中東・アフリカのグリーンビジネスの今オフグリッド地域へ太陽光発電サービス拡大を目指す(エチオピア)
2023年11月8日
エチオピアは人口の約60%、7,000万人以上が未電化地域で生活している。このような中、2016年に創業したスタートアップのグリーン・シーン・エネルギー(Green Scene Energy)は、オフグリッド地域に太陽光発電サービスを展開している。非電化地域で光源として使われている灯油ランプやたいまつの代替品として、太陽光により充電して使用できる各種ランタンを提供するほか、太陽光発電や充電設備の設計、販売、設置も行っている。また、太陽光をエネルギー源とする水のくみあげポンプ(灌漑ポンプ)の普及にも力を入れており、同社によれば、エチオピアの農地の灌漑には20万機以上の灌漑ポンプが必要という。同社は、灌漑ポンプの利用により、農業従事者の所得は3倍に増え、農業用水の使用量を最大80%削減できる、と試算している。さらに、所得の低い地域には「ペイ・アズ・ユー・ゴー」による課金制を導入しているほか、6,000万人の顧客を抱えるエチオテレコムと提携し、利用者にとって使いやすい課金、支払いシステムを確立している。同社の企業概要や今後の見通しについて、レキク・ベケレ最高経営責任者(CEO)に聞いた(取材日:2023年8月16日)。
- 質問:
- 創業の経緯は。
- 答え:
- 私は大学卒業後、太陽光発電関連の会社に入社した。今も太陽光関連の会社は少ないが、当時はもっと少なかった。エチオピアは人口の約60%、7,000万人以上がオフグリッド地域で生活しているといわれている。実際、農村部へ行くと、灯油ランプで生活している光景を目の当たりにする。オフグリッド地域への太陽光発電サービス展開を拡大すべく、2016年に会社設立に至った。
-
- 質問:
- 企業概要と事業内容は。
- 答え:
- 2023年8月現在、本社スタッフ 20人、地域販売代理店 75社以上および、当社製品を販売する小売店 15社を擁している。展開エリアはオロミア州、アムハラ州、南部諸民族州(SNNPR)、シダマ州、南西エチオピア諸民族州(SWEPR)で、ソマリ州とアファール州にも今後、展開予定だ。
- 初めは、ソーラーランタンなどの機器輸入から事業を始めた。現在は、代理店や小売店を通じた製品の販売、サービス提供を行っているほか、マイクロファイナンス機関と提携し、ローンシステムを通じた製品販売も手がけている。展開する商品は、ソーラーランタンなど家庭用の小型製品、コミュニティ用のミニグリッド、灌漑用ソーラーウォーターポンプの3種類。ほぼすべての製品を中国から輸入している。国内で需要はあるものの、外貨不足で外国との取引が難しい、などの問題もあり、現在の商品の輸入数は年間約 1,000~5,000台ほどにとどまる。2 年以内には、自社製品の製造開始も計画している。当社のエチオピア国内での太陽光発電のシェアは10%ほどある。
-
- 質問:
- 同分野における外国企業の進出状況は。
- 答え:
- 把握している限りでは、現在同様の事業に取り組んでいる外国企業はハロー・ソーラー・テクノロジー(ベルギー)やフォセラ・ソーラー・システム(ドイツ)くらいしかなく、少ない。エチオピア企業とのパートナーシップによる外国企業の参入は歓迎だ。
- 質問:
- 課題や今後の展開の見通しは。
- 答え:
- エチオピアにおけるグリーンビジネスの主な課題は、政策、外貨不足、社会不安の3点。政策に関して、エチオピア政府は地場企業を保護すべく、太陽光関連商品の完成品輸入に高い関税をかけている。そのため、製品を効率的かつ安価に普及させるには、パーツで輸入しエチオピア国内で組み立てるなどの対応が必要となる。外貨については、2023年8月11日から輸出者の手元外貨保有率の上限が、それまでの20%から40%へと引き上げられるなど(2023年8月18日付ビジネス短信参照)、貿易関係規制が緩和した例もある。一方、現行の制度では、輸入数量が限られてしまうため、需要をカバーするには不十分だ。社会不安は北部紛争やアムハラ州の非常事態宣言などで、エチオピア全土での事業拡大や展開を制限し、投資を遠ざけてしまう要因となっている。
- 当社としては、農場灌漑用のソーラーウォーターポンプや太陽光発電の国内需要に応えるべく、今後5年間で600万世帯へのサービス展開を目指して取り組んでいる。
- 執筆者紹介
-
ジェトロ・アディスアベバ事務所 リサーチマネージャー
メセレット・アベベ - エチオピア財務省を経て、ABEイニシアチブで来日し、国際大学にて修士号(国際開発)を取得。2019年から現職。