2022年の新車販売台数は前年比4.8%増、エコカーは57.3%増(コロンビア)
2023年8月14日
コロンビア自動車協会(ANDEMOS)によると、2022年の新車販売(登録)台数は26万2,595台で、前年比4.8%増加した。
2022年は選挙やそれに伴う先行き不透明感、食品やエネルギー価格の高騰、高金利、年後半の急激な通貨下落など、自動車販売の足を引っ張る要因は多かったものの、失業率の改善や消費クレジットの増加により、最終的な販売台数は前年比でプラスとなった。
2022年の年間販売台数をブランド別にみると、首位は2021年に続いてルノーで、4万9,427台(シェア18.8%)だった。次いで、GM(シボレー)が4万1,079台(15.6%)を記録した。この2社はコロンビア国内で乗用車生産を行っている。3位と4位には、2万5,659台(9.8%)でトヨタ、2万1,589台(8.2%)でスズキが続いた。そのほかの日系メーカーでは、6位にマツダ(前年3位)、8位に日産(4位)、14位にホンダ(16位)が名を連ねた(表1参照)。
順位 | ブランド | 国名 |
2021年 台数 |
2022年 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
台数 | シェア | 前年比 | ||||
1 | ルノー | フランス | 48,032 | 49,427 | 18.8 | 2.9 |
2 | GM(シボレー) | 米国 | 34,624 | 41,079 | 15.6 | 18.6 |
3 | トヨタ | 日本 | 19,131 | 25,659 | 9.8 | 34.1 |
4 | スズキ | 日本 | 15,062 | 21,589 | 8.2 | 43.3 |
5 | 起亜 | 韓国 | 17,731 | 19,065 | 7.3 | 7.5 |
6 | マツダ | 日本 | 23,947 | 17,858 | 6.8 | △ 25.4 |
7 | フォルクスワーゲン | ドイツ | 14,019 | 15,159 | 5.8 | 8.1 |
8 | 日産 | 日本 | 20,179 | 10,396 | 4.0 | △ 48.5 |
9 | 現代 | 韓国 | 7,194 | 6,787 | 2.6 | △ 5.7 |
10 | フォード | 米国 | 7,667 | 6,197 | 2.4 | △ 19.2 |
11 | 福田汽車(FOTON) | 中国 | 3,770 | 5,815 | 2.2 | 54.2 |
12 | メルセデス・ベンツ | ドイツ | 3,673 | 3,933 | 1.5 | 7.1 |
13 | 安徽江淮汽車(JAC) | 中国 | 2,910 | 3,760 | 1.4 | 29.2 |
14 | ホンダ | 日本 | 2,081 | 2,765 | 1.1 | 32.9 |
15 | BMW | ドイツ | 3,301 | 2,638 | 1.0 | △ 20.1 |
16 | BYD | 中国 | 370 | 2,072 | 0.8 | 460.0 |
17 | 日野自動車 | 日本 | 2,513 | 2,060 | 0.8 | △ 18.0 |
18 | シトロエン | フランス | 1,678 | 1,974 | 0.8 | 17.6 |
19 | 江鈴汽車(JMC) | 中国 | 1,469 | 1,827 | 0.7 | 24.4 |
20 | プジョー | フランス | 1,877 | 1,696 | 0.6 | △ 9.6 |
― | その他 | ― | 19,269 | 20,839 | 7.9 | 8.1 |
合計 | 250,497 | 262,595 | 100.0 | 4.8 |
出所:コロンビア自動車協会(ANDEMOS)
エコカーは前年比57.3%増、域内でシェアトップのコロンビア
エコカーの販売は2万7,845台で、前年比57.3%増と大幅に伸びた。内訳は、ハイブリッド車(HEV)が50.7%増の2万2,141台、バッテリー式電気自動車(BEV)が3,274台(2.5倍)、プラグインハイブリッド車(PHEV)は2,430台(41.9%増)だった(図参照)。コロンビアでは2019年7月に法律(2019年1964号)が公布され、公共部門の大型車両の電動化目標、15都市の電気自動車(EV)充電インフラ目標、EV所有者を対象とした財政的インセンティブを定めた。一部の都市では、法律により、2035年までに公共サービス用車両のEVの最低調達割り当てを30%と定めている。公共交通システムを備えた都市では、2035年までに都市バス車両を完全に電動化することを目標に、電気バスの年間調達目標を段階的に設定している。
乗用車については、BEVとPHEVを対象に税制優遇措置を適用しており、(1)自動車税を車両価格の最大1%とする(通常は最大3.5%)、(2)自動車強制保険料を10%割引、(3)走行規制(注)の対象外とする、(4) EVは有害な汚染物質の排出が少ないことを考慮して、車両の排ガス検査の価格を割引、(5)EVの優先駐車スペースの創設(公共駐車スペースを提供する公共団体や商業施設は駐車スペースの少なくとも2%をEVの優先使用に割り当てることを義務付け)を規定している。HEVについては、税制優遇はないが、走行規制の対象外となっている。これらの優遇措置の効果もあり、エコカーの販売台数は2019年から2022年までに約9倍にまで拡大している。新車販売台数総数に占めるエコカー販売数の割合も、2019年には1.2%だったが、その後3.2%、7.1%、10.6%と年々増えている(図参照)。
エコカー販売台数のブランド別にみると、トヨタが9,351台でトップ(シェア33.6%)。次いでマツダ(17.4%)、スズキ(10.7%)と、日系メーカーがシェア6割以上を占めた(表2参照)。なお、日系メーカーのエコカーはほぼ全数がHEVとなっている。BEVの輸入は関税が免除されているものの、ハイブリッド車(HEV、PHEV)については、2027年までは年間3,000台まで5%の低減関税(通常は35%)が適用される。自動車関連団体は、このHEVに対する関税のさらなる低減または撤廃することを求めている。
順位 | ブランド | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 構成比 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | トヨタ | 480 | 1917 | 6,960 | 9,351 | 33.6 |
2 | マツダ | 0 | 0 | 2 | 4,847 | 17.4 |
3 | スズキ | 0 | 0 | 2,314 | 2,971 | 10.7 |
4 | BYD | 86 | 467 | 370 | 2,072 | 7.4 |
5 | メルセデス・ベンツ | 339 | 528 | 1,390 | 1,815 | 6.5 |
6 | フォード | 15 | 713 | 1,584 | 1,382 | 5.0 |
7 | ボルボ | 43 | 77 | 481 | 830 | 3.0 |
8 | アウディ | 137 | 54 | 615 | 710 | 2.5 |
9 | 起亜 | 792 | 955 | 1,431 | 685 | 2.5 |
10 | 現代 | 92 | 107 | 110 | 536 | 1.9 |
ー | その他 | 1,150 | 1,193 | 2,445 | 2,646 | 9.5 |
合計 | 3,134 | 6,011 | 17,702 | 27,845 | 100.0 |
出所:コロンビア自動車協会(ANDEMOS)
EV世界販売データベースのEV Volumesによると、コロンビアは小型乗用車の販売台数総数に占めるエコカーのシェアが中南米域内で最も高い。2022年を見ると、小型乗用車販売台数が約200万台のブラジルのエコカーのシェアが2.6%なのに対し、市場規模が約半分のコロンビアでは11.3%に達している(表3参照)。
国名 | エコカー販売台数 | 小型乗用車販売台数 | シェア |
---|---|---|---|
ブラジル | 51,681 | 1,957,620 | 2.6 |
メキシコ | 49,959 | 1,086,060 | 4.6 |
コロンビア | 26,949 | 239,125 | 11.3 |
チリ | 9,261 | 426,777 | 2.2 |
出所:EV Volumes
グスタボ・ペトロ大統領はクリーンエネルギーと脱炭素化への投資拡大をエネルギー政策の柱に掲げていると同時に、同分野の国内産業の工業化を産業政策の要としている。2023年2月17日に同大統領は「EVを輸入しようとするメーカーは国内の部品を使用して、コロンビアでのEV生産を後押ししてほしい」とツイッターで発言し、政府は国内のタクシー車両のEV化を支援すると付け加えた。
2023年の自動車販売見通しについて、ANDEMOSのオリベリオ・ガルシア代表は、年明け以降の内需の弱まりを受け、新車販売台数は前年比8%減の24万1,762台にとどまるだろうとみている。
- 注:
- 渋滞緩和や大気汚染防止のため、主要都市でナンバープレート末尾の番号によって、走行できない曜日や時間帯を定める措置。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・ボゴタ事務所長
豊田 哲也(とよた てつや) - 1993年、ジェトロ入構。ジェトロ・カラカス事務所長、ジェトロ・パナマ事務所長、ジェトロ福井所長のほか、地方創生事業、水産品輸出などの担当を経て、2018年11月から現職。