海外発トレンドレポート

B2Bプラットフォームの活用とコロナ禍での調達活動(1) 中国B2B電子商取引サービスの事例紹介(中国・北京発)

2023年2月14日

はじめに

中国では厳格なゼロコロナ政策により、いち早くコロナの影響を排除し経済回復が軌道に乗ったように見えたが、海外との往来は大幅に制限された状態が続くこととなった。更には感染力の強い変異株の出現により、特に2021年の年末以降は相次ぐロックダウンや国内の移動制限が行われ、展示会等のイベントも相次いで中止や延期となり、企業活動にも相当の影響が生じる状況となった。

こうした状況の中で活用が期待されるものの一つが、B2Bサイトなどを通じた電子商取引調達活動・販路拡大である。本レポートでは、中国におけるB2B電子商取引サービスの事例、また機械部品と化粧品分野のバイヤーからのヒアリングを通じ、コロナ禍における調達活動の変化とB2B電子商取引サービスの利用度合い、海外製品に対するニーズの変化について4編に分けて取り上げたい。

中国B2B電子商取引の類型

B2B電子商取引には、主に垂直(専門)型、総合型、自社型の3つのモデルがある。

「垂直型」は、工業、製造業、ガラス業界など特定の業界に特化。会員も目的意識が高く、情報の集中度は高い。なかには専門家によるアドバイザリーサービスを提供するプラットフォームもある。

「総合型」は、様々な業界をカバーし、会員数も多いため、新たな調達ニーズの開拓に適している。欠点は、情報が過多となり分類精度に欠ける可能性があること等があげられる。

「自社型」は、自社ネットワーク網で顧客情報等を管理できるため、よりニーズに合致したサービスの提供が期待できるが、ネット上の露出が限られ、顧客の獲得は自社で別途行う必要がある。

中国におけるB2B電子商取引の拡大

2020年以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下、新型コロナ)の影響で、リアルでの展示会やトレードフェアなどは深刻な打撃を被った。多くの企業が広告・宣伝活動をオンラインに移行し、「非接触」の形で、川下の調達ニーズに対応するようになった。中国の越境B2Bプラットフォーム「中国製造網」のデータによると、2020年1月から8月におけるサイト上のトラフィックおよび問い合わせ件数は、前年同期比でそれぞれ38%増および43%増と伸びた模様である。

新型コロナの感染拡大で、ライブ動画配信、クラウド展示会などの新業態が広く普及した。ヒトの往来も制限され、従来型の取引形態や方法に頼ることができなくなったなか、デジタル化が急速に進んだ。

近年、中国国内のB2B電子商取引市場は成長傾向を保っている。2021年の市場規模は前年比11.3%増加し今後も成長が続くと予想されており、2022年には市場規模が33兆元(1元=約19.6円)に達すると見込まれている。

また、中国の越境B2B電子商取引市場も2021年の市場規模は5兆7千億元で前年比26.7%伸びた。2022年には7兆4千億元、2025年には13兆9千億元に達すると見込まれている。越境での電子商取引全体のうち、B2Bが全体の7割以上を占め、うち輸入と輸出は約3:7の割合となっている。

  1. 2018〜22年 中国B2B電子商取引市場規模

    2018年22.5兆元 成長率9.8%、2019年25.9兆元 成長率15.3%、2020年26.9兆円成長率3.7%、2021年30兆元成長率11.3%、2022年推計値33兆元成長率10.2%。

  2. 2018〜22年 中国越境B2B電子商取引市場規模

    2018年2.9兆元成長率20.8%、2019年3.7兆元成長率27.6%、2020年4.5兆元成長率21.6%、2021年26.7%成長率26.7%、2022年推計値7.4兆元成長率29.8%。

データ出所:共研網、iResearch

B2B電子商取引の発展経緯

中国におけるB2B電子商取引の発展状況は、1999年~2003年の模索期、2004年~2014年の黎明期、2015年から現在までの成長期に分けられると考えられる。

「模索期」に誕生したサービスは主にウェブサイトを通じたサービスで、プラットフォーム上で企業紹介や売り手・買い手情報を掲載するなど情報交換が中心で、収入源は会費や広告料がメインであった。

「黎明期」になると、様々なアプリも登場し、人手またはシステムによるマッチングにより売り手・買い手双方を結びつけ、取引に繋げるサービスが相次いで誕生した。これらサービスの収入源は取引のコミッションがメインとなる。

「成長期」には、中国政府の「インターネット+(プラス)」政策により、多くの垂直型プラットフォームが登場した。ビッグデータとクラウドコンピューティングをベースとし、サプライチェーンの川上と川下を結びつけ、輸送・倉庫、金融(ローン)などのサービスを提供。オンラインでのワンストップ取引の実現を目指すこととなった。

B2Bプラットフォームの具体例

以下、中国における代表的なB2B電子商取引サービスの事例につき紹介する。

越境総合型

1999年設立のアリババグループが最初に手掛けた事業で、累計200以上の国・地域を対象にし、アクティブ企業ユーザー数は2,600万社にのぼる世界最大規模のB2B越境ECプラットフォーム

1996年設立。国際版と国内版に分かれ、調達ニーズのある国内外の企業に、マッチングサービスを提供。2020年末時点の登録会員数は1,820万社を超えており、2020年通年で220カ国・地域からアクセスがあった。機械、金属部品、工業設備、電子部品などの工業製品が中心だが、日用百貨やアパレルなども扱っている。

展示会などを手掛ける香港系「環球資源(Global Sources)」社傘下。サイトの他、アプリ、展示会、ビジネスマッチング、貿易関連誌およびメディア運営、ライブ動画配信なども展開し、登録企業数は世界で1,000 万社を超え、ユーザーには世界トップ100リテール企業のうち97社が含まれる。

2004年設立。B2B越境取引を主体としたECプラットフォームで、中小企業の世界市場進出をサポート。登録サプライヤー企業は累計230万社、登録バイヤー数も3,640万社を超える。世界223カ国・地域を対象に、充実した物流網を備え、10ケ所を超える海外倉庫がある。71カ国・地域の貨幣で決済でき、北米、中南米、ヨーロッパなどにも事務所を設置。

国内総合型

アリババ傘下の1688は、1999年に運営を開始。中小企業向けの中国国内取引ECプラットフォームで、原材料、工業製品、アパレル・アクセサリー、家庭用品、雑貨など16のジャンルがあり、原材料の調達から生産・加工、販売用商品の卸売など幅広くカバーしている。2015年5月には越境でのB2B取引分野にも参入。

1992年に運営を開始し、比較的早くからB2Bサービスを提供したポータルサイト。2004年に名称を「慧聡網」に変更、2014年に香港株式市場に上場。機械工業、建築材料、金属部品、化学工業、建設機械、電子など63の業界を網羅し、累計登録ユーザー数は3,000万人を超える。1日平均10万件以上の商品調達情報をもとに、サプライヤーとバイヤーをマッチングしている。

中国検索エンジン大手の百度(バイドゥ)が運営する企業向け調達・販売のワンストップ型プラットフォームで、2018年に運営開始。百度検索とも連携し、調達関連情報の検索ニーズに対応。AI(人工知能)などを駆使し、中小企業の調達・卸売チャネル開拓や原材料確保などに関するソリューションを提供している。

2006年設立のオンラインB2B調達検索エンジン。1,800万社の有料会員を有し、検索エンジン最適化(SEO)、製品レコメンド、広告データ分析、店舗運営(製品販売、商機調査、動画配信)などのサービスを提供。

垂直(専門)型

2000年に運営開始。上海鋼聯傘下のプラットフォーム。鉄鋼企業向けに価格や業界動向などのコンサルティングや情報提供のほか、鋼材の販売も行っている。

2002年運営開始。100超の業界を網羅し、登録会員数は約280万8,500社を数える。冶金、石炭、電力、機械、医薬品、化学などの業界で豊富なリソースを備えている。塗料「涂多多」(toodudu.com)、衛生用品「衛多多」(wdoodoo.com)、ガラス「玻多多」(boododo.com)、製紙「紙多多」(zdoodoo.com)、化学肥料「肥多多」(feidoodoo.com)、食糧・油脂「糧油多多」(lydodo.com)、ICチップ「芯多多」(xdoodoo.com)、医療「医械多多」(yidoodoo.com)など、数多くの垂直(専門)型B2Bプラットフォームを運営している。

2010年に運営を開始した中小企業向けIC部品専門のB2Bプラットフォーム。本部は広東省・深センにあり、香港、上海、北京、武漢、成都、南京、杭州、西安などのほか、シンガポール、イスラエル、日本にも事務所を設置している。2014年7月に香港で上場。

運営元の「一呼百応」は2005年設立。中国でも早期からB2Bビジネス向け検索エンジン開発に取り組み、傘下の「一呼百応工業品直売網」は、電子、電器、包装、印刷、計器、メーター、化学工業、ゴム・プラスチック、建材、金属、工具、機械、部品、半製品、原材料など幅広く取り扱っている。現在700万社超のメーカーが登録し、年間取引額は600億元超。

日本企業である株式会社ミスミが、2003年6月に中国で運営を開始した工業製品のワンストップ式調達プラットフォーム。FA自動化、工具/MRO消耗品、プレス/プラスチック金型、電気・電子機器などの高品質部品が中心で、年間アクティブ顧客は6万社を超える。58の業界で1,000社のサプライヤーによる1,000万品目の商品を扱う。同社グループでは中国、日本を含め15カ国にてECサービスを展開。

2013年に運営を開始した中国最大規模の化学品専門ECプラットフォーム。無料で利用できる化合物データベースで、化学品の名称やCASコード、構造式などで検索が可能。MSDSデータベース、合成経路、化学物質の製造方法および用途、NMRスペクトル、物理的・化学的性質、化学物質の安全性情報、川上・川下製品、化学物質のHS通関データ情報などの情報が得られ、検索した化学品名やCASコード、構造式をもとにサプライヤーやメーカーを探すことができる。

1998年設立。2014年から電子商取引業務をスタートさせ、顧客にワンストップ式の工業用品調達・管理サービスを提供。取扱製品には補助材料、消耗品、一般機器、予備部品などの工業用品が含まれる。現在32の生産ライン、1,500万以上のSKUを有し、4万社以上の製造業顧客と長期的な提携関係を築いている。 また中国全土に35ケ所の本倉庫と70ケ所のサービスセンター倉庫を配置。

2012年に運営を開始した化粧品業界専門のB2B情報サービスプラットフォーム。顧客企業数は8,000社以上。サイトでは買い手・売り手、製品、OEM、ODM、業界などに関する各種情報が閲覧できる。


作成
ジェトロ・北京事務所
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本レポートは、日本貿易振興機構(ジェトロ)北京事務所がキャストグローバルコンサルティング(株) に作成委託し、2023年2月に入手した情報に基づき作成したものです。掲載した情報は作成委託先の判断によるものですが、一般的な情報・解釈がこのとおりであることを保証するものではありません。本レポートはあくまでも参考情報の提供を目的としており、提供した情報の正確性、完全性、目的適合性、最新性及び有用性の確認は、読者の責任と判断で行うものとし、ジェトロおよびキャストグローバルコンサルティング(株) は一切の責任を負いません。これは、たとえジェトロおよびキャストグローバルコンサルティング(株) が係る損害の可能性を知らされていても同様とします。

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