海外発トレンドレポート

B2Bプラットフォームの活用とコロナ禍での調達活動(2) コロナ禍における中国調達活動におけるB2B活用の実態(中国・北京発)

2023年2月14日

新型コロナのオンライン調達業務への影響

iResearch社の「中国工業品B2B業界研究報告」によると、工業製品バイヤーの7割近くが、「新規サプライヤーの開拓」「新規サプライヤーに対する評価」「発注」「再注文」などの際に、オンラインプラットフォームを利用している。また、工業製品バイヤーの94%が、オンライン調達について新型コロナ前と比べて「より効率的」「同程度に効率的」と回答している。これは、新型コロナが流行した初期(2020年初頭)よりも、40%増えている。コロナによる都市封鎖(ロックダウン)のほか、工業製品B2Bプラットフォームのマッチング技術向上に伴い、企業がB2Bプラットフォームを利用する傾向は今後もさらに高まると予想されている。

  1. 中国企業のオンライン調達市場規模

    2018年6048億元、2019年7352億元 成長率21.6%、2020年8750億円成長率16.6、2021年10464億元成長率22.1%、2022年推計値12617億元成長率20.6%、2023年推計値15010億元成長率19.0%。

  2. 新型コロナ前後におけるオンライン調達額および頻度の変化

    調達頻度が減った6.3%、調達金額が減った8.8%。調達頻度が増えた40.5%、調達金額が増えた41.8%。調達頻度が変化なし53.2%、調達金額が変化なし49.4%。

データ出所:iResearch「2021年中国企業調達EC市場研究報告」

また、企業調達におけるオンライン調達の市場規模も年々増加しており、コロナ禍においてオンライン調達は引き続き増加傾向にあるとの報告もある。

海外調達先探しの実態

ここで、より具体的な状況を探るため、機械部品と化粧品業界から、海外での調達需要および実績のある企業それぞれ各4社に対してヒアリングを実施した。前述の様な調査結果がある一方で、ヒアリング結果からは重要部品や主力製品に関しては、多くの企業がB2Bプラットフォームを利用せず、海外メーカーと直に連絡して取引している実態があることが明らかになった。

海外メーカーと直に連絡・取引する理由

価格と品質が安心:

今回のヒアリング対象企業のほとんどが、海外メーカーと直接やり取りする理由として、価格変動が少なく、ニセモノを心配する必要がなく、品質が保証されていることを挙げている。特に一定の事業規模を有する企業では、入札なども実施するが、基本、既存の固定サプライヤーから直接調達しているケースが多かった。

中小零細メインの出展企業の見極めが大事:

第三者プラットフォームは中小企業メインで、オンラインB2Bプラットフォーム、特に総合型B2Bプラットフォームはサプライヤー、バイヤーともに中小零細企業が多い。日用品業界を例にとると、B2Bプラットフォーム上では「海外メーカー」と謳っていても実際は中国企業だったりするケースもあり、調達の際の見極めが大事となってくる。

調達候補先とのやり取りに時間と手間がかかる:

B2Bプラットフォーム上では、ユーザーの目を引くために虚偽の価格が提示されていることも多い。調達する際に、複数の企業にそれぞれ問い合わせしなければ、実際の価格を知ることができない。ヒアリング回答者の経験上、こうした価格交渉は手間取るうえ、価格面で明らかなメリットも存在しない。工業製品の場合、調達目的や製品、型番号、メーカーなど明確な仕様が分かれば、メーカーに直接アクセスするほうが効率が良い。第三者プラットフォームでは、複数のディストリビューターや代理店も存在し、見積もりや最低注文ロット数、納期などを比較検討する必要があるため、余分に手間と時間が取られてしまう。

各種費用上乗せで価格面でのメリット少ない:

複数のヒアリング回答者が指摘した点として、B2Bプラットフォームはメーカーや代理店の取引額からコミッションを得ることで運営されている。1688(アリババ)を例にとると、業界や取扱商品によって差があるが、取引額の2〜5%をコミッションとして徴収される。出店企業はさらに毎年出店料を支払う必要があるため、これらのコストが販売価格に上乗せされている。このため、B2Bプラットフォーム上で大量に調達したとしても、価格面で大きなメリットが生まれにくい。

一方、急な需要やサンプルの購入、あまり重要ではない部品や消耗品などの調達には、B2Bプラットフォームを使っているケースも見られた。

B2Bプラットフォームを利用する理由

宣伝目的:

B2Bプラットフォームを利用する企業の多くは、調達よりもむしろ販売先の開拓を目的としている。オンライン上での取引は小ロットがメインのため、宣伝やプロモーションに重点を置いている。今回のヒアリング先企業の多くが、B2Bプラットフォーム上で調達や販売取引が成立しても、長期的な取引になる場合、B2Bプラットフォームを回避して直接取引に変更するケースが多いと回答している。

急な需要への対応:

ヒアリング先企業の多くは、通常、海外メーカーと直にやり取りしているが、サプライチェーンに問題が発生し、製品や部品などの供給が滞ったり、急な需要が発生した場合に、B2Bプラットフォームを利用することもあるという。

サンプルの調達:

化粧品業界では、新たに代理販売するブランドを探す際などに、B2Bプラットフォームでサンプルを調達し、製品の販売状況や価格、納期などを確認。実際の使用感を試してから、交渉を進めるか否かを決定している。工業製品の場合も、サンプル作成段階で少量の部品が必要となった際などに、B2Bプラットフォームを利用することがある。

重要でない部品や消耗品の調達:

ヒアリングによると、重要でない部品や消耗品は、B2Bプラットフォームで調達することもあるという。例えば生産設備で使用する部品や、化粧品のプロモーションで使う包装材料などはその一例。

本ヒアリング結果からは、主要な取引については直接取引が主だが、サンプルや急に一時的な調達を行う際などにB2Bプラットフォームを利用する例もあるとの結果となった。サンプル調達や一時的な調達から継続的な取引に繋がる可能性もあることを考慮すると、取引先探しのツールとしてB2Bプラットフォームが機能している事例もあると言えるであろう。


作成
ジェトロ・北京事務所
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本レポートは、日本貿易振興機構(ジェトロ)北京事務所がキャストグローバルコンサルティング(株) に作成委託し、2023年2月に入手した情報に基づき作成したものです。掲載した情報は作成委託先の判断によるものですが、一般的な情報・解釈がこのとおりであることを保証するものではありません。本レポートはあくまでも参考情報の提供を目的としており、提供した情報の正確性、完全性、目的適合性、最新性及び有用性の確認は、読者の責任と判断で行うものとし、ジェトロおよびキャストグローバルコンサルティング(株) は一切の責任を負いません。これは、たとえジェトロおよびキャストグローバルコンサルティング(株) が係る損害の可能性を知らされていても同様とします。

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