2023年の新車登録と生産台数は堅調(英国)
EV生産・研究開発へ官民大規模投資

2024年6月4日

英国自動車製造者販売者協会(SMMT)によれば、2023年の英国の新車登録台数と生産台数は堅調だった。電気自動車(EV)も登録、生産の双方で記録を更新した。一方、新車登録台数および生産台数は新型コロナウイルス感染拡大前の水準に依然戻っていない。

新車登録台数は前年比増、供給制約の解消が要因

2023年の新車登録台数は前年比17.9%増の190万3,054台だった。新型コロナウイルス禍などによる半導体の供給制約が徐々に解消していることによって、全体の登録台数が増加したとみられている(表1参照)。2023年はコロナ禍の影響を受けた2020年以降で最高となったが、2019年と比べると17.7%減少している。

表1:形態別の新車登録台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
形態 2022年 2023年
台数 シェア 台数 シェア 前年比
自家用車 818,510 50.7 817,673 43.0 △0.1
フリート 750,838 46.5 1,041,350 54.7 38.7
商用車 44,715 2.8 44,031 2.3 △1.5
合計 1,614,063 100.0 1,903,054 100.0 17.9

出所:SMMT

今回の増加の要因はフリート(社用車など)によるものだ。フリートの新車登録台数は前年比38.7%増の104万1,350台だったのに対し、自家用車は0.1%減の81万7,673台、商用車は1.5%減の4万4,031台だった。政府は2022年6月、約11年間にわたりEVの販売を支援してきたEV新車購入補助金を終了した(2022年6月22日付ビジネス短信参照)。それ以降は、資金を公共充電インフラの拡大や、電動のタクシー、二輪車、小型商用車、トラックなどの販売促進に集中させるとした。補助金終了の影響を受けた自家用EV購入が明らかに減速していることに対し、SMMTのマイク・ホーズ会長は2024年1月24日、SMMT主催の「自動車産業優先事項」と題するウェビナーで、自家用EVの購入を促進するため、EVの新車購入にかかる付加価値税(VAT)の半減を働きかけるとコメントした。

表2:燃料車種別の新車登録台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
燃料車種 2022年 2023年
台数 シェア 台数 シェア 前年比
(台数)
ディーゼル車 82,981 5.1 71,501 3.8 △13.8%
ガソリン車 682,472 42.3 774,484 40.7 13.5%
マイルドハイブリッド車(MHEV、注)
ディーゼル
72,343 4.5 70,933 3.7 △1.9%
マイルドハイブリッド車(MHEV、注)
ガソリン
219,701 13.6 291,196 15.3 32.5%
バッテリー電気自動車(BEV) 267,204 16.6 314,687 16.5 17.8%
プラグインハイブリッド車(PHEV) 101,414 6.3 141,311 7.4 39.3%
ハイブリッド車(HEV、注) 187,948 11.6 238,942 12.6 27.1%
合計 1,614,063 100.0 1,903,054 100.0 17.9%

注:SMMTは、電力単体で駆動可能なPHEVに対して、MHEVを電力単体では駆動できないが、電力によるアシストにより燃料効率を上げCO2排出量を抑制した自動車、HEVをPHEVよりも電力で駆動する距離が短く、ブレーキ時に発生する電気を使用する自動車としている。
出所:SMMT

燃料車種別(表2参照)にみると、プラグインハイブリッド車(PHEV)の新車登録台数は前年比39.3%増の14万1,311台で、マイルドハイブリッド車(MHEV)ガソリンが32.5%増の29万1,196台だったほか、ハイブリッド車(HEV)は27.1%増の23万8,942台だった。一方、バッテリー電気自動車(BEV)は17.8%増の31万4,687台で過去最高となったが、全新車登録台数に占める割合は16.5%と前年より0.1ポイント減少した。また、ガソリン車の新車登録台数は13.5%増の77万4,484台で最大だったが、全新車登録台数に占めるシェアは前年比1.6ポイント低下し40.7%と、依然低下傾向にある。

表3:新車登録の上位10車種
(2023年)(単位:台)
順位 車種名 台数
1 フォード「プーマ」 49,591
2 日産「キャシュカイ」 43,321
3 ボクソール「コルサ」 40,816
4 キア「スポテージ」 36,135
5 テスラ「モデルY」 35,899
6 現代「ツーソン」 34,469
7 ミニ 33,385
8 日産「ジューク」 31,745
9 アウディ「A3」 30,159
10 ボクソール「モッカ」 29,984

出所:SMMT

表4:BEV新車登録の上位10車種(2023年) (単位:台)
順位 車種名 台数
1 テスラ「モデルY」 35,899
2 MGモーター「MG4」 21,715
3 アウディ「Q4 e-トロン」 16,757
4 テスラ「モデル3」 13,536
5 ポールスター2 12,542
6 VW「ID.3」 10,295
7 キア「e-ニロ」 10,084
8 BMW「i4」 8,940
9 VW「ID.4」 8,495
10 シュコダ「エンヤックiV」 8,136

出所:SMMT

新車登録の上位車種(表3、4参照)をみると、米国フォード「プーマ」が4万9,591台で1位となり、前年1位だった日産「キャシュカイ」が4万3,321台で2位に下がった。BEV部門では、米国テスラ「モデルY」が3万5,899台で前年に続き1位になった。次いで、中国上海汽車傘下のMGモーター「MG4」が2万1,715台で2位となった。

SMMTは2024年の市場拡大を期待しており、2023年10月に発表した2024年の見通しでは約200万台の新車登録を予測している。

生産も前年比増、EVは総生産台数の38%を占める

SMMTによれば、2023年の英国の自動車生産台数は前年比16.8%増の90万5,117台だった(表5参照)。半導体不足やロックダウンなどコロナ禍による影響が徐々に解消していることや、EVの需要増加によって、全体の生産台数が増加したとしている。また同年には、自動車生産に237億ポンド(約4兆6,452億円、1ポンド=約196円)規模の官民投資が発表されたほか、8車種の新モデルの生産も開始されたとした。

BEV、PHEV、HEVの生産台数は前年比48.0%増の34万6,451台で、過去最高を記録した2022年を大きく上回った。総生産台数に占める割合は前年比8.1ポイント増の38.3%となった。

表5:乗用車生産台数(単位:台、%)
対象市場 2022年 2023年 前年比
国内向け 168,176 191,247 13.7
輸出向け 606,838 713,870 17.6
合計 775,014 905,117 16.8

出所:SMMT

表6:輸出先上位10カ国・地域(単位:%)
順位 国・地域名 シェア
1 EU 60.3
2 米国 10.3
3 中国 7.2
4 トルコ 3.8
5 日本 2.8
6 オーストラリア 2.6
7 韓国 1.5
8 カナダ 1.3
9 アラブ首長国連邦 0.9
10 スイス 0.7

出所:SMMT

国内市場向け生産台数は前年比13.7%増の19万1,247台。輸出向けは17.6%増の71万3,870台で、総生産台数の78.9%を占めた(表5参照)。輸出先上位10カ国・地域については、表6を参照。

表7:各メーカーの生産台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー 2022年 2023年 前年比
日産 238,329 324,893 36.3
ジャガーランドローバー 202,788 238,422 17.6
ミニ 186,222 184,996 △0.7
トヨタ 105,590 122,193 15.7
ベントレー 15,639 12,859 △17.8
その他 16,936 21,754 28.4
合計 775,014 905,117 16.8

出所:SMMT

メーカー別の生産台数は、日産が前年比36.3%増の32万4,893台で、前年に続き1位。トヨタが15.7%増の12万2,193台で前年同様、4位だった(表7参照)。

政府の支援はEVの生産・研究開発へ

政策面では、生産への支援が集中している。政府は2023年11月、製造業を支援する先端製造業計画(Advanced Manufacturing Plan、AMP)を発表した。AMPは、製造業の将来に向けた長期的投資、国際協力とサプライチェーンの強靭(きょうじん)性の構築、競争力強化のためのコスト削減と障壁の解消を優先事項として掲げる。政府はまた同月、AMPの対象セクター向けの投資計画を発表した。総額は約45億ポンド、うち20億ポンドを自動車産業に投じるとしている。2025年から5年間にわたり適用する予定。自動車産業に対してはゼロエミッション車の製造、サプライチェーン強化や研究開発などへの投資を支援する(2023年11月24日付ビジネス短信参照)。

さらに2023年11月、英国初のEVに特化したバッテリー戦略も発表。2030年までに世界的に競争力のあるバッテリーサプライチェーンを実現し、経済成長とネットゼロへの移行を支援するための政府活動をまとめている(2023年12月8日付ビジネス短信参照)。また、バッテリー製造に必要な重要鉱物に関する戦略は2022年7月に発表されている(2022年8月3日付ビジネス短信参照)。

研究開発に対する資金援助も発表されている。政府は2023年10月、最先端のネットゼロ技術の研究開発に関する20のプロジェクトに対して、先端推進システム技術センター(APC)を通じ、政府および自動車業界から合計で8,900万ポンドを出資すると発表した。対象となるのは、オフロード車用向けの水素を使った統合パワーシステムを開発している「パーキンス」や高級BEV開発を進める大手高級自動車メーカーの「アストンマーティン」などで、EV開発に力を入れている企業のほか、サプライチェーン構築や製造分野の企業も支援の対象となった。政府はまた、半導体分野の研究者や企業が半導体の試験や製造で使用する最新設備へのアクセスを支援するため、1,660万ポンドを出資するとしている。

EV分野でのEUとの関係性でも動きがみられた。政府は、EUとの通商・協力協定(TCA)で導入される、EVおよびEV用バッテリーに適用される原産地規則の緩和措置を延長することでEUと合意した(2023年12月22日付ビジネス短信参照)。これにより、2023年末までとされていた現行の緩和措置を2026年末まで継続し、2027年以降はTCAで定める原産地規則が適用される。

EV充電設備インフラは、多くの政府支援も受け、急増している。EV充電ステーションのプラットフォームであるザップマップによれば、2023年のEVの公共充電設備設置総台数は前年比45%増で5万3,906台となった。この1年での急増は4億5,000万ポンド規模の地域EVインフラ(LEVI)基金(2022年3月28日付ビジネス短信参照)の運用開始によるものだとみている。

政権交代が見込まれる労働党も自動車計画を発表

調査会社ユーガブ(YouGov)の世論調査(2024年5月6日時点)によれば、次回の英国の総選挙では労働党への政権交代が見込まれる。労働党は2023年10月、「経済成長の牽引」を目標とする自動車産業に特化した計画を発表した。計画では、サプライチェーン強化や国内バッテリー生産能力の強化、ギガファクトリー建設への投資および行政手続きの簡略化などへのコミットが示された。そのほか、消費者の信頼感や需要を高めるため、充電設備の改善と明確なバッテリーの基準を策定するとしている。なお、政権交代による大きな政策変更は予測されていない。

メーカーもEV生産に注目、日産は20億ポンドの追加投資を発表

2023年は、製造業に対する政府による大型支援に伴い、メーカーによる投資も多い年となった。日系企業では、日産自動車が11月、イングランド北部サンダーランドの同社EV生産ハブへの大規模投資を発表(2023年12月8日付ビジネス短信参照)。EV新型車2車種の生産とバッテリーのギガファクトリー増設に約20億ポンドを追加投資するとした。政府がイングランド東北地域を優先投資地域として指定したことに伴う投資である。

日産は2021年7月には、中国の再生可能エネルギー開発大手傘下エンビジョングループのバッテリー企業AESCグループと、10億ポンドの投資によるギガファクトリー建設計画を発表しており(2021年7月2日付ビジネス短信参照)、今回の発表はそれに続くもの。政府によると、日産による英国への投資は今回の発表で総額60億ポンドを超える。

インドの大手製鉄タタ・グループは、2023年7月に英国でのギガファクトリーの建設を発表(2023年7月27日付ビジネス短信参照)。また、同社と英国政府は9月、政府による同社への資金提供について合意した(2023年9月22日付ビジネス短信参照)。政府は約5億ポンドの補助金を同社に提供する。同社による投資と合わせて、投資規模は総額約12億5,000万ポンドとなる。資金提供の対象は、ウェールズ南部ポートタルボットの同社製鉄所高炉。二酸化炭素(CO2)の排出が少ない電炉への転換のために資金が投じられる。同グループの企業であるジャガーランドローバー(JLR)も2023年10月、EV製造事業拡大に向け、コベントリー工場にEVの試験施設を建設することを発表、約2億5,000万ポンドを投じるとした。これは、2023年4月に発表したJLRのEV生産能力向上に向けた、今後5年間での150億ポンドの投資から割り当てられる。

その他、ドイツの自動車大手BMWは2023年9月、英国工場におけるEV製造への完全転換に向け、計6億ポンド投資すること発表した(2023年9月22日付ビジネス短信参照)。対象は、小型車「ミニ」を製造するオックスフォードの車体製造工場とスウィンドンの車体プレス工場。今回の投資により、2026年から新型EVが製造開始される予定。その後、2030年には全ての製造車両がEVとなる見込みとしている。さらに、自動車大手ステランティスは2023年9月、1億ポンドを投じ、エルズミアポート工場をEV専用工場に転換し、EV生産を開始した。これが英国初のEV専用工場となった。

執筆者紹介
ジェトロ・ロンドン事務所
チャウジュリー・クリシュナ
2023年6月、ジェトロ・ロンドン事務所入所。