アフリカの人口急増と物流・貿易動向
日本の2023年の輸出額最多、課題も多数

2024年8月19日

アフリカ開発銀行によると、アフリカの経済成長率は2024年に3.8%、2025年に4.2%となり、世界平均を上回る成長を予測している。経済成長や人口増加を背景に貨物取扱量も増加傾向を示す。また、日本からの輸出も過去最高に達するなど、最後のフロンティアとしての可能性を秘めている。一方で、港湾や道路などのインフラは未整備で、通関手続きなどに課題もある国も多いのが実情だ。

本稿では、アフリカの人口、貨物取扱量、日本との貿易などの統計を基に、市場参入のリスクと可能性について探る。

アフリカの人口は急増

国連が2024年7月に発表した人口推計によると、アフリカでは、1950年に2億2,778億人だった人口は増加を続けており、2024年に15億1,514万人に達し、2100年まで右肩上がりの増加が見込まれる(図1参照)。アジアでは21世紀半ばには減少に転じ、中南米、欧州、北米もおおむね横ばいの見込みのため、アフリカは他の地域と比べて人口拡大が長く続くとされ、2050年には24億6,665万人で、世界人口の約4人に1人、2100年には38億1,388万人で、同3人に1人以上がアフリカ人になるとの予測だ。

図1:世界とアフリカ人口推移
国連が2024年7月に発表した人口推計によると、アフリカでは1950年から2100年まで右肩上がりの増加が見込まれる。アジアでは2100年までには減少に転じ、中南米、欧州、北米もおおむね横ばいだ。

出所:国連

国連の人口推計を国別にみると、世界トップ20に入ったアフリカの国は2024年に4カ国だったが、2054年に6カ国、2100年には9カ国がランクインしている。2100年までアフリカの首位をナイジェリアが維持し、現在のほぼ倍増の4億6,474万人で、世界4位となる見込みだ。このほか、コンゴ民主共和国、エチオピア、タンザニア、エジプト、アンゴラ、スーダン、ウガンダ、ケニアが世界上位20位に入る(表1参照)。

表1:世界の人口上位国の推移

2024年の世界の人口上位20カ国
順位 国名 人口(万人)
1 インド 145,094
2 中国 141,932
3 米国 34,543
4 インドネシア 28,349
5 パキスタン 25,127
6 ナイジェリア 23,268
7 ブラジル 21,200
8 バングラデシュ 17,356
9 ロシア 14,482
10 エチオピア 13,206
11 メキシコ 13,086
12 日本 12,375
13 エジプト 11,654
14 フィリピン 11,584
15 コンゴ民主共和国 10,928
16 ベトナム 10,099
17 イラン 9,157
18 トルコ 8,747
19 ドイツ 8,455
20 タイ 7,167
2054年の世界の人口上位20カ国
順位 国名 人口(万人)
1 インド 169,207
2 中国 121,485
3 パキスタン 38,945
4 米国 38,415
5 ナイジェリア 37,618
6 インドネシア 32,214
7 エチオピア 23,955
8 コンゴ民主共和国 23,751
9 バングラデシュ 21,862
10 ブラジル 21,542
11 エジプト 16,720
12 メキシコ 14,969
13 タンザニア 14,032
14 フィリピン 13,506
15 ロシア 13,499
16 ベトナム 10,964
17 日本 10,242
18 イラン 10,197
19 スーダン 9,068
20 トルコ 9,062
2100年の世界の人口上位20カ国
順位 国名 人口(万人)
1 インド 162,134
2 中国 81,882
3 パキスタン 48,857
4 ナイジェリア 46,474
5 米国 41,013
6 コンゴ民主共和国 37,548
7 エチオピア 33,365
8 インドネシア 31,149
9 タンザニア 22,321
10 バングラデシュ 22,210
11 エジプト 19,673
12 ブラジル 18,346
13 メキシコ 14,151
14 アンゴラ 12,899
15 ロシア 12,751
16 フィリピン 12,607
17 スーダン 12,508
18 アフガニスタン 11,829
19 ウガンダ 11,696
20 ケニア 10,274

出所:国連

アフリカの貨物量は少ないが、増加傾向

人口増加や経済成長を背景に、アフリカの海上貨物取扱量は増加傾向だ。アフリカ・ファイナンス・コーポレーション(AFC)によると、2011年から2021年の間に2,450万TEU(1TEUは20フィートコンテナ換算)から3,580万TEUへ約1.5倍となった。さらに、アフリカ・インフラ開発プログラム(PIDA)では、2040年までにアフリカの港湾の合計で1億7,600万TEUの処理能力を目標としている。

なお、アフリカでは道路や鉄道が未整備な部分が多く、商品輸送の需要拡大に対応するため、海上輸送が選択されるケースも多くなっているという。

国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、世界全体の海上貨物取扱量を地域別に見ると、中国など東アジアや東南アジアでの取扱量が多く、2012年から2022年までの上昇率も高い。アフリカも増加を見せているが、他の地域と比べるとまだ取扱量は少ない状況だ(図2参照)。

図2:各地域の港湾貨物取扱量、2012年と2022年の比較
UNCTADによると、世界の港湾の海上貨物取扱量を地域別に見ると、東アジアが最多、次いで東南アジア、欧州、北米、中南米、中東、アフリカの順に取扱量が多い。いずれの地域も2012年と2022年の取扱量は増加した。

出所:UNCTAD

国別取扱量はモロッコ、トーゴが急増

国別に見ると、アフリカにも海上貨物取扱量が急増した国がある。アフリカでの貨物取扱量上位5カ国を見ると、モロッコが欧州向けの輸出拠点やインフラ整備により、2022年に2010年比で約3倍と急増した。このほか、トーゴも2010年比で5.7倍と急増している。ナイジェリアは貨物量自体は少ないものの、増加率は同34.8%、エジプトも同15.6%増と、増加傾向にある(図3参照)。一方、南アフリカ共和国では、既に経済発展が進んでいるほか、運輸公社トランスネットでの汚職や港湾ストライキ、電力不足などインフラ関連の課題も多く、この10年で増減はあるものの、ほぼ横ばいとなっている。

図3:アフリカの貨物取扱量推移(上位5カ国)
アフリカでの貨物取扱量上位5カ国を見ると、モロッコが首位で、2010年比で約3倍と急増した。トーゴも2010年比で5.7倍と急増した。ナイジェリアとエジプトも増加傾向にある。南アではおおよそ横ばいとなった。

出所:UNCTAD

アフリカの国別貨物取扱量の順位を見ると、前述の上位5カ国のほか、アルジェリア、コンゴ共和国、アンゴラなどの資源国で、経済規模の大きい国などが上位にある(表2参照)。なお、ジブチは、経済規模は小さいが、内陸国エチオピアへの貿易港として取扱量が多い。ケニア、コートジボワール、セネガルは2010年比で2倍以上と大きな伸びを示した。

表2:アフリカの港湾貨物取扱量上位15カ国(△はマイナス値、-は値なし)
アフリカ
順位
世界
順位
国名 2022年
貨物取扱(TEU)
前年比
増減率(%)
対2010年比
増減率(%)
1 25 モロッコ 8,835,181 4.5% 199.9%
2 28 エジプト 7,765,482 7.5% 15.6%
3 36 南ア 4,053,350 △8.2% 1.7%
4 49 トーゴ 1,952,879 △1.7% 474.5%
5 55 ナイジェリア 1,566,109 0.0% 34.8%
6 n.a アルジェリア(注) 1,541,273 n.a 28.6%
7 56 ケニア 1,450,000 1.0% 108.5%
8 59 ガーナ 1,244,245 △22.5% 93.4%
9 65 コンゴ共和国 999,999 △0.4% 39.3%
10 n.a コートジボワール(注) 979,517 n.a 175.9%
11 70 セネガル 738,000 △4.1% 111.3%
12 71 タンザニア 700,000 0.0% 95.0%
13 72 アンゴラ 654,590 8.2% 22.8%
14 73 ジブチ 635,000 △8.2% 56.2%
15 77 チュニジア 464,823 △1.0% △0.3%
アフリカ全体 35,806,550 0.2% 57.0%

注:アルジェリアとコートジボワールは一部数値未公表のため2020年の数値。
出所:UNCTAD

図4:アフリカの港湾貨物取扱量上位国
アフリカの海上貨物取扱量の上位国は1位から5位は、モロッコ、エジプト、モロッコ エジプト、南ア、トーゴ、ナイジェリアだった。また、6位~10位はアルジェリア、ケニア、ガーナ、コンゴ共和国、コートジボワール、11位から15位はセネガル、タンザニア、アンゴラ、ジブチ、チュニジアだった。

出所:UNCTADデータを基にジェトロ作成

世界取扱量100位内にアフリカ4港が入る

港湾や海運に関する世界最古のジャーナルである英国ロイズ・リスト(2023年版)によると、2022年の港湾貨物取扱量の世界1位は中国の上海港、2位はシンガポール港、3位は中国の寧波港だった。上位10港には中国の7港が入っている。アフリカでは4港が100位内に入り、24位のモロッコのタンジェメッド港が最多だった。次いで、エジプト・ポートサイド港、南ア・ダーバン港、トーゴ・ロメ港で、前述の国別の貨物取扱量が多かった国の主要港が続く。

  • (参考)1位:中国・上海港(4,730万3,000TEU、前年比0.6%増) 
  • 24位:モロッコ・タンジェメッド港(759万6,845TEU、同5.9%増) 
  • (参考)46位:日本・東京港(443万TEU,同2.4%増) 
  • 48位:エジプト・ポートサイド港(425万2,979TEU、同2.6%増) 
  • 79位:南ア・ダーバン港(257万4,931TEU、同3.3%減) 
  • 94位:トーゴ・ロメ港(183万5,000TEU、同6.5%減)

なお、2013年時点ではエジプトのポートサイド港が34位で410万TEU、南アのダーバン港が54位で263万2,515TEU、モロッコのタンジェメッド港が55位で255万8,426TEUだったため、2013年から2022年にかけてタンジェメッド港が大きく伸び、順位が入れ変わった。また、2013年時点ではエジプトのアレキサンドリア港が87位150万8,101TEUに入っていた。トーゴのロメ港は上位100港には入っていなかった。

AFCによると、ロメ港は2012年に貨物取扱量が800万トン未満だったが、2021年には2,900万トンと、3倍以上に急拡大した。アフリカ54カ国のうち海に面していいない内陸国が16カ国あり、特にトーゴは人口も経済規模も大きくないが、内陸国や近隣国への輸送、積み替え物流拠点となったかたちだ。

また、コートジボワールのアビジャン港、ガーナのテマ港、セネガルのダカール港、ケニアのモンバサ港、ジブチ港なども、アフリカ大陸沿岸の主要港となっており、国内のほか内陸国や近隣国への物流拠点ともなっている。

コンテナ効率化順位でも、モロッコが最高

世界銀行によるコンテナ港効率性の順位では、世界405港のうち1位は中国・上海洋山深水港、2位はオマーン・サラーラ港だった。モロッコのタンジェメッド港が世界でも3位、アフリカで首位だった。エジプトのポートサイド港が16位となっている。

アフリカの上位10港は次のとおり。

  • 3位:モロッコ・タンジェメッド港
  • 16位 :エジプト・ポートサイド港
  • 103位:ソマリア・ベルベラ港
  • 134位:エジプト・アレクサンドリア港
  • 138位:エジプト・スクナ(ソクナ)港
  • 176位:ソマリア・モガディシュ港
  • 208位:ギニア・コナクリ港
  • 237位:赤道ギニア・マラボ港
  • 248位:チュニジア・ラデス港
  • 252位:シエラレオネ・フリータウン港

アフリカの他の港は、これらの港よりさらに順位が低く、効率的ではない港も多い。世界銀行の報告書では、国際貿易の80%以上が海路で輸送され、うち大部分がコンテナで運ばれているため、コンテナ港の効率的な運用は輸出入関連のコストと時間を削減し、輸出競争力を高め、輸入価格を下げると指摘した。港湾の効率化には港湾施設への投資や、先進デジタル技術の適応、鉄道・道路など内陸輸送との接続性の向上、船会社や港湾当局など関係者との連携などが重要だという。

港湾への投資が拡大へ

人口増加、経済成長によって商品需要が増えても、港湾などのインフラが未整備、非効率だと、貨物の取扱量を増やすことは難しい。各国政府による港湾投資も重要な一方、アフリカの港湾への民間投資も急拡大しており、2012年から2022年までで合計127億ドルとなった。これは2002年から2012年までの投資額と比べてほぼ倍増だ。これらの投資により、コンテナ効率性や取扱量も増加が見込まれる。近年のアフリカでの港湾投資の金額上位案件は次のとおり。

  • ナイジェリア:オネ(Onne)港「拡大フェーズ4b」、29億ドル、2013年
  • ガーナ:テマ港拡大事業、15億ドル、2016年
  • セネガル:ダヤン(Ndayane)港、11億ドル、2022年
  • ナイジェリア:レッキ深海港フェーズ1、11億ドル、2019年
  • コンゴ民主共和国:バナナ港、10億ドル、2021年

特にアラブ首長国連邦(UAE)の港湾運営会社DPワールドが積極的に投資を進めている。アフリカでの展開としては、ダヤン港、バナナ港への投資のほか、2022年にエジプトのスクナ港、セネガルのダカール港、ソマリアのベルベラ港などへ10億ドルの投資を公表しており、タンザニアのダルエスサラーム港の運営にも関わっている。

紅海情勢の悪化、スエズ運河の通行数減少

物流・サプライチェーンでは、地政学的な影響にも留意が必要だ。サプライチェーンが混乱すると、在庫不足や業務の非効率性、生産遅延、コスト増などが発生し、特に開発途上国経済に混乱をもたらす可能性がある。最近では、紅海アデン湾近海でのイエメンの武装勢力フーシ派による船舶攻撃によって海上貿易ルートが混乱し、輸送コストの増加と遅延が発生している。

フーシ派による攻撃の影響を受け、紅海と地中海を結ぶスエズ運河の通行隻数が2024年5月には前年の約3分の1に減少した時期もある。スエズ運河に代わって、南アの喜望峰回りのルートが大幅に増加している。欧州とアジアの輸送に関して、喜望峰ルートはスエズ運河ルートに比べて時間もコストも増加する。

紅海情勢を含む国際的な物流情勢については、次のビジネス短信特集を参照。

また、アフリカではクーデターやデモなども発生するほか、港湾・空港でのストライキなどにも留意が必要だ。各国の治安など最新情報については、外務省の「海外安全ページ:国・地域別情報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」も参照。

アフリカの鉄道距離は世界の6.5%、貨物輸送は1.2%と限定的

国際鉄道連合(UIC)の2024年版「Railway Statistics Synopsis」によると、世界の鉄道の距離は91万キロ、アフリカは5万9,506キロで、世界シェア6.5%程度だった。鉄道輸送量では、世界で981万トンキロ、アフリカは11万6,716トンキロと、世界シェアはわずか1.2%だった。アフリカ域内物流の拡大には鉄道の整備が重要となる。各地域の鉄道距離(キロ)と鉄道貨物輸送量(トンキロ)は次のとおり。

  • 世界:91万キロ、981万トンキロ
  • アジア大洋州・中東:29万キロ、381万トンキロ
  • 欧州:25万キロ、38万トンキロ
  • 米州:22万キロ、287万トンキロ
  • ロシア:8万5,520キロ、264万トンキロ
  • アフリカ:5万9,506キロ、11万6,716トンキロ

アフリカ各国の鉄道状況は、未整備の国も多く、車両やレールの老朽化が進んでいたり、遅延も発生したりするが、経済規模が大きい国や資源国、面積が広い国では、鉄道の距離が長い。また、鉄道による輸送量の統計は多くの国では公表されていないが、南アが10万3,868トンキロと最も多く、ケニア3,273トンキロ、モロッコ2,239トンキロ、エチオピア1,413トンキロなどで多い(表3参照)。

表3:アフリカにおける鉄道と貨物事情
国・地域名 鉄道距離
(km)
鉄道貨物輸送量
(トンキロ)
人口
(万人)
面積
(万キロ平米)
アフリカ全体 59,506 116,716 140,000 2,964
南ア 20,953 103,868 5,990 122
エジプト 6,679 1,333 1,110 100
アルジェリア 4,286 1,121 4,490 238
コンゴ民主共和国 3,641 187 9,900 234
ケニア 3,523 3,273 5,400 58
ジンバブエ 3,120 703 1,630 39
スーダン 2,747 n.a 4,690 188
タンザニア 2,717 338 6,550 95
モロッコ 2,295 2,239 3,750 447
チュニジア 1,777 407 1,240 16
エチオピア 1,544 1,413 12,340 110
ザンビア 1,248 n.a 2,000 75
ボツワナ 886 n.a 260 58
カメルーン 884 866 2,790 48
モーリタニア 728 n.a 470 103
マダガスカル 673 n.a 2,906 59
ガボン 648 240 240 27
コートジボワール 639 728 2,820 32
ブルキナファソ 518 n.a 2,270 27

出所:国際鉄道連合

徒歩移動も多く、公共交通も未整備

世界銀行の報告書によると、アフリカでは既に鉄道が敷かれている都市もあるが、十分に拡張されていないため、鉄道関連の投資は増加する可能性があるという。既存の鉄道は主に貨物向けで、都市の乗客サービス用には設計されていないため、路線のアップグレードや制御システム、車両への投資など大幅な改善が必要とし、政府による地方行政の調整や財政支援が不可欠と指摘している。

また、世界銀行によるナイジェリアのラゴス、モザンビークのマプト、ケニアのナイロビの3都市を事例にした報告書では、40%以上が自動車を交通手段として全く使用していない。また、ラゴスでは43%、ナイロビで41%、マプトで26%が乗り合いのミニバスなどを利用しているという。3都市に限らず、アフリカなどの発展途上国では、乗用車が買えない低所得層向けに、交通インフラの整っていない地域ではミニバスなどが市民の足として利用されている。一部の市民はミニバスのライドシェアも利用する。エジプト発でアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに本社を移転し、米国株式市場に上場した「スエフル(Swvl)」は、小型バンのライドシェアを展開する。ナイジェリア発の「Shuttlers」も、バスのライドシェアを提供している。乗用車のライドシェアでは、アフリカで欧州発の「Bolt」が14カ国、米国発の「Uber」が8カ国で展開する。このほか、エジプトのトレッラ(Trella)や、ナイジェリアのKOBO360などが、トラック物流のライドシェアや配車サービスをアフリカで展開する。加えて、豊田通商も出資するドローン輸送のZiplineなどがルワンダなどで展開する。

なお、アフリカで公共交通への投資事例としては、三菱商事によるエジプト・カイロの地下鉄案件、中国によるナイジェリアのライトレール、ケニアのモンバサ港からナイロビまでの高速鉄道敷設などの案件がある。

道路は未舗装が大半

アフリカでは鉄道が未整備なことから、陸路でのトラックなどでの貨物輸送が行われている。狭い路地や未整備道路でも走行できるピックアップトラックなどの小型トラックが多い。


エジプトの街中のピックアップトラックでの輸送
(ジェトロ撮影)

エジプトの貨物市場でのピックアップトラックの活用
(ジェトロ撮影)

アフリカでは大陸を横断・縦断する道路もあるが、砂漠や熱帯雨林など人口が少ない地域も多く、道路の網羅的な整備が遅れている。さらに、未舗装の道路も多く、経済発展のためにインフラ整備が求められている。

また、CIAファクトブックによると、アフリカで道路の距離の長い国の上位10カ国は次のとおり。アフリカでは、道路が未舗装の部分が大半だ。

  • 南ア:75万キロ(うち舗装道路15万8,124キロ)
  • ナイジェリア:19万5,000キロ(同6万キロ)
  • エチオピア:18万キロ(未公表)
  • ケニア:16万1,451キロ(同1万8,603キロ)
  • コンゴ民主共和国:15万2,373キロ(同3,047キロ)
  • タンザニア:14万5,203キロ(同1万1,201キロ)
  • アルジェリア:11万2,696キロ(未公表)
  • ジンバブエ:9万7,267キロ(同1万8,481キロ)
  • コートジボワール:8万1,996キロ(同6,502キロ)※2007年時点
  • ザンビア:6万7,671キロ(同1万150キロ)
  • (参考、世界1位)米国:658万6,610キロ(同430万4,715キロ)
  • (参考、世界6位)日本:121万8,772キロ(同99万2,835キロ)

PIDAによる道路・鉄道整備計画も

アフリカの人口増加や急速な都市化は、自動車の輸送需要を増大させ、大都市での交通渋滞をもたらした。このような中、アフリカ・インフラ開発プログラム(PIDA)が、輸送インフラ、および電気・水・情報技術(ICT)などインフラ開発に対する資金不足を補うための支援枠組みとして発足した。PIDAでは、1万6,066キロの道路開発や、4,077キロの鉄道開発のプロジェクトを実施・計画している。

2021年~2030年にかけて69のプロジェクトが総投資額1,600億ドルで実施の予定だ。コートジボワールのアビジャンからナイジェリアのラゴスを結ぶ高速道路建設に向けた調査や、ケニアのモンバサ港からナイロビを経由してカンパラ(ウガンダ)を結ぶ標準軌鉄道の建設に向けたプロジェクト計画、モザンビークのベイラ港開発(内陸のジンバブエやザンビアの物流にもつながる)などがある。

中国の存在感も大きいが、資源巡る新たな動きも

欧米や日本もアフリカのインフラ整備への援助を続けてきたほか、近年は「一帯一路」構想を打ち出す中国の存在感も大きい。アフリカ向け大型インフラ建設に合わせて、中国開発銀行(CDB)など中国金融機関が融資を進めた。米国のボストン大学が2023年9月に発表した調査によると、中国のアフリカ向け融資は2016年に285億ドルでピークに達した。一方、新型コロナウイルス禍以降は融資件数も融資額も減少傾向と推定されている。中国からの2000年から2022年までの国別融資額合計のうち、エチオピア、ケニア、ナイジェリア、カメルーンなどでは交通分野への融資が多い。

  • エチオピア:141億ドル(交通分野に53億ドル)
  • ケニア:97億ドル(交通分野に60億ドル)
  • ナイジェリア:80億ドル(交通分野に46億ドル)
  • カメルーン:59億ドル(交通分野に20億ドル)

また、鉱物資源も多い南部のアフリカでは、これまでインフラ開発が停滞してきた地域でも大規模な開発構想が急速に進みつつある。バッテリーなどに利用されるコバルトを巡る新たな競争により、米国が中国の存在感の強いアンゴラとコンゴ民主共和国などを通るロビト回廊などの整備を進める。一方、中国もアフリカ南部では、タンザニアからザンビアまでつながるタザラ鉄道など、アフリカ各地でインフラ整備を進めている。

航空貨物は世界シェア2%だが、伸び示す

航空貨物について見ると、2024年5月時点のアフリカの航空貨物規模は世界シェア2%と小さいが、前年同月比の需要、貨物容量ともに、世界の地域別で最大の伸びを示した(表4参照)。また、アフリカ最大の航空会社はエチオピア航空で、航空貨物取扱量もエチオピアのアディスアベバが最も多い。2023年第4四半期(10~12月)の貨物量を空港別に見ると、多い順からアディスアベバ、ヨハネスブルグ、ナイロビ、カイロ、ラゴス、カサブランカ、エンテベ(ウガンダ)、アルジェ、ダカールの順だった。

表4:航空貨物市場(2024年5月、月間)
地域名 世界シェア 前年同月比
貨物量増減率
前年同月比
輸送容量増減率
世界 100% 14.7% 6.7%
アジア・大洋州 33.3% 17.8% 8.4%
北米 26.9% 8.7% 2.5%
欧州 21.4% 17.2% 11.9%
中東 13.5% 15.3% 2.7%
中南米 2.8% 12.7% 8.0%
アフリカ 2.0% 18.4% 21.4%

出所:IATA

輸出も輸入も中国が最大

アフリカは中国、米国、ドイツ、日本、英国、フランスなどとの貿易が多く、アフリカ向け輸出は、新型コロナの影響により2020年は落ち込んだものの、2021年以降は増加し、新型コロナ以前よりも高い水準になっている(図5参照)。アフリカからの輸入額も2021年に大幅に増加した。

貿易を品目別でみれば、アフリカからは世界に原油やプラチナを輸出し、世界から精製された石油製品や機械、車、家電などの工業製品、穀物や医療用品を輸入している。中国は主にナイジェリア、南アフリカ共和国、エジプトに電気機器や機械類、輸送機器などを輸出し、主に南ア、アンゴラ、コンゴ民主共和国から鉱物性燃料や鉱石、貴石・貴金属類などを輸入している。米国は主にエジプト、南ア、ナイジェリア、モロッコに対して、鉱物性燃料、輸送機器、機械類、航空機、果実・植物類などを輸出し、主に南ア、ナイジェリアから貴石・貴金属類と鉱物性燃料を輸入している。詳細は次のレポートを参照。

図5:アフリカの世界主要各国からの貿易額推移

主要各国の対アフリカ輸出額推移
世界の主要国のアフリカ輸出は、2020年は落ち込んだものの、2021年以降は増加し、2020年以前よりも高い水準になっている。アフリカの輸出は中国が最大となっている。
主要各国の対アフリカ輸入額推移
世界の主要国のアフリカ輸入額は、2021年に大幅に増加した。アフリカの輸入は中国が最大となっている。

出所:Global Trade Atlas

2023年の日本からの輸出は過去最高

財務省の2023年の貿易統計(円貨、確々報値)をみると、日本の対世界輸出総額は前年比2.8%増で、初めて100兆円を超える100兆8,738億円になった。日本の世界からの輸入総額は7.0%減の110兆1,956億円だった。日本からアフリカへの輸出額は前年比10.0%増の1兆3,991億円で、同年の輸出額(円貨)は1988年以降で最多となった。輸入額は前年比23.4%減の1兆5,180億円だった。日本からの輸出は2000年代に増加していたが、2010年代はおおむね横ばい、2020年以降は増加傾向にある(図6参照)。貿易額は為替レートや資源価格などによっても大きく左右され、2010年代は増減を繰り返した。

なお、2024年上半期の日本からアフリカへの輸出額は前年同期比5.7%増だったが、輸入額は22.8%減となった(2024年7月30日付ビジネス短信参照)。

図6:日本のアフリカ輸出入推移
財務省の貿易統計では、日本からアフリカへの2023年の輸出額は、1988年以降で最多となった。日本からの輸出は2000年代に増加していたが、2010年代はおおむね横ばいで、2020年以降は増加傾向にある。アフリカから日本への輸入額は、2000年代は増加傾向であったが、2010年代は大幅な増減を繰り返した。

出所:財務省貿易統計

日本の主要輸出品は船舶や自動車、輸入品目は南ア向け白金属

日本のアフリカへの貿易額を国別に見ると、輸出はリベリア(シェア28.1%)、南ア(同25.2%)で半分以上を占める(表5参照)。輸出先はリベリアのほかは、人口や経済規模が大きい国が多い。輸入元は南アがシェア67.4%で大半を占め、その他の国は資源国が多い。為替の影響などもあり、多くの国で輸出は増加しており、輸入は資源価格の影響などにより減少した。

表5:2023年の日本のアフリカへの国別輸出 (△はマイナス値)

国別輸出
順位 国名 金額
(億円)
増減率
(%)
1 リベリア 3,932 12.8
2 南アフリカ共和国 3,525 14.1
3 ケニア 1,330 4.9
4 エジプト 955 △5.8
5 タンザニア 782 29.1
6 ナイジェリア 418 28.9
7 モロッコ 379 22.1
8 ウガンダ 277 0.4
9 モーリシャス 258 62.7
10 コンゴ民主共和国 229 49.7
国別輸入
順位 国名 金額
(億円)
増減率
(%)
1 南アフリカ共和国 10,220 △22.3
2 ナイジェリア 708 △57.6
3 アルジェリア 669 △21.5
4 マダガスカル 514 △14.1
5 モロッコ 420 △30.4
6 エジプト 322 △34.1
7 モーリタニア 290 13.4
8 モザンビーク 263 64.8
9 赤道ギニア 231 60.8
10 ガーナ 198 1.6

出所:財務省貿易統計

日本の2023年のアフリカへの輸出額を品目別に見ると、リベリアへの船舶輸出が3,849億円で最多だった(船舶所有者は税や登録料が安いため、便宜上、リベリアに船籍を置いている)。2023年は自動車輸出(中古車も含む)も多く、南ア(1,368億円)、ケニア(785億円)、タンザニア(466億円)が上位となった。自動車輸出の推移を見ると、2000年代は金額、台数とも増加傾向にあった。2010年代は増加と減少を繰り返したが、2008年の最高値を超えるまでには至らなかった。2021年以降の自動車輸出額は増加傾向にある。

2023年の日本のアフリカからの輸入額を国別、品目別に見ると、首位の南アからは白金族の金属(5,751億円)、石炭(1,006億円)、鉄鉱石(629億円)、自動車(606億円)が多かった。ナイジェリア、アルジェリア、エジプト、赤道ギニアなどからは石油・天然ガス資源の輸入が多い。マダガスカルからはニッケル、モロッコとモーリタニアからはタコやマグロなどの水産物、ガーナからはカカオなどの輸入が多かった。

物流、インフラも有望ビジネスの1つ

ジェトロの「2023年度 海外進出日系企業実態調査(アフリカ編)」によると、「有望視するビジネス分野(複数回答可)」について回答した218社のうち76社が「インフラ」を有望と回答し、このうち道路(50.0%)、港湾(44.7%)、鉄道(42.1%)、空港(30.3%)を有望と回答した企業が多かった(図7参照)。また、218社のうち、「サービス業」が有望と回答したのは59社、そのうち40.7%が物流・海運が有望とした。今後、アフリカでの物流需要拡大やインフラの整備が進むことをにらんで、日系企業は物流関連インフラビジネスを有望視していることがうかがえる。

図7:有望視するビジネス分野

インフラ(複数回答)
「2023年度日系企業進出実態調査(アフリカ編)」によると、「有望視するビジネス分野(複数回答可)」について回答した218社のうち76社が「インフラ」を有望と回答し、このうち、道路、鉄道、空港が有望と回答した企業も多かった。
サービス業(複数回答)
「2023年度日系企業進出実態調査(アフリカ編)」によると、「有望視するビジネス分野(複数回答可)」について回答した218社のうち「サービス業」が有望と回答したのは59社であり、そのうち40.7%が物流・海運が有望とした。

出所:2023年度 海外進出日系企業実態調査(アフリカ編)

日本企業による物流関連の投資事例も出てきており、阪急阪神エクスプレスが2018年にイントラスピード・サウス・アフリカを子会社化し、2024年8月には第2倉庫を新設した。2024年7月には商船三井がアフリカ広域での物流を展開するAlistairグループに資本参加している。その他、ヤマハ発動機がバイクでラストワンマイル配達をする会社を設立した案件や、日本通運がモロッコの支店を現地法人化するなどの動きもある。

インフラについては、国際協力機構(JICA)や国際協力の案件で日本企業が参画する例もある。なお、JICAの報告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、1993年から2023年までの30年間に、JICAはアフリカで合計7,205キロの道路の建設や改良、さらに、ケニアのモンバサ港を含む1,531万トンの新たな港湾容量の増大に貢献したという。マグレブ横断道路、ナイル回廊、ナカラ回廊のほか、南部アフリカ、東アフリカ、西アフリカ地域で複数国をまたぐ「国際回廊開発」として、地域の産業や社会の発展を見据えた幹線道路を軸としたインフラ開発を後押したという。

将来的にはAfCFTAの活用機会も

アフリカでは現状は域外貿易が多いが、アフリカ自由貿易圏(AfCFTA)が進展すれば、域内貿易も活性化する可能性がある。まだ課題も多く、自由貿易には至っていないが、試験輸出プログラムなどが進んでいる状況だ。

現在、既に稼働中の地域経済共同体もあり、アフリカ南部関税同盟(SACU)は、欧州自由貿易連合との貿易協定を締結している。進出日系企業調査によると、日系企業も同協定を最も利用しているほか、各地域の共同体の関税同盟なども活用されている(図8参照)。

エジプトはEUとの自由貿易協定(FTA)があるほか、モロッコはEUに加えて米国との貿易協定もある。なお、日本とアフリカ諸国とのFTAは2国間もマルチ(複数国)もない。一方で、日本のアフリカからの輸入では、開発途上国に対しては特恵関税率が適応される場合もある。


図8:利用しているFTA・EPA・関税同盟(複数回答)
「2023年度日系企業進出実態調査(アフリカ編)」によると、日系企業は、アフリカ南部関税同盟(SACU)と欧州自由貿易連合との貿易協定を最も利用している。次いで、南部アフリカ開発共同体(SADC)、SACUの利用が多かった。

注: (※)エジプト、チュニジア、アルジェリア、モロッコ等。
出所:2023年度 海外進出日系企業実態調査(アフリカ編)

貿易手続きなどの課題も多い

進出日系企業実態調査によると、アフリカの投資環境には課題が山積している。行政手続きが遅く、汚職もあるほか、不安定な為替、代金回収、外貨決済・調達などにおいて課題もあるという(図9参照)。治安、政治リスクが課題と答えた企業も多い。また、電力、道路、通信、港湾などのインフラが未整備と回答する企業も多いほか、貿易制度面では、通関に時間がかかり、通関手続きが煩雑との回答も多い(図10参照)。アフリカでのビジネスには課題も多いのが現状だ。

図9:投資環境面での課題(項目別1)
「2023年度日系企業進出実態調査(アフリカ編)」によると、投資環境面での課題(複数回答可)について回答した、225社のうち61.6 %が「規制・法令の整備、運用」が課題と答え、さらにそのうちの77.1%が「行政手続きの煩雑さ」と回答した。「財政・金融・為替面」が課題との回答も多く、そのうちの69.6%が「不安定な為替」が課題と回答した。

出所:2023年度 海外進出日系企業実態調査(アフリカ編)

図10:投資環境面での課題(項目別2)
「2023年度日系企業進出実態調査(アフリカ編)」によると、投資環境面での課題(複数回答可)について回答した225社のうち122社が「インフラの未整備」を課題とし、うち、54%が道路、25.9%が港湾と回答した。71社が「貿易制度面」を課題とし、うち69.0%が「通関に時間を要する」と回答した。

出所:2023年度 海外進出日系企業実態調査(アフリカ編)

リスクもチャンスもあるフロンティア

アフリカには54カ国あり、貿易品目や港湾・鉄道・道路の状況、法律・制度などは各国で異なる。人口が多くても政治不安定な場合や、経済規模が小さい場合もあるため、実際にビジネスを検討する際には留意する必要がある。また、AfCFTAの進展がなければ、各国それぞれで書類手続きや通関が必要になり、時間とコストがかかる。

アフリカでも、長期視点で見れば、現地への投資や貿易などのビジネスのポテンシャルの高い国もある。前述のとおり、国別に見ると、コンゴ民主共和国、エチオピア、タンザニア、エジプト、スーダン、ウガンダ、ケニアなどで人口増加が著しい。エチオピアやウガンダは内陸国のため、拠点港のジブチ港やモンバサ港など貨物も増えるだろう。

アフリカの1人当たりGDPの水準は約2,000ドルと、全体としてはまだ低いが、1人当たりGDPが高く、人口も多い国を見ると、南ア、エジプト、モロッコ、アルジェリアなどが挙げられ、これらの国々では自動車も生産される。南ア、エジプトではトヨタ、日産、いすゞなど日系企業が現地での組み立て生産も行う。南アのダーバン港やモロッコのタンジェ港、エジプトのポートサイド港の近郊などでは、住友電装などの自動車部品メーカーなども進出している。アフリカの工業化ランキングを見ても、南ア、モロッコ、エジプトの順で工業化が進んでおり、こうした国では製造業に関する物量や輸出が増える可能性がある。

アフリカでの自動車の生産や貿易、工業化に関しては次のレポートを参照。

執筆者紹介
ジェトロ調査部中東アフリカ課 課長代理
井澤 壌士(いざわ じょうじ)
2010年、ジェトロ入構。農林水産・食品部農林水産企画課、ジェトロ北海道、ジェトロ・カイロ事務所を経て、現職。中東・アフリカ地域の調査・情報提供を担当。