中国EV・車載電池企業の海外戦略 中国製EVとの戦い方模索するEU
反補助金調査の行方に注目

2023年12月4日

EUでは、新型コロナウィルスの感染が拡大した2020年以降、新車登録台数が減少していたが、2023年は4年ぶりに前年比増になると見込まれている。その原動力の1つは、2020年以降販売台数が右肩上がりに増加している電気自動車(EV、注1)だ。明るい兆しがみえるEU乗用車市場だが、市場の変化は産業構造の変化や新たなプレーヤーの参入をもたらし、時に緊張を生み出す。本稿では、EUのバッテリー式電気自動車(BEV)市場で徐々に存在感を増す中国について、その市場参入状況や、EUと加盟国、欧州自動車部門の反応を紹介する。

EUのBEV販売、2023年は9月までに100万台超え

EUのBEVの新車登録台数(注2)は近年、著しく増加し、2022年に100万台の大台に乗った(2023年9月7日付地域・分析レポート参照)。欧州自動車工業会(ACEA)によると、2023年に入っても好調を維持し、6月にはEU市場で初めてディーゼル車の販売台数を上回った(注3)。また、EUの2023年第1~3四半期(1~9月)のBEV新車登録台数は前年同期比55.2%増の111万2,192台と、既に2022年通年の登録台数(112万3,778台)に迫る勢いだ。新車登録全体に占める割合も年々拡大しており、2023年第1~3四半期のBEVのシェアは14%だった。(図1参照)。

図1:EUの2019~2023年のBEV販売台数
2019年は約28万5千台、1.9%、2020年は約53万9千台、5.4%、2021年は約87万8千台、9.1%、2022年は約112万4千台、12.1%、2023年第1~3四半期(1月~9月)は約111万代2千台、14.0%

注1:マルタを除くEU26カ国。
注2:2023年については第1~3四半期(1~9月)の新車登録台数。
出所:ACEA資料を基にジェトロ作成

EUでEVの普及が加速したのは、複数のEU加盟国が2020年以降、EV購入支援策を拡充したことや、欧州委員会が2021年7月、「乗用車・小型商用車(バン)の二酸化炭素(CO2)排出基準に関する規則」の改正案を提案し、2035年以降は内燃機関搭載車の生産を実質禁止する目標を掲げたことによる(注4)。主要自動車メーカーは2035年を見据えて電動化目標を引き上げており、BEV市場の競争は年々激しくなっている(表参照)。

表:2021年以降に発表された主要メーカー・グループの電動化目標 
メーカー・グループ 目標
フォルクスワーゲン(VW) "2026年までに10のEVモデルを投入。VWの欧州での新車販売台数の70%以上、米国と中国では50%以上を早ければ2030年までにEVとする。欧州では2033年以降、EVのみ生産予定。 
傘下のアウディは2026年以降に投入する新モデルはEVのみとし、2033年以降は新車販売を100%電動化。 同じく傘下のポルシェは2030年までに新車販売の80%以上をEVにする。 "
BMW グループ全体の販売台数に占めるEVの割合を2030年までに50%にする。傘下のMINIとロールス・ロイスは2030年代前半に100%電動化する。  
メルセデス・ベンツ 市場条件が整えば、2030年までに100%電動化。 
ステランティス 2030年までに、欧州では新車販売の100%、米国では50%をBEVとする。また、同年までに75以上のBEVモデルをそろえ、全世界での年間BEV販売台数500万台達成を目指す。 
ルノー 欧州では2030年に新車販売を100%電動化。EV事業を分社化〔社名「アンペア(Ampere)」〕
ボルボ 2025年までに全世界の販売台数の50%をEVにする(残りの50%はハイブリッド車)。 傘下のポールスターはEVのみ販売。
トヨタ 2030年までに30以上のBEVモデルを投入し、全世界で約350万台の販売を目指す。欧州では2025年までにBEVモデル数を合計10まで増やす予定。 
日産 2030年までに欧州では新車販売を100%電動化する。同年までに全世界で19モデルのEVを含む27モデルの電動車を投入する。 
現代 2025年までに全世界でのEV販売台数を56万台に伸ばす。中・長期的には、2040年までに世界のEV市場で8~10%のシェアを獲得することを目標に、2030年以降、欧州、米国、中国でBEVモデルの投入を増やす。 
フォード 欧州に投入するモデルは、2026年半ばまでに全てゼロエミッション車とし、2030年には100%電動化 。

出所:各社の発表を基にジェトロ作成

バリューチェーン全体でEU市場席巻を目指す中国

こうしたEU市場のBEV需要の変化をみつつ、EVバリューチェーン全体で虎視眈々(たんたん)と成長機会をうかがってきたのが中国だ。中国はEUの重要原材料の供給元であるほか、バッテリー分野では寧徳時代新能源科技(CATL)や蜂巣能源科技(SVOLT)などがEUに進出し、ドイツやハンガリーなどでギガファクトリー(大規模工場)事業を展開している(2023年9月7日付地域・分析レポート参照)。また、比亜迪(BYD)など中国の新興メーカーも相次いでEUに進出しており、現地生産を視野に入れる企業も現れている。ACEAによると、中国メーカーのEUのBEV市場でのシェアは台数ベースで、2019年の0.4%から2022年は3.7%と拡大傾向にある。コンサルタント会社の調査では、2025年までに15%まで伸びるとの予測もある。

中国メーカーの強みとして挙げられるのが、欧州の消費者にとってEV購入時のネックの1つとなる価格だ。欧州部品メーカーのフォルヴィアグループのパトリック・コラー最高経営責任者(CEO)は、米国のハイテク技術見本市「CES2023」で欧州メディアの取材に対し、中国メーカーのEV生産コストは欧州メーカーより1台当たり1万ユーロ低いと述べている。自動車市場の調査会社JATOダイナミックスによると、EVの平均販売価格は、中国では2015年以降、約6万7,000ユーロから約3万2,000ユーロまで下がった一方、欧州では約4万9,000ユーロから約5万6,000ユーロに上昇したという。

EU統計局(ユーロスタット)によると、EUのBEVの輸入金額は2017年から2022年にかけて約27倍に増加。米国テスラや欧州メーカーが中国で生産した車両を含むと、中国からの輸入は金額ベースで2021年以降、米国、韓国、英国を抜き、2022年には全体の約54%を占めた(図2参照)。中国からみても、EUは2022年の新エネルギー車(NEV)(注5)の最大輸出地域だった(2023年3月16日付地域・分析レポート参照)。EUの関税率は10%と、米国(27.5%)より低く、完成車の輸出先として有望というわけだ。

図2:EUの2017~2022年のBEV輸入額(総額と主要輸入相手4カ国の輸入額)
輸入総額は、2017年は約5億ユーロ、2018年は約12億ユーロ、2019年は約50億ユーロ、2020年は約76億ユーロ、2021年は約114億ユーロ、2022年は約126億ユーロ。中国からの輸入額は、2017年は約1千万ユーロ、2018年は約2千万ユーロ、2019年は約6千万ユーロ、2020年は約8億ユーロ、2021年は約49億ユーロ、2022年は約69億ユーロ。韓国からの輸入額は、2017年は約2億ユーロ、2018年は約4億ユーロ、2019年は約10億ユーロ、2020年は約17億ユーロ、2021年は約23億ユーロ、2022年は約25億ユーロ。英国からの輸入額は、2017年は約2億ユーロ、2018年は約8億ユーロ、2019年は約8億ユーロ、2020年は約6億ユーロ、2021年は約9億ユーロ、2022年は約13億ユーロ。米国からの輸入額は、2017年は約4千万ユーロ、2018年は約5千万ユーロ、2019年は約30億ユーロ、2020年は約42億ユーロ、2021年は約20億ユーロ、2022年は約4億ユーロ。

注:総額と各国の金額はBEVの新車(CNコード87038010)、中古車(CNコード87038090)の輸入額を合計したもの。CNコードとは、EUの合同関税品目分類表(Combined Nomenclature)に基づく品目コード。
出所:ユーロスタットの統計を基にジェトロ作成

EUの自動車業界は中国をどうみているのか。ACEAのシグリッド・デ・ブリーズ事務局長は2023年8月、「欧州は中国のドラゴンと肩を並べられるか」と題した月例メッセージ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公開。EUでBEVの販売が伸びる要因の1つに、中国製車の輸入急増や中国メーカーの進出があると指摘した。また、中国が高い技術力や輸出力を有し、国外での生産に意欲を持つまでに成長したのは、中国政府の財政面を含めた積極的な支援が功を奏し、EVバリューチェーン全体に早くから投資を行ってきた成果だとした。EU市場でのEV普及はまだ始まったばかりで、中国の躍進はEU市場を根本的に変える可能性があると警戒感を示した。

太陽光パネルを教訓に、中国製BEVの反補助金調査を開始

EUでは、安価な中国製BEVの輸入増加を受け、かつて中国の安価な太陽光パネルの流入によってEUの事業者が辛酸をなめたこと(注6)が思い起こされ始めた。EUが何らかの対抗策を検討しているといううわさが現実になったのは、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が2023年9月13日に行った一般教書演説だ。同委員長は「われわれは、中国の不公正な商慣習が欧州の太陽光発電部門に及ぼした影響を忘れていない」と述べ、欧州企業と多額の補助金を享受する競合企業の間で公正な競争が行われていないと訴えた。「欧州にとって大きな成長の可能性があるクリーン経済にとって非常に重要な」EVについて「莫大(ばくだい)な補助金で人為的に価格を抑え、EU市場を歪曲(わいきょく)している」と中国を批判。中国製BEVに対する相殺関税の賦課を視野に入れた反補助金調査を行うと発表した(2023年9月14日付ビジネス短信参照)。

同調査は2023年10月4日、欧州委の主張や調査の手順などに関する開始通知がEU官報に掲載され正式に開始された(2023年10月6日付ビジネス短信参照)。欧州委は直近の市場動向を分析し、完成車を輸出するBEV生産者が中国政府からさまざまな補助金を享受している十分な証拠が集まったと説明。具体的には、以下のような支援を問題視している。

  1. 資金の直接的な移転や、資金や負債の潜在的な移転:各種補助金や、国有銀行などによる優遇的な条件での融資や債券引き受け、輸出保険の優遇など
  2. 税制優遇措置:法人税の減免、配当税の免除、輸出入にかかる税の還付
  3. 政府による低価格での物品(原材料や部品など)やサービスの提供

調査は以下の手順、スケジュールで行われる(図3参照)。

図3:EUの中国製BEVについての反補助金調査の手順とスケジュール
 EUの中国製BEVについての反補助金調査は、2023年10月4日に開始、最長13カ月間行われる。調査手順は利害関係者が欧州委の質問票に回答し、暫定措置の発動が検討される。発動する場合は2024年7月4日までに発動。最終調査結果の公表後、2024年11月2日までに最終措置(相殺関税賦課措置)の実施または調査の終了についてEU官報に掲載する。

注:調査は域外国からの補助金を受けた輸入品に対する保護に関する規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにより実施。対象事業者の抽出はこの規則の手順に従う。
出所:欧州委資料を基にジェトロ作成

欧州委は2023年6月、EU初の経済安全保障戦略を発表(2023年6月23日付ビジネス短信参照)するなど、戦略的自律を高める取り組みを強化している。今回、欧州委の職権で、通常は産業界など利害関係者の申し立てに基づいて実施される相殺関税措置に向けた調査の実施を決定したのも、イノベーションや付加価値、雇用の観点で、EU経済にとってEVが戦略的に重要なことを考慮したためとしている。

調査の実施を欧州委に強く働きかけていたといわれるフランスでは、エマニュエル・マクロン大統領がかねて欧州の戦略的自律と、中国および米国への対抗策の必要性を訴えていた。2023年5月には、欧州は中国などに対抗し、取り組み方を変えて生産力強化を急ぐ必要があるとして、太陽光パネルの経験を例に挙げ、中国への依存という「過ちを繰り返してはならない」と強調。フランスのEV購入補助金制度について、製造・輸送過程のCO2排出量を考慮する内容に改正する意向を示した(2023年5月17日付ビジネス短信参照)。改正後の制度では、補助金の適用対象車の決定に当たり、実質的に欧州産EVが有利となる(注7)。ただし、フランスのブリュノ・ル・メール経済・財務・産業およびデジタル主権相が2023年7月に中国を訪問した際には、BYDなど中国企業にフランスへの投資を呼び掛けており、補助金制度の変更は中国製車の排除ではなく、EU(あるいはフランス)の産業振興に主眼を置く措置ともいえる。

一方、ドイツは中国の報復措置への警戒感が強く、欧州委の反補助金調査には消極的だったとされる。オラフ・ショルツ首相は2023年9月、「欧州は保護主義であってはならない。むしろ、グローバルな競争を歓迎すべきだ」として、調査に懐疑的な姿勢を示した。また、過去の日本車のドイツ市場参入を例に挙げ、互いの市場に参入し合うことは問題ではないとし、ドイツメーカーが国外事業を展開するように、ドイツ市場もまた他国に開かれていると述べている。

両国の思惑の違いには、ドイツメーカーは中国BEV市場で17%と、フランスメーカーの0.4%を圧倒的に上回るシェアを獲得していることや、前述のとおり、ドイツには中国のバッテリーメーカーのCATLやSVOLTが進出し、ドイツメーカーへのバッテリー供給強化が期待されていることなどが影響している可能性がある。

今回の調査について、米国調査会社ロジウム・グループ(ロジウム)は、中国政府の戦略的産業への支援は融資や資金調達への支援といった定量化が難しい形式を取ることが多く、欧州委が域内産業の損害を立証するに当たっては、補助金の全容の評価が容易ではない可能性を指摘する。また、ロジウムによると、米国テスラをはじめとする中国以外の自動車メーカーも、中国事業に対して中国から国家支援を受けている場合は調査対象となる。中国企業とのEV関連の技術提携を含め、ドイツなどの欧州メーカーは中国で多大な投資を行ってきたが、ロジウムは「欧州委は、欧米メーカーも中国から多額の国家支援を受けている事実について、対応が迫られることになる」と分析している。

他方、中国が生産や原材料供給で圧倒的な世界シェアを有し、同じく政府の多大な支援を受けるバッテリーについてはどうか。ロジウムは、中国に代わる供給源は限られ、中国に対して何らかの措置を取ることで、欧州のバッテリー価格が短期的に高騰する可能性があると指摘する。欧州のEV需要増に呼応し、中国企業が欧州各国で大規模な投資を行い、雇用創出などに貢献している側面もあるとする。こうしたことから、ロジウムは、EUが中国製バッテリーについて何らかの対抗策を取る可能性は短中期的には低いと予測する。

中国政府は当然ながら、今回の調査実施について不満を示している。2023年10月20日には、特定地域・国を対象としたものではないとしながらも、バッテリーの主要原材料である黒鉛品目の一部について、輸出管理を12月1日から実施すると発表した(2023年10月26日付ビジネス短信参照)。

中国、米国に後れ取るEUにいらだつ欧州自動車業界

欧州産業界からは、今回の調査に対し、中国は競合相手と同時に重要市場であるというジレンマや、EUが産業政策の面で中国や米国に後れを取っていることへのいらだちがにじむ声が上がっている。

ACEAのデ・ブリーズ事務局長は、前述の8月の月例メッセージで、中国市場はいまだ閉鎖的な面があるものの、中国市場参入は欧州メーカーに恩恵をもたらしているとして、バランスの取れた対中アプローチが必要だと指摘。また、中国は欧州に比べて安価なエネルギー価格や、世界的にバッテリー生産や重要原材料の供給で優位に立つという強みを持つのに加え、EV購入支援や充電インフラ整備、リサイクル分野なども含めて、包括的な政策を実施してきたと述べた。翻って、中国、米国と比較し、EUのグリーン・ディール産業計画(2023年2月3日付ビジネス短信参照)と関連政策は断片的で一貫性に欠け、米中に十分に対抗できていない上、EUには規制に伴う企業負担の重さや単一市場の細分化といった課題もあると不満をあらわにした。EUの反補助金調査の実施表明後の9月の月例メッセージ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、調査について直接的な表現で評価することはなく、冒頭で「自由で公正な貿易は国際競争力維持の重要な要素の1つ」と述べるにとどめ、後半ではEUによる自動車部門の脱炭素化に向け、バリューチェーン全体に対する支援が必要と訴えた。

ACEAと比べて踏み込んだ発言にみえたのは、欧州自動車部品工業会(CLEPA)のベンヤミン・クリーガー事務局長の論評だ(論評はCLEPAウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。クリーガー事務局長はEUの調査に対する中国側の報復措置への懸念を示すと同時に、EUがBEV以外の他の中国製品についても調査を行う可能性があると一部から分析されていることに触れて(注8)、長期的なEU・中国関係への影響や、EUが対中姿勢の方針とする「デリスキング」(注9)の実現可能性に疑問を呈した。クリーガー事務局長は、EUには、中国に対抗するには欧州企業のグローバル市場での成長に資する政策枠組みが必要と主張。EUでは2024年6月に欧州議会選挙が実施され、2024年10月末に現欧州委の任期が終わることから、新体制が実際に動き出す2024年末ごろまでには、今回の反補助金調査の結果や、EUが中国への相殺措置を発動するかなど詳細が明らかになるだろうと述べた。

欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は2023年11月16日、EU・中国の首脳会談が12月に開かれるのを前に、対中関係について講演した(講演内容は欧州委ウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EUの経済的利益を擁護し、中国への依存を低減しながら対話を継続する姿勢をあらためて示し、今回の反補助金調査にも言及。EUの狙いは公正な競争の確保であり、企業支援策や規制緩和を競う「底辺への競争」ではないと強調した。反補助金調査が与える今後のEU・中国関係や、EU市場のBEVの生産・販売動向への影響が注目される。


注1:
本稿では、電気自動車(EV)について、欧州自動車工業会(ACEA)の統計に合わせて、バッテリー式EV(BEV)とプラグインハイブリット車(PHEV)を対象とする。ハイブリッド式電気自動車(HEV)は含めていない。
注2:
ACEAはデータが入手不可能として、マルタを新車登録台数の統計に含めていない。
注3:
ACEAによると、2023年第1~3四半期(1~9月)の間、BEVの新車登録台数がディーゼル車を上回ったのは6月、8月、9月。いずれの月もガソリン車、HEVに次いで多かった。
注4:
同改正案はEU理事会(閣僚理事会)と欧州議会での審議を経て一部修正が加えられたが、2035年目標は堅持され(2023年3月30日付ビジネス短信参照)、2023年5月に発効した〔規則(EU) 2023/851外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〕。
注5:
中国政府はBEVとPHEV、燃料電池車(FCEV)を新エネルギー車(NEV)として区分する。HEVは含まない。
注6:
EUは2013年、安価な中国製太陽光パネルの輸入増加により域内の太陽光発電部門が打撃を受けたとする同業界団体の申し立てに基づく調査を行い、中国製品に対しアンチダンピングおよび相殺関税措置を発動した。
注7:
改正案は7月に発表、10月に施行された。12月には対象車のリストが公表されるが(2023年9月25日付ビジネス短信参照)、現地報道では、ルノーグループ傘下のダチアなど、中国製EVの多くが対象外となるといわれている。
注8:
ロジウムはBEVに続き、同じく中国が世界シェアを伸ばし続けている風力タービンやヒートポンプがEUの調査の対象となる可能性があると予測している。なお、風力発電については、欧州委は2023年10月、中国を念頭に、域外国との公正な競争環境の構築も目標に入れた「欧州風力発電行動計画」を発表している(2023年10月26日付ビジネス短信参照)。
注9:
欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は2023年3月の講演で、中国と協調関係を維持しながら過度な依存を避ける「デリスキング(リスク軽減)」を目指すという対中姿勢についての方針を示し、6月の欧州理事会(EU首脳会議)でもその方針が確認された(2023年7月4日付ビジネス短信参照)。
執筆者紹介
ジェトロ・ブリュッセル事務所
滝澤 祥子(たきざわ しょうこ)
2016年からジェトロ・ブリュッセル事務所勤務。