海外発トレンドレポート

アラブ首長国連邦におけるコンテンツビジネス
(ドバイ発)

2024年2月28日

1.コンテンツ市場概況

アラブ首長国連邦(UAE)におけるメディア、エンターテイメント、ゲームおよびその関連商品・イベントといったコンテンツ市場が近年大きな成長を見せている。UAE経済省が2022年3月に発表した資料によると、中東地域のメディア&エンターテイメント産業は、2020年時点で約300億ドルの市場規模であったところ、2026年には約470億ドルに達することが予想されており、この間の年平均成長率は7.4%と見込まれている。中でもUAEは同地域の成長を牽引する存在であり、UAEのエンターテイメント産業は2021年から2028年にかけて年平均成長率9%の伸びが予測されている。※1

また、ゲーム市場については、2022年3月のUAE経済省のレポートによると、UAEのゲーム市場規模は世界35位であり、2021年時点で人口1千万人のうち、73%が何かしらのゲームを行っており、41%がゲームに対して支出を行っているという。※2

2.UAE国内のコンテンツビジネスの状況

(1)イベント

A)Middle East Film & Comic Con(MEFCC)

MEFCCは、中東で最大のポップカルチャーのイベントである。MEFCCは2022年より、首都アブダビで開催されており、2023年の入場者数は35,000人であった。2024年は2月9〜11日に開催された。期間内には、ポップカルチャーを代表する著名人とのサイン会、撮影会、コスプレコンテスト、ゲームアリーナでのeスポーツ競技大会などイベントが盛り沢山であった。※3

  1. 来場者の様子

  2. ファンとの撮影

  3. フィギュア等の展示販売

  1. 声優との撮影・サイン会は長蛇の列(有料)

  2. 日本文化の紹介(現地の企業が主催)

(写真:筆者撮影)

「Japan Anime Street Booth」会場では沢山の日本アニメファンを魅了した。場内動画(ジェトロ撮影)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

B)Dubai International Content Market(DICM)

DICMはコンテンツビジネスの総合見本市であり、2023年11月は6回目の開催となった。日本を含む30カ国から出展があり、商談なども行われ、日本からはテレビ朝日、テレビ東京が参加した。※4

C)eスポーツ大会

UAEでは、eスポーツカフェが増加しており、中には最新の機器を揃え、店舗の内装を高級化し、富裕層地区へと進出する企業も現れている。今やゲームは社交場となり、あらゆる階層のゲーマーを魅了していると言われ、賞金獲得を目指すゲーマーも増えている。また、ドバイ警察は同警の建物の一部(Officers Club)を eスポーツのイベント会場として提供、デジタルリテラシーとセキュリティを促進し、オンラインの安全性についての意識を高める役割も担っている。また、中東各国からの競技者のうち、優勝者はドバイ警察を代表して、中国で行われる国際競技大会に参加している。※5

(2)関連店舗

本レポートの執筆にあたり、UAE国内の関連店舗の訪問や関係者へのインタビューを行った。以下、その一例を記す。

A)True Gamers

ゲームカフェ。eスポーツ関連で現在7店舗展開中であり、今後、さらに4店舗をドバイ内で展開する予定。高帯域幅のインターネットアクセスを備え、ハイスペックのゲームコンピューターを提供。ゲーミングコンピューターには、「CSGO」、「Pub-G」、「League of Legends」、「Fortnite」、「DOTA 2」など、多数の人気ゲームがインストールされている。 ゲーマーが競い合う、eスポーツトーナメントやコンピューターゲームトーナメントも主催。ゲーマーのレベルによってコーチングも行っている。店内には飲食物を運ぶ、ウェイターロボットも導入している。店内の様子はサイトを参照。(True Gamers | Esports Gaming Cafes from Mars外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

B)OTAKU ME

UAE および 湾岸諸国(GCC) 最大のプラモデルホビーショップ。 「タミヤ」や「バンダイ」など日系ブランドの販売代理店。「ガンダム」、「鬼滅の刃」、「ワンピース」など、ホビー用の組み立てキット、スケールモデル、ホビー用塗料、艶出し、工具、消耗品などを扱っている。店舗内には組み立てたミニカー用のレーストラック(写真参照)や組み立て方を教え、車体やプラモデルにペイントを施し、アクセサリーを付け加えるなどの作業を行う施設もある。客層は家族連れなど、7歳児から大人まで幅広い。「ガンダム」は特にUAE人に人気がある。「ワンピース」、「鬼滅の刃」などは若い層に人気がある。飛行機、ミニカーも人気があり、特にミニ4WDが好評で毎週日曜日に室内サーキットでレースを行なっている。また、レース大会も開催しており、優勝者は日本でのタミヤ主催のレースにも参加しているとのこと。商品の種類、値段についてはサイトを参照。(Otaku ME | Your #1 Hobby destination in the Middle East!外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

  1. 店舗入り口(Times Square Dubai)

  2. 店内の様子

  3. 組み立て作業室

  4. ミニカー用サーキット

(写真:筆者撮影)

C)GEEKAY

GEEKAYは大手ゲーム小売業者であり、UAEを始め、クウェート、オマーン、バーレーン、カタール、サウジアラビアに25店舗を展開している。ビデオゲーム、ゲームアクセサリー、最新のゲームコンソール・ハードウェアーやフィギュアを扱う。 「バンダイ」、「コトブキヤ」、「SIDE SHOW」等のフィギュア、「ATLAS」、「Warner Bros. Games」、「505 Games」ゲーム等その他多数の商品ブランドを販売。 店内には中東でも人気がある最新の「Play Station」や「Nintendo」のゲーム機器やソフトが多数販売されている他、コレクターが多い、米国や日本のアニメアクションフィギュア商品、また、比較的安価な「Funko」や「キューポスケット」のフィギュアもドバイ在住者を中心にプレゼント用に購入されていると言う。値段、種類についてはサイトを参照。(Geekay Online Store - Game On!外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

  1. 店舗入り口(Dubai Mall)

  2. ショーケース(アクションフィギュアを陳列)

  1. 「キューポスケット」

  2. 「ワンピース」のコーナー

  3. アニメのアパレル 商品

(写真:筆者撮影)

D)Kinokuniya UAE

東京に本社を置く紀伊國屋書店は、海外展開をしており、UAEにはドバイと首都のアブダビの高級モール内に店舗を構えている。ドバイでは「ドバイモール」に約3600平方メートル、アブダビの「The Galleria Al Maryah Island」には約2500平方メートルという大型店舗を展開、百万冊を超える英語、アラビア語、日本語、フランス語で書かれた書籍、ゲーム、収集用商品(Collectibles)、玩具、文具等を販売している。最近の傾向としては、日本のマンガが注目されており、層が広いという。店内では、英語に訳されている「鬼滅の刃」やアラビア語に訳されている「キャプテン翼」、また、中東発のコンテンツのマンガなども販売されている。日本のアニメはネットでも見られるので、配信されている時にそのアニメに集中して問い合わせが来るが、店舗に並ぶまでにはタイムラグが起きることもしばしばある。文具・玩具ではここ3〜4年で「ジブリ」などのキャラクター商品が伸びている。日本の文具は使い易く高品質の定評があり、他の店にはない日本の商品が手に入るという理由でヨーロッパ系のUAEを含むGCCの居住者や観光客が購入しているようである。

  1. 店舗入り口(ドバイモール)

  2. 玩具(シルバニアファミリー)

  1. マンガ-英訳「鬼滅の刃」

  2. アラビア語訳「キャプテン翼」

  3. 収集用フィギュア各種

(写真:筆者撮影)

3.今後UAEへの進出を検討される企業へのアドバイス

アニメ等のテレビコンテンツやゲームコンテンツまた、アニメやゲームの関連のグッズ販売において、対象となる取引先はテレビ局、出版社、リテールを展開する企業などが考えられる。手段としては、展示会などで自社のコンテンツをアピールすることが肝心となる。展示会への出店は、エンドユーザーとなる来場者への格好の宣伝となると考えられる。また、アラビア語を話す圏内(MENA)の人口を合わせると約4.9億人(2022年)※6と市場は大きく、前述のようにその半数が若者層である。彼らにはアラビア語という共通言語があり、ネットで繋がっている。圏内のトレンドセッターとされるUAEで発信される最新の情報はアラビア語圏内に即座に共有されることが予想される。

UAE ではメディア、クリエイティブ関連に特化したフリーゾーンが存在しており、また、近年、100%外資での会社設立が可能となっている。UAE内に拠点を構えるメリットは、中東、北アフリカ圏内に強い大手メディア等とのネットワークが構築できることである。

UAEで会社を設立する場合は、何をしたいのか(日本のコンテンツの種類、流通手段など)を明確にし、フリーゾーン、またはUAE国内のどちらが最適なのか、何ができて、何ができないのかを関連フリーゾーンやドバイ経済開発庁にまずはメールで尋ねることが重要なポイントとなる。

関連フリーゾーンは、地場や国際的なメディア(BBC、CNN等)の拠点となっており、映画、出版、音楽、アニメーション、ゲーム、TV, ラジオ、携帯アプリなどのメディア、エンターテイメント産業に特化されたものである。例としては以下が挙げられる。

ドバイ:Dubai Media City外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
アブダビ:Twofour 54外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

物品(キャラクターグッズ等)の輸出入に関わるメインランド(フリーゾーン以外)での会社設立の場合は以下を参照。
Dubai Economic Development外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

また、商品を現地企業に販売委託する場合は、企業に関する情報を収集し、契約内容を十分に把握、交渉することが重要である。GCC全域の販売権を望まれる可能性などもあり、代理店となる企業の力量、評判なども確認する必要がある。


作成
ジェトロ・ドバイ事務所
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本レポートは、日本貿易振興機構(ジェトロ)ドバイ事務所が委託先GEN Events LLCに作成委託し、2024年2月に入手した情報に基づき作成したものです。掲載した情報は作成委託先の判断によるものですが、一般的な情報・解釈がこのとおりであることを保証するものではありません。本レポートはあくまでも参考情報の提供を目的としており、提供した情報の正確性、完全性、目的適合性、最新性及び有用性の確認は、読者の責任と判断で行うものとし、ジェトロおよびGEN Events LLCは一切の責任を負いません。これは、たとえジェトロおよびGEN Events LLCが係る損害の可能性を知らされていても同様とします。

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