2024年改定、新入国ビザの概要と注意点(インドネシア)
分類細分化に注意

2024年10月23日

インドネシア政府は、2024年1月9日から、法務人権大臣規則2023年第22号を根拠とした、新しいビザシステムの運用を開始した。本稿では、出張者および駐在員の取得頻度の高いビザについて取り上げ、変更点と注意点を解説する。

活動内容に応じ、ビザの種類が細分化

法務人権大臣規則2023年第22号では、ビザの種類が目的別に細分化され、各ビザの活動範囲が定義し直された。インドネシアでは同国入国に必要な査証(ビザ)に関して、アルファベットと数字の組み合わせからなるインデックス番号により活動内容のカテゴリーが規定されている(表参照)。

表:インドネシア渡航に際して必要なビザの種類
変更前 変更後 呼称 発給対象者の活動内容 滞在期間 延長
B213 B2 到着ビザ(VOA、Visa on Arrival) 会議、商談、交渉、契約締結、買い付けなど。オフィス、工場、生産現場での活動が可能 30日
最長60日
B211A
B211B
C2 ビジネスビザ(シングル) 会議、商談、交渉、契約締結、買い付けなど。オフィス、工場、生産現場での活動が可能 60日
C17 監査ビザ(シングル) インドネシアにある自社の支店での監査、品質管理、検査 60日
C19 アフターセールスサービス・ビザ インドネシア国内の顧客に対する海外製品のアフターサービスに関する活動 60日
C20 機械据え付けビザ 機械据え付け、修理サービス(海外からの設備購入の一環としてインドネシアで行う、機械の設置・修理サービスに関する活動) 60日
D212 D2 ビジネスビザ(マルチプル) 会議、商談、交渉、契約締結買い付けなど。オフィス、工場、生産現場での活動が可能 1回の滞在につき最長60日
(有効期間は1年、2年、5年から選択)
不可
D17 監査ビザ(マルチプル) インドネシアにある自社の支社での監査、品質管理、検査 1回の滞在につき最長60日
(有効期間は1年、2年から選択)
C312 E23 雇用ビザ  雇用契約に基づく就労(給料の発生を伴う) 180日、1年、2年から選択

注:変更前と変更後のビザの区分はあくまでも参考であり、厳密に一対一で対応しているわけではない。また、出張者および駐在員の取得頻度が高いと思われるビザに限定をしていることに注意。
出所:インドネシア法務人権大臣決定2023年M.HH-02.GR.01.および入国管理局ウェブサイトからジェトロ作成

ビザの取得方法に関しては、到着ビザ(VOA、Visa On Arrival)を除いては、原則オンラインでの申請と電子査証(eVISA)の取得が義務付けられている。VOAは到着空港で直接取得することが可能だ(オンライン、空港での取得ともに、手数料は50万ルピア(約4,700円、1ルピア=約0.0094円)。

また、ジャカルタのスカルノハッタ国際空港では、2024年8月時点で、顔認証ゲートで入国審査がおこなわれるため、従来の係官による審査に比べ大幅に短い時間で入国できる。

工場立ち入りについては引き続き注意が必要

これまでは、工場への立ち入りが認められるビザは、主にB211Bシングルビザに限定されていた。VOAで入国し工場を訪問することは、本来の滞在目的を超える活動として許可されず、外国人が出入国管理総局に拘束されるケースが発生していた。

今回の大臣規則改正により、これまで工場への立ち入りが認められていなかったVOAでも、工場訪問が可能となったと見受けられる。工場への立ち入りが可能と読み取れるビザごとの主な活動可能範囲は次のとおり(注)。

  • B2、C2、D2は、工場立ち入りとオフィスでの打ち合わせ両方が可能。
  • C17、D17は、自社のインドネシア支社における監査、生産品質管理、検査の実施が可能。
  • C19は、顧客に対するアフターサービスに関する活動が可能。
  • C20は、機械据え付け・修理サービスが可能。

ただし、運用が安定するまでは、状況を注視する必要がある。ビザの取得支援を行う現地コンサルタントによれば、出入国管理総局の中には、「到着ビザは当地に駐在員事務所や現地法人がない、つまりスポンサー会社がなく、ビジネスビザなどを取得できない場合のために用意しているものだ。一方、当地にスポンサー会社がある場合には、ビジネスビザなどを申請し、取得することが必要だ」と発言する担当官もいるという。同コンサルタントは、「ビジネスビザの取得が必要と解釈する担当官もいるため、工場立ち入りにはC2やD2を取得するほうが安全だ」とした。

また、今回の改正により、例えばC17〔監査ビザ(シングル)〕を取得し入国した場合には、自社のインドネシア支社における監査などのみが可能であり、他社(顧客)に訪問してアフターサービスを提供することはC19(アフターセールスサービス・ビザ)の活動範囲に該当するため、不可とされている。同コンサルタントは、「ビザの活動範囲が細分化されたことで、複数の目的をもって活動したい場合は、いったん出国して別カテゴリーのビザを取得する必要がある」とする。

渡航目的に沿った適切な査証取得を

インドネシアでは、労働省、入国管理総局、警察署などで構成されたTIMPORA (Tim Pengawasan Orang Asin)という、外国人が、適切なビザに基づき滞在・活動を行っているのか管理・監督するチームが存在する。一例として、インドネシアでは外国人を宿泊・滞在させるときに、宿泊施設が入国管理局に報告する義務がある。ビザ取得時に登録された情報と異なる場合は、立ち入り検査などが行われる可能性がある。

ビザにかかる要件やインドネシア出入国管理総局ウェブサイト上の情報は、予告なく変更されることがある。本稿の内容は2024年8月時点の情報を基としたものであるため、ビザ申請時には最新情報の確認が必要だ。出入国管理局または在本邦インドネシア共和国大使館(インドネシア語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます在大阪インドネシア共和国総領事館(インドネシア語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます で問い合わせを受け付けている。


注:
各ビザの活動内容の詳細は在本邦インドネシア共和国大使館(連絡先:info@kbritokyo.jp)に要確認。
執筆者紹介
ジェトロ・ジャカルタ事務所 経済連携促進アドバイザー
中沢 稔(なかざわ みのる)
1982年、総合商社に入社。1998年ジャカルタ駐在、2013年韓国駐在、2016年にインドネシアのプルワカルタの自動車部品メーカーへの出向を経て、2018年から現職。