2023年の新車登録は27万台、EVが4割(イスラエル)

2024年7月4日

イスラエル自動車輸入業者協会(I-via)によると、イスラエルの2023年の自動車新車登録台数は27万23台。前年比0.7%増になった。

その増減は、10月より前とそれ以後で大きく様子が異なる。2023年1月から9月の累計登録台数は、前年同期比10.3%増だった。しかし、10月7日のイスラム原理主義組織ハマスとイスラエルの軍事衝突(2023年10月10日付ビジネス短信参照)や、イエメンの武装組織フーシ派による紅海を航海中の商船への攻撃(2024年1月10日付ビジネス短信参照)により、10~12月の第4四半期は前年同期比で4割以上減少した。

韓国勢が日本勢を逆転、中国勢が急増

登録台数をメーカー・ブランド別にみると、韓国勢が前年比で減少したものの上位を独占した。現代は前年比1.8%減の4万1,790台で全体の15.5%を占め、首位を維持した。これに起亜が続き、14.0%減の3万2,873台(同12.2%)となった。韓国全体では7万5,914台(同28.1%)で7.5%減と実績を落としながらも、国別で日本を抜き1位となった。

日本からはトヨタが13.6%減の3万1,865台(同11.8%)で3位だった。日本全体では14.0%減の7万5,589台(同28.0%)だった。日本のシェアは2015年時点で4割に及んでいたが、2023年は3割を切ったことになる。

韓国と日本以外では、中国の躍進が顕著だった。比亜迪(BYD)は4.1倍の1万5,145台(同5.6%)で、順位を14上げて4位となった。奇瑞(Chery)も12.3倍と急増し1万1,162台(同4.1%)で、順位を25上げて7位に付けた。中国全体では2.6倍の3万8,626台(同14.3%)だった。

車種別にみると首位はBYD「ATTO3」で、1万4,241台(同5.3%)だった。

EV登録台数は11万台近く、全体の4割

2023年のハイブリッド車(HEV)を含む電気自動車(EV)登録台数は前年比20.0%増の10万9,348台(同40.5%)となった。

国別に見ると、日本メーカー・ブランドが3万6,291台(EV全体の33.2%)で首位だった。0.4%増と前年実績を維持したかたちだ。続いて中国が、93.6%増と大きく伸びて2万7,468台(同25.1%)となり、前年2位だった韓国を超えた。韓国は2万5,546台(同23.4%)で、第3位となったが14.6%増と堅調に伸びている。

EVの登録台数をメーカー・ブランド別にみると、トヨタが2万4,961台(同22.8%)で、首位ながら6.1%減となった。BYDは4.1倍の1万5,145台(同13.9%)となり2位に躍進した。これに、現代が7.5%減の1万5,046台(同13.8%)で続いた。

EVの種類別にみると、バッテリー式電気自動車(BEV)が74.3%増の4万8,219台(全登録台数の17.9%)となり、前年最多のHEVを上回った。プラグインハイブリッド車 (PHEV、注)も12.3%増と伸びた〔1万5,157台(同5.6%)〕。一方で、HEVは8.0%減となり、前年を下回った〔4万5,972台(同17.0%)〕。

なおイスラエルでは、通常の自家用車と商用車に、原則として83%の物品購入税が課せられるが、2023年時点でBEVには20%、一定の要件を満たすPHEVに55%の優遇税率を適用している(現状については後述)。BEVやPHEVの登録台数が増加したことには、この優遇が影響したと考えられる。なお、HEVも2021年は物品購入税が50%だったが、2022年以降、通常税率(83%)に引き上げられた。

メーカー・ブランド別を併せてみると、BEVではBYDが1万5,145台、吉利(Geely)が7,129台だった。HEVではトヨタが2万3,761台で、現代が1万622台だった。PHEVでは起亜が8,454台で、MG が2,661台だった。

中国からの輸入額は14億ドル超、生産国1位は韓国

イスラエルには自動車の生産工場がないため、国内販売される自動車は全て輸入車になる。イスラエル中央統計局(CBS)の輸入統計から乗用車(HSコード8703)の輸入額をみると、首位の中国は14億6,754万ドルに拡大した(前年比17.3%増)。前述のとおり、EV輸入の拡大が主因と言える。これに、韓国、日本が続いた。ともに、前年から減少したかたちだ。(表1参照)。

表1:乗用車(HS8703)の国別輸入額の推移(2021~2023年)(単位: 100万ドル、%、ポイント)(△はマイナス値)
順位 国名 2021年 2022年 2023年
金額 金額 金額 前年比 寄与度
1 中国 342 1,251 1,468 17.3 3.3
2 韓国 857 1,214 1,164 △ 4.2 △ 0.8
3 日本 636 756 735 △ 2.8 △ 0.3
4 ドイツ 321 528 617 16.9 1.4
5 チェコ 412 500 542 8.3 0.6
6 トルコ 325 388 328 △ 15.4 △ 0.9
7 米国 432 474 276 △ 41.8 △ 3.0
8 スペイン 198 308 236 △ 23.5 △ 1.1
9 ベルギー 100 121 201 66.3 1.2
10 ハンガリー 128 122 144 17.9 0.3
世界計 4,709 6,575 6,485 △ 1.4 △ 1.4

出所:イスラエル中央統計局(CBS)資料からジェトロ作成

また、I-viaの公開データから生産国別の登録台数をみると、韓国、中国、日本の順だった(表2参照)。特に韓国メーカー・ブランド分に限って生産国を確認すると、韓国製が65.2%を占め、トルコ製(16.5%)、チェコ製(7.9%)と続いた。また日本は、日本製が45.7%で、タイ製(16.6%)、トルコ製(11.8%)、フランス製(11.7%)と続いた。

表2:主要生産国別の新車登録台数(2022~2023年)(単位:台、%)(△はマイナス値)
順位 国名 台数 前年比 シェア
2022年 2023年 2023年 2023年
1 韓国 61,126 53,191 △ 13.0 19.2
2 中国 24,783 46,592 88.0 16.8
3 日本 39,205 35,955 △ 8.3 13.0
4 トルコ 24,758 24,428 △ 1.3 8.8
5 チェコ 25,115 24,007 △ 4.4 8.6
6 スペイン 16,645 16,116 △ 3.2 5.8
7 フランス 13,911 15,410 10.8 5.6
8 ドイツ 11,230 14,030 24.9 5.1
9 タイ 15,839 13,044 △ 17.6 4.7
10 スロバキア 8,456 7,583 △ 10.3 2.7
11 ハンガリー 7,151 7,108 △ 0.6 2.6
12 米国 9,201 5,443 △ 40.8 2.0
13 インド 2,311 2,931 26.8 1.1
14 英国 5,233 2,429 △ 53.6 0.9
15 メキシコ 3,971 2,327 △ 41.4 0.8
16 ルーマニア 2,216 1,679 △ 24.2 0.6
17 ポルトガル 2,101 1,475 △ 29.8 0.5
18 イタリア 1,577 1,254 △ 20.5 0.5
19 ベルギー 978 968 △ 1.0 0.3
20 スウェーデン 623 617 △ 1.0 0.2
世界計 377,524 277,562 0.0 100

注:本統計は生産国別に集計されており、合計台数は本文中の新車登録台数合計と異なる数値となっている。
出所:イスラエル自動車輸入業者協会(I-via)資料からジェトロ作成

2024年1~5月の新車登録台数、前年同期比13.6%減

I-viaによると、2024年1~5月の自動車新車登録台数は12万9,203台で、前年同期比13.6%(約2万400台)の減少となった。毎月の登録台数はいずれも前年同月の数字を下回っている(図参照)。フーシ派の攻撃により、東アジアからの自動車運搬船が紅海航路から喜望峰に迂回しており、輸送日数の増加や海上運賃の上昇が影響した結果だ。

登録台数を国別にみると、日本メーカー・ブランドの総登録車数は10.7%減の3万5,489台(シェア27.5%)となった。韓国も32.4%減の2万9,782台(同23.1%)と減少した。対して、中国は1.2%減にとどまり、2万2,442台(同17.4%)となった。イスラエルの現地紙「グローブス」(4月3日)はこの点について、フーシ派が紅海で攻撃を行っていることにより、日本や韓国からイスラエルへの輸出が中断したためと分析した。

図:自動車の月別登録台数の推移(2022年1月~2024年5月)
2023年9月までは、前年同月比はおおむねプラスで推移していたが、2023年10月以降はハマスとヒズボラの紛争の影響でマイナスが続いている。23年10月-28.5%、11月-41.4%、12月-58.6%、24年1月-20.9%、2月-10.3%、3月-13.5%、4月-8.6%、5月-7.9%で推移している。

出所:イスラエル自動車輸入業者協会(I-via)資料からジェトロ作成

EVの登録台数は、2024年1~5月を合わせて5万8,761台となり、自動車新車登録台数全体の45.5%を占めた。国別では、中国メーカー・ブランドが1万9,195台(EV全体の32.7%)、日本は1万7,600台(同30.0%)、韓国は1万1,210台(同19.1%)だった。

EVの種類別にみると、BEVが3万1,821台で、自動車新車登録台数全体の24.6%を占めた。また、HEVが2万2,557台で17.5%、PHEVが4,383台で3.4%だった。なお、2024年からEVに対する物品購入税減税措置は、BEVだけを対象に35%の優遇税率を適用している。


注:
PHEVには内燃機関部分がガソリン仕様のものとディーゼル仕様のものがある。本稿でのPHEVはその両者を区別していない。
執筆者紹介
ジェトロ・テルアビブ事務所長
中溝 丘(なかみぞ たかし)
1997年、ジェトロ入構。海外調査部、国際交流部、経済産業省通商政策局(出向)、ジェトロ・ヒューストン事務所、産業技術部、企画部、経済産業省貿易経済協力局(出向)、ジェトロ・ヒューストン事務所長、サービス産業部、調査部米州課長などを経て、2023年5月から現職。