財政収支均衡や産業インフラ整備が急務(メキシコ)
シェインバウム次期政権に重い経済課題
2024年9月18日
メキシコで2024年10月1日、新政権が発足する。クラウディア・シェインバウム次期大統領は、6月2日実施の大統領選挙で59.76%を得票。国民の圧倒的な支持を得たかたちだ。当地初の女性大統領になる。
アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)現大統領の後継者でもある。そのため貧困層の生活向上を第一に、福祉政策重視の姿勢が継続するとみられる。一方、AMLO政権下の6年間、経済政策上の課題が蓄積した。新政権で、迅速に対処する必要に迫られる。
特に経済政策面から、次期政権の課題を分析する。
「第4次変革(4T)の2階部分を建設」掲げ
シェインバウム氏は、メキシコ国立自治大学(UNAM)で環境工学博士号を取得。AMLO大統領がメキシコ市長だった2000年、同市の環境長官に任命された。この際、メトロバス〔メキシコ初のバス・ラピッド・トランジット(BRT)システム〕の導入に尽力している。その後1度、研究職に戻った。2015年の選挙でメキシコ市トラルパン区長に、2018年7月にはメキシコ市長に当選した。
2023年6月、大統領選に立候補するため市長を辞職。AMLO大統領が2014年に設立した左派政党「国家再生運動(Morena)」の公認候補になった。AMLO政権が推し進めた「第4次変革(4T)」の継続・発展を訴えた。その結果、国民の大多数の支持を得て大統領に当選している。
4Tは、貧困層の生活向上を第一に、社会福祉を充実する政策だ。「4」には、メキシコで4回目の自由主義的変革という含意がある。前3回〔(1)メキシコの独立戦争(1810~1821年/スペインから独立)、(2)ベニート・フアレス大統領による自由主義革命(「レフォルマ戦争」、1857~1861年)、(3)メキシコ革命(1910~1920年)〕とは異なり、武力を伴わずに実現しようという理想を掲げる。その背景には、1980年代後半から2018年まで続いた新自由主義経済政策(ネオリベラリズム)への反発があった。ネオリベラリズムが貧富の格差を拡大し、一部の富裕層や権力者に富と権力が集中。対照的に、貧困層は開発から取り残された。その現状を打破しようというのが、AMLO大統領の思想だった。
市場メカニズムを完全に否定まではしない。ただし、(1)経済成長よりも、富の分配を、(2)企業活動の活性化よりも、貧困層が多く居住する農村の振興を、(3)メキシコ経済を牽引する北部や中央高原のさらなる発展ではなく、低開発地域の南部の開発を、重視する。この考え方は、国民の約4割を占める貧困層から支持を受けた。しかし極度に分配を重視するとなると、経済成長や企業活動の促進がないがしろになりかねない。このことから、大企業を中心に、企業家には望ましい政策と映っていない。
シェインバウム氏は、AMLO大統領の後継者としてMorenaから大統領候補に指名された。実際、選挙戦で「4T政策を今後も継続する」「現政権下で積み上げてきた土台上に2階部分を建設する」と主張。4Tを単に引き継ぐだけでなく、深化させることを示したかたちだ。従って、現政権下で総合福祉政策(Programa Integral de Bienestar)として展開されてきた補助金、奨学金、年金は今後も継続されることになる。また一部は、拡充されることになるだろう。
財政収支均衡に大きなハードル
4T政策にコミットした新政権には、特に経済面で解決しなければならない課題が多い。最大の課題として挙げられるのは、財政収支の均衡を保てるかどうかだ。
拡充した福祉政策の財源を確保する必要があるからと言って、AMLO政権が増税策を採用することはなかった。最終年を除いて、借金をして歳出を賄ってもいない。左派と呼ばれることが多いAMLO政権も、財政政策だけみると、2023年まではオーソドックスな政策を貫いたということになる。実際、収支はおおむね均衡を保ってきた。
片や、必要な財源は(1)大統領や高給官僚の給与削減、(2)官庁の人員整理、(3) AMLO大統領が重視しない政策を担う省庁の予算削減などで賄った。ただし、このような対応に副作用もある。まず、連邦省庁の人員整理や高級官僚の給与カットにより、優秀な官僚が去ってしまった。結果、連邦行政手続きの遅延や品質の低下が顕著になり、企業のビジネス環境は総じて悪化した。実際、進出日系企業の操業にも影響を与えている。また、福祉財源確保のために徴税が強化され、大企業や外資系企業への税務調査が頻発。官僚の質的低下も相まって、理不尽な更正通知を受ける企業が増えた。
それでも、2023年までは財政収支均衡を守ってきた。しかし、2024年度(注1)予算からは状況が一変する。大蔵公債省は2023年9月8日、2024年度歳入法案と歳出計画を国会に提出。その骨子は、次のとおりだった。
- 基礎的財政収支(プライマリー収支、注2)が、GDP比で1.2%の赤字に転落。総合収支も4.9%の赤字に拡大する。
- 歳入が前年度予算比で実質1.8%減少する一方、歳出は4.3%拡大。
- 石油収入や手数料収入などを除いた税収が2.1%増を見込むのに対し、計画的な歳出(一般会計)が4.0%増。税収が増えたとしても、それ以上に歳出が増える。
また、2024年3月末に大蔵公債省が発表した報告(注3)によると、2024年のプライマリー収支はGDP比マイナス1.4%、総合収支は同マイナス5.0%。赤字幅がさらに拡大する見通しだ(図1参照)。
財政赤字拡大の背景には、(1)総合福祉政策の拡充と(2)公共事業の拡大がある。(1)は、2024年6月2日の総選挙を視野に入れた施策。(2)は、AMLO大統領が重視する大規模インフラ工事を政権任期内に終わらせるためだ。(1)と(2)を合計すると、2024年度一般会計の約15%に及ぶ。特に大きく予算が増えたのは、高齢者一律年金(注4)。前年比で、実に32.2%増。4,650億ペソ(約3兆4,410億円、1ペソ=約7.4円)に及ぶ規模になり、一般会計予算の7.2%を占めた。
では、来年度以降はどうか。大蔵公債省によると、2025年度の総合収支をGDP比2.5%の赤字、プライマリー収支は0.9%黒字の見通しだ。いずれも、回復することにはなる。しかし、これは楽観的すぎるとの見方が強い。AMLO大統領が2024年2月5日に国会に提出し、その多くが現在連邦下院の委員会で審議中の法改正案(憲法改正を含む)20件(2024年2月7日付ビジネス短信参照)には、現政権下で進めてきた総合福祉政策に基づく補助金や奨学金を憲法で保障する内容を含む。実現した場合、次期政権は独自の歳出政策を選択する自由度を当初から失うことになる。換言すると、膨れ上がった所得分配政策と重い財政負担を、今後継続して余儀なくされる。それどころか、大統領選挙戦で貧困層の支持獲得を視野に入れ、社会福祉政策の継続と拡充を主張したのはシェインバウム氏自身だった。例えば、高齢者一律年金について、60~64歳の女性を新たに一律支給の対象に加えると公約している(現行では65歳以上の男女)。複数の専門家によると、この改正だけで年間446億ペソの歳出拡大を見込まなければならない(「エル・エコノミスタ」紙2024年6月3日付)。
さらに、現政権の4T政策を継続するということは、エネルギーナショナリズムの思想も受け継ぐことになる。AMLO政権下では当該思想から、国営企業の石油公社(PEMEX)や電力庁(CFE)に巨額を投じて財政支援した。特にPEMEXに対しては、本来PEMEXが国庫に支払うべき利益分配税(DUC)を複数回にわたって免除している。メキシコ競争力研究所(IMCO)によると、現政権下6年間でPEMEXが享受することになるDUC免除額は1兆5,000億ペソに及ぶと見込まれる(IMCOウェブサイト2024年2月20日)。メキシコのシンクタンクの経済予算調査センター(CIEP)は、(1)次期政権がPEMEXに同様の支援を継続する場合、今後6年間の財政支出は1兆3,710憶ペソに及ぶ、(2)CFE向け支援(家庭用電力の補助金を含む)と合わせると、2兆1,950億ペソ、と試算した(「エル・フィナンシエロ」紙2024年7月10日付)。
抜本的な税制改革やインフォーマル対策が必要に
このように、総合福祉政策予算が肥大化し、国営企業に対する財政支援が財政への圧迫を強めているのが現状だ。それでも、シェインバウム次期大統領は当面の間、本格的な税制改革に踏み込まないと公言している。例えば、企業家調整評議会(CCE/日本の経団連に相当)との会合で7月19日、「次期政権では抜本的な税制改革は視野に入れていない。徴税の電子化と税関の近代化で税収を上げる」と語った。
これに対し、税制改革は喫緊の課題と反論する声もある。ディエゴ・カスタニェダ氏(経済学者、歴史家)は「税制改革を否定するのは大きな誤りで、税制改革こそが次期政権の最大の改革」と語る。モンテレイ工科大学のエクトル・ビジャレアル教授も「メキシコが次期政権の最初の2年間で財政基盤を強固にしない場合、メキシコのソブリンリスクが急激に高まることになる」とし、国債市場への悪影響を懸念した。NGOオクスファムのメキシコ事務所長のカルロス・ブラウン氏も「第4次変革の2階部分は〔脆弱(ぜいじゃく)な〕1階部分の徴税の基礎の上に建設することはできない」と揶揄(やゆ)。悪化した財政基盤を立て直す必要性を強調した(「エル・エコノミスタ」紙2024年7月20日付)。
ここで、メキシコの税収水準を確認しておく。2022年時点で、メキシコの税収(社会保障費負担を除く)はGDP比14.5%だった。これは、OECD諸国平均の25.0%はおろか、ラテンアメリカ・カリブ主要国の平均17.9%よりもかなり低い(表1参照)。片や所得税の対GDP比は8.0%と、ラテンアメリカ・カリブ平均よりも1.7ポイント高い。ということは、メキシコの課題は付加価値税(IVA)など間接税の税収が少ないことになる。メキシコの間接税収はGDPの5.3%にすぎない。OECD諸国平均の10.7%、ラテンアメリカ・カリブ諸国平均の10.1%と比べると、かなり少ない。
もっとも、IVAの税率は16%。他国と比して極端に税率が低いわけではない。メキシコの間接税収が乏しい要因は主に、(1)税金を支払わない非合法な事業所、すなわちインフォーマル部門の存在が大きいこと、(2)食品や医薬品のIVA税率が0%になっていること、だ。(2)は本来、エンゲル係数の高い貧困層を支援するのが目的だった。しかし、富裕層が食品を購入してもIVAを課税できない。今や、徴税機会を失う弊害の方が大きくなっているといえる。IVAを食品・医薬品にも一律に課税し、影響を大きく受ける貧困層には社会プログラムなどを通じて直接所得を補助した方が徴税効率的には望ましいという専門家の見解は、以前からあった。その実現に向けた動きも、古くは2001年にさかのぼる。しかし、国民に不人気な政策のため、国会で否決されたり、当時の政権が法案を国会に提出すること自体を諦めたりすることが多かった。「民衆、特に貧困層の味方」とアピールするシェインバウム新政権下で、国民の生活に直結するIVAの課税対象拡大に向けた法案が提出される可能性は低いとみられる。
項目 | OECD平均 | ラテンアメリカ | メキシコ | |
---|---|---|---|---|
2022年 | 2022年 | 2010年 | 2022年 | |
所得税 | 12.0 | 6.3 | 5.1 | 8.0 |
間接税 | 10.7 | 10.1 | 4.9 | 5.3 |
資産税 | 1.9 | 0.9 | 0.3 | 0.3 |
その他 | 0.6 | 0.6 | 0.5 | 0.9 |
税収合計 | 25.0 | 17.9 | 10.8 | 14.5 |
注:ラテンアメリカはカリブ諸国も含む主要26ヵ国の平均。
出所:OECD
要因(1)に関しては、インフォーマル部門をフォーマル化し、徴税基盤を拡大する政策を導入すれば良いということにはなる。その必要性は、内外識者から常に指摘されてきた。しかしこれも、次期政権が抜本的に踏み込む可能性は低い。
メキシコのインフォーマル経済は、規模が大きい。2022年時点では、GDP比で24.4%、就業人口で55.3%に及ぶ。インフォーマル経済には、2種類ある。a)事業所自体が非合法な「インフォーマル部門」と、b)事業所としては合法的ながら、そこで働く労働者の就労形態が非合法な「その他インフォーマル」、だ。b)については、税務の電子化などを通じて課税逃れが困難になってきている(注5)ため、少しずつ縮小する傾向にある。しかし、a)は、GDP比で見ても就業人口比でも、過去20年を通じてほとんど縮小していない(図2参照)。a)には、非合法な露天商や行商人などを含み、貧困層が従事していることが多い。その活動を大きく規制することは、現政権支持基盤層の所得にメスを入れることにつながる。次期政権でも同様に、踏み込むことはできないとみられている。
次期大統領が当面のところ税制を改革しないと公言しているのは、そうした理由があってのことだろう。もっとも、2025~2026年の財政運営に苦慮し、政権半ばで税制改革の必要性を再認識する可能性はある。その場合は4T政策の性格上、富裕層に重く課税するメカニズムが検討されることになるのかもしれない。具体的には、(1)個人所得税で高所得層が対象になる累進税率を引き上げる、(2)相続税や資産税を導入する、といった対策などが想定できる。
深刻な送配電インフラ不足、将来的には発電能力の不安も
新政権が経済インフラ分野で最初に直面しそうな課題は、電力に関連するインフラだ。メキシコではニアショアリングの流れを受け、外資系企業の新規進出や生産拡張が顕在化している(2023年10月20日付地域・分析レポート参照)。そのため、工業用の電力需要が拡大する方向にある。
現政権AMLO大統領は、エネルギー分野で国営企業を優先するイデオロギーを持つ。その結果、再生可能エネルギー(再エネ)発電に比較優位を持つ民間ビジネスが阻害されてしまっている。現政権下(2019~2023年)、発電事業への対内直接投資年平均額は、6億1,900万ドルにとどまる。エンリケ・ペニャ・ニエト前政権下(2013~2018年)では13億9,100万ドルだったので、半分以下に縮小したかたちだ(図3参照)。
さらに、国の戦略的分野として国営電力庁(CFE)に委ねられている送配電のインフラ整備が進んでいない。AMLO政権下5年間(2019~2023年)の送電線網の拡張は年平均566キロ。前政権下の年平均(1,492キロ)の半分にも満たない(表2)。また、変電所の建設件数も5年間で105カ所、年平均21カ所に過ぎない。前政権では、年平均31カ所あった。その7割に満たないことになる(図4)。
電圧 |
2012年末 時点 |
2018年末 時点 |
前政権下6年間の拡張 |
2023年末 時点 |
AMLO政権下 5年間の拡張 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
拡張合計 | 年平均 | 拡張合計 | 年平均 | ||||
161~400kV | 50,905 | 55,088 | 4,183 | 697 | 56,409 | 1,321 | 264 |
69~138kV | 48,163 | 52,929 | 4,766 | 794 | 54,437 | 1,508 | 302 |
合計 | 99,068 | 108,017 | 8,949 | 1,492 | 110,846 | 2,829 | 566 |
注:エンリケ・ペニャ・ニエト前政権は、厳密には2012年12月~2023年11月の6年間だが、便宜的に2013~2018年の6年間のデータを採用。同様にAMLO政権下の4年は2019~2023年までの5年間を採用。
出所:エネルギー省(SENER)データから作成
メキシコ最大手の商業銀行BBVAメキシコは2023年7月、メキシコ工業団地協会(AMPIP)の会員企業を対象にアンケート調査を実施した。この調査によると、工業団地デベロッパーが考える外資系企業の進出にとっての障害(複数回答)として最も多かったのは、「電力(の供給不安)」(回答率91%)だった〔ちなみに、これに続いたのが、「行政手続き」(74%)、「水資源」(63%)、「天然ガス」(40%)、「道路へのアクセス」(34%)〕。AMPIP会員の9割以上が、電力供給を不安視しているということになる。
片や、ニアショアの流れで工業団地への企業進出が活発化してきた。こうしたこともあり、既存入居地域で配電容量が足りなくなる事態が生じた団地もある。それでも、CFEは財源に乏しいため、送配電に必要なインフラを自己予算で十分に整備できない。このため、新規に進出・生産拡張した企業によっては自ら国家電力エネルギー管理センター(CENACE)に掛け合い、自社工場付近までの高圧送電線を新たに敷設。新たに変電所を建設することまで余儀なくされている。この場合、企業が経費を負担しながら、完成したインフラは結局、CFEに寄付することになる。
現状では、送配電インフラの問題が多く、国の発電能力自体が不足する事態には至っていない。しかし、ニアショアリングで電力需要が拡大する中、CFEだけでは国が必要とする発電能力を構築することは困難と指摘する声が強い。エネルギー省は2024年~2038年の15年間で、電力需要の年平均増加率を2.6%と見通している。しかし、この見通しは楽観的すぎるとみられている。IMCOのレポート(注6)によると、2023年の電力需要は2022年比で3.5%増加した。一方で、発電能力はわずか0.6%増にとどまる。IMCOはまた、メキシコがパリ協定に基づいて約束した2030年の再エネ発電目標(発電量全体の35%)の達成も困難と指摘する。2023年時点で当該比率は、24.3%にすぎない。
メキシコの発電能力は、過去10年間で年平均3.2%拡大した。しかし、CFEの発電能に限ると同1.0%にすぎない。残りは、民間部門の発電能力の拡大が寄与した。その中でも特に大きく貢献したのは、再エネ発電による長期電力競売(SLP)だ。SLPは、ペニャ・ニエト前政権下で実現した電力市場改革(注7)で導入。民間事業者が参加する競売を通じ、CFEなど電力の買い手がクリーン電力を安価で調達できるメカニズムと言える。前政権が3回にわたって公募し、日本企業を含む多くの外資系企業が応札。その結果として、特に太陽光や風力を活用した発電投資が活性化した。しかし、CFEによる発電を重視するAMLO政権は2018年、新規のSLP案件を凍結してしまった。現政権は一度も公募していない。
項目 | 2013年 | 2015年 | 2017年 | 2019年 | 2021年 | 2023年 | 構成比 |
年平均 成長率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
CFE | 40,419 | 41,899 | 43,300 | 43,008 | 44,181 | 44,680 | 50.7 | 1.0% |
CFE-IPP | 13,616 | 12,953 | 13,247 | 15,376 | 15,898 | 16,664 | 18.9 | 2.0% |
民間部門 | 10,421 | 13,173 | 19,138 | 19,142 | 25,153 | 26,744 | 30.4 | 9.9% |
総発電能力 | 64,456 | 68,025 | 75,685 | 77,526 | 85,232 | 88,088 | 100.0 | 3.2% |
注:CFE-IPPは、CFEとの売電契約に基づく民間独立発電事業者(IPP)の発電能力を指す。
出所:エネルギー省データから作成
各部門別の技術別発電能力をみると、2023年末時点で、再エネ発電能力(太陽光や風力)の大半を担っているのが、民間部門だ(図5参照)。これは、民間発電事業を誘発したSLPの成果と言えるだろう。一方で、CFEが擁する再エネ発電能力は、大規模水力を除くと、地熱と風力(南部オアハカ州)、太陽光(北部ソノラ州)など、わずかにすぎない。ということは、CFEから電力を調達すると、大半が天然ガス・コンバインドサイクル発電を中心として、火力に依存する結果になる。グローバルな脱炭素目標を掲げる多国籍企業にとって、メキシコで操業すること自体が目標達成する上で障害になりかねない。ゼネラルモーターズ(GM)メキシコのフランシスコ・ガルサ社長は2021年11月19日、メキシコ財務幹部協会(IMEF)年次総会のパネルディスカッションで、「再エネ発電を重視する法的・組織的枠組みがメキシコで今後も導入されない場合、GMはメキシコでの新規投資を控えざるを得ない」と警告した。ガルサ社長は、2040年までに世界全工場での使用電力源を100%再エネにする方針をGMが打ち出していることを紹介。「メキシコでその条件が整わない場合、メキシコはもはやGMにとって短期・中期的な投資先となり得ない」と強調。さらに、「今日の投資計画が実現までに5~7年の期間を要することを考えると、本来はメキシコに振り向けるはずだった投資をカナダや米国、ブラジル、中国、欧州など他地域に向ける必要が生じる」とした。「今がメキシコへの投資を決定する上でぎりぎりのタイミング」と述べ、政府に明確な政策を示すよう求めた。
当地の豊富な太陽光などを活用して、自家発電を計画する企業も少なくない。しかし、発電許認可が円滑に取得できない。また、電力需要が1メガワット(MW)を超えると有資格電力利用者になりうる。この場合、再エネで発電した電力だけを扱う民間事業者から電力を調達することができるはずだ。しかし、そのための手続きも、やはり円滑に進まない。(1)エネルギー規制委員会(CRE)に対する有資格利用者としての登録、(2) CENACEに申請する供給事業者の変更許可、(3) CFEの配電部門に対するメーターの交換申請などは、手続きが恒常的に遅延している。
シェインバウム次期大統領は、新政権の公約を100件、提示。その中で、CFEによる発電能力を国全体の54%に保ち、民間による発電は46%まで認めるとしていた。この54%という比率は、AMLO大統領が以前から主張していた比率で、それを尊重したかたちだ。しかし、CFEは、AMLO政権下で赤字経営に陥った。投資支出を大きく増やすのには限界がある。片や、国家目標を達成するためにも、多国籍企業などのニーズを満たすためにも、再エネ発電能力を増強する必要がある。それをCFE中心でどのように実現していくのか、困難なかじ取りを迫られる。
太平洋岸2大港が飽和、インフラ拡張に待ったなし
AMLO政権下では、インフラ整備があまり進まなかった。進展が見られるのは、大統領が重視する4大プロジェクト(注8)や、一部の水資源関連くらいだ。特に大きな遅れがみられるのが、港湾開発と言える。新型コロナウイルス禍以降の国際物流の回復に伴い、太平洋岸の港湾インフラ、特にマンサニージョ港(メキシコ最大のコンテナ港湾)の飽和が深刻になりつつある。
マンサニージョ港は、陸上敷地面積が252ヘクタールしかない。メキシコの4大商業港の中で最も手狭な港湾だ(表4)。敷地不足は、以前から問題視されていた。目下、ターミナルとして開発できる場所は既に全て利用されている状況だ。このような中で新型コロナ禍以降、コンテナ取扱量が年々増え続けた。2023年には約370万TEU(注9)。現政権下の5年間で、20.1%増えたことになる。また立地上、港湾敷地に入るには隣接する市街地を通過せざるを得ない。結果、港湾の混雑からトラックが滞留し、アクセス道路の深刻な渋滞を引き起こしている。
敷地不足の問題はかねて認識されていたため、マンサニージョ第2港を建設する計画が15年以上前からあった。具体的には、現港湾の南方、コユトラン・ラグーンを開発するという構想だ。現政権下でも実際、2019年7月、マンサニージョ第2港建設計画が発表されたことがある(2019年7月18日付ビジネス短信参照)。しかし結局、何の進展も見られなかった。
既にコンテナ取扱能力が限界に近づいており、早急な対応が必要になる。メキシコ日本商工会議所が2023年11月に実施したアンケート調査でも、メキシコにおける通関上の課題として、「マンサニージョ港」を指摘した企業が42.0%に及んだ。また、そのほとんどが港湾の飽和を問題視している。
マンサニージョ港の太平洋岸の代替として、ミチョアカン州にラサロカルデナス港がある。同港は広大な敷地面積を有するため、コンテナ取り扱い能力には余裕がある。しかし、自動車専用ターミナルが飽和している。同港の自動車取扱量は2023年に69万9,133台に達し、現政権下の5年間で5割ほど増えた。
項目 | 太平洋岸 | 大西洋岸 | ||
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マンサニージョ コリマ州 |
ラサロカルデナス ミチョアカン州 |
ベラクルス ベラクルス州 |
アルタミラ タマウリパス州 |
|
総港湾区画面積(ha) | 437 | 3,834 | 7,723 | 3,075 |
うち陸上敷地面積(ha) | 252 | 1,857 | 441 | 2,700 |
倉庫面積(平方メートル) | 75,620 | 17,159 | 1,030,222 | 51,496 |
ヤード面積(平方メートル) | 1,027,513 | 2,790,640 | 2,327,106 | 1,509,141 |
水深(m)入港水路 | 16.0 | 18.0 | 16.0 | 13.4 |
水深(m)針路変更ドック | 16.0 | 16.5 | 16.0 | 13.4 |
水深(m)コンテナターミナル | 16.0 | 16.5 | 14.0 | 12.5 |
商業バース延長(合計) | 6,789 | 6,038 | 7,985 | 3,747 |
ターミナル数 | 7 | 13 | 21 | 13 |
うちコンテナターミナル | 3 | 14 | 4 | 2 |
貨物年間総取扱量(トン) | 33,754,193 | 29,585,287 | 34,534,025 | 20,828,397 |
コンテナ取扱量(TEU) | 3,698,582 | 1,869,293 | 1,148,325 | 856,414 |
自動車取扱量(台) | 4,266 | 699,133 | 933,603 | 456,538 |
出所:各港総合港湾管理公社(ASIPONA)資料などから作成
項目 | 取扱量 |
伸び率 (5年間) |
構成比 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |||
貨物総量 (トン) |
33,613,246 | 32,176,433 | 28,281,126 | 34,889,236 | 34,441,637 | 33,754,193 | 0.4 | 11.5 |
コンテナ貨物(TEU) | 3,078,513 | 3,069,188 | 2,909,599 | 3,371,438 | 3,473,852 | 3,698,582 | 20.1 | 44.2 |
自動車(台) | 23,228 | 21,099 | 8,058 | 4,511 | 4,306 | 4,266 | △ 81.6 | 0.2 |
注1:伸び率は、2023年の実績の2018年対比。単位%。
注2:構成比は、2023年の取扱量の国内全取扱量に占める比率。単位%。
出所:港湾商船総合調整局(CGPMM)
この背景には、中国からの輸入の急増がある。メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)の統計によると、中国製自動車の輸入販売台数は2022年、前年比約2.3倍の18万2,253台に達した。米国、ブラジル、日本、インドなど他主要国を上回り、輸入車全体で23.8%を占めたかたちだ。その後も、その輸入増が続く。2023年は前年比45.9%増の26万5,882台、構成比29.4%に至った(表7)。近年は米系完成車メーカーを中心に、アジア(中国、韓国、インドなど)から国内市場向けに小型車を輸入する動きがある〔そうした企業のメキシコ工場では、生産を米国市場で売れ筋のスポーツ用多目的車(SUV)やピックアップトラックに集約〕。この流れに加え、MG(上海汽車傘下)、長安汽車(Changan)、北京汽車(BAIC)、江鈴汽車(JMC)など、中国系メーカーが当地市場で本格的に販売するようにもなった。
中国からの自動車輸入急増は、ラサロカルデナス港の自動車専用ターミナルとヤードの飽和を招いた。その結果、日本車を含め、同港に到着する完成車の輸入通関が大きく遅延している。日系船会社へのヒアリングによると、同港での飽和は2022年後半に深刻化。以前は、沖合で滞船が生じるとしても長くて2日程度で済んでいた。しかし、2022年8月には7日、9月には最長で30日も滞船した例があった。遅延の原因には、(1)急速な取扱量増加によって自動車専用ヤードが飽和した以外にも、(2)税関の処理能力、(2)鉄道の貨車・便数不足、(3)車両運搬用トレーラーの不足、(4)トラック運転手の不足など、さまざまな要因が考えられる。それでも、(5)中国からの自動車輸入の急増が一因になっていることは間違いない。2023年はシナロア州マサトラン港など代替港の利用が進んだため、ラサロカルデナス港の混雑は幾分緩和した。しかし、マサトラン港の処理能力にも当然、限界がある。抜本的な解決には至っていないのが実情だ。
自動車専用ターミナルの飽和は、コンテナ貨物の通関にまで悪影響を及ぼしている。同港のコンテナ取扱量は2023年、前年比で5.1%減少した。ラサロカルデナス港のコンテナ取り扱い能力は400万TEUもあるため、コンテナそのものが問題になることはない。しかし、コンテナ貨物を保税区から税関ゲートまで運ぶ輸送ルート(税関レーン)が、輸入自動車のルートと同一になっている。輸入車が恒常的に税関レーンをふさぐので、コンテナ貨物の輸入通関に悪影響を及ぼしているのだ。
ラサロカルデナス港管理公社は、混雑の緩和に努めている。例えば、(1)完成車の輸入通関プロセスを簡素化したり、(2)税関の業務時間外にも通関できるようにする措置を導入したり、(3)新たな自動車ヤード整備するために入札したりしてきた。加えて必要なのは、税関レーン拡張を含む抜本的な対策だろう。
項目 | 取扱量 |
伸び率 23/18年 |
構成比(注) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |||
貨物総量 (トン) |
31,184,989 | 31,544,388 | 16,591,844 | 28,003,924 | 29,795,014 | 29,585,287 | △ 5.1 | 10.1 |
コンテナ貨物(TEU) | 1,314,798 | 1,318,732 | 1,063,675 | 1,686,076 | 2,026,546 | 1,869,293 | 42.2 | 22.4 |
自動車 | 464,889 | 483,364 | 351,993 | 460,959 | 646,578 | 699,133 | 50.4 | 30.3 |
注1:伸び率は、2023年の実績の2018年対比。単位%。
注2:構成比は、2023年の取扱量の国内全取扱量に占める比率。単位%。
出所:港湾商船総合調整局(CGPMM)
原産国 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | ||
---|---|---|---|---|---|
台数 | 台数 | 台数 | 構成比 | 伸び率 | |
中国 | 79,810 | 182,253 | 265,882 | 29.4 | 45.9 |
ブラジル | 80,460 | 99,075 | 120,727 | 13.3 | 21.9 |
米国 | 84,530 | 101,863 | 107,028 | 11.8 | 5.1 |
インド | 104,604 | 67,279 | 84,262 | 9.3 | 25.2 |
日本 | 97,678 | 75,547 | 82,263 | 9.1 | 8.9 |
タイ | 43,676 | 56,909 | 59,399 | 6.6 | 4.4 |
インドネシア | 19,728 | 28,726 | 33,064 | 3.7 | 15.1 |
ドイツ | 19,830 | 24,368 | 26,968 | 3.0 | 10.7 |
スペイン | 25,576 | 13,920 | 25,785 | 2.8 | 85.2 |
カナダ | 13,703 | 15,831 | 23,183 | 2.6 | 46.4 |
韓国 | 22,085 | 12,624 | 15,985 | 1.8 | 26.6 |
英国 | 10,085 | 7,924 | 9,539 | 1.1 | 20.4 |
アルゼンチン | 10,384 | 11,696 | 9,522 | 1.1 | △ 18.6 |
チェコ | 5,905 | 9,692 | 9,238 | 1.0 | △ 4.7 |
コロンビア | 7,990 | 8,679 | 7,392 | 0.8 | △ 14.8 |
フランス | 4,500 | 4,200 | 6,201 | 0.7 | 47.6 |
ハンガリー | 7,506 | 6,447 | 3,641 | 0.4 | △ 43.5 |
ベルギー | 1,586 | 2,685 | 3,389 | 0.4 | 26.2 |
スロバキア | 1,935 | 1,110 | 2,002 | 0.2 | 80.4 |
ポーランド | 356 | 718 | 1,904 | 0.2 | 165.2 |
スウェーデン | 1,677 | 1,248 | 1,753 | 0.2 | 40.5 |
イタリア | 1,480 | 1,780 | 1,582 | 0.2 | △ 11.1 |
トルコ | 1,034 | 2,294 | 1,572 | 0.2 | △ 31.5 |
その他 | 1,327 | 1,147 | 1,653 | 0.2 | 44.1 |
合計 | 647,445 | 738,103 | 905,587 | 100.0 | 22.7 |
注:この統計では、完成車(新車)のうち、輸入車の国内販売実績を計上。届け出を行っていないテスラとBYDの販売は含まれない。また、乗用車などを対象にし、大型バスやトラックを除く。
出所:国立統計地理情報院(INEGI)
企業の声に耳を傾け、民間資本を効果的に導入できるか
シェインバウム次期大統領は、大統領選挙に勝利後、矢継ぎ早に次期閣僚候補を発表した。(1)外相にはフアン・ラモン・デ・ラ・フエンテ前国連大使、(2)経済相にマルセロ・エブラル前外相、(3)大蔵公債相に、ロヘリオ・ラミレス・デ・ラ・オ氏(現職、留任)、(4)福祉相にアドリアナ・モンティエル・レジェス氏(現職、留任)、(5)エネルギー相にルス・エレナ・ゴンサレス前メキシコ市財務長官、(6)環境天然資源相にアリシア・バルセナ現外相、(7)保健相にダビッド・ケルシェノビッチ国立医学栄養学研究所所長、をそれぞれ抜擢した。必要に応じて現政権の閣僚の続投を決めるとともに、それぞれ専門性のある人材を適所に配置している。(2)の人事は、2026年に予定する米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の見直しを視野に入れたものとみられている。エブラル氏は、米国のトランプ前政権と移民問題を巡って交渉するなど、AMLO政権下で外交を一手に担ってきた。経済界もその指名を評価している。
そのほか、インフラ事業関連人事でも専門性を重視。PEMEX(国営企業)の総裁にはビクトル・ロドリゲス・パディジャ・メキシコ国立自治大学(UNAM)エネルギーシステム学部長(エネルギー経済学博士)、CFE長官にエミリア・エステル・カジェハ現CFE第一発電会社社長を抜擢した。
これら人事に、実務能力を重視していると経済界の期待が高い。AMLO現政権が大統領に近い政治家を閣僚に任命することが多かったのと対照的だ。また、民間部門との橋渡しを務めるコーディネーターにアルタグラシア・ゴメス氏を指名した。ゴメス氏は、ミンサ(Minsa/トウモロコシ粉製造大手)やディナ(Dina/地場資本のバス製造業)など複数企業を経営する企業家だ。この件でも、民間部門の声に耳を傾ける政権になる期待を込め、評価の声が上がっている。
次期政権は、財政収支の均衡を保ちつつ、国が必要とする経済インフラの整備を進めなければならない。抜本的な税制改革を行わずに必要な歳入を確保するのは困難という見方が多い。行政手続きの電子化を通じた歳出削減などでは、限界があるからだ。インフラ投資では、いかに民間資本を活用して国庫負担を圧縮するかが重要になる。実際、港湾・高速道路・鉄道などについては、民間資本の積極的な活用を検討しているようだ。同様にエネルギー部門でも、エネルギーナショナリズムの思想にとらわれない柔軟な対応が必要だろう。
シェインバウム次期大統領はAMLO大統領の意向を尊重し、民間部門の発電能力を国全体の46%に抑えると公約済みだ。仮にこの46%のキャップを堅持するにせよ、その適用の仕方によって展望が開けてくる。例えば、電力系統に接続することなく第三者への売電を計画しない(売電分野でCFEと競合しない)自家発電を「46%」に含めない対応を取るとどうだろうか。そうすると、完成車メーカーなど大企業による大規模な自家発電を許容することにつながる。そうした企業はしばしば、グローバルな脱炭素をコーポレート目標に掲げるため、自らの目標を達成するために投資に踏み込むかもしれない。また、許認可不要の分散型発電の能力上限〔現行法体系では、500キロワット(kW)未満に制限〕を、1MW、あるいは3MWなどに引き上げるのも有益だろう。そうすると、工場の屋根などに太陽光パネルを敷き詰める発電投資が活性化する可能性が出てくる。これは、系統電力の需要逼迫を幾分なりとも緩和することにつながるだろう。
民間部門の声に耳を傾け、現実的で柔軟な発想に転換できるかどうか。それこそが、次期政権の経済運営を占ううえで重要なカギになる。
- 注1:
- メキシコの政府年度は、1月~12月。
- 注2:
- 財政総合収支から債務の元利返済分を除いた基礎収支。
- 注3:
- 経済政策一般基準(CGPE 2025)策定に向けた中間報告のこと。この報告は、2025年度予算の前提になる。
- 注4:
- 65歳以上の高齢者を一律に対象にする無拠出制年金。2カ月ごとに6,000ペソ(約4万4,400円、1ペソ=約7.4円)を支払う仕組み。
- 注5:
-
税務の電子化に伴い、納税者登録のある正規企業が損金算入を行う場合、電子インボイスを発行しなければならなくなった。電子インボイス発行には、銀行口座を通じて支払うなどの要件が加わる。そのため、現金を利用して二重帳簿を作成することが困難になる。
また、給与支払いに関しても、銀行口座を通じて支払い、給与支払い電子証書(CFDI Nómina)の発行が義務付けられる。そのため、国税庁(SAT)や社会保険庁(IMSS)に登録されない「隠れ労働者」によって事業を運営することが困難になった。 - 注6:
- Instituto Mexicano de Competitividad (IMCO)「PRODESEN 2024-2038: El Sistema Eléctrico Mexicano, Julio, 2024」。
- 注7:
- 2013年末の憲法改正と2014年8月に公布された電力産業法に基づき、電力卸売市場が創設された。あわせて、民間部門の発電と大口需要家向けの売電が自由化された。
- 注8:
-
(1)フェリペ・アンヘレス国際空港(AIFA)、(2)ベラクルス州ドス・ボカスの新製油所建設、(3)マヤ観光鉄道(ユカタン半島を周回する観光鉄道)、(4)テワンテペック地峡物流回廊の4プロジェクト。
なお(1)は、サンタルシア空軍基地を拡張するかたちで、メキシコ市国際空港(AICM)を補う代替空港として開港した。
また(4)では、テワンテペック地峡〔オアハカ州サリナクルス(太平洋岸)とベラクルス州コアツァコアルコス(メキシコ湾岸)の間〕を物流拠点として開発する。 - 注9:
- TEUは、20フィートコンテナに換算したコンテナ数。例えば、40フィートコンテナ1つで、2TEUと数える。
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部主任調査研究員
中畑 貴雄(なかはた たかお) - 1998年、ジェトロ入構。貿易開発部、海外調査部中南米課、ジェトロ・メキシコ事務所、海外調査部米州課を経て、2018年3月からジェトロ・メキシコ事務所次長、2021年3月からジェトロ・メキシコ事務所長、2024年5月から現職。単著『メキシコ経済の基礎知識』、共著『NAFTAからUSMCAへ-USMCAガイドブック』『FTAガイドブック2014』など。