欧州最新政治情勢:欧州の行方を見定める注目論点英国総選挙を見通す
「明確性」の保守党と「変化」の労働党

2024年6月28日

英国で7月4日、下院議会の総選挙が行われる。事前の投票意向調査では、現最大野党・労働党が与党・保守党に大きな差をつけており、政権交代が予想されている。6月中旬には両党がマニフェストを公表し、政権獲得後の政策が出そろっている。本稿では、今回の選挙に対する有権者の関心や、マニフェストを中心に両党の主要政策を整理、比較する。

英国民の関心は経済、保健、移民

英国で前回総選挙が行われたのは2019年12月(2019年12月11日付2019年12月13日付ビジネス短信参照)。当時は英国のEU離脱(ブレグジット)が最大の争点で、方向性を明確に示せなかった労働党を、保守党が大差で破り、2019年3月から3度にわたって延期されたブレグジットの実現につながった。

そこから約4年半、新型コロナウイルス感染拡大や、気候変動への関心の高まり、ロシアによるウクライナ侵攻とそれに伴うエネルギー価格の高騰などを経て、状況は変化している。調査会社ユーガブによると、2019年の総選挙直前の有権者の関心事項はブレグジットを筆頭に、保健、環境、経済、犯罪、移民問題が上位だった一方、2024年6月上旬では経済、保健、移民、住宅、環境、防衛・安全保障となっている。内訳をみると、経済、移民の回答割合が大きく増加したが、環境は若干の低下を見せている。保健については前回同様に高い回答割合となっている(図1参照)。

年代によっても、関心項目は異なっている(表参照)。経済、保健はどの世代でも高い回答割合を記録している一方、18歳~49歳の層では住宅、環境が相対的に高い。50歳以上の層でみると、移民、防衛・安全保障、犯罪が相対的に高く、特に65歳以上の層では移民が最も高い回答割合を記録している。

図1:2019年12月以降の有権者の関心事象の推移
2019年の総選挙直前から2024年6月上旬までの、有権者の関心事項についての調査結果。2024年6月上旬では経済、保健、移民、住宅、環境、防衛・安全保障が上位項目。2019年の総選挙直前と比較すると、経済、移民の回答割合が大きく増加した一方、環境は若干低下。保健については前回同様高い回答割合。

注:英国にとって最も重大な課題(最大3つ)を選択させた回答の上位6項目。
出所:ユーガブ

表:年代別の関心事項(上位5項目)
18歳~24歳 25歳~49歳 50歳~64歳 65歳以上
経済(60%) 経済(53%) 経済(53%) 移民(61%)
保健(38%) 保健(50%) 保健(51%) 保健(52%)
住宅(35%) 移民(28%) 移民(51%) 経済(42%)
環境(27%) 住宅(25%) 防衛・安全保障(22%) 防衛・安全保障(34%)
移民、税、教育(18%) 環境(25%) 犯罪(20%) 犯罪(20%)

注:英国にとって最も重大な課題(最大3つ)を選択させた回答。
出所:ユーガブ

保守党支持率は低下、経済指標を背景に予想より早期の選挙へ

次に、保守党をはじめとする政党別の支持率の推移をみていく(図2参照)。前回の総選挙では650議席中365議席を獲得、大勝した保守党だったが、新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウン下での同党による規制違反や、経済の停滞、エネルギー価格高騰などに伴う生活費の高騰への対応、エリザベス・トラス前政権下での混乱などを経て、支持率が低下。リシ・スナク政権が2022年10月に発足、2023年1月には優先事項を発表(2023年1月6日付ビジネス短信参照)したものの、思うような成果を残せず(2024年1月5日付ビジネス短信参照)、支持を回復できていない。

図2:政党別投票意向推移(2020年1月~2024年6月13日)
直近では労働党、リフォームUK、保守党、自由民主党、緑の党の順で回答割合が高い。2020年1月と比較すると保守党は支持率が大きく低下している。

注:地域政党、その他は除く。
出所:ユーガブ

その状況下で、総選挙の実施時期に注目が集まっていた。スナク首相は2024年1月にメディアに対し、2024年下半期に実施することを想定するとコメントし、秋の選挙実施がささやかれていた。しかし、5月22日の夕方、スナク首相は首相官邸で記者会見を開き、7月4日の総選挙実施を発表した。予想よりも早期の実施は驚きを呼んだ(2024年5月23日付ビジネス短信参照)。

スナク首相は7月実施を決定した背景として、経済成長のペースが好調であることや、同日朝の発表でインフレ率が平常時の水準に戻ったことなどを挙げている。報道では、国民保険料の負担減(2024年3月8日付ビジネス短信参照)の効果が出始めることや、ルワンダへの不法移民の移送計画を実行するための法案が可決されたこと(2024年5月2日付ビジネス短信参照)なども背景として報じられた一方、秋まで先延ばしても経済指標の改善が見込めないと判断したとの指摘も見られた。実際、4月のインフレ率は低下したものの、予想を下回る低下となっており、イングランド銀行(中央銀行)が6月に利下げを行うという予測は弱まっていた。

保守党は明確性、労働党は変化がキーワード

保守党、労働党の両党首は総選挙の実施日の決定に先立ち、それぞれ選挙に向けた取り組みを発表していた。

保守党のスナク氏は5月13日、シンクタンクでの演説で、権威主義国家による脅威が世界各地で増す一方、技術進歩による変化の機会や、イノベーションなどが生まれる変革的な時期にあるとコメント。その中で保守党こそが明確な計画と大胆なアイデアを持って安全な未来をもたらすことができるとした。

労働党のキア・スターマー党首は5月16日に演説し、「変化に向けた第一歩」として、取り組みを打ち出した。同党は2023年2月に選挙公約のベースとなる「ミッション」として、経済成長、クリーンエネルギー、国営医療サービス(NHS)、治安強化、機会の平等の5分野について政策の概要を発表。「変化に向けた第一歩」では、これに国境管理を加えた6つについて、以下に取り組むとした。

  • 経済の安定の実現
  • NHSの待機時間の削減
  • 新たな国境警備隊の設置
  • グレート・ブリティッシュ・エナジー(GBE)の設立
  • 反社会的な行動の取り締まり
  • 6,500人の教師の新規採用

5月22日に総選挙の実施が宣言されて以降、各政党による選挙活動は本格化している。6月11日に保守党、6月13日には労働党がそれぞれマニフェストを公表した。主な政策を分野別に次のとおり整理する。

参考:保守党、労働党の主要政策

経済・財政

保守党
公共部門の純債務を削減、純借入の対GDP比を2029年度に3%以下に。
法人税、所得税、VAT(付加価値税)の引き上げは行わない。
2027年4月までに国民保険料の従業員負担分を6%に引き下げ。
次期議会期中に個人事業主向けの国民保険料(クラス4)のメインレートを廃止。
国家年金の支給額と年金受給者の非課税限度額につき、インフレ率、賃金上昇率、2.5%のうち最も高い率で増額。
中小企業支援に向けた10項目の計画を実行。資金アクセスの改善、VAT登録を義務付ける閾(しきい)値の見直し、報告義務の対象削減などを実施。
インフラ投資を継続。大規模案件の承認にかかる期間を短縮。
研究・開発に対する投資額を増額。年220億ポンド(約4兆4,440億円、1ポンド=約202円)に。
自動車、航空、ライフサイエンス、クリーンエネルギー産業への支援を継続。
金融セクターの改革を継続、競争力を維持。
租税回避の取り締まりを強化。次期議会期末までに年間60億ポンドを徴収。
クリエーティブ産業向けの優遇税制の競争力を維持。
労働党
歳入と歳出を均衡させ、債務の対GDP比は予算責任局(OBR)の見通し期間の5年目に低下。OBRの役割も強化、大幅な税制や支出の変更を伴う財政発表を行う場合はOBRの見通しを条件に。
法人税、国民保険料の従業員負担分、所得税、VATの引き上げは行わない。
企業税制にかかるロードマップを公表。
税制における非居住者ステータスを恒久的に廃止。真に短期で滞在する者向けの制度に置き換え。相続税の回避のためのオフショア信託の利用も禁止。
新たな産業戦略を導入。評議会を設置し、自治体や企業、労働組合の代表者を集め、経済成長を促進。
研究機関や専門サービス、先端製造、クリエーティブ産業など、英国が強みを持つ分野を支援。
金融サービスについては、イノベーションや成長を促すような新技術の支援や規制枠組みを確保。
保守党による内燃車の新車販売禁止の導入時期の後ろ倒しを撤回し、2030年に再設定
産業戦略を通じて人工知能(AI)開発やデータセンターの新設を支援。強力なAIを開発する企業に対して規制を導入し、安全な開発と利用を確保。
主要な研究・開発機関に対しては、10年間の長期資金を提供。
雇用制度に関しては、事前に企業、労働者、市民団体などとも協議し、変更を推進。
最低賃金は、生活費の上昇を考慮したものに変更
歳入関税庁(HMRC)を現代化し、租税回避に対応。登録および報告に関する要件を厳格化し、HMRCの権限も強化。新たな技術への投資も行い、HMRC内の能力を構築。

ネットゼロ

保守党
北海における石油・ガス生産に対するライセンス付与のラウンドを実施。
バックアップ電源としてガス火力発電所を新設。
次の議会期において洋上風力の設備容量を3倍増。2つの炭素回収・貯留クラスターを設置。
次期議会開会後100日以内に新型モジュール炉(SMR)2基を承認。原子力発電所の建設にかかる承認期間を半分に。
経済的に不利な地域での製造に投資するエネルギー企業に対し、ボーナスを提供。
新たな環境関連の賦課金の導入は行わず、消費者に対する既存の賦課金についても、2023年に比べて確実に負担を低下。
より効率的な地域レベルの電力市場を導入。
グリッド接続にかかる待機時間を削減。
陸上風力発電所の設置にかかる地域住民の同意を確保。
農地への太陽光発電設備の設置を禁止する一方、適地への設置は容易に。
労働党
ナショナル・ウエルス・ファンドを設置し、公共投資を通じて民間投資を動員。次の議会期で73億ポンドを投資。具体的には、港湾インフラの質の向上とサプライチェーンの構築、ギガファクトリーの新設、鉄鋼業の再建、炭素回収の導入、グリーン水素の製造支援に投資。
2030年までに陸上風力発電を倍増、太陽光発電を3倍増、洋上風力発電を4倍増。炭素回収・貯留、水素、海洋エネルギーに投資するほか、長期的な貯蔵能力も確保。国営企業グレート・ブリティッシュ・エナジーを通じて、次期議会期で83億ポンドを投じ、民間との共同投資や地域の発電プロジェクトを実行。
原子力発電については、既存炉の稼働期間の延長、ヒンクリーポイントCの建設を進行。サイズウェルC、SMRの新設を推進。
既存のガス発電所は戦略的に維持。一方で、北海の段階的かつ責任ある移行を推進。
石油・ガスの採掘ライセンスについては、新規発行はしないものの、既存のライセンスの撤回は行わない。
石油・ガス企業に対して導入されている超過利潤税を次の議会期末まで延長し、税率も現行の35%から38%に引き上げ。
投資控除についても廃止。
産業界と連携し、グリッド接続を推進。
クリーンエネルギー開発事業者に対し、2026年以降雇用ボーナスを提供。
ウオーム・ホームズ計画を通じ、住宅のエネルギー効率を改善。

移民

保守党
移民数が毎年減少するよう、法的な上限を導入。
不法移民をルワンダに移送することで、新たな不法移民を抑制。
他国と連携して難民条約を改正。
技能労働者ビザの最低年収要件および家族ビザの最低所得要件をインフレ率に合わせて増額。
労働党
新たな国境警備隊を設置。
庇護(ひご)システムの秩序を回復。新たにケースワーカーを雇用し、手続きを迅速化、庇護希望者による保護施設利用も終了。
移民制度を改革し、適切な規制を導入。移民政策と人材政策の連動を通じて移民を管理。

NHS

保守党
国営医療サービス(NHS)に対する支出について、インフレ率を上回る率で毎年増額。
2030年までに新たに40カ所の病院を設置。
NHSへの新技術導入に投資、生産性を向上。
労働党
NHSの病気予防能力を強化。後期の診断および治療から地域でのサービス提供にシフトし、AIなどの技術を用いて診断のスピードと精度を向上。
NHSの長期雇用計画を実行し、スタッフを訓練。
NHSでのイノベーション促進、規制承認の迅速化に向けた戦略を検討。

防衛

保守党
2030年までに国防費を対GDP比で2.5%に。
投資を通じて防衛産業の成長を促進、地域経済を支援。
国防費の最低5%を研究・開発費に支出。
労働党
核抑止に明白にコミット。
政権獲得後1年以内に戦略防衛レビューを実施。また、国防費を対GDP比2.5%まで増額。
防衛産業戦略を公表。鉄鋼含めた強靭(きょうじん)なサプライチェーンを構築。

国際関係

保守党
対EU関係:今後行われる通商・協力協定(TCA)の見直しで、英国の主権を脅かすような内容には合意せず。EUから継承した法令のうち半数超を2026年7月までに改廃。
対米関係:通商や安全保障分野での緊密な結びつきに基づき、特別な関係を維持。
対中関係:国家安全保障の保護を強化、パートナー国と協調・連携し、国益に資する場合には関与する一方、人権侵害に関する懸念は引き続き表明。
インド太平洋地域と緊密な関係を維持。
労働党
対EU関係:貿易、投資の関係を改善。ただし、単一市場や関税同盟、移動の自由への回帰は行わない。新たな安全保障協定の締結も志向。
対米関係:不可欠な同盟国で、2国間の特別な関係は安全保障や経済成長にとって重要。
対中関係:長期的かつ戦略的な手法で関係を管理。2国間関係の評価を行い、同国がもたらす機会と課題を理解し、対応するための英国の能力向上。
通商戦略を公表。新たな自由貿易協定の締結に加え、個別のセクターごとの協定の締結も志向。
クリーン電力同盟を創設。エネルギー移行を加速させ、クリーンエネルギーにかかるサプライチェーンを強化。

その他

保守党
適地に160万戸の住宅を建設。42万5,000ポンド以下の住居に対する土地印紙税について、初めて住宅を購入する場合は恒久的に撤廃。新たな住宅購入支援制度も導入。
18歳を対象に国家奉仕義務を導入。
労働党
150万戸の住宅建設に向け、計画制度に関する改革を実施。
私立学校へのVATおよびビジネスレートの免除措置を廃止。

出所:保守党、労働党

保守党と労働党で大きくスタンスが異なるのは、エネルギーを含むネットゼロ政策だ。保守党は、負担が少なく現実的なネットゼロへの移行を進めるとしている一方、労働党は、長期的な消費者負担の削減につながるとして、2030年までの電源の脱炭素化を掲げており、より強力にネットゼロへの移行を進める方針だ。

石油・ガス産業については、保守党は、バックアップ電源としてのガス火力発電の新設、北海の石油・ガス開発への新規ライセンスの付与などを行うとしている。一方、労働党は、既存のガス発電所や石油・ガスの開発ライセンスについては維持するとしつつ、同産業の段階的な移行を進めるとしており、開発についても新規のライセンス付与は行わないとしている。さらに、労働党は、2029年3月まで導入されている石油・ガス企業への超過利潤税を次期議会期末の2029年7月まで延長、税率も35%から38%に引き上げるとともに、投資控除も廃止するとしている。また、内燃車の新車販売禁止目標についても、保守党は2023年9月に2035年へと後ろ倒しを決定した(2023年9月22日付ビジネス短信参照)が、労働党はその決定を覆し、2030年に再設定する方針を表明している。

雇用法に関しても、労働党はより労働者寄りの政策を進める。労働党は保守党政権下の雇用法を時代遅れとして批判、政権獲得後100日以内に法案を議会に提出するとしている。法案の成立に当たっては企業、労働者、市民社会などの意見も取り入れ、実務に落とし込むとしている。同党のマニフェストでは、搾取的なゼロ時間契約(注)の禁止や、契約内容の変更を目的とした解雇・再雇用(fire and rehire)の禁止、育児休暇、疾病手当、不当解雇からの保護といった権利の勤務開始日からの付与などを例として挙げている。また、労働組合に関する法制を改正、組合の活動に対する不要な規制を撤廃するとしている。

対外関係では、労働党はEUとの関係改善に向けて取り組むとしており、単一市場や関税同盟、移動の自由への回帰は行わないとしながらも、貿易や投資に係る障壁削減に取り組むとしている。具体的には、協定締結を通じた衛生植物検疫措置(SPS)の削減や、専門資格の相互承認などが挙げられる。

保守党が重点地域として掲げてきたインド太平洋地域に対しては、労働党のマニフェストの中には「インド太平洋」という言葉は登場せず、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)を通じた貿易や協力関係の深化、インドとの戦略的なパートナーシップ、オーストラリアと米国との安全保障協力枠組み「AUKUS(オーカス)」など、限定的な言及にとどまっている。

調査会社イプソスの調査(6月11日~13日)によると、労働党が掲げる政策によってポジティブな変化が見込めると考える割合は63%と、ネガティブな変化を見込む割合(12%)を大きく上回っている。一方の保守党の政策に対しては、ポジティブな変化を見込むとの回答が44%と労働党を下回る。

政権コミットメントへの不安残る

事前の調査では政権獲得が有力視される労働党だが、不安要素も残る。

支持基盤の労働組合のうち、大手ユナイトが、労働者の権利に関する公約が修正されたことや、具体的な雇用計画のない状態で北海の石油・ガス開発ライセンスの新規発行を禁止したことから、同党のマニフェストを支持しなかったとしている。

不足が指摘される政策もある。労働党は2024年2月、グリーン産業への投資を行う同党の計画「グリーン・プロスペリティー・プラン」について、財政状況などを踏まえ、当初年間180億ポンドとしていた新規投資額について、年間47億ポンドに縮小すると発表。シンクタンク・レゾリューション・ファウンデーションは、同党の野心レベルは、英国の将来へのさらなる投資という次期政権が直面する課題の規模に一致していないと指摘している。

同計画の見直しに関しては、コミットメントへの信頼性の問題も生じた。投資額の縮小に対して、エネルギー関連の業界団体エナジーUKは、問題なのは具体的な金額ではなく発せられるシグナルで、英国の投資可能性を棄損するような政策の転換は市場からの信頼を損なうとの声明を発表した。

産業界からは、経済について長期的な戦略を期待する声もあり、仮に労働党政権が実現した場合でも、同党がマニフェストに掲げる長期的な産業戦略を企業の期待に沿うものにできるか、それを実現できるかがポイントになりそうだ。

これは有権者にとっても同様だろう。ブルームバーグ(5月30日付)では、労働党への支持は「広く浅い」ものであり、1997年の総選挙で政権を獲得したトニー・ブレア元党首の時代と比べると、熱狂があまり感じられないと指摘されている。イプソスが5月31日~6月4日に実施した調査では、労働党の党首としてのスターマー氏のはたらきについて、「満足」との回答は31%だった一方、「不満」は52%となっている。「不満」の割合が73%となったスナク首相と比較すると低い割合だが、スターマー氏への支持も盤石とはいえない。仮に労働党が政権を獲得したとしても、コミットメントを果たすことができない場合、支持率の低下が急速に進むリスクもある。


注:
雇用主が必要とする時間だけ就労し、報酬は就労時間に対してのみ支払われ、週当たりの労働時間が明記されない雇用形態。
執筆者紹介
ジェトロ・ロンドン事務所
山田 恭之(やまだ よしゆき)
2018年、ジェトロ入構。海外調査部海外調査企画課、欧州ロシアCIS課を経て2021年9月から現職。