2023年の新車販売台数は120万台突破、EVは2.5倍に(オーストラリア)

2024年6月19日

オーストラリアの2023年の新車販売台数は、前年の100万台超えからさらに増加して120万台に到達し、過去最高を記録した。電気自動車(EV)も前年から2.5倍に急増し、9万台を超えた。新車販売台数に占めるEVの割合は前年の3.6%から8.1%まで上がった。連邦政府は2024年3月、EVを含む低排出車を国内に普及させるため、新車自動車の二酸化炭素(CO2)排出基準案を議会に提出し、5月16日に可決された。2025年1月から施行を予定している。

2023年の新車販売台数は過去最高を記録

オーストラリア連邦自動車産業会議所(FCAI)によると、2023年の新車販売台数は前年比12.5%増の121万6,780台となり、過去最高記録を達成した(表1参照)。海外での自動車生産が回復し、好調な国内需要に供給が追い付いた形となった。タイプ別にみると、乗用車は4.1%増の21万1,631台、国内で人気の高いスポーツ用多目的車(SUV)は18.2%増の67万9,462台とさらに好調だった。総販売台数に占めるSUVの割合は55.8%と過半数を占め、2022年(53.1%)から2.7ポイント上昇した。

表1:オーストラリアにおける新車販売台数(単位:台、%)
タイプ 2021年 2022年 2023年 前年比
増減 伸び率
乗用車 221,556 203,056 211,361 8,305 4.1
SUV 531,700 574,632 679,462 104,830 18.2
その他自動車 296,575 303,741 325,957 22,216 7.3
合計 1,049,831 1,081,429 1,216,780 135,351 12.5

出所:オーストラリア連邦自動車産業会議所(FCAI)発表資料からジェトロ作成

新車販売台数をメーカー別にみると、トヨタ自動車が21万5,240台と引き続き首位だったが、前年比では6.8%減少したことから、新車販売台数に占める同社のシェアは前年の21.4%から17.7%に低下した(表2参照)。2位のマツダは4.5%増の10万8台で、順調に販売台数を伸ばしたが、シェアは8.2%と前年(8.9%)からやや縮小した。フォードは31.8%増の8万7,800台と大きく伸び、シェアが7.2%と前年(6.2%)から拡大するとともに、順位も前年の6位から3位に上昇した。また、2023年に販売台数を最も伸ばしたのはテスラで、2.4倍の4万6,116台(シェア3.8%)となり、初めてトップ10位圏内に躍り出た。

表2:メーカー別新車販売台数(上位10社)(単位:台、%)(△はマイナス値、-は値なし)
順位 メーカー 2021年 2022年 2023年 前年比
台数 増減率
1 トヨタ 223,642 231,050 215,240 △ 15,810 △ 6.8
2 マツダ 101,119 95,718 100,008 4,290 4.5
3 フォード 71,380 66,628 87,800 21,172 31.8
4 起亜 67,964 78,330 76,120 △ 2,210 △ 2.8
5 現代自動車 72,872 73,345 75,183 1,838 2.5
6 三菱自動車 67,732 76,991 63,511 △ 13,480 △ 17.5
7 MGモーター 39,025 49,582 58,346 8,764 17.7
8 テスラ 19,594 46,116 26,522 135.4
9 スバル 37,015 36,036 46,114 10,078 28.0
10 いすゞUTE 35,735 35,323 45,341 10,018 28.4

出所:FCAIおよびオーストラリア電気自動車協会(EVC)発表資料からジェトロ作成

モデル別では、前年に2位だったフォードの「レンジャー」が前年比33.4%の6万3,356台で、2023年の最も売れた車種となった(表3参照)。直近3年間首位を維持していたトヨタ自動車の「ハイラックス」は5.1%減の6万1,111台で2位となった。また、販売台数の伸びが最も大きかったのは、テスラの「モデルY」で3.3倍の2万8,769台に急増した。また、上海汽車傘下MGモーターの「ZS」(30.2%増、2万9,258台)、いすゞUTEの「ディーマックス」(28.2%増、3万1,202台)も好調だった。なお、上位10モデルのうち6モデルが日本のメーカーで、メーカー別(表2参照)でも10社中5社が日本企業だった。

表3:モデル別新車販売台数(上位10モデル) (単位:台、%)(△はマイナス値、-は値なし)
順位 モデル(メーカー) 車種 2021年 2022年 2023年 前年比
台数 増減率
1 レンジャー(フォード) ピックアップ
トラック
50,279 47,479 63,356 15,877 33.4
2 ハイラックス(トヨタ) ピックアップ
トラック
52,801 64,391 61,111 △ 3,280 △ 5.1
3 ディーマックス(いすゞUTE) ピックアップ
トラック
25,117 24,336 31,202 6,866 28.2
4 RAV4(トヨタ) SUV 35,751 34,845 29,627 △ 5,218 △ 15.0
5 ZS(MGモーター) SUV 18,423 22,466 29,258 6,792 30.2
6 モデルY(テスラ) SUV 8,717 28,769 20,052 230.0
7 ランドクルーザー(トヨタ) SUV 26,633 24,542 26,449 1,907 7.8
8 アウトランダー(三菱自動車) SUV 8,051 19,546 24,263 4,717 24.1
9 CX-5(マツダ) SUV 24,968 27,062 23,083 △ 3,979 △ 14.7
10 ツーソン(現代自動車) SUV 11,469 17,870 21,224 3,354 18.8

出所:FCAIおよびオーストラリア電気自動車協会(EVC)発表資料からジェトロ作成

2023年のEV販売台数は前年から2.5倍に急増

オーストラリア電気自動車協会(EVC)が2024年3月に発表した年次報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(5.38MB)によると、2023年のEV(注1)の新車販売台数は前年比2.5倍の9万8,436台となった(表4参照)。2019年の6,718台から5年間で14.7倍に拡大している。2021年以降、バッテリー式電気自動車(BEV)の販売台数が急増しており、2023年は前年比2.6倍の8万7,217台となった。プラグインハイブリッド車(PHEV)も前年比89.0%増の1万1,219台で、BEVより緩やかだが大きく伸びている。内燃機関搭載車を含む全新車販売台数に占めるEVの割合を計算すると、2021年は2.0%、2022年は3.6%、2023年は8.1%と年々拡大している。

表4:オーストラリアにおけるEV販売台数(新車)(単位:台、%)
項目 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 前年比
台数 増減率
BEV 5,292 5,215 17,293 33,416 87,217 53,801 161.0
PHEV 1,426 1,685 3,372 5,937 11,219 5,282 89.0
合計 6,718 6,900 20,665 39,353 98,436 59,083 150.1

出所:オーストラリア電気自動車協会(EVC)、オーストラリア自動車協会 (AAA)発表資料からジェトロ作成

2023年の1年間で最も販売台数が多かったEVのモデルのトップ3は、1位がテスラの「モデルY」(BEV、2万8,769台)、2位が同「モデル3」(BEV、1万7,347台)、3位がBYD「ATTO 3」(BEV、1万1,042台)で、これら3モデルでEV販売台数の58.1%を占めた。EVの販売台数トップ20のうち、日本のメーカーは三菱自動車「アウトランダー」(PHEV)が8位、同「エクリプス クロス」(PHEV)が11位、マツダの「CX-60」(PHEV)が13位の3モデルにとどまった。

低排出車の国内供給を増やすため、政府はCO2排出基準を策定へ

連邦政府は、オーストラリアのGHG(温室効果ガス)排出量(CO2換算)の約2割を占める運輸部門の排出削減を進めるため、2023年4月に「EV戦略」を発表した(2023年5月10日付ビジネス短信参照)。戦略で定めた政府目標(EV普及)実現のため、新車(乗用車、小・中型貨物車)を対象とする「新車効率性基準」(New Vehicle Efficiency Standard:NVES)を新たに設け、CO2排出量の上限値を定める方針を示した。この背景には、オーストラリアでは、自動車をすべて輸入に依存しているが、燃費基準がないため、自動車メーカーからEVなど低排出車の供給が後回しされている状況がある。排出規制の導入により、EVや低排出車の供給を増やしたい考えだ。

NVESは、2回にわたるパブリック・コンサルテーションを経て国会に提出された。2024年2~3月に行われた第2回パブリック・コンサルテーションでは、新車の乗用車と小・中型貨物車(車両総重量4.5トンまで)を対象とし、自動車サプライヤーに対し、車種別に1キロメートル当たりのCO2排出上限値を設定し、一定期間を経ても上限値を達成できない場合、サプライヤーに罰金を科すとする政府案が示された(2024年2月20日付ビジネス短信参照)。これに対して、FCAIは、排出上限値やNVESの導入時期など内容の再検討を求める意見書を提出するなど、9,000件を超える意見書が集まった(2024年3月22日付ビジネス短信参照)。

これらの業界関係者などから寄せられた意見も踏まえて、連邦政府は一部の要件を緩和した基準法案(New Vehicle Efficiency Standard Bill 2024)を策定、国会審議を経て2024年5月16日に成立した。2029年までの段階的なCO2排出上限値の引き上げや、乗用車(注2)の排出上限値は当初案から変更しなかったが、小・中型貨物車のCO2排出上限値を緩和した(表5参照)。また、四輪駆動車(4WD)について、一部の車種(はしご型のラダーフレームで作られているもので3トン以上の牽引能力があるもの)については、より基準の緩い小・中型貨物車(LCV:Light commercial vehicle)に区分した(注3)。また、NVESの導入開始時期は2025年1月で変わらないが、クレジットの売買や罰則の適用開始(注4)は、2025年7月に延期した。

表5:車種別のCO2排出上限値(単位:グラム/1kmあたり)
当初案
(2024年2月時点)
修正案
(2024年5月)
乗用車 小・中型貨物車 乗用車 小・中型貨物車
2025 141 199 141 210
2026 117 164 117 180
2027 92 129 92 150
2028 68 94 68 122
2029 58 81 58 110

注:当初案は、オプションA、B、Cがあり、政府が推奨するオプションBを抜粋。政府はB案をもとに検討を進め、最終的にはB案の小・中型貨物車に適用される排出上限値が修正された。
出所:インフラ・交通・地方開発・通信・芸術省「February 2024 Consultation Impact Analysis」、New Vehicle Efficiency Standard Bill 2024

政策面でもEVを含めた低排出車を国内に普及していくための制度整備が始まったところだが、NVESが2025年1月から施行し、その後EVの普及が進めば、EVの整備士が不足するとされており、どのように新しい職種の人手不足を解消していくのかも課題となる。クリーンエネルギー分野の技術者を増やすため、連邦政府は、2023年から実施している「新エネルギー実習プログラム(New Energy Apprenticeships Program)」について、2024年6月1日から、プログラムの対象分野の範囲を拡大する予定だ。同プログラムは、見習い中の実習生に対して、最大1万オーストラリア・ドル(約104万円、豪ドル、1豪ドル=約104円)の生活費などの支援を提供するもの。拡大される分野は、クリーンエネルギー先端産業、住宅建設、再生エネルギーのほか、EVも含まれており、EVの取り扱いを学ぶ見習いのEV整備士の育成が進むことが期待される。


注1:
EVCは、プラグインにより充電できるあらゆる自動車を電気自動車(EV)と定義しており、バッテリー式電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)が含まれる。
注2:
政府ウェブサイトで公表されている「New Vehicle Efficiency Standard Bill 2024」によると、車種別の定義として「Type 1 vehicle」は、連邦政府が規定するオーストラリア・デザイン・ルール(Australian Design Rules: AD)にあるMカテゴリー(乗用車:Passenger vehicles)の一部に該当するもの。具体的には、Mカテゴリーは、MA(乗用車)、MB(フォーワードコントロール乗用車)、小型オフロード車(light off-road passenger vehicle)。「Type 2 vehicle」は、Nカテゴリー(貨物車)の一部に該当するもの。Nカテゴリーは、NA(車両総重量が3.5トンを超えない小型貨物車)、NB1(車両総重量が3.5トンを超え、4.5トンまでの中型貨物車)、大型オフロード車(heavy off-road passenger vehicle)。大型オフロード車の定義など詳細は、New Vehicle Efficiency Standard Bill 2024PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(769KB) のSection15を参照。
注3:
4WDのカテゴリー分けについては、インフラ・交通・地方開発・通信・芸術省の「New Vehicle Efficiency Standard Fact Sheet」(March 2024)を参照。
注4:
ペナルティーは、最終的に1キロ当たり1グラムを超えるごとに100豪ドルを課す案が採用されている。
執筆者紹介
ジェトロ・シドニー事務所
青島 春枝(あおしま はるえ)
2022年6月からジェトロ・シドニー事務所勤務(経済産業省より出向) 。