アフリカでのビジネス事例海運、ロジスティック分野の成長機会をつかむ(モザンビーク)

2024年12月24日

モザンビークで進められている天然ガス開発は、同国の包括的経済成長を促すものとして期待が高まっている。それに付随して、運輸・通信産業は、ガス開発に牽引され成長する分野の1つとして注目が集まる。実際、2021年、同分野において前年の約100倍という海外直接投資(16億7,200万ドル、構成比32.8%)がなされている。モザンビーク中央銀行によると、同年の急激な伸びは、採掘産業関連企業からの需要を受け、物流・ロジスティック部門に民間投資が集まったものとされている。

モザンビークの運輸・ロジスティック部門では、モザンビーク鉄道港湾公社(CFM)が物流インフラの管理・運営において大きな役割を果たしている。運輸・ロジスティック部門の成長機会について、CFMロジスティックスの最高経営責任者(CEO)、エルダー・チャンバル(Helder Chambal)氏に2024年11月18日、話を聞いた。


CFM Logistics_Helder Cambal CEO (同社提供)
質問:
設立の経緯と現在の事業は。
答え:
CFMロジスティックスは、CFMの100%子会社として2023年8月に設立された。CFMは、鉄道や港湾の管理・開発事業を通して、モザンビークの陸・海・空すべての物流に密接にかかわっている。天然ガス開発は、CFMの既存事業のプラスアルファとなる新たなビジネス機会をもたらす。当社はこのビジネス機会を最大化し、天然ガス業界におけるCFMグループとモザンビークの地位向上、および利益や雇用の創出を目的としている。現在の当社の主要事業地はモザンビーク北部で、カーボデルガード州ペンバ港の港湾オペレーションの一部を2024年1月から開始した。2024年7月にはナンプラ州ナカラ港で、同港に入出港する船舶向けの海事サービス〔タグボートによる曳航(えいこう)やエスコートボートによる船舶の誘導〕を開始した。
質問:
事業展開計画と今後の展望は。
答え:
ナカラ港を中心にモザンビーク北部で事業基盤を整え、国内に事業を拡大していく。ナカラ港は大型船舶の入港が可能な深海港であることに加え、モザンビークにとって重要な貿易相手国であるインドに近く、陸路回廊を通してザンビアなどの内陸国とも接続している。2023年に完工した、日本のODAによるナカラ港改修事業(2023年10月26日付ビジネス短信参照)や、モザンビーク政府などによる投資により港湾機能が充実し、立地ポテンシャルを活用できる状況が整っている。また、天然ガス開発の進展により、北部地域においてロジスティックス需要が高まると考えられる。このような状況を背景に、当社はナカラ港において、海事・海運サービスなど、海上で実施するオフショア事業と、港湾関連事業の2つの事業を育成していく計画だ。オフショア事業について、当社は既に同港で海事サービスを提供しているが、沿岸輸送(カボタージュ)(注)の開始に向けて準備を進めている。カボタージュは天然ガス開発からのロジスティック需要を取り込むことを目的としており、ナカラ港と、天然ガスプロジェクトサイトであるカーボデルガード州アフンギ半島、または隣接している商業港のパルマを結ぶ計画だ。港湾関連事業においても、ロジスティック需要を背景に、ナカラ港での荷役サービスや船舶向け給油サービスを計画している。当社は設立から間もないが、これら2つの事業は天然ガス開発と密接に関連するものであり、企業としてのキャパシティビルディングにもつながる。また、天然ガス開発との関係性をベースに、将来的にガスの生産が開始された時の国内割り当て分の流通にも関わっていきたい。
質問:
日系企業への期待、協業候補となる事業領域は。
答え:
当社の事業は天然ガス分野との関わりが強く、日本はモザンビークの北部沖合にあるエリア1から産出された天然ガスを輸入する(2019年6月21日付ビジネス短信参照)。このような天然ガス分野での日系企業との協業は双方に利益をもたらすと考えている。特に日本企業の、オフショアビジネスとエネルギー関連の技術や経験は当社にとって有益だ。また、投資や資金調達におけるファイナンシャルパートナーとしての日系企業との協働にも期待している。当社は国営企業のグループ会社として、モザンビークの様々なローカルリソースを熟知しており、事業パートナーに対しては現地でのビジネス開発における知識やノウハウを提供可能だ。具体的な協業分野は、ロジスティック分野全般、バンカービジネスも含めたエネルギー分野などが挙げられる。特にエネルギー分野においては、2023年にモザンビーク政府は「エネルギー転換戦略」(2023年12月14日付ビジネス短信参照)を発表し、再生可能エネルギーの開発に意欲的だ。当社は所轄の運輸通信省から、同省が管轄する領域における同戦略の実務機関としての役割を与えられた。鉄道・港湾における天然ガスの活用や、電気自動車(EV)産業開発など、幅広い領域での活動が期待されている。

注:
カボタージュは、同一国内における港湾間での沿岸輸送を意味する場合と、同一国内の沿岸輸送を原則、自国船籍のみに限る制度を意味する場合があるが、本記事においては前者の定義を採用している。
執筆者紹介
ジェトロ・マプト事務所
松永 篤(まつなが あつし)
2015年からモザンビークで農業、BOPビジネスなどの事業に携わる。2019年からジェトロ・マプト事務所業務に従事。