2023年の乗用車新規登録台数、BEVが急伸(フランス)

2024年6月3日

2023年のフランスの乗用車新規登録台数は前年比16.1%増の177万4,723台だった。うち、バッテリー式電気自動車(BEV)の新規登録台数は47.0%増の29万8,219台、プラグインハイブリッド車(PHEV)は28.8%増の16万2,950台と大幅に増加した。

新規登録台数は増加するも、新型コロナウイルス危機前の水準には戻らず

フランス自動車工業会の発表資料PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(99KB)(フランス語)によると、2023年の乗用車新規登録台数は前年比16.1%増の177万4,723台となり、1974年以降で最低の水準だった2022年の152万9,035台から持ち直した。新型コロナウイルス危機後の急激な景気回復で深刻化した半導体や電子部品などの部素材不足が解消に向かい新車供給の遅れが改善した。ただし、200万台を超えた新型コロナウイルス危機前の水準には届かなかった(2019年は221万4,279台)。中古車販売市場は前年比0.2%減の519万5,565台と伸び悩んだ。中古車の在庫増加で、価格上昇は穏やかになり安定したが、価格は依然高い水準で推移しており、中古車の購入を控える動きが続いた。

小型商用車(車載量5.1トン未満)の新規登録台数は前年比9.0%増の37万9,230台、大型トラック(車載量5.1トン以上)は4万8,853台となり前年から11%増加した。

乗用車新規登録台数をメーカー・ブランド別にみると(表1参照)、ルノー・グループは、ルノーが前年比17.6%増の27万7,914台、グループ傘下のルーマニア・ダチアは19.5%増の15万6,390台と増加した。日産は3万6,450台で34.2%増となった。

ステランティスは、プジョーが前年比1.7%減の24万1,512台、シトロエンが3.0%減の12万5,932台で前年に続き減少した一方、フィアットは10.5%増の4万336台と伸びた。

外国勢では、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)が前年比23.6%増の12万225台となり、前年はトップだったトヨタを抜いて最大シェアを取り戻した。トヨタは7.7%増の10万7,950台と前年の伸びを上回った。高級車ブランドは、メルセデス・ベンツが8.0%増の5万1,836台、BMWが31.2%増の5万9,601台、アウディが13.1%増の4万9,417台といずれも減少した前年から持ち直した。

韓国勢は、起亜が前年比6.4%増の4万9,192台、現代が4.9%増の4万9,400台と前年並みの伸びを示した。米国製は、フォードが9.7%増の5万1,649台となったほか、BEV市場の拡大を受け、テスラは6万3,041台と前年の2万9,199台から倍増した。中国MGモーターは、2022年10月に市場投入したコンパクトBEVモデル「MG4」の売れ行きが好調で、通年の新規登録台数は3万3,374台と前年の1万3,170台から急増した。

表1:2023年の主要メーカー・ブランド別
乗用車新規登録台数 (単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー・ブランド 登録台数 前年比
ルノー 277,914 17.6
プジョー 241,512 △ 1.7
ダチア 156,390 19.5
シトロエン 125,932 △ 3.0
フォルクスワーゲン 120,225 23.6
トヨタ 107,950 7.7
テスラ 63,041 115.9
BMW 59,601 31.2
メルセデス・ベンツ 51,836 8.0
フォード 51,649 9.7
アウディ 49,417 13.1
現代 49,400 4.9
起亜 49,192 6.4
オペル 43,237 19.9
フィアット 40,336 10.5
日産 36,450 34.2
MG 33,374 253.4
合計(その他を含む) 1,774,723 16.1

出所:フランス自動車工業会(CCFA)資料、MGプレスリリースを基にジェトロ作成

モデル別にみると、ルノー「クリオV」が 9万7,471台と最多だった。これに、前年トップだったプジョーの「208 II」の8万6,263台、ダチア「サンデロ3」の6万9,106台が続いた。ステランティス、ルノー・グループのモデルがトップ10を占める中、外国勢では唯一、テスラの「モデルY」が8位に入った。トヨタの「ヤリスクロス」は3万1,073台で11位だった。

乗用車と小型商用車で電動化が加速

乗用車新規登録台数を燃料タイプ別にみると、BEVが前年比47.0%増の29万8,219台で、全体に占める割合は前年の13.3%から16.8%に拡大した。PHEVの新規登録台数は前年比28.8%増の16万2,950台だった。BEVとPHEVを合わせると、新規登録台数全体に占める割合は26.0%となった。PHEVを除くハイブリッド車(HEV)の登録台数は29.9%増の43万2,299台と大きな伸びを示した。乗用車新規登録台数に占めるHEVの割合は24.4%となった(表2参照)。

HEVは、フランスの2019年モビリティ・オリエンテーション法が規定する2040年での新車ガソリン・ディーゼル車販売禁止までの移行期におけるBEVの代替車として購入されている。同じセグメントのBEVと比べるとHEVは相対的に価格が低く、航続距離や充電に不安がない。環境報奨金(エコカー購入補助金)制度の適用対象にはならないが、ガソリン車に比べると燃費が良く、低所得者層向け新車買い換え補助金の対象となるのも魅力のようだ。

他方、前年は減少したガソリン車は12.8%増の64万1,582台と増加に転じた。HEVやBEVに比べると安い価格で購入でき、特に都市部で需要が高いコンパクトカーの新車を2万ユーロ未満で購入できるガソリン車の人気は依然根強い。全体に占める割合は36.2%と燃料別の登録台数で最大シェアを占めた。

ディーゼル車は28.2%減の17万1,728台と減少が続き、初めて20万台を切った。ディーゼル車の占める割合は全体の1割を下回った。

表2:燃料タイプ別乗用車新規登録台数 (単位:台、%)(△はマイナス値)
燃料タイプ 2022年 2023年
登録台数 登録台数 構成比 前年比
ガソリン 568,881 641,582 36.2 12.8
ディーゼル 239,105 171,728 9.7 △ 28.2
ハイブリッド車(HEV) 332,669 432,299 24.4 29.9
プラグインハイブリッド車(PHEV) 126,547 162,950 9.2 28.8
バッテリー式電気自動車(BEV) 202,929 298,219 16.8 47.0
その他(注) 58,904 67,945 3.8 15.3
合計 1,529,035 1,774,723 100.0 16.1

注:燃料電池、液化天然ガス、バイオエタノールなど。
出所:フランス自動車工業会(CCFA)資料を基にジェトロ作成

BEVの乗用車新規登録台数をモデル別にみると、テスラ「モデルY」が最大で3万7,127台だった。これに、ダチア「スプリング」の2万9,761台、テスラ「モデル3」の2万4,539台、フィアット「500」の2万4,120台が続いた。MGモーターの「MG4」は2万72台で6位となり、5位プジョー「e208」の2万2,700台に迫った。ルノーは「メガーヌ」が1万7,623台で7位、「トゥインゴ」が8,503台、「ゾエ」が5,990台と振るわなかった。

車両重量3.5トン以下の小型商用車の新規登録台数を燃料別にみると、ディーゼル車が29万1,408台で前年に比べ1.6%減となったものの、構成比では77.1%と最大だった。ガソリン車は78.7%増の4万2,570台(構成比11.3%)と前年から大幅に増加した。BEVおよびPHEVは前年から76.7%増の3万277台となった(構成比8.0%)(表3参照)。

表3:燃料タイプ別小型商用車新規登録台数 (単位:台、%)(△はマイナス値)
燃料タイプ 2022年 2023年
登録台数 登録台数 構成比 前年比
ガソリン 23,824 42,570 11.3 78.7
ディーゼル 296,136 291,408 77.1 △ 1.6
ハイブリッド車(HEV) 7,095 9,539 2.5 34.4
バッテリー式電気自動車(BHV)・プラグインハイブリッド車(PHEV) 17,131 30,277 8.0 76.7
その他(注) 2,883 4,246 1.1 47.3
合計 347,069 378,040 100.0 8.9

注:燃料電池、液化天然ガス、バイオエタノールなど。
出所:フランス自動車工業会(CCFA)資料を基にジェトロ作成

トラックの新規登録台数は車両重量3.5トン超16トン未満のトラックおよび16トン以上の大型トラックともにディーゼル車が増加し(前者は19%増の5,442台、後者は8.3%増の4万329台)、新規登録台数全体に占める割合は両者ともに9割超(前者90.7%、後者92.4%)となった。16トン以上の大型トラックではBEVおよびPHEVの新規登録台数が551台となり、前年の118台から急増した。

なお、欧州電気自動車協会フランス支部AVERE Franceによると、公共用充電スタンドの数は2023年12月末時点で11万8,009カ所と前年より44%増加した。充電器全体の総出力も430万9,255キロワット(kW)と前年の221万2,391kWから大幅増となった。政府は、2023年5月に10万カ所の設置目標が達成されたことを受けて、2030年までに充電スタンドの数を40万カ所に増やす新たな目標を設定した。

欧州自動車工業会(ACEA)の発表によると、2023年のフランスの国内乗用車生産台数は95万9,404台と前年から1.2%増加したが、新型コロナウイルス危機前の水準(2019年は167万5,198台)の6割弱にとどまった。

フランス政府は、2030年までに年間200万台のEVおよびゼロエミッションカーの国内生産と2027年までのバッテリーの自給自足を目標に掲げる。総額540億ユーロの国家投資計画「フランス2030」の枠内で低炭素モビリティ関連のプロジェクト293件に17億ユーロの補助金を支給した(2023年12月11日付政府発表報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.61MB)(フランス語))。同プロジェクトの実現により、2027年までに年間100万台のEVの国内生産が確実になった。

バッテリーについては、2023年5月に発表したバッテリー国家戦略の中で2030年までに国内生産規模を100~120ギガワット時(GWh)に拡大する方針を示した。これに向けて政府は「フランス2030」の中で、中国系エンビジョンAESC、台湾プロロジウム・テクノロジー、ACC(ステランティス、メルセデス・ベンツ、トタルエナジーズのバッテリー製造合弁会社)、フランス・スタートアップ企業ベルコールによる国内4カ所のメガファクトリーの建設を支援することを決めた。いずれも北部オー・ド・フランス地域圏に建設される計画で、このうち、ACCは2023年5月に工場を開所(2030年の年間生産規模40GWh)し、ベルコールは2023年11月に工場建設に着工した(2025年までに稼働予定、2030年の年間生産規模50GWh)。

中国車の輸入が前年から倍増

フランス税関の統計によると、乗用車(HS コード8703)の輸出台数は前年比4.5%減の133 万4,397台となった。輸出相手国1位はベルギーで1.1%増の19万3,288台、3位のイタリアは3.8%増の13万8,438台と堅調な伸びになったが、2位のドイツは21.2%減の15万7,399台と前年に続き減少した。ポルトガル(22.3%増、9万6,736台)と英国(26.0%増、9万4,817台)が2年連続で大幅増となる一方、スペインは10.8%減の8万7,721台と減少が続いた。トルコは8万886台と前年から3倍以上の増加を示した。ポーランドは5万9,012台で71.3%減少した。日本は8,150台で42.8%増加した。

輸入台数は前年比 11.0%増の204万254台だった。最大輸入相手国のスペインは36万1,106台と前年より8.4%減になった。2位のドイツは21.9%増の26万6,270台と伸びたが、新型コロナウイルス危機前の水準(2019年は27万4,905台)には届かなかった。3位のルーマニアは12.0%増の16万9,715台となった。中国は13万4,864台と前年の6万8,574台からほぼ倍増し、韓国(3.1%増、7万9,149台)を抜き6位に躍進した。英国からの輸入も6万439台と83.6%増になった。日本からの輸入は53.0%増の4万1,536台と前年の減少から増加に転じたが、新型コロナウイルス危機前の水準を大きく下回った(2019年は6万6,538台)。

執筆者紹介
ジェトロ・パリ事務所
山﨑 あき(やまさき あき)
2000年よりジェトロ・パリ事務所勤務。
フランスの政治・経済・産業動向に関する調査を担当。