2023年は、自動車生産・販売・輸出ともに好調(トルコ)

2024年3月19日

トルコの自動車生産台数は2023年、前年比8.6%増。また、輸出額が12.9%増、国内販売台数57.4%増。いずれも好調だった。

国内販売では、SUV人気が高まっている。燃料タイプ別には、EVやハイブリッド車の伸びが大きい。EVは、さらにシェア拡大の可能性がある。

乗用車の生産が好調

トルコ自動車工業協会(OSD)によると、2023年の自動車生産台数は前年比8.6%増の146万8,393台と好調だった。そのうち64.9%を占める乗用車の生産は17.5%増、残りの35.1%を占める商用車の生産は4.8%減だった(表1参照)。

表1:車種別生産台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
車種 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 構成比 前年比
乗用車 1,026,461 982,642 855,043 782,835 810,889 952,667 64.9 17.5
商用車 523,689 478,602 442,811 493,305 541,759 515,726 35.1 △ 4.8
階層レベル2の項目大型トラック 22,883 17,604 21,169 34,652 41,544 46,812 3.2 12.7
階層レベル2の項目小型トラック 2,654 1,399 2,081 3,922 5,026 5,432 0.4 8.1
階層レベル2の項目ピックアップトラック 429,361 386,245 358,182 400,078 436,611 397,015 27.0 △ 9.1
階層レベル2の項目大型バス 8,541 9,199 7,896 5,567 8,346 10,862 0.7 30.1
階層レベル2の項目小型バス 56,934 61,629 51,464 46,870 46,897 50,941 3.5 8.6
階層レベル2の項目中型バス 3,316 2,526 2,043 2,216 3,335 4,664 0.3 39.9
自動車計 1,550,150 1,461,244 1,297,854 1,276,140 1,352,648 1,468,393 100.0 8.6

出所:自動車工業協会(OSD)

完成車の生産台数をメーカー別にみると、フォード・オトサンが前年比6.6%増で、前年に続いて首位だった。オヤク・ルノーは31.7%増で、前年の3位から2位に返り咲き、現代・アッサンは16.3%増で、同5位から3位に上昇した。そのほかにも、メルセデス・ベンツ(10.6%増)、アナドル・いすゞオート(15.8%増)、オトカル(36.5%増)などの商用車と、バスメーカーの生産台数も伸びた。トファシュ・フィアットは9.2%減で、前年の2位から4位に、トヨタも1.8%減で、同4位から5位に後退した(表2参照)。

表2:完成車メーカー別生産台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー 2020年 2021年 2022年 2023年 伸び率 構成比
フォード・オトサン 327,936 348,028 374,027 398,794 6.6 26.1
オヤク・ルノー 308,568 248,000 247,100 325,366 31.7 21.3
現代・アッサン 137,034 162,095 208,100 242,016 16.3 15.9
トファシュ・フィアット 250,630 228,544 263,747 239,428 △ 9.2 15.7
トヨタ 219,391 230,421 216,735 212,843 △ 1.8 13.9
テュルク・トラクター 34,337 48,560 44,619 51,423 15.2 3.4
メルセデス・ベンツ 16,959 24,092 28,914 31,988 10.6 2.1
ハッタト・トラクター 3,766 6,943 4,922 6,147 24.9 0.4
アナドル・いすゞオート 2,896 4,066 5,161 5,976 15.8 0.4
オトカル 1,965 2,237 3,677 5,018 36.5 0.3
テムサ 758 1,862 2,457 3,232 31.5 0.2
マン 1,965 1,624 2,044 3,222 57.6 0.2
カルサン 3,106 3,437 686 510 △ 25.7 0.0
合計 1,335,957 1,331,643 1,402,189 1,525,963 8.8 100.0

注:表1の合計台数はテュルク・トラクターとハッタト・トラクターの生産台数を含まないため、表1とは数値が異なる。
出所:自動車工業協会(OSD)

トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・ターキー(TMMT外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は2023年11月6日、小型クロスオーバー車の新型トヨタ「C-HR(Toyota C-HR)」の生産を開始した。2023年の生産減は、その準備が影響したとみられる。トヨタは同時に、欧州初になるプラグイン・ハイブリッド・バッテリーの生産も開始した。同バッテリーの製造ラインは、年間7万5,000個の組み立て能力を持っている。

完成車・部品をあわせ、対欧輸出が過去最大

OSDの統計によると、2023年の自動車関連の輸出総額(完成車と部品の合計)は前年比13.3%増の357億ドル。過去最高を更新した。2021~2022年と同様に、サプライチェーンの多様化と再編の中で、欧州企業がトルコからの調達に力を入れる動きが続き、自動車部品の輸出総額は前年比9.8%増の141億ドルだった(表3参照)。

表3:自動車関連(部品を含む)の輸出額(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
項目 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 前年比 構成比
自動車合計 21,350.3 20,613.8 16,491.1 18,050.0 18,677.2 21,611.8 15.7 60.5
階層レベル2の項目乗用車 12,421.0 11,864.8 9,312.1 9,272.1 9,069.5 10,934.4 20.6 30.6
階層レベル2の項目大型・軽商用車 5,376.4 4,945.4 4,254.5 5,420.3 5,633.8 5,647.6 0.2 15.8
階層レベル2の項目大型バス 1,503.2 1,759.4 1,300.7 1,015.4 1,201.7 1,786.3 48.6 5.0
階層レベル2の項目中・小型バス 215.5 222.9 188.4 193.9 163.0 343.8 110.9 1.0
階層レベル2の項目その他の自動車 1,834.3 1,821.2 1,435.0 2,148.3 2,609.2 2,899.9 11.1 8.1
自動車部品合計 10,881.6 10,616.4 9,451.3 11,828.5 12,831.1 14,085.7 9.8 39.5
階層レベル2の項目スペアパーツ 8,406.4 8,071.3 7,251.5 9,188.8 10,048.4 11,361.5 13.1 31.8
階層レベル2の項目タイヤなどゴム製品 1,353.9 1,479.1 1,248.0 1,630.3 1,767.3 1,724.8 △ 2.4 4.8
階層レベル2の項目エンジン 582.0 518.1 461.4 296.6 233.0 253.5 8.8 0.7
階層レベル2の項目バッテリー 388.1 397.3 353.0 509.4 547.8 482.6 △ 11.9 1.4
階層レベル2の項目セーフティーガラス 151.1 150.6 140.3 203.1 234.4 263.1 12.2 0.7
合計 28,986.5 31,230.1 25,941.9 29,878.5 31,508.0 35,697.5 13.3 100.0

出所:自動車工業協会(OSD)

一方、トルコ輸出業者会議(TIM)によると、自動車セクターの輸出総額は前年比12.9%増の350億ドル。輸出総額の68.5%を占めるEU向けは、前年比19.4%増になった。中でも最大の輸出先のドイツ向けが堅調なほか、フランス、スペイン、イタリアなどが2ケタ増だった。EU域外では、ロシア向けの伸びが41.6%増と大きい。一方、米国は29.1%減、イスラエルは14.1%減と減少した(表4参照)。

表4:自動車・同部品の国別輸出額 (単位:1,000ドル、%)(△はマイナス値、―は値なし)
順位 国・地域名 2021年 2022年 2023年 構成比 前年比 寄与度
EU 18,961,589.33 20,065,603.20 23,961,355.41 68.5 19.4 12.6
1 ドイツ 4,165,898.69 4,390,621.78 4,854,081.72 13.9 10.6 1.5
2 フランス 3,369,435.52 3,250,300.83 4,307,717.78 12.3 32.5 3.4
3 英国 3,093,046.63 3,270,917.00 3,295,479.58 9.4 0.8 0.1
4 イタリア 2,448,319.50 2,585,400.95 3,138,171.26 9.0 21.4 1.8
5 スペイン 1,606,383.99 1,816,397.57 2,439,507.62 7.0 34.3 2.0
6 ポーランド 1,173,223.80 1,453,490.31 1,763,252.58 5.0 21.3 1.0
7 スロベニア 1,171,949.51 1,118,595.97 1,354,810.18 3.9 21.1 0.8
8 ベルギー 1,123,662.80 1,168,041.03 1,324,394.46 3.8 13.4 0.5
9 米国 1,227,328.48 1,435,676.62 1,017,473.51 2.9 △ 29.1 △ 1.3
10 ロシア 705,929.11 701,519.31 993,072.83 2.8 41.6 0.9
11 ルーマニア 598,045.57 680,396.30 871,716.22 2.5 28.1 0.6
12 オランダ 512,542.28 489,356.77 635,264.46 1.8 29.8 0.5
13 イスラエル 585,762.74 648,470.84 557,090.24 1.6 △ 14.1 △ 0.3
14 モロッコ 547,111.02 455,331.55 459,890.48 1.3 1.0 0.0
15 チェコ 215,121.48 350,572.73 403,997.08 1.2 15.2 0.2
54 日本 46,379.40 52,850.92 47,581.53 0.1 △ 10.0 △ 0.0
総額 29,342,794.83 30,995,808.34 35,004,229.98 100.0 12.9 12.9
トルコ輸出総額 206,432,736.17 226,596,265.73 221,731,179.87 15.8 △ 2.1 1.8

注:トルコ輸出総額の構成比は、トルコの輸出額全体に占める自動車・同部品の割合。その他の構成比は、自動車・同部品の輸出額に占める国別割合。
出所:トルコ輸出業者会議(TIM)

SUVが人気、EVのシェア拡大

トルコ自動車販売・モビリティー協会(ODMD外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、2023年の国内自動車販売台数(小売り)は全体で前年比57.4%増の123万2,635台。そのうち乗用車が96万7,341台(63.2%増)、軽商用車が26万5,294台(39.2%増)だった。

乗用車販売を車種別にみると、2023年に販売された乗用車のうち、スポーツ用多目的車(SUV)が51.1%(49万3,957台)を占める。2022年に初めて最大シェアを獲得して以降も、順調にシェアを伸ばしている。セダンタイプは26.6%(25万7,469台)で2位、ハッチバックが20.4%(19万6,854台)で3位だった。オートマ車のシェアも年々増加しており、前年の78.3%から2023年は83.1%にまで拡大した。軽商用車の販売シェアでは、バンが75.1%(19万9,305台)で、例年どおり大半のシェアを占めた。軽トラックは11.1%(2万9,343台)、ミニバスは7.4%(1万9,536台)、ピックアップは6.4%(1万6,944台)だった。

燃料タイプ別にみると、ガソリン車が66.8%、ディーゼル車が13.8%、ハイブリッド車が10.8%、電気自動車(EV)が7.5%、液化石油ガス(LPG)車が1.1%を占めた。ガソリン車の販売台数は、前年比58.1%増だった。もっとも、そのシェアは前年の69.0%から縮小した。逆に伸びたのが、EVだ。前年のシェア1.3%から7.5%に急拡大した。ハイブリッド車の販売台数は前年比62.8%増(10万4,804台)、EVの販売台数は9.3倍(7万2,179台)と急伸している。

メーカー別の販売台数(乗用車と軽商用車の合計)をみると、上位陣は軒並み好調だった。例えば、首位のフィアットは32.2%増(19万3,622台)、2位ルノーが36.1%増(13万5,645台)、3位フォードが32.2%増(10万2,380台)だ(表5参照)。日系メーカーでは、トヨタ18.4%増(5万9,125台、8位)、ホンダ0.5%減(2万1,322台、17位)、日産2.2倍(2万1,278台、18位)、スズキ49.3%増(5,378台、25位)、いすゞ24.0%増(2,350台、32位)、スバル55.3%増(966台、36位)、レクサス50.9%増(507台、39位)、三菱自動車81.6%減(371台、40位)、マツダ12.2%増(203台、44位)だった。

表5:販売台数上位15社(2023年) (単位:台、%)(△はマイナス値)

乗用車
順位 メーカー 国産 輸入 合計 構成比 伸び率
1 フィアット 124,143 1,205 125,348 13.0 28.8
2 ルノー 93,468 24,023 117,491 12.1 33.2
3 フォルクスワーゲン 0 71,093 71,093 7.3 43.1
4 オペル 0 61,057 61,057 6.3 101.0
5 プジョー 0 58,549 58,549 6.1 150.8
6 ヒュンダイ 39,768 13,088 52,856 5.5 25.1
7 トヨタ 33,051 12,418 45,469 4.7 18.8
8 シトロエン 0 45,395 45,395 4.7 107.2
9 ダチア 0 41,339 41,339 4.3 14.8
10 チェリー (Chery) 0 40,590 40,590 4.2 純増
11 シュコダ 0 35,041 35,041 3.6 80.0
12 メルセデス・ベンツ 0 24,646 24,646 2.5 32.1
13 BMW 0 23,801 23,801 2.5 31.8
14 アウディ 0 22,878 22,878 2.4 57.2
15 ホンダ 0 21,322 21,322 2.2 △ 0.5
合計(その他を含む) 311,352 655,989 967,341 100.0 63.2

出所:トルコ自動車販売モビリティ協会(ODMD)

軽商用車
順位 メーカー 国産 輸入 合計 構成比 伸び率
1 フォード 69,176 2,268 71,444 26.9 8.0
2 フィアット 52,386 15,888 68,274 25.7 39.1
3 プジョー 0 20,083 20,083 7.6 115.5
4 ルノー 0 18,154 18,154 6.8 58.8
5 シトロエン 0 17,758 17,758 6.7 156.7
6 フォルクスワーゲン 0 17,683 17,683 6.7 66.1
7 トヨタ 0 13,656 13,656 5.1 17.1
8 オペル 0 12,808 12,808 4.8 101.8
9 メルセデス・ベンツ 0 9,294 9,294 3.5 46.9
10 ヒュンダイ 0 5,882 5,882 2.2 100.4
11 イヴェコ 0 2,927 2,927 1.1 △ 1.3
12 キア 0 2,710 2,710 1.0 42.3
13 いすゞ 705 1,645 2,350 0.9 24.0
14 サンヨン(KGモビリティ) 0 1,068 1,068 0.4 118.4
15 ランドローバー 0 645 645 0.2 53.9
合計(その他を含む) 122,545 142,749 265,294 100.0 39.2

出所:トルコ自動車販売モビリティ協会(ODMD)

総合
順位 メーカー 国産 輸入 合計 構成比 伸び率
1 フィアット 176,529 17,093 193,622 15.7 32.2
2 ルノー 93,468 42,177 135,645 11.0 36.1
3 フォード 70,515 31,865 102,380 8.3 32.2
4 フォルクスワーゲン 0 88,776 88,776 7.2 47.1
5 プジョー 0 78,632 78,632 6.4 140.7
6 オペル 0 73,865 73,865 6.0 101.1
7 シトロエン 0 63,153 63,153 5.1 119.0
8 トヨタ 33,051 26,074 59,125 4.8 18.4
9 ヒュンダイ 39,768 18,970 58,738 4.8 30.0
10 ダチア 0 41,339 41,339 3.4 14.8
11 チェリー (Chery) 0 40,590 40,590 3.3 純増
12 シュコダ 0 35,041 35,041 2.8 80.0
13 メルセデス・ベンツ 0 33,940 33,940 2.8 35.8
14 BMW 0 23,801 23,801 1.9 31.8
15 キア 0 23,339 23,339 1.9 14.6
合計(その他を含む) 433,897 798,738 1,232,635 100.0 57.4

出所:トルコ自動車販売モビリティ協会(ODMD)

トルコの自動車販売台数を欧州各国と比較すると、2023年は3年ぶりに6位から5位に上昇した。欧州市場全体(EU、EFTA、英国の合計)では2023年、販売台数が前年比14.1%増になった。しかしトルコの伸びはさらに大きく、57.4%増。これは、欧州諸国とトルコを合わせた国別で最大の伸び率だった(表6参照)。

表6:欧州市場とトルコ市場の2023年の自動車販売台数
国・地域名 2023年 2022年
合計
前年比
乗用車販売台数 商用車販売台数 合計
EU + EFTA + 英国 12,847,481 1,872,477 14,719,958 12,903,708 14.1
ドイツ 2,844,609 259,376 3,103,985 2,882,647 7.7
英国 1,903,054 343,361 2,246,415 1,896,202 18.5
フランス 1,774,723 378,040 2,152,763 1,876,104 14.7
イタリア 1,565,331 195,618 1,760,949 1,477,796 19.2
トルコ 967,341 265,294 1,232,635 783,283 57.4
スペイン 949,359 146,142 1,095,501 933,015 17.4
ベルギー 476,675 67,549 544,224 422,405 28.8
ポーランド 475,032 64,522 539,554 481,987 11.9
オランダ 369,791 69,297 439,088 371,315 18.3
スウェーデン 289,827 43,713 333,540 322,603 3.4

出所:欧州自動車工業会(ACEA)、トルコ自動車販売モビリティー協会(ODMD)

2023年のトルコの自動車市場は、2022年に起きた半導体や原料の不足など供給面の問題が収束した。そうしたこともあり、乗用車市場は活況を呈した。さらに、インフレ高騰が続く中、資産防衛と価格上昇前に購入しようとする消費者心理もあり、国内の販売需要が高まった。しかし、将来に向けては不安含みだ。金利の急激な上昇(2024年1月末の政策金利45%)に伴うローン環境の悪化や、2023年に転売目的での新車購入を規制したことなどもあり、金融大手のHSBCは、2024年の自動車販売は前年比20%近い減少を予測している(2024年1月10日付INTELLINEWS PRO)。

EV販売が本格化

また、特筆すべき事項として、EV販売の本格化が始まったことが挙げられる。トルコ発の国民EV車メーカーTOGGが量産・抽選販売を始めたことは、その契機になった。テスラをはじめとして輸入EVの販売も好調だった。

トルコ電気自動車・ハイブリッド車協会(TEHAD)によると、2023年に販売(卸売り)されたEVは、TOGGが1万9,583台でTEHAD加盟ブランドのEV販売の約30%、テスラが1万2,150台で約19%を占める。2023年に新規参入した両ブランドで、TEHAD加盟ブランド全体の半分近くを占めた(表7参照)。

また、2023年はトルコの自動車市場で中国ブランドの数が前年の3社から10社に増加した。具体的には、Skywell(開沃新能源汽車)、MG(上海汽車傘下)、Chery(奇瑞汽車)、Leapmotor(零跑汽車)、Seres(賽力斯汽車)、Voyah(嵐図汽車)、Hongqi(紅旗・第一汽車)、DFSK(東風小康汽車)、BYD(比亜迪)、Maxus(上汽大通汽車)が自動車を販売した。DFSKとCheryはガソリン車、MGはガソリン車とEVの両モデルを販売し、他のブランドはEVでトルコ市場に参入している。

もっとも、トルコ政府は、TOGGが定着する前に中国をはじめとする国外勢にEV市場を席巻される事態を懸念している。そのため、輸入に制約を設ける動きもある。2023年3月に中国から輸入されるEVの追加関税率を10%から40%に引き上げたのもその表れだ(トルコ政府資料参照(トルコ語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(83KB))。さらに、同年末には、新規規制が発表された。例えば、EU関税同盟と自由貿易協定(FTA)締結国以外からEVを輸入・販売する場合、正規サービスステーションやコールセンターを設置しなければならなくなった。それら基準を満たした上で、当局から輸入許可を取得しなければならない(2023年12月4日付ビジネス短信参照)。中国と日本は、当該新規規制の主な対象国になる。

TEHADによると、2023年に販売(卸売り)されたTEHAD加盟ブランドのハイブリッド車の中では、トヨタ、日産、ホンダなどの日系自動車メーカーが好調だった(表7参照)。ハイブリッド車は、長時間移動での効率を重視するトルコ人の嗜好(しこう)に合う車種として期待されている。

表7: 2023年のモデル名別ハイブリッド車・EV車販売台数(単位:台)

EV販売台数
ブランド 2022年 2023年 前年比
TOGG 0 19,583 純増
テスラ 0 12,150 純増
ルノー 1,155 4,785 314.3
MG 102 3,923 3,746.1
メルセデス・ベンツ 1,559 3,622 132.3
BMW 2,122 3,746 76.5
オペル 83 3,534 4,157.8
スカイウェル 1,150 2,541 121.0
シトロエン 81 1,881 2,222.2
ボルボ 519 1,633 214.6
合計 8,021 65,388 715.2
ハイブリッド販売台数
ブランド 2022年 2023年 前年比
トヨタ 6,656 17,934 169.4
日産 791 6,617 736.5
ホンダ 1,176 2,414 105.3
フィアット 1,173 1,465 24.9
ヒュンダイ 270 1,044 286.7
ボルボ 125 971 676.8
ルノー 0 775 純増
キア 129 691 435.7
レクサス 37 503 1,259.5
DSオートモビル 33 430 1,203.0
合計 19,126 35,906 87.7

注:合計はその他を含む。TEHAD加盟ブランドのみ。
出所:TEHAD

トルコ政府は2030年までにEV100万台以上の利用を想定し、エネルギー、充電インフラを構築することを目標に掲げている。充電ステーションのライセンスを提供するトルコのエネルギー市場規制庁(EPDK)によると、国内のEV用充電ステーションは全国で2023年初めの1,719カ所から2024年1末時点で6,058カ所に、設置された充電器は3,038基から1万3,160基へ急速に増加している。このうちイスタンブールの充電ステーションが1,411カ所(充電器3,588基)で最大となっている。日常的な走行では、ガソリン価格が高額〔2024年2月28日のレギュラー:1リットル当たり40.5リラ(約186円、1トルコ・リラ=約4.6円)〕なこともあり、EVのメリットは大きい。しかし、全国規模のEV普及には、インフラのさらなる拡充が必要とされ、積極的な投資誘致も行われている。2023年8月にはドバイのオリジン・チャージング・テクノロジーズ(ORIGIN Charging Technologies)がトルコでEV充電器の製造を開始することを明らかにしている。

英国のフィッチ・ソリューションズ傘下の調査会社BMIが発表した「トルコのEVプロファイル(Turkey Electric Vehicles Profile)」は、トルコのEV 販売台数は2032年まで年平均60.8%増加し、乗用車の販売全体に占めるEVの割合は2032年に30.4%になると予想している(2023年11月21日付「デーリー・サバフ」)。トルコの所得格差や自動車全体に対する高額課税、一般市民の脱炭素化への理解不足などもあり、その実現性は不透明ではあるものの、現在の勢いは侮れないものがある。ルノーは2027年までにトルコでの自動車販売の3分の1をEV、ハイブリッド車にすることを目指していると発表している(2023年12月7日付「デーリー・サバフ」)。


変更履歴
文章中に誤りがありましたので、次のように訂正いたしました。(2024年10月25日)
第17段落
(誤)2023年3月に中国から輸入されるEVの追加関税率を20%から40%に引き上げた
(正)2023年3月に中国から輸入されるEVの追加関税率を10%から40%に引き上げた
執筆者紹介
ジェトロ・イスタンブール事務所 調査担当ディレクター
中島 敏博(なかじま としひろ)
1995年関西大学大学院博士課程後期課程修了。1988~95年桃山学院高校で非常勤講師(世界史)。1995~99年カナダ・マギル大学(McGill University)イスラーム研究所PhD3単位修得後退学。2000年から現職。共著『イスタンブールに暮らす』JETRO出版、共著『早わかりトルコ・ビジネス』日刊工業刊、寄稿『トルコを知るための53章』明石書店刊、寄稿『NHKデータブック 世界の放送2009年~2016年、NHK放送文化研究所編』NHK出版刊