新自動車政策とEV関税減免撤廃でEV生産投資が加速(ブラジル)
2023~2024年のブラジル自動車産業の動向

2024年9月2日

ブラジルの自動車産業は、2023年から2024年にかけて、新自動車政策「MOVER」の発表と、中国企業の積極的な進出により、大きな変革期を迎えている。本レポートでは、全国自動車製造業者協会(ANFAVEA)の最新年次報告に基づく生産台数、販売台数、輸出台数の動向や、主要自動車メーカーの投資動向、新自動車政策、電気自動車(EV)輸入関税減免措置の段階的廃止、中国企業の進出動向について詳述する。

排ガス規制厳格化でトラック・バスは大きく減産

全国自動車製造業者協会(ANFAVEA)が2024年2月に発表した年次報告によると、2023年の自動車(乗用車、軽商用車、バス、トラックの合計)生産台数は前年比1.9%減の232万4,838 台だった。内訳をみると、乗用車と商用車だけの生産台数統計(220万3,705台)は前年比1.3%増加し、トラック・バスの生産量は12万1,133台と、37.5%も減少している。ANFAVEAはトラック・バスの生産量の減少について、2023年1月から大型車両に対する排ガス規制が厳格化されたことで、新規制に対応するためトラックやバスの生産コストが上昇したためと説明している。

一方、国内販売台数(新車登録ベース)は9.7%増の230万8,689台と好調で、輸出台数は、アルゼンチンやチリ、コロンビア向け輸出が減少し、16.0%減の40万3,919台となった(図1、図2参照)。

パワートレイン別の新車登録台数を見ると、フレックス燃料車180万9,830台(シェア78.4%)、ディーゼル車34万3,698台(同14.9%)、ガソリン車6万602台(同2.6%)と、内燃機関を持つ車両が国内販売の約96%を占めている。電気自動車(EV)は9万4,376台(同4.1%)で、25台に1台はEVがシェアを握っている(表参照)。

ANFAVEAは2024年の生産台数を247万台(前年比6.5%増)、国内販売台数を245万台(6.1%増)、輸出台数を40万7,000台(0.7%増)と予測している。

図1:ブラジルの自動車国内販売台数(新車登録ベース)推移
ブラジルにおける新車登録ベースの自動車国内販売台数と種類ごとの内訳、それに占める輸入車の台数および比率の2001年から2023年の推移と、2024年販売台数合計の見込みを示した図。尚、軽商用車は人や荷物を同時に運ぶことが出来る乗り物であり、総重量3.5トンまでとなる。小-中型でピックアップやバン、救急車などの特殊車両も該当する。一方で、スポーツ用多目的車などは乗用車に分類される。2001年は160万台で、うち乗用車132万台、軽商用車19万台、トラック/バス9万台、輸入車の台数は18万台で、輸入車比率は11.1%。2002年は148万台で、うち乗用車124万台、軽商用車15万台、トラック/バス8万台、輸入車の台数は12万台で、輸入車比率は7.8%。2003年は143万台で、うち乗用車122万台、軽商用車13万台、トラック/バス8万台、輸入車の台数は7万台で、輸入車比率は5.2%。2004年は158万台で、うち乗用車132万台、軽商用車16万台、トラック/バス10万台、輸入車の台数は6万台で、輸入車比率は3.9%。2005年は171万台で、うち乗用車144万台、軽商用車18万台、トラック/バス9万台、輸入車の台数は9万台で、輸入車比率は5.1%。2006年は193万台で、うち乗用車163万台、軽商用車20万台、トラック/バス10万台、輸入車の台数は14万台で、輸入車比率は7.4%。2007年は246万台で、うち乗用車209万台、軽商用車26万台、トラック/バス12万台、輸入車の台数は28万台で、輸入車比率は11.3%。2008年は282万台で、うち乗用車234万台、軽商用車33万台、トラック/バス15万台、輸入車の台数は38万台で、輸入車比率は13.3%。2009年は314万台で、うち乗用車264万台、軽商用車37万台、トラック/バス13万台、輸入車の台数は49万台で、輸入車比率は15.6%。2010年は352万台で、うち乗用車286万台、軽商用車47万台、トラック/バス19万台、輸入車の台数は66万台で、輸入車比率は18.8%。2011年は363万台で、うち乗用車290万台、軽商用車52万台、トラック/バス21万台、輸入車の台数は86万台で、輸入車比率は23.6%。2012年は380万台で、うち乗用車312万台、軽商用車52万台、トラック/バス17万台、輸入車の台数は79万台で、輸入車比率は20.7%。2013年は377万台で、うち乗用車304万台、軽商用車54万台、トラック/バス19万台、輸入車の台数は71万台で、輸入車比率は18.8%。2014年は350万台で、うち乗用車279万台、軽商用車54万台、トラック/バス16万台、輸入車の台数は62万台で、輸入車比率は17.6%。2015年は257万台で、うち乗用車212万台、軽商用車36万台、トラック/バス9万台、輸入車の台数は41万台で、輸入車比率は16.1%。2016年は205万台で、うち乗用車169万台、軽商用車30万台、トラック/バス6万台、輸入車の台数は27万台で、輸入車比率は13.3%。2017年は224万台で、うち乗用車186万台、軽商用車32万台、トラック/バス6万台、輸入車の台数は24万台で、輸入車比率は10.9%。2018年は257万台で、うち乗用車210万台、軽商用車37万台、トラック/バス9万台、輸入車の台数は31万台で、輸入車比率は12.1%。2019年は279万台で、うち乗用車226万台、軽商用車40万台、トラック/バス12万台、輸入車の台数は30万台で、輸入車比率は10.7%。2020年は206万台で、うち乗用車162万台、軽商用車34万台、トラック/バス10万台、輸入車の台数は21万台で、輸入車比率は10.3%。2021年は212万台で、うち乗用車156万台、軽商用車42万台、トラック/バス14万台、輸入車の台数は25万台で、輸入車比率は12.0%。2022年は210万台で、うち乗用車158万台、軽商用車38万台、トラック/バス14万台、輸入車の台数は27万台で、輸入車比率は13.0%。2023年は231万台で、うち乗用車172万台、軽商用車46万台、トラック/バス13万台、輸入車の台数は35万台で、輸入車比率は15.2%。2024年の販売予測は合計245万台。

出所:ANFAVEA資料から作成

図2:ブラジル自動車生産・輸出台数の推移
ブラジルにおける自動車生産台数と種類ごとの内訳、それに占める輸出比率の2001年から2023年の推移と、2024年生産台数合計の見込みを示した図。尚、軽商用車は人や荷物を同時に運ぶことが出来る乗り物であり、総重量3.5トンまでとなる。小-中型でピックアップやバン、救急車などの特殊車両も該当する。一方で、スポーツ用多目的車などは乗用車に分類される。2001年の生産台数は167万台で、うち乗用車/軽商用車は158万台、商用車/トラック/バスは10万台、輸出車の台数は24万8,000台。2002年の生産台数は163万台、うち乗用車/軽商用車は154万台、商用車/トラック/バスは9万台、輸出車の台数は26万6,000台。2003年の生産台数は168万台、うち乗用車/軽商用車は158万台、商用車/トラック/バスは10万台、輸出車の台数は39万3,000台。2004年の生産台数は212万台、うち乗用車/軽商用車は199万台、商用車/トラック/バスは13万台、輸出車の台数は56万6,000台。2005年の生産台数は236万台、うち乗用車/軽商用車は221万台、商用車/トラック/バスは14万台、輸出車の台数は72万4,000台。2006年の生産台数は240万台、うち乗用車/軽商用車は227万台、商用車/トラック/バスは13万台、輸出車の台数は63万4,000台。2007年の生産台数は283万台、うち乗用車/軽商用車は266万台、商用車/トラック/バスは17万台、輸出車の台数は63万5,000台。2008年の生産台数は305万台、うち乗用車/軽商用車は285万台、商用車/トラック/バスは20万台、輸出車の台数は56万9,000台。2009年の生産台数は308万台、うち乗用車/軽商用車は292万台、商用車/トラック/バスは15万台、輸出車の台数は36万8,000台。2010年の生産台数は338万台、うち乗用車/軽商用車は315万台、商用車/トラック/バスは23万台、輸出車の台数は50万3,000台。2011年の生産台数は342万台、うち乗用車/軽商用車は314万台、商用車/トラック/バスは27万台、輸出車の台数は55万3,000台。2012年の生産台数は340万台、うち乗用車/軽商用車は323万台、商用車/トラック/バスは17万台、輸出車の台数は44万3,000台。2013年の生産台数は371万台、うち乗用車/軽商用車は349万台、商用車/トラック/バスは23万台、輸出車の台数は56万5,000台。2014年の生産台数は315万台、うち乗用車/軽商用車は297万台、商用車/トラック/バスは17万台、輸出車の台数は33万4,000台。2015年の生産台数は242万台、うち乗用車/軽商用車は232万台、商用車/トラック/バスは10万台、輸出車の台数は41万7,000台。2016年の生産台数は218万台、うち乗用車/軽商用車は210万台、商用車/トラック/バスは8万台、輸出車の台数は51万7,000台。2017年の生産台数は274万台、うち乗用車/軽商用車は263万台、商用車/トラック/バスは10万台、輸出車の台数は76万6,000台。2018年の生産台数は288万台、うち乗用車/軽商用車は275万台、商用車/トラック/バスは13万台、輸出車の台数は62万9,000台。2019年の生産台数は294万台、うち乗用車/軽商用車は280万台、商用車/トラック/バスは14万台、輸出車の台数は42万8,000台。2020年の生産台数は201万台、うち乗用車/軽商用車は190万台、商用車/トラック/バスは11万台、輸出車の台数は32万4,000台。2021年の生産台数は225万台、うち乗用車/軽商用車は207万台、商用車/トラック/バスは18万台、輸出車の台数は37万6,000台。2022年の生産台数は237万台、うち乗用車/軽商用車は218万台、商用車/トラック/バスは19万台、輸出車の台数は48万1,000台。2023年の生産台数は232万台、うち乗用車/軽商用車は220万台、商用車/トラック/バスは12万台、輸出車の台数は40万4,000台。2024年の予測生産台数は247万台。

出所:ANFAVEA資料から作成

表:ブラジルのパワートレイン別2023年新車登録台数(乗用車、商用車)(単位:台)
項目 ガソリン エタノール フレックス燃料 電気 ガス ディーゼル 合計
台数 60,602 34 1,809,830 94,376 149 343,698 2,308,689
シェア 2.62% 0.001% 78.39% 4.09% 0.01% 14.89% 100%

出所:ANFAVEA 2024年ブラジル自動車産業年次報告

歴代2番目の売り上げ達成した中古車市場

全国中古自動車販売協会連合会(FENAUTO)によると、2023年の中古車市場は活況を呈し、過去2番目の高水準となる1,444万8,434台の販売台数を記録して、前年比9.5%増となった。特徴的だったのは、13年以上前の年式の中古車の販売が最も伸びた点で、同カテゴリーの販売台数は前年比13.5%増の503万3,345台に達し、全体の3分の1以上を占める。

新自動車政策「MOVER」発表

2023年12月30日に開発商工サービス省(MDIC)は暫定措置令1205号として、新自動車政策(Mobilidade Verde:通称「MOVER」)を発表した。これはブラジル自動車市場の持続可能な成長を目指すもので、車両の脱炭素化や、技術開発、国際競争力強化、自動車・部品のイノベーションを支援するプログラムとなっている。エネルギー効率向上のための投資を拡大し、車両製造で環境負荷を少なくした企業や、エネルギー効率の高い車両を製造・輸入する企業に対して、「グリーンIPI(工業製品税)」(注1)の減税恩典が適用される。具体的には、使用燃料、燃費、エンジン出力、リサイクルのしやすさ、運転の補助技術などによって税率が定められる予定だ。

ほかにも、税制優遇措置、輸入関税の見直し、環境規制強化などが盛り込まれている。6月27日時点で89社がプログラムに登録されている。税制上の優遇措置を受けるには、企業はR&D(研究開発)や生産プロジェクトへの総売り上げに対する一定額以上の投資が必要となり、投資金額に応じて1レアル(1レアル=約30円)当たり0.5~3.2レアルの連邦税控除を受けることができる。

この優遇措置の枠として設けられている金額は、2024年35億レアル、2025年38億レアル、2026年39億レアル、2027年40億レアル、2028年41億レアルで、総額193億レアルに達する。(2024年1月15日付2024年4月16日付ビジネス短信参照)。

主要自動車メーカーの相次ぐ投資発表

MOVERの発表を受け、ホンダ、三菱自動車、ステランティス、トヨタ、現代自動車、フォルクスワーゲン(VW)、ゼネラルモーターズ(GM)、ルノー(Renault)、日産などの主要メーカーが相次いでブラジル国内への投資計画を発表した。総額1,300億レアル(約3兆9,000億円、1レアル=約30円、注2)を超える自動車業界への投資は、フレックスハイブリッドエンジン(注3)やEV生産など、脱炭素化に向けたものが中心となっている。主要な各社の投資計画は発表順に次のとおり。

  • 日産は、2023年11月7日に2025年までにブラジルでの生産ライン強化と新技術導入のため、約28億レアルの追加投資を決定した。新型「Kicks」を含む2つの新型スポーツ用多目的車(SUV)生産と、ターボエンジン組み立てのための設備投資を実施する。(2023年11月15日付2023年11月13日付ビジネス短信参照)。
  • Renaultは、2023年12月4日に2024年から2027年にかけてブラジル市場向け新型SUVの開発と生産に向け、約20億レアルの投資を発表した(2023年12月8日付ビジネス短信参照)。
  • GMは、2024年1月24日に2024年から2028年にかけてブラジルでの新型車生産を目的とした約70億レアルの追加投資を発表した。同計画には工場の改善や、現地市場に適合した新技術の開発、車種ポートフォリオの刷新などが含まれている(2024年2月20日付ビジネス短信参照)。
  • VWは、2月2日に2022年から2028年までブラジルでの生産能力向上と新型車開発のために追加投資を行い、同期間の投資総額が約160億レアルに達すると発表した。この投資は、2028年までにバッテリー式電気自動車(BEV)やハイブリッド車(HEV)などを含め、16の新車種を導入する計画に向けられている(2024年2月21日付ビジネス短信参照)。
  • 現代自動車は2月22日、2024年から2032年までに11億ドルをブラジル国内に投資することを発表した。BEVやHEV、グリーン水素自動車の開発によって脱炭素化を目指すとしている。この投資により、電動車両の生産ラインが増強される(2024年3月8日付ビジネス短信参照)。
  • トヨタは、3月5日に2024年から2030年にかけてブラジルでの生産能力拡大と新技術導入のために、110億レアルの追加投資を発表した。この投資には、フレックスハイブリッド車の新車種製造やHEVのエンジン製造、バッテリー組み立てなどが含まれ、ハイブリッド車両の生産ラインを強化する予定だ(2024年3月18日付ビジネス短信参照)。
  • ステランティスは、3月6日に2025年から2030年にかけてブラジル国内の工場に300億レアルの投資を行い、新型車生産や脱炭素化技術の開発計画を発表した。フレックスハイブリッド技術の「バイオハイブリッド」技術への投資なども含まれる(2024年3月18日付ビジネス短信参照)。
  • ブラジルでの三菱自動車の車両組み立て委託先のHPE Automotoresが、4月4日にゴイアス州カタロン工場に2032年までの期間で40億レアルを投資する計画を発表した。この投資は、三菱自動車ブランドの新製品の製造や、フレックスハイブリッド技術の高度化に向けた工場の整備などに活用する予定。
  • ホンダは、4月19日に2024年から2030年にかけてブラジルに42億レアルの追加投資を行うことを発表した。この投資は、生産効率の向上、革新的な技術の導入、そして電動化に向けた取り組みを加速させることを目的としていて、4月30日付の現地紙「グローボ」に掲載された、ホンダ・サウスアメリカのロベルト・アキヤマ商業副社長へのインタビューによれば、同社は2028年までにブラジル市場に、初となるフレックスハイブリッド車を投入する。

2023年のEVの主な動向

ブラジル電気自動車協会(ABVE)の2024年1月の発表によると、2023年の国内のEV(注4)新車登録台数は9万3,927台と、前年比91%増という過去最高記録を更新した。2022年まではEVの中でも、トヨタ車をはじめとするHEVが依然として主流だったが、2023年は都市部を中心に、プラグインハイブリッド車(PHEV)とBEVが販売台数を伸ばし、5万2,359台を記録した。PHEVとBEVの販売台数はEVの56%を占め、HEVを上回った。これはブラジルのEV市場がHEVからPHEVやBEVへ大きく転換していることを示している。

この転換の要因として、中国企業のブラジル進出が加速していることが挙げられ、自動車産業でもその影響は顕著だ。特に比亜迪(BYD)や長城汽車(GWM)、カオア・チェリー(注5)などの企業が積極的に動いており、ブラジル国内でのEV販売を牽引している。中国企業の動向は次のとおりだ。

中国企業のブラジル進出

  • BYDは、2024年3月18日にバイーア州カマサリ市でブラジル市場向けの電動車両生産をするため、総投資額を約30億レアルから約55億レアルの投資を発表した。新生産拠点はEVとHEV生産工場、電動バス、電動トラックシャーシの生産工場、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーの材料加工工場で構成する。2024年末には組み立てでの生産開始を予定しており、2025年には製造を開始する予定だ(2024年3月26日付ビジネス短信参照)。
  • 長城汽車は2021年8月19日にドイツのメルセデス・ベンツ(当時のダイムラー)からイラセマポリス工場を買収する契約を締結したことを発表した(2021年10月8日付ビジネス短信参照)。2022年2月にはブラジル市場への参入計画と、今後10年間で100億レアルを投資する計画を発表している。その後も同工場での生産開始時期や生産車種についても発表している(注6)。
  • カオア・チェリーは2023年8月29日、今後5年間でゴイアニア州アナポリスの工場を拡張し、Tiggo5X、Tiggo7、Tiggo8の増産に約30億レアルの追加投資をすると発表した。同社は2023年末までにブラジルで販売する全ての自社製品をハイブリッド、もしくはEVにすることを目指すと発表していた(2022年6月9日付ビジネス短信参照

輸入時のEV 関税免除の段階的廃止が開始

ブラジル国内でのEV販売を左右する要因として、これまで適用されてきたEVに対する輸入関税減免措置があったが、政府は2023年11月23日に、EVの輸入関税減免措置を段階的に廃止する計画を発表した。2024年1月から輸入枠を超過するEVについては、輸入関税が課されている。この措置により、国内でのEV生産が奨励される見込みだ(2023年12月5日付ビジネス短信参照)。

この措置を受けたためか、2023年12月のEV全体の販売台数は1万6,279台を記録し、前月比(1万601台)で53.6%増、前年同期比(5,587台)で約3倍となっている。このうちPHEVとBEVが販売の70%を占めるなど、BYDやGWMといった新モデルを発売したメーカーが優れたパフォーマンスを発揮した。

このPHEVとBEV へのシフトは2024年も続いており、7月末までのEV全体の累計売上台数は既に2023年全体の合計を超える9万4,616台を記録しており、その内訳としてBEVが3万5,907台 (38.0%)、PHEVが2万9,955台 (31,7%)と、合わせて約70%を占めている。

2023年から2024年にかけてのブラジル自動車市場は、EVの躍進、中国企業の進出、新自動車政策の影響を受けて各企業が脱炭素化に向けた開発投資を発表するなど、大きな変革期を迎えている。新自動車政策の詳細規定などは今後策定される。2025年にはブラジルのベレンで、国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)が開催される予定で、脱炭素化に向けた各社の取り組みに今後も注目していく必要がある。


注1:
グリーンIPIは使用燃料、燃費、エンジン出力、リサイクルのしやすさ、運転の補助技術の優劣によって、一部の企業は通常の税率より低い税金を支払う一方で、他の企業はより高い税金を支払うことになっており、財政上の負担を伴わない制度となっている。税率の詳細については今後、大統領令で決定される。
注2:
発表時期に差があるため、ここでは一律に1レアル=約30円とする。
注3:
フレックスハイブリッド車の場合、内燃機関はガソリンとバイオエタノールとの組み合わせで走行できる。
注4:
BEV、HEV、PHEVを含む。
注5:
中国自動車メーカー奇瑞汽車と、韓国の現代自動車の販売権などを有するCAOAの合弁会社。
注6:
2023年4月:イラセマポリス工場での生産開始時期(2024年5月)や、生産車種(ハイブリッドピックアップトラックとSUV)などを発表。
2023年11月:リオデジャネイロでGWMブランド発表イベントを開催し、「哈弗(Haval) H6 PHEV」四輪駆動バージョンを世界初披露。
2024年6月にブラジルで生産される最初の車種は哈弗(Haval) H6 で、2025年前半には最終消費者向けの生産を開始する予定と発表。

変更履歴
文章中に誤りがありましたので、次のように訂正いたしました。(2024年09月18日)
第5段落
(誤)ANFAVEAは2024年の生産台数を247万台(前年比6.2%増)、
(正)ANFAVEAは2024年の生産台数を247万台(前年比6.5%増)、
執筆者紹介
ジェトロ・サンパウロ事務所
中山 貴弘(なかやま たかひろ)
2013年、ジェトロ入構。機械・環境産業部、ジェトロ三重、ジェトロ・サンティアゴ事務所、企画部海外地域戦略班(中南米)、内閣府などを経て、2023年7月からジェトロ・サンパウロ事務所勤務。