特集:中小企業の海外ビジネス、成功の秘訣食品乾燥機でアフリカを開く/黒田工業(広島県)
ASEANの成熟市場からアフリカ市場開拓へ

2021年3月9日

食品乾燥機を国内外で展開する黒田工業(本社:広島県福山市)。1963年にシイタケ乾燥機、ノリ乾燥機の製造を開始した。従業員21人の中小企業ながら、産業用食品乾燥機で国内トップシェアを誇る。30~40年前からアジアを中心に海外展開に取り組んできた。しかし、昨今のアジア市場は既に飽和状態にある中、フロンティアを求めてアフリカ市場の開拓に乗り出した。同社の取り組みについて、黒田治寿代表取締役社長に聞いた(2021年1月15日)。


黒田工業の黒田治寿社長(同社提供)

主力製品「リーダー食品乾燥機」で、少数精鋭で海外市場に挑む

質問:
会社と製品の概要と海外展開について。
答え:
現在の従業員数は21人と少数精鋭。乾燥機の設計・製造・販売までを一気通貫で行う。先代から取り扱っていたシイタケ乾燥機の国内需要が低下する中で、アジアでもシイタケ乾燥機のニーズがあることに気づき、30~40年前に海外展開を始めた。現在も輸出先は、中国や韓国、ASEANなどのアジア諸国が中心だ。
図:海外への納品実績(同社提供)
海外への納品実績は次のとおり。アメリカ合衆国・カナダ・ブータン・ベトナムにキノコ類乾燥とドライフルーツ乾燥。キューバ・ハワイ州・シンガポール・スリランカ・イラン・トンガ王国にドライフルーツ乾燥。大韓民国・北朝鮮にキノコ類乾燥。フィリピンにハーブ乾燥と干物乾燥と工業用部品乾燥。インドネシアとマレーシアにドライフルーツ乾燥と工業用部品乾燥。ロシアにシーフード乾燥。中国にキノコ類乾燥と工業用部品乾燥。タンザニアにドライフルーツ乾燥と魚類干物乾燥。
海外市場向けの製品としては「リーダー食品乾燥機」が主力。構造がシンプルで量産が可能、本体価格も中古車1台分程度と手ごろだ。電気と液体燃料やまき、ココナッツの殻などが併用でき、メンテナンスが簡単で故障時にすぐに対応できることが強みだ。

主力製品の「リーダー食品乾燥機」(同社提供)
海外の顧客には、代理店を挟まず、直接販売するケースが多い。海外からの問い合わせや引き合いは、自社のウェブページから受けるものが多い。在外の日系企業・日本人から現地企業の紹介を受けることもある。
通常、海外での製品組み立てや保守点検はビデオ通話を使用して遠隔で対応している。初回導入の場合は、私自ら現地を訪問し、組み立て指導や顧客対応に当たっている。オンラインで組み立て指導を行った実績もある。故障の場合は、長年の経験から発生しやすい問題を把握しているため、基本的には部品交換で対応が可能だ。海外への販売品は、事前に予備の部品も併せて購入してもらっている。
現時点では、国内案件と比べて海外案件が占める割合は多くない。そのため、現地代理店は設けずに、ユーザーとなる顧客と直接やり取りしている。今後、海外案件の数が増えれば、現地でメンテナンス業務を委託する先を探していく可能性もある。
質問:
アフリカ市場への取り組みについて。
答え:
ASEANでは、熱風乾燥機は既に成熟したマーケットとなっている。大規模な乾燥機は欧州製、小規模なものは韓国製が多く流通している。アフリカは新規市場として可能性があると感じ、約5年前から本格的に取り組み始めた。アフリカではコールドチェーンや物流網が十分に整備されておらず、農産品・加工食品のロスが大量に起こってしまっている。食品乾燥により、フードロスの削減や製品の高付加価値化への貢献も期待できる。
アフリカでも、韓国製品が競合になる。ただし、電気使用のもので処理能力が低い。これに対しリーダー食品乾燥機は、液体燃料とまきやココナッツの殻などを併用し、メンテナンスが簡単だ。そのため、アフリカ市場で弊社の製品も十分競合できると考える。中国製の乾燥機は海外市場ではあまり見かけない。
約15年前になるが、日系の水産加工会社の紹介でタンザニアのバイヤーが来日し、小魚の干し物を近隣諸国に販売したいとのことで、リーダー食品乾燥機を計4台販売した実績がある。

新型コロナ禍でもオンラインで海外販路拡大に取り組む

質問:
新型コロナウイルスの感染拡大によるビジネスへの影響は。
答え:
新型コロナ禍以前に、トンガやマレーシアから引き合いがあった。トンガでは2台の受注予定だったが、経済状態の悪化から取引中止。マレーシアは追加発注の予定が、乾燥食品の需要減退を受け、既存の1台だけで対応することになった。 海外出張が困難な状況にあるため、ジェトロのサービスを積極的に活用している。「新輸出大国コンソーシアム」で海外ビジネスに精通した専門家による支援を受けて、英文資料を更新したり、ジェトロの開催するオンライン商談会にも積極的に参加したりしている。2020年12月にジェトロが主催した「アフリカ農業資機材オンライン商談会」では、アフリカ5カ国のバイヤーとの商談を行った。特に、モザンビークは食品を乾燥する慣習が少ないことがわかった。全くの新規の市場になるので、むしろ可能性を感じた。 バイヤーからの反応も良く、アフリカ市場での弊社製品の価格の妥当性も確認できた。アフリカでは、個々の小規模農家ではなく、国家プロジェクトもしくは農協・農業関連の大企業をターゲットとして市場開拓を模索したい。これまで海外ビジネスはアジア諸国向けを中心に取り組んできたが、アフリカのような地理的にも心理的にも距離が遠い市場にも、ビジネス機会を見いだす時期になったと感じる。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中東アフリカ課
馬場 安里紗(ばば ありさ)
2016年、ジェトロ入構。ビジネス展開支援部、ビジネス展開・人材支援部を経て現職。

この特集の記事

※随時記事を追加していきます。