中東・アフリカのグリーンビジネスの今廃棄物を資源に変えるUBQマテリアルズの今後の展望(イスラエル)

2023年9月29日

廃棄物処理は、温室効果ガス(GHG)問題を語る上でも重要なテーマの1つだ。ゴミ自体を減らすことは当然重要だが、どう処理するかも重要だ。現在、日本では一般廃棄物の約8割が焼却処理されており、焼却処理はGHG排出につながる。イスラエルには、この廃棄物処理問題にユニークな技術で対応するスタートアップ、UBQマテリアルズ(UBQ Materials外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、以下UBQ)がある。ジェトロは9月7日、UBQを訪問し、共同創業者兼共同最高経営責任者(CEO)のジャック・ビジオ(Jack Bigio)氏に、同社の技術や今後のビジネス展開について聞いた。


ジャック・ビジオ氏(ジェトロ撮影)
質問:
UBQの概要は。
答え:
UBQは廃棄物を資源として捉え、廃棄物から先端素材を生み出す企業だ。現在のリサイクル業界では、適切な回収を可能にするために分別が重要だが、実際の廃棄物には生ごみなどの有機物や、リサイクルが難しい混合物、プラスチックなどが混在している。UBQが特許を取得しているアップサイクル(創造的再利用)技術は、リサイクルが難しい混合廃棄物を「UBQマテリアル」という、従来のプラスチックに代わる持続可能な素材への変換を実現する。この技術によって、従来はリサイクル不可能と考えられていた混合廃棄物を、石油由来プラスチックの代替となる持続可能なバイオベースの熱可塑性プラスチックに変換することが可能になった。
UBQマテリアルは、マクドナルドのトレーや、メルセデス・ベンツの自動車部品、ペプシコで使用されている出荷用パレットなど、さまざまな用途で既に利用されている。2022年に開催されたイスラエル初のクライメートテック特化型イベント「PLANETech World」(2022年10月3日付ビジネス短信参照)でも、全ての展示ブースで構造物やボードなどにUBQマテリアルが使われた。これにより、同イベントで使われた資材のほとんどをリサイクル利用するという画期的な試みが実現した。

UBQのプラント(同社提供)
質問:
UBQの特徴や他社に対する優位性は。
答え:
前述のとおり、UBQは有機物やリサイクル不可能なプラスチックを含む混合家庭廃棄物を処理し、現行の業界標準を満たす熱可塑性プラスチック素材に変換することができる。通常は焼却や埋め立て処理される廃棄物を価値ある資源に変えることができる画期的な技術だ。廃棄物には既にある程度の水分が含まれており、その水分を利用して処理を行うため、追加で必要となる水分も非常に少ない。UBQのプラスチック素材は、100%リサイクル可能なバイオベースの素材として、国際機関やEU、英国などの機関にも認定されているだけでなく、価格面でも競争力がある。
これまではイスラエルにある研究開発拠点での生産が中心だったため、生産量が限られていたが、2023年、オランダに新工場が完成したことで、生産量を大幅に増やすことができた。これにより、年間8万トンのプラスチック素材の生産キャパシティーを実現し、今後の需要拡大にも対応できるようになった。現状でもさまざまな企業から引き合いを受けており、今後も積極的に生産能力の増強に取り組む予定だ。

UBQマテリアル(UBQの製造するプラスチック素材)(同社提供)
質問:
UBQのビジネスモデルは。
答え:
技術に関しては、自社開発を主体としており、保有特許技術を用いたプラントの運営も自社で行っている。このプラントで生産したプラスチック素材をメーカーなどに供給している。
質問:
UBQの製品を使うことで、環境面でどのようなメリットがあるか。
答え:
UBQが製造したプラスチック素材は全て廃棄物から作られているため、当社製品を使うことは廃棄物の削減につながる。廃棄物を埋め立て処理すると、場合によってはさまざまな成分の漏出による土壌汚染やメタンガスの発生源となる。焼却した場合もGHGを排出する。UBQマテリアルを1トン利用することで、最大11.7トンのGHG排出を防ぐことができると試算されている。
当社の技術は、廃棄物を資源として捉えるというユニークなアプローチから生まれた、本当の意味での循環経済型ソリューションだと考えている。
質問:
日本市場や日本企業をどのように見ているか。
答え:
今後、海外へプラントを展開する検討を行う上で、日本は重要な候補の1つだ。日本は島国で、土地にも限りがあるため、埋め立てなどの処理方法にも限界がある。廃棄物処理を環境に負荷をかけないかたちで実現するUBQの技術とは非常に親和性が高いと感じている。
また、日本の廃棄物処理は行政によって運営される部分が大きいため、民間企業との連携に加えて、省庁や地方自治体などの公共部門と連携することで、進出に向けた具体的な取り組みを進めていきたい。
質問:
アラブ首長国連邦(UAE)で開催される国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)に向けてはどのような計画があるか。
答え:
先日、イスラエル・イノベーション庁がCOP28に向けたイスラエル企業の代表団30社を発表し、そのうちの1社としてUBQも選ばれた。2022年に開催されたCOP27でも同様のプログラムに選抜されており、UBQの技術やビジネス状況についての展示やプレゼンテーションを行った。COP28でも同様の展示が予定されているが、COP28ではオランダに完成した大規模なUBQプラントについて説明することで、当社の技術的な実行可能性と拡張性について実例を伴うかたちで紹介することができる。

変更履歴
文章中に誤りがありましたので、次のように訂正いたしました。(2023年10月5日)
(誤)年間8,000トンのプラスチック素材
(正)年間8万トンのプラスチック素材
執筆者紹介
ジェトロ・テルアビブ事務所
太田 敏正(おおた としまさ)
大手システムインテグレータを経て、2018年にジェトロに入構。企画部情報システム課、サービス産業部商務・情報産業課、知的財産・イノベーション部イノベーション促進課、企画部情報データ統括課を経て、2022年7月から現職。
執筆者紹介
ジェトロ・テルアビブ事務所
アリサ・ノスキン
2019年からテルアビブ事務所に勤務。テルアビブ大学リサーチアシスタント(2017年~2020年)、テルアビブ大学修士(日本学)。

この特集の記事

今後記事を追加していきます。

総論・地域横断

中東

アフリカ