海外発トレンドレポート

英国における建設用接着剤市場調査
(ロンドン発)

2024年2月26日

1.サマリー

建設用接着剤の大半は住宅部門で消費されている。英国における住宅市場は堅調であるため、建設用接着剤の需要見通しは明るい。バイオマスを使用した建設用接着剤を含め、製造時の環境負荷が低い商品及び新たな使途を提案するような商品に市場機会があると考えられる。大手のDIY及び建設資材の販売に特化した大手企業が海外製品を直接的に輸入している。

2.市場規模・成長見通し

建設用接着剤の2022-2023年の市場規模は6億1,130万ポンド(約1,161億4,700万円、1ポンド=約190円)であった※1。2027-2028年までの5年間で、年平均 1%増加し 、6億4,110万ポンドになると予測されている※2

建設用接着剤の大半は住宅部門で使用されている※3。カーペット、フローリング、壁紙の貼り付けなど、住宅建設の様々な用途に使用されている※4。パンデミック後の建設市場の回復は、直接的に建設用接着剤の需要増加につながっている。

3.国内生産/輸入状況

市場における輸入製品の比率は2017-2018年の38.8%から2022-2023年の44.3%に増えている※5。2022-2023年の輸入額は 2億9,600万ポンドであった※6。輸入比率の増加により、市場価格に下落圧力がかかっている※7。最近の原材料、そしてエネルギーの価格上昇のため、国内メーカーの利益率は下がっている※8

表1 接着用品の輸入額(ポンド)
国/地域 2020 2021 2022 2023 総計
ドイツ 72,364,195 78,112,185 90,289,040 91,622,336 332,387,756
米国 22,530,080 21,390,706 26,928,150 29,120,120 99,969,056
フランス 12,382,374 11,571,320 30,995,265 30,454,807 85,403,766
オランダ 15,029,932 14,902,317 26,984,065 27,682,138 84,598,452
中国 13,391,608 17,820,426 21,902,811 21,603,703 74,718,548
ベルギー 15,654,794 12,650,066 17,272,936 18,044,645 63,622,441
イタリア 10,508,574 9,576,623 15,809,234 15,382,796 51,277,227
ポーランド 5,420,081 5,788,929 8,644,990 9,698,632 29,552,632
スウェーデン 6,033,898 5,509,282 9,354,198 7,033,785 27,931,163
スイス 452,369 7,874,846 10,416,972 9,038,001 27,782,188
アイルランド 5,200,890 6,062,962 6,984,282 8,790,001 27,038,135
スペイン 1,616,922 2,474,555 5,396,075 9,639,706 19,127,258
ポルトガル 2,968,734 4,444,592 3,981,366 3,619,475 15,014,167
トルコ 2,425,227 3,527,420 3,113,035 5,106,445 14,172,127
韓国 2,396,829 2,448,538 3,539,682 2,203,094 10,588,143
ブルガリア 1,759,185 1,585,038 2,509,985 2,581,317 8,435,525
カナダ 1,584,776 1,547,800 2,646,822 2,081,155 7,860,553
日本 566,726 1,729,485 1,683,182 2,203,455 6,182,848
ハンガリー 1,182,249 711,449 1,932,741 1,984,969 5,811,408
南アフリカ 1,428,091 1,327,281 1,076,028 1,106,210 4,937,610
台湾 1,083,743 1,370,824 1,313,309 914,839 4,682,715
チェコ 1,183,877 759,281 1,940,071 655,809 4,539,038
デンマーク 1,666,888 1,910,187 462,336 435,783 4,475,194
オーストリア 736,213 809,361 308,296 288,168 2,142,038
マレーシア 532,596 423,016 432,579 428,327 1,816,518
香港 389,337 468,621 318,048 273,580 1,449,586
シンガポール 218,959 200,561 358,260 233,079 1,010,859
インド 139,544 145,853 241,204 343,777 870,378
ブラジル 30,804 317,251 143,640 206,123 697,818
ベトナム 150,873 138,227 206,791 142,504 638,395
モロッコ 80,045 321,359 401,404
イスラエル 1,289 71,430 320,722 6,152 399,593
スロベニア 6,564 5,582 297,063 86,669 395,878
タイ 191,609 77,253 65,584 31,724 366,170
オーストラリア 30,139 74,455 118,028 92,062 314,684
リトアニア 54,321 29,044 120,629 68,335 272,329
キプロス 3 164 85,248 175,278 260,693
ルーマニア 452 1,316 129,132 106,429 237,329
アラブ首長国連邦 50,578 82,420 13,304 70,482 216,784
ルクセンブルグ 55,243 55,879 74,228 18,683 204,033
インドネシア 37,083 24,932 96,290 158,305
ギリシャ 77,330 192 5,810 71,248 154,580
レバノン 7,734 28,182 24,519 85,137 145,572
マルタ 12,075 1,059 7,386 103,557 124,077
フィンランド 27,686 6,549 43,496 26,080 103,811
エクアドル 11,775 11,187 56,643 79,605
スロバキア 1,905 11,706 29,501 26,698 69,810
ニュージーランド 7,595 9,136 19,792 20,205 56,728
ウクライナ 3,236 52,261 55,497
ノルウェー 13,378 2,053 6,561 30,239 52,231
マリ 22,884 22,884
フィリピン 922 17,130 3,152 21,204
ラトビア 39 11,078 5,413 16,530
オマーン 15,933 15,933
メキシコ 5,432 1,265 4,546 11,243
アイスランド 9,347 9,347
ロシア 5,740 961 2,567 9,268
クロアチア 6,139 9 3,013 9,161
エストニア 3,954 2,755 6,709
ベラルーシ 2,964 3,704 6,668
パキスタン 1,165 3,697 4,862
アルジェリア 3,606 3,606
イラン 2,977 2,977
エリトリア 2,234 2,234
パラグアイ 1,965 1,965
ウルグアイ 965 965
エジプト 878 878
総計 201,633,715 218,131,258 298,787,249 304,396,867 1,022,949,089

4.主要メーカー/ブランド(競合情報)と価格帯

建設用接着剤を国内で生産しているメーカーには以下がある※9

Scott bader※10、 Bondloc※11、Permabond※12、Hodgson※13、Bond-it※14、Scigrip※15、Unika※16、Chemique※17、Apollo※18、MRI polytech※19

3M、Henkel、Arkema Group、Dupon、Sikeなどの世界的なメーカーが製品を英国市場に輸出している。

価格は商品の種類によって様々である。

5.売れ筋、最新トレンド

合成接着剤が、接着剤・粘着剤市場の売上の大半を占めている※20。アクリル系接着剤は、その卓越した接着特性、優れた耐衝撃性と耐水性により、主に建設分野で好まれている※21

建設用接着剤の用途は増えており、新たな用途に適した製品が要求されている※22。たとえば建設現場でのものの接合方法が溶接や釘打ちといった伝統的な方法から接着剤による方法へと変化したりしている※23。一方、新たな環境規制に対応するために、製品の改良を余儀なくされる場合もある※24。多くのメーカーは製造に伴う廃棄物やエネルギー消費量を減らした、環境に配慮した製品を開発しようとしている※25

6.日本製品のターゲットとなる購買者/ユーザー層と購買行動

コストパフォーマンスが高く、環境負荷が低い製品であれば、あらゆるタイプの消費者をターゲットとすることができると考えられる。

7.主な流通ルート(輸入/国内生産からエンドユーザーまで)

建設用に使用する接着剤の大半は大手のDIYあるいは大手の建設資材販売事業者によって直接的に最終消費者に販売されている。いずれも基本的に海外メーカーから直接、輸入し国内で販売している。

8.主な輸入/卸売/小売業者

以下を含む様々な業態の企業が接着剤を輸入・販売している。

  • 建設資材を専門に扱う販売業者である STARK Building Materials UK※26、Wickes※27、Travis Perkins※28など。
  • 大手DIYチェーンのB&Q※29、Homebase※30など。
  • 大手スーパーマーケットであるTesco※31、Sainsbury’s※32、Asda※33など。
  • オンライン小売業者のAmazon※34、eBay※35など。

9.関連規制、規格・認証等

関連する規制、規格等には以下が含まれる。

  • UK REACH規制:英国における化学品規則※36
  • 工業標準規格: BS (British Standards)※37、ISO (International Organization for Standardization)※38
  • 建築法、建築規則※39
  • 製品安全規制:多くはEU法に基づいている※40
  • CEマーク、UKCAマーク、UKNIマーク:標準的な安全性と品質基準の認証マーク※41

10.政府の奨励策、活用できるFTAや制度等

政府による住宅を含む、様々なインフラ投資が建設用接着剤の需要を高めている。

11.日本の中小企業にビジネスチャンスがあると考えられる製品例、参入時のアドバイス・留意点等

英国では、5章の最新トレンドの欄でも触れたが、建設用バイオ接着剤といった、持続可能な原材料に由来する建設用接着剤の需要が高まっている。このような環境に配慮した建設用接着剤、そして新たな用途を提案するような建設用接着剤に市場機会があると考えられる。


作成
ジェトロ・ロンドン事務所
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本レポートは、日本貿易振興機構(ジェトロ)ロンドン事務所が委託先London Research International Ltd.に作成委託し、2024年2月に入手した情報に基づき作成したものです。掲載した情報は作成委託先の判断によるものですが、一般的な情報・解釈がこのとおりであることを保証するものではありません。本レポートはあくまでも参考情報の提供を目的としており、提供した情報の正確性、完全性、目的適合性、最新性及び有用性の確認は、読者の責任と判断で行うものとし、ジェトロおよびLondon Research International Ltd.は一切の責任を負いません。これは、たとえジェトロおよびLondon Research International Ltd.が係る損害の可能性を知らされていても同様とします。

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