特集:駐在員が見るアジアの投資環境北東アジア4
2018年4月2日
モンゴル・ウランバートル
政治的な安定性が鍵
2017年のモンゴル経済は回復基調が続いた。2017年の実質GDP成長率(速報値)は5.1%、2017年の貿易総額は前年比27.3%増の105億ドル、貿易収支は19億ドルの黒字(19.7%増)となった。経済回復の背景として、石炭の輸出が好調であったことと国際通貨基金(IMF)の支援の効果が着実に表れていることが指摘されている。モンゴル政府はIMFの支援に基づく経済再建プログラムを実施しており、それが財政の健全化や対外借り入れコストの削減につながった。
一方で、モンゴル国内では経済再建プログラムにひもづく国内改革に対する反対意見も根強い。財政健全化の一環として2018年1月1日から施行された個人所得税率の引き上げも、2018年2月2日の国会で中止が決議されるなどの影響が出ている。2017年10月に発足したフレルスフ内閣が安定的な政権基盤を築き、同プログラムを着実に実施できるか、注目される。
- 執筆者紹介
- ジェトロ コレスポンデント(モンゴル・ウランバートル市) バザルスレン・ボロルエルデネ
- 2011年、東京大学卒業、ワークスアプリケーションズ入社。2014年、モンゴルに帰国、メディア・ベンチャー設立、コラムニストとして活動。2016年 よりBackforce Co.,Ltd 経済アナリスト ・代表取締役社長としてジェトロのコレスポンデント業務に従事。
韓国・ソウル
需要高まる冷凍食品
韓国では手間のかかる料理を電子レンジで解凍するだけで食べられる冷凍食品が人気を集めている。韓国農水産食品流通公社(aT)によると、韓国の冷凍食品市場は2014年基準で約1兆5,821億ウォンだった。関係業界では、単身世帯の増加や女性の社会進出が市場の拡大要因とみている。韓国統計庁が発表した「2016人口住宅総調査」によると、2016年11月基準で単身世帯は全体の27.9%を占め、最も多く、今後も増加する見込みである。
また、韓国ではこれまで冷凍食品といえば、冷凍ギョーザが主流であったが、冷凍チャーハン、冷凍ピザ、冷凍豚カツなど冷凍食品の種類もこの数年で増加の一途をたどっている。特に、韓国人の好みに合わせた冷凍プルコギ(焼き肉)ピザやサツマイモピザなどが好評で、食品各社はヘルシーでおいしい冷凍食品の開発に力を入れている。給与が以前ほど上がらない中で、おいしく手ごろな価格との評価を得た冷凍食品は今後も市場の拡大が期待される。
- 執筆者紹介
- ジェトロ・ソウル事務所 諸 一(ジェ イル)
- 2017年1月、ジェトロ・ソウル事務所入所。経済調査チーム所属。
台湾・台北
労働基準法再改正
2016年5月に蔡英文政権が発足した。同年12月には、労働環境の改善をうたい週休2日制(一例一休)を目玉とした改正労働基準法が誕生した。しかしその直後から、残業時間や残業手当の支給基準等が柔軟性に欠けるとして、コスト増に苦しむ雇用者側のみならず、労働者側からも不満が続出。昨年9月、台南市長(当時)だった頼清徳氏が行政院長に就任した直後から同法の再見直しが始まり、今年1月、わずか1年あまりで立法院(国会)において再改正法案が可決された(3月より施行)。再改正に反対の声はあったものの、残業時間数上限、法定休日の設定、連続労働日数上限、残業手当の支給基準、未消化分の有給休暇の繰り越しなどで柔軟な調整ができるようになったため、総じて言えば評価する声が多い。しかし、今回の混乱は大きく、蔡総統、頼行政院長が謝罪する事態となった。支持率が下がり続ける蔡総統を実行力があり人気の高い頼行政院長が支えている。蔡政権は3年目に突入する。
- 執筆者紹介
- 公益財団法人 日本台湾交流協会 台北事務所 経済部 主任 南澤 紘美(みなみさわ ひろみ)
- 2009年、ジェトロ入構。産業技術課(当時)、機械・環境産業技術課(当時)、ジェトロ・武漢事務所、知的財産課勤務を経て、2016年11月1日より日本台湾交流協会台北事務所へ出向中。