韓国との近接性を強みに物流機能強化を志向する山東省威海市(中国)

2024年2月29日

中国の山東省威海市は、地理的近接性も相まって日本や韓国との経済的なつながりが強い。その中で、2023年12月からは、韓国の仁川広域市との間で、輸入貨物を積載した相手国側からの車両をそのまま両都市でも走行させることを可能とし、かつ相手国側の航空物流との連携活用も視野に入れた新たな取り組みを開始した。同市はこうした地域の強みを有効活用した取り組みを推進、伸ばすことにより、さらなる地域経済の活性化を模索している。

海を隔てて韓国に最も近い都市・山東省威海市

山東省は、世界の港湾別コンテナ取扱個数ランキング(速報値)で世界第6位(国土交通省、2021年データ)の青島港をはじめとして、省内各地に大陸横断貨物鉄道の起点都市や、国内トラック物流のハブ都市の臨沂市を擁するなど(2022年4月25日付地域・分析レポート参照)、中国の物流で一定の存在感を有している。加えて、同省は日本や韓国との地理的近接性を大きな強みとして、多くの日韓企業の進出を受け入れてきた。

中でも同省の東端に位置する威海市は、韓国と向かい合わせの位置にあり、海を隔てて韓国に最も近い中国の都市という点を強みの1つとしてきた。同市は土地面積5,822平方キロ、人口292万人、域内総生産(GRP)3,408億元(7兆1,568億円、1元=約21円、2022年時点)の中堅都市。日系企業も多く進出するが、同市の外資系企業の中でも韓国系企業が最多を占める。威海市外商投資企業協会へのヒアリングによると、同市外資系企業1,776社中、三星重工業(栄成)、威海電美世光機電などを筆頭に韓国系企業は1,022社と、全体の57.5%に及ぶ(2024年1月時点)。物流面でも、同市から韓国には週22本もの海上便、同60本もの航空便(ともに旅客便と貨物便を含む)とでつながっている。それら特徴も背景に、2015年12月に発効された中国・韓国自由貿易協定(FTA)では、同市は韓国側の仁川経済自由区域とともに、両国の「地域経済協力モデル地区」に指定されている。

輸送車両の中韓共用などで物流効率化を試行

近年ではさらなる取り組みとして、両都市(威海市と仁川広域市)の2つの港、2つの空港(威海港・空港、仁川港・空港)を連携させる「4港連携」という概念も提唱され、その強みのさらなる活用が図られている。

2023年12月19日から、韓国のナンバープレートを付けた車両に威海市指定地域間を走行することを認める取り組みも新たに始まった。韓国からの輸送貨物は、仁川港でそれらを積載した韓国車両ごと船舶に積まれ、出港する。威海港に到着した車両は、手続きを経て貨物を積載したまま威海市の指定地域を走行し、威海空港まで運ばれ、そこで集中的に処理することが可能となった。逆も同様で、威海市側で税関が指定した特別監督区域で集荷・通関申告された商品は、輸送車ごと威海港経由仁川港に輸送することができる。到着後は仁川空港まで直接運転・運送され、仁川空港で通関、荷降ろしされることで、第三国輸送も可能とされる。 これについて、関係者は以下2つのメリットを掲げている。

  1. 輸送時間の短縮:威海空港~仁川空港間の移動に際して、4回の積み替え・車両交換のプロセスがなくなることで、約4~5時間の作業時間の短縮につながる。威海市からの輸出貨物が仁川空港に到達する時間は北京市や上海市に運ぶ時間と大差がなくなり、さらには、仁川空港が持つハブ機能を生かすことで、第三国への迅速な輸送も可能となる。荷物の積み替え回数が減ることは、精密機器製品などの破損リスク抑制にもつながる。
  2. 物流コストの削減:運送に当たっては、この制度下では中韓双方が輸送貨物の重量や体積に合わせて用意した車両をそのまま相手国側でも利用することができる。これだけで、約20%のコスト削減になるとしている。

有力な国際物流中継拠点としての発展も志向

現在、韓国から威海市には化粧品や電子部品、水産品など、威海市から韓国には衣料や電工機材、玩具などが輸出されているが、それらの輸送に当たり、今後この制度が順次活用されていくことが期待されている。

この取り組みの威海市側の運営を担う中央企業・招商局傘下の中国外運華中・威海分公司によると、2024年2月上旬現在、この取り組みはまずは週1便の船舶での1車両に対して適用されている。越境EC製品の韓国や日本、欧州向けの輸送に活用されており、今後順次さらなる活用促進を図るとしている。併せて、今後の利便性向上に向けて、威海市側の起点を威海空港から威海総合保税区北エリアに変更するなどの改定も検討されている。

威海市としては、一般貨物や越境EC商品、宅配便などを問わず多種多様な貨物を対象に、中国から韓国のみならず、世界とも結ぶ新たな有力国際物流ルートとして、これを広く提供していくことを志向している。この連携を通じて韓国が有する物流面での優位性を有効活用することで、威海市、ひいては山東省の北東アジアにおける物流拠点としての地位向上や、航空物流の能力向上につなげたいとしている。


威海市に到着した韓国の車両(中国外運華中・威海分公司提供)
執筆者紹介
ジェトロ・青島事務所長
吉川 明伸(よしかわ あきのぶ)
1996年、ジェトロ入構。北京事務所、管理課、海外調査計画課、名古屋事務所、海外市場開拓課などを経て、2020年から現職。