が、日本の人気IP「ONE PIECE(ワンピース)」に関するライセンス契約を東映アニメーションと締結し、来園客の増加につながった事例が挙げられる。

消費者/ユーザーの動向

消費者動向について、前述した消費の主役であるZ世代が、アニメ等のサブカルチャーから強い影響を受けており、キャラクターグッズなどへの関心も高いうえに、一人当たり月間可処分所得が全国平均の約1.5倍であるという現状から、「動機」と一定程度の「経済力」を有する重要なターゲット層であることに注目したい。下図は中国Z世代トレンド関連商品の購入頻度の統計である。

ちなみに、Z世代は消費を通じて同じ趣味の友達を探し、友人とのコミュニケーションや、趣味・好みの共有、人間関係を維持するために、微信(WeChat)などのSNS多用することが特徴である。

Z世代によるトレンド関連商品の購入頻度(2020年度)

どのように作成すべきか

出所:Iresearch「 Z世代の化粧品・スキンケア関連の消費動向」により作成

留意すべき規制

アニメ等のコンテンツとは異なり、商品自体が表現物となることケースはまれであるため、商品化のためのIPを特別に規制する法令は存在しない。但し、個々の商品は、品質、パッケージ・ラベルの表記等について、製品品質法をはじめとする関連法令、国家基準に則る必要がある。また、商品の広告について広告法等の法令を遵守することに留意しなければならない。

さらに、近年、問題となっているのは、品質不良、虚偽宣伝、食物浪費等の顕在化である。特にブラインドボックス(「盲盒」、中身の見えない箱にフィギュアが入っている玩具)は、消費者がグッズを目当てに、目的とする商品が手に入るまで購入するケースが多発し、転売まで行われるようになった。一部の地域においては、ブラインドボックスの単価や販売対象等を制限する法令4も発布されるなど、不適切な販売に対する規制が強化されている。

市場参入のアドバイス

中国商品化市場参入での成功は、当該IPに関連するコンテンツに直結している。コンテンツの人気が高いほど、関連商品の売れ行きが良いと言われる。但し、アニメ、映画、ゲーム等のコンテンツは、基本的に政府当局による検閲を受ける必要があるため、検閲を通らない場合は配信されることはなく、ファン層が広がらないので、商品化をしても成功は難しいと言われる。従って、アニメや映画等の売れ行き、ユーザーからの受け入れ度合いを考慮して、IPライセンス授権をすることを薦める。また、取引においても、中国の商習慣や、取引条件などに留意する必要がある。

具体的には以下の通りである。

  1. アニメ、映画、ゲーム等の進出状況を常に留意すること
  2. 授権範囲(商品ジャンル、地域等)を予め決めておくこと
  3. 契約までの商談時間をなるべく短縮すること
  4. 資金回収のスキームを検討し明確にすること

これまで、ウルトラマンやポケモンなど日本のIP商品化が中国で成功した事例は数多く存在する。今後もZ世代が消費の主役になると予想されるため、IP商品化は中国市場において様々な可能性があるだろう。ただ、IP作品をいかにして中国に浸透させるかは、商品化のみならず、アニメ、映画、ゲーム等のコンテンツと合わせて、総合的に企画する必要があると考えられる。


作成
ジェトロ・上海事務所
執筆
上海擁智商務諮詢有限公司(IP FORWARDグループ) 張 雋
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本レポートは、日本貿易振興機構(ジェトロ)上海事務所が上海擁智商務諮詢有限公司に作成委託し、2022年10月に入手した情報に基づき作成したものです。掲載した情報は作成委託先の判断によるものですが、一般的な情報・解釈がこのとおりであることを保証するものではありません。本レポートはあくまでも参考情報の提供を目的としており、提供した情報の正確性、完全性、目的適合性、最新性及び有用性の確認は、読者の責任と判断で行うものとし、ジェトロおよび上海擁智商務諮詢有限公司は一切の責任を負いません。これは、たとえジェトロおよび上海擁智商務諮詢有限公司が係る損害の可能性を知らされていても同様とします。

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