中国、2023年の貿易は減少、ロシア・ASEANとの関係は強化

2024年4月17日

貿易データベース「Global Trade Atlas」(GTA)によると、2023年の中国の貿易(ドルベース)は、輸出が前年比5.1%減の3兆4,221億7,617万ドル、輸入が5.6%減の2兆5,635億8,602万ドルだった(注1)。輸出は7年ぶり、輸入は3年ぶりに前年より減少した。

輸出:スマートフォン、パソコンは減少も、自動車は大幅増

輸出を国・地域別にみると、米国が10年連続で1位の5,060億ドル(前年比13.0%減、シェア14.8%)、2位は香港で2,787億ドル(7.8%減、8.1%)、3位は日本で1,581億ドル(8.7%減、4.6%)だった。上位10カ国・地域をみると、ロシアのみ前年比で増加した(表1参照)。ロシア向け輸出は後述の乗用車のほか、トラクター、貨物自動車など多くの品目が増加した。ロシアについては、2022年からのウクライナ侵攻の影響で、多くの在ロシア外資系企業が活動を停止し、日米欧韓などとの貿易も制限されている。一方で、中国は一貫して「一方的制裁」に反対しており(注2)、2023年も引き続きロシアとのパートナーシップを強化していることが背景にあるとみられる(注3)。

表1:2023年の中国の輸出先上位10カ国・地域(△はマイナス値、-は値なし)
順位 国・地域名 輸出額
(億ドル)
前年比
(%)
寄与度
(%)
シェア
(%)
1 米国 5,060 △ 13.0 △ 2.1 14.8
2 香港 2,787 △ 7.8 △ 0.7 8.1
3 日本 1,581 △ 8.7 △ 0.4 4.6
4 韓国 1,510 △ 8.0 △ 0.4 4.4
5 ベトナム 1,419 △ 3.9 △ 0.2 4.1
6 インド 1,186 △ 0.1 △ 0.0 3.5
7 ロシア 1,114 46.1 1.0 3.3
8 ドイツ 1,011 △ 13.0 △ 0.4 3.0
9 オランダ 1,007 △ 14.4 △ 0.5 2.9
10 マレーシア 900 △ 5.4 △ 0.1 2.6
全体(その他含む) 34,222 △ 5.1

出所:GTA

品目別では、HS4桁ベースで1位のスマートフォンなどの電話機(HS8517)が2,200億ドル(前年比7.7%減)、2位のパソコンやタブレット端末などの自動データ処理機(HS8471)が1,501億ドル(20.2%減)、3位の集積回路(HS8542)が1,375億ドル(11.5%減)だった(表2参照)。いずれも世界的な需要減少などが影響したとみられる(注4)。

4位の乗用車(HS8703)は、金額が777億ドル(73.8%増)、台数が539万台(47.9%増、注5)と高い伸びを示した。乗用車(HS8703)の輸出先としては、ロシア向けが金額で117億ドル(前年比約6.9倍)、台数で81万台(約5.3倍)で最大となった。乗用車(HS8703)全体のうち、バッテリー式電気自動車(BEV、HS870380)は金額が341億ドル(69.9%増)、台数が155万台(63.7%増)だった。BEVの輸出先としては、ベルギー向けが18万台(19.1%増)で3年連続1位となった。ベルギーには港湾での完成車取扱台数が世界最大級のアントワープ・ブルージュ港があり、中国から同国に輸出された後、欧州各国に再輸出されていると考えられる。

世界的な新エネルギー車(NEV)生産拡大を受けてか、蓄電池(HS8507)は698億ドル(22.0%増)と大幅に増加した。うち米国向けが141億ドル(28.7%増)で最大となった。ドイツが96億ドル(20.2%増)、韓国が80億ドル(46.2%増)と続く。

表2:2023年の中国の主な輸出品目(△はマイナス値、-は値なし)
順位 HS 品目 輸出額
(億ドル)
前年比
(%)
寄与度
(%)
シェア
(%)
1 8517 電話機(スマートフォンおよび携帯回線網用その他の無線回線網用のその他の電話を含む)およびその他の機器(音声、画像その他のデータを送受信するものに限るものとし、有線または無線回線網〔例えば、ローカルエリアネットワーク(Lan)またはワイドエリアネットワーク(Wan)〕用の通信機器を含む)(第84.43項、第85.25項、第85.27項および第85.28項の送受信機器を除く) 2,200 △ 7.7 △ 0.5 6.4
2 8471 自動データ処理機械およびこれを構成するユニットならびに磁気式または光学式の読取機、データをデータ媒体に符号化して転記する機械および符号化したデータを処理する機械(他の項に該当するものを除く) 1,501 △ 20.2 △ 1.1 4.4
3 8542 集積回路 1,375 △ 11.5 △ 0.5 4.0
4 8703 乗用自動車その他の自動車(ステーションワゴンおよびレーシングカーを含み、主として人員の輸送用に設計したものに限るものとし、第87.02項のものを除く) 777 73.8 0.9 2.3
5 8507 蓄電池〔隔離板を含むものとし、長方形(正方形を含む)であるかないかを問わない〕 698 22.0 0.3 2.0
6 8541 半導体デバイス(例えば、ダイオード、および半導体ベースの変換器)、光電性半導体デバイス〔光電池(モジュールまたはパネルにしてあるかないかを問わない)を含む〕、発光ダイオード(Led)〔他の発光ダイオード(Led)と組み合わせてあるかないかを問わない〕および圧電結晶素子 618 △ 6.6 △ 0.1 1.8
7 8708 部分品および付属品(第87.01項から第87.05項までの自動車のものに限る) 537 7.7 0.1 1.6
8 2710 石油および歴青油(原油を除く)、これらの調製品(石油または歴青油の含有量が全重量の70%以上のもので、かつ、石油または歴青油が基礎的な成分を成すものに限るものとし、他の項に該当するものを除く)ならびに廃油 488 2.4 0.0 1.4
9 8504 トランスフォーマー、スタティックコンバーター(例えば、整流器)およびインダクター 470 △ 2.9 △ 0.0 1.4
10 9405 照明器具およびその部分品(サーチライトおよびスポットライトを含むものとし、他の項に該当するものを除く)ならびに光源を据え付けたイルミネーションサイン、発光ネームプレートその他これらに類する物品およびこれらの部分品(他の項に該当するものを除く) 438 △ 5.6 △ 0.1 1.3
全体(その他含む) 34,222 △ 5.1

注:本来7位にはHSコード9804が入っているが、中国では少額簡易通関貨物であるため11位のHS9405 を繰り上げた。
出所:GTA

輸入:増加するロシアからの資源輸入

輸入を国・地域別にみると、台湾が2,004億ドル(前年比16.6%減、シェア7.8%)で4年連続1位だった。2位は米国で1,661億ドル(6.5%減、6.5%)、3位は韓国で1,625億ドル(18.8%減、6.3%)だった。日本は4位の1,608億ドル(13.0%減、6.3%)だった(表3参照)。上位10カ国・地域では、オーストラリア、ロシア、ブラジルが増加した。オーストラリアは鉄鉱、鉱物、金、石炭など、ロシアは石油・原油、石炭など、ブラジルは大豆、鉄鉱、原油・石油などこれらの国向けでは資源・食糧が大きく増加している。

表3:2023年の中国の輸入先上位10カ国・地域(△はマイナス値、-は値なし)
順位 国・地域名 輸入額
(億ドル)
前年比
(%)
寄与度
(%)
シェア
(%)
1 台湾 2,004 △ 16.6 △ 1.5 7.8
2 米国 1,661 △ 6.5 △ 0.4 6.5
3 韓国 1,625 △ 18.8 △ 1.4 6.3
4 日本 1,608 △ 13.0 △ 0.9 6.3
5 オーストラリア 1,550 10.1 0.5 6.0
6 ロシア 1,276 13.7 0.6 5.0
7 ブラジル 1,224 12.6 0.5 4.8
8 ドイツ 1,065 △ 4.4 △ 0.2 4.2
9 中国 1,059 △ 14.3 △ 0.6 4.1
10 マレーシア 1,028 △ 6.5 △ 0.3 4.0
全体(その他含む) 25,636 △ 5.6

出所:GTA

品目別では、HS4桁ベースで1位の集積回路(HS8542)が3,518億ドル(前年比15.7%減)と2年連続で減少した。米国による対中輸出規制もあってか、主要輸入先のほとんどが前年比減少したが、日本は208億ドルで前年比3.3%増となった。2位の石油・原油(HS2709)は3,355億ドル(7.0%減)に減少した。3位の鉱石(HS2601)は1,326億ドル(5.4%増)、4位の金(HS7108)は922億ドル(20.2%増)に増加した(表4参照)。

輸入でもロシアの増加が目立った。石油・原油(HS2709)は593億ドル(前年比4.9%増)で、2018年以来5年ぶりに最大の輸入先となった。そのほか、ロシアからの輸入上位品目では、石炭(HS2701)は142億ドル(22.6%増)、石油ガス(HS2711)は117億ドル(7.4%増)、石油調製品(HS2710)は72億ドル(約2.3倍)、精製銅・銅合金の塊(HS7403)が31億ドル(7.3%増)、アルミニウムの塊(HS7601)が28億ドル(約2.1倍)と資源関連が増加している。輸入に関しても、各国がロシアに対して制限を課す中で、中国は引き続き協力を推進していることが要因とみられる。

なお、中国は2023年8月24日から日本産水産物の輸入を停止しているが、全体では鮮魚(HS0302)は12億ドル(前年比36.9%増)、ホタテなどを含む軟体動物(HS0307)は20億ドル(8.4%増)と増加した。いずれも日本からの輸入は3,942万ドル(27.3%減)、2億ドル(48.4%減)と大きく減少している。一方で、鮮魚(HS0302)ではノルウェーからの輸入が5億ドル(46.9%増)、チリが2億ドル(約2.2倍)、軟体動物(HS0307)ではペルーが2億ドル(約7.3倍)、インドネシア4億ドル(20.4%増)とそれぞれ大きく増加した。

表4:2023年の中国の主な輸入品目 (△はマイナス値、-は値なし)
順位 HS 品目 輸入額
(億ドル)
前年比
(%)
寄与度
(%)
シェア
(%)
1 8542 集積回路 3,518 △ 15.7 △ 2.4 13.7
2 2709 石油および歴青油(原油に限る) 3,355 △ 7.0 △ 0.9 13.1
3 2601 鉄鉱(精鉱および焼いた硫化鉄鉱を含む) 1,326 5.4 0.2 5.2
4 7108 金(白金をめっきした金を含むものとし、加工してないもの、一次製品および粉状のものに限る) 922 20.2 0.6 3.6
5 2711 石油ガスその他のガス状炭化水素 846 △ 6.9 △ 0.2 3.3
6 1201 大豆(割ってあるかないかを問わない) 614 0.3 0.0 2.4
7 2603 銅鉱(精鉱を含む) 604 4.5 0.1 2.4
8 8703 乗用自動車その他の自動車(ステーションワゴンおよびレーシングカーを含み、主として人員の輸送用に設計したものに限るものとし、第87.02項のものを除く) 459 △ 12.1 △ 0.2 1.8
9 2701 石炭および練炭、豆炭その他これらに類する固形燃料で石炭から製造したもの 413 37.1 0.4 1.6
10 8486 半導体ボール、半導体ウエハー、半導体デバイス、集積回路またはフラットパネルディスプレイの製造に専らまたは主として使用する機器、第84類の注11(C)の機器ならびに部分品および付属品 396 14.1 0.2 1.5
全体(その他含む) 25,636 △ 5.6

出所:GTA

強まるASEANとの関係

近年の中国の貿易を見ると、日米欧韓の占めるシェアは低下・微増にとどまっている。一方で、前述のロシアのほかに、特にASEANとの関係が強まっている。表5、6は、輸出入それぞれについて、米中貿易摩擦が本格化した2018年から2023年までの6年間の合計と、2012年から2017年までの合計を比較したものだ。

両期間を比較すると、輸出は総額が35.7%増となった。うちASEANは72.6%増と高い伸びを示した。一方で、米国は28.3%増、日本は9.0%増と全体の伸びを下回った。EUは50.5%増、韓国は37.5%増で全体を上回った。輸出額に占めるシェアはASEANが14.7%(2012~2017年から3.1ポイント増)だった一方で、米国は16.7%(1ポイント減)、日本は5.2%(1.3ポイント減)とシェアを落とし、韓国は4.4%(0.1ポイント増)でほぼ横ばい、EUは14.9%(1.5ポイント増)と増加した(表5参照)。

表5:中国の輸出額の2012~2017年、2018~2023年の各合計額の比較(-は値なし)
国・地域名 2012~2017年
輸出額合計
(億ドル)
2018~2023年
輸出額合計
(億ドル)
増減
(%)
寄与度
(%)
2018~2023年
シェア
アフリカ 5,804 8,192 41.2 1.8 4.6
ASEAN10 15,321 26,448 72.6 8.4 14.7
中東15(注) 7,007 9,039 29.0 1.5 5.0
EU27 17,864 26,877 50.5 6.8 14.9
階層レベル2の項目米国 23,415 30,035 28.3 5.0 16.7
階層レベル2の項目日本 8,523 9,287 9.0 0.6 5.2
階層レベル2の項目韓国 5,770 7,932 37.5 1.6 4.4
階層レベル2の項目ベトナム 3,441 7,213 109.6 2.8 4.0
階層レベル2の項目マレーシア 2,525 4,153 64.5 1.2 2.3
階層レベル2の項目シンガポール 2,772 3,771 36.1 0.8 2.1
階層レベル2の項目タイ 2,126 3,629 70.7 1.1 2.0
階層レベル2の項目インドネシア 2,116 3,271 54.6 0.9 1.8
階層レベル2の項目フィリピン 1,487 2,925 96.7 1.1 1.6
階層レベル2の項目ミャンマー 484 710 46.8 0.2 0.4
全体(その他含む) 132,526 179,815 35.7

注:イエメン、アラブ首長国連邦、イスラエル、イラク、イラン、オマーン、ガザ地区、カタール、クウェート、サウジアラビア、シリア、トルコ、バーレーン、ヨルダン、レバノン。
出所:GTA

輸入は総額が33.3%増となった。うちASEANは71.5%増で輸出同様、大幅に増加した。一方、米国は9.8%増、日本は12.9%増、韓国は7.4%増と、全体の伸びを大幅に下回っている。EUは34.6%増と全体をやや上回った。輸入額に占めるシェアを見ても、ASEANが14.4%(3.2ポイント増)と増加した一方で、米国は6.6%(1.4ポイント減)、日本は7.6 %(1.4ポイント減)、韓国は7.9%(1.9ポイント減)とシェアを落とし、EUは11.5%(0.1ポイント増)でほぼ横ばいだった(表6参照)。

表6:中国の輸入額の2012~2017年、2018~2023年の各合計額の比較(-は値なし)
国・地域名 2012~2017年
輸入額合計
(億ドル)
2018~2023年
輸入額合計
(億ドル)
増減
(%)
寄与度
(%)
2018~2023年
シェア
アフリカ 5,171 6,017 16.3 0.8 4.2
ASEAN10 11,919 20,447 71.5 8.0 14.4
中東15(注) 7,673 11,297 47.2 3.4 8.0
EU27 12,173 16,381 34.6 4.0 11.5
階層レベル2の項目米国 8,517 9,354 9.8 0.8 6.6
階層レベル2の項目日本 9,550 10,777 12.9 1.2 7.6
階層レベル2の項目韓国 10,496 11,272 7.4 0.7 7.9
階層レベル2の項目ベトナム 1,445 4,796 231.9 3.1 3.4
階層レベル2の項目マレーシア 3,309 5,210 57.4 1.8 3.7
階層レベル2の項目シンガポール 1,681 2,048 21.8 0.3 1.4
階層レベル2の項目タイ 2,325 3,083 32.6 0.7 2.2
階層レベル2の項目インドネシア 1,576 3,220 104.3 1.5 2.3
階層レベル2の項目フィリピン 1,144 1,276 11.5 0.1 0.9
階層レベル2の項目ミャンマー 318 465 46.2 0.1 0.3
全体(その他含む) 106,466 141,955 33.3

注:イエメン、アラブ首長国連邦、イスラエル、イラク、イラン、オマーン、ガザ地区、カタール、クウェート、サウジアラビア、シリア、トルコ、バーレーン、ヨルダン、レバノン。
出所:GTA

ASEANとの貿易増加の背景には、(1)サプライチェーン組み換えや中国からの生産移転に伴う中間財・製品の貿易増加(注6)、(2)中国内の生産体制強化に向けた設備輸入の増加、(3)中国の資源輸入の増加、(4)輸出先を消費地とする中国製品の輸出増加などがあるとみられる。

2023年の貿易額からこれらの要因を見ると、(1)について、輸出入ともにASEANで最大の伸びを示したベトナムでは、中国からの輸出で集積回路(HS8542)が107億ドル(前年比15.4%減、2017年比約2.7倍)、鉄などのフラットロール製品(熱間圧延、HS7208)が38億ドル(48.7%増、約132倍)、蓄電池(HS8507)が35億ドル(11.7%増、約4.5倍)、フラットパネルディスプレーなどの部品(HS8529)が20億ドル(7.4%増、約4.5倍)、自動データ処理機などの部品(HS8473)が17億ドル(88.0%増、約3.2倍)と大きく増加している。また、フラットパネルディスプレーモジュール(HS8524、注7)も60億ドルで、中国のベトナム向け輸出に占めるシェアは3位となっている。

輸入では、フラットパネルディスプレーモジュール(HS8524)が222億ドルで、シェアも25.3%と最大を占める。その他の輸入は、集積回路(HS8542)が151億ドル(前年比6.8%減、2017年比約2.8倍)、フラットパネルディスプレーなどの部品(HS8529)が87億ドル(12.4%増、約3.1倍)となっている。自動データ処理機(HS8471)も36億ドル(約4.3倍、約45倍)と増加している。

タイ向けでも、輸出入ともに大きく伸ばしている。輸出では、自動車部品(HS8708)が15億ドル(前年比5.9%減、2017年比73.1%増)、トランスフォーマー・スタティックコンバーター(HS8504)が14億ドル(34.5%増、約3.5倍)、半導体デバイス(HS8541)が14億ドル(7.6%増、約5.9倍)となっている。輸入では、集積回路(HS8542)が59億ドル(21.9%減、65.3%増)、自動データ処理機(HS8471)が59億ドル(13.4%減、32.1%増)となっている。米中関係の緊張や中国国内の事業環境の変化により、外資系企業によるサプライチェーンの組み換えや生産移転が行われると同時に、近年はASEANに進出する中国企業も増加しており、今後も(1)の傾向は強まっていくとみられる(注8)。

(2)については、シンガポールからの輸入では、半導体製造装置(HS8486)が2018年から大幅に増加を始め、2023年は57億ドル(前年比29.4%増、2017年比約4.3倍)で、同国からの輸入のシェア18.1%を占めて最大だった。マレーシアからの同製品の輸入も18億ドル(27.2%増、12.2倍)で、ここ数年急増している(注9)。2023年の中国の半導体製造装置の輸入先として、シンガポールは3位、マレーシアは7位となった(注10)。

中国は国策として半導体の自給率上昇に取り組んでいるが(注11)、半導体製造設備について米国の輸出管理が強化される中で、輸入先のASEANへのシフトが進んでいることがうかがえる(注12)。

(3)については、マレーシアからの輸入では、石油・原油(HS2709)が282億ドル(前年比32.9%増、2017年比10.8倍)で、同国からの輸入のシェア27.4%を占め、中国の石油・原油輸入先としてロシア、サウジアラビア、イラクに次ぐ4位となった。その他、石油調整品(HS2710)が73億ドル(約3.2倍、約10.4倍)でシェア7.1%を占めている。

インドネシアからの輸入では、フェロアロイ(HS7202)が148億ドル(前年比13.7%増、2017年比約10.5倍)、亜炭(HS2702)が110億ドル(3.1%減、約3倍)、石炭(HS2701)が73億ドル(3.1%減、約2.9倍)、ニッケル(HS7501)が56億ドル(22.5%増、66倍)、石油ガス(11.6%減、2.3倍)と、2017年からいずれも大幅に増加している。

中国はNEV生産の拡大でレアメタルなどの需要が高まっている。また、さまざまな面で安全保障を強化しており、資源についても輸入先のシフトを行っている可能性がある(注13)。

(4)については、タイへの輸出で乗用車が26億ドル(約4.5倍、約151倍)と急激に増加し、タイ向け輸出総額に占めるシェアが3.4%で2位となった。うち、電気自動車(EV)が25億ドルを占める。タイではEVの新規登録台数が急増しており、そのほとんどを中国メーカーの製品が占めている(注14)。

今後も米中関係をはじめとする地政学的緊張や、中国企業の海外展開拡大が続く中で、ASEANとの貿易増加が想定される。


注1:
本稿の数値は全て貿易データベース「Global Trade Atlas」を用いる。表示単位以下の数値は四捨五入している。データソースは各国の統計作成機関とされているが、中国税関が公表している数値と異なる場合がある。
注2:
2023年2月28日付ビジネス短信参照
注3:
2023年3月23日付ビジネス短信2023年3月29日付ビジネス短信参照
注4:
米調査会社のIDCによると、2023年の世界のスマートフォン出荷台数は前年比3.2%減、パソコン出荷台数は13.9%減となっている。また、米国半導体工業会(SIA)によると、2023年の世界の半導体販売額は8.2%減だった。中国からの生産移転の影響も考えられるが、同年の中国内の生産量を見ると、スマートフォンは1.9%増、集積回路は6.9%増となっている。なお、パソコンなどの小型計算機は17.4%減。
注5:
中国自動車工業協会の発表では、2023年の自動車輸出台数は491万台で、税関統計とは異なる(2024年1月18日付ビジネス短信参照)。
注6:
中国からベトナムへの生産移転については、2023年4月25日付地域・分析レポート参照
注7:
同分類は2022年に新設された。
注8:
中国企業のASEAN進出については、地域・分析レポートの特集「コロナ禍後の新時代、中国企業はどう動く」「タイ・インドネシア・ベトナムの自動車など主要産業政策と現地動向」を参照。
注9:
マレーシアからの半導体製造装置の輸入は、2019年に前年比45.0%増、2020年に71.8%増、2021年に約2倍、2022年に70.9%増と急増を続けている。
注10:
半導体製造装置の輸入について、1位の日本(前年比6.6%増)、2位のオランダ(約2.7倍)はいずれも増加したが、4位の米国(16.1%減)、5位の韓国(24.8%減)、6位の台湾(21.5%減)は大きく減少している。
注11:
2021年9月7日付地域・分析レポート参照
注12:
米国による対中半導体輸出管理などについては、2024年2月26日付ビジネス短信参照
注13:
習近平国家主席が提唱する「総体国家安全観」でも、対象分野として資源が含まれている。
注14:
2024年2月1日付ビジネス短信参照
執筆者紹介
ジェトロ・北京事務所 経済分析部 部長
河野 円洋(かわの みつひろ)
2007年、ジェトロ入構。在外企業支援・知的財産部知的財産課、ジェトロ岐阜、海外調査部中国北アジア課、ジェトロ・広州事務所、企画部企画課を経て2022年1月より現職。