ガーナからナイジェリア市場を攻める
ラゴス国際見本市で聞く

2023年12月27日

2023年11月3日から12日にかけて、ナイジェリアでアフリカ最大級の総合見本市であるラゴス国際見本市が開催された(2023年11月9日付ビジネス短信参照)。ジェトロは前年に続いてジャパンパビリオンを設置し、合計33社が出展した。隣国のガーナから出展したアルテコと住友商事に「ガーナからナイジェリア市場を攻める」をテーマに話を聞いた。

接着剤メーカーに聞いた、ガーナに拠点を設けるメリットと課題

今回で3回目の参加となるアルテコガーナのマネージングディレクターの堀江治郎氏に聞いた(取材日:2023年11月8日)。

質問:
貴社の事業概要は。
答え:
瞬間接着剤やエポキシ樹脂系接着剤などBOP層をターゲットに、各種接着剤の製造、販売ならびに輸出をしている。本社は大阪にあるが、シンガポールの現地法人がアフリカ地域を統轄し、その傘下であるアルテコ ガーナ(2013年7月設立)は西アフリカを管轄している。当社はフリーゾーンに立地しており、商品は輸入関税の徴収が留保される保税倉庫にストックしている。発注が入れば隣国の顧客にも短期間で商品提供が可能だ。2019年10月にはガーナで2社目となる現地法人「アルテコ アジアフリガーナ」を設立し、アルテコ ガーナで扱っていない商材やOEM製品の輸入販売を手掛けている。
質問:
ガーナから見て、ナイジェリア市場をどう捉えているか。
答え:
ガーナに拠点を設立した10年ほど前は、ナイジェリアは治安面で懸念があった。フランス語圏アフリカ諸国は言葉の壁が高いことから、英語圏であり、駐在員(および家族)が安心して住める治安の良さ、政情の安定性、加えて市場の大きさや、陸送や船便の多さを踏まえ、西アフリカの拠点としてガーナを選んだ。
商習慣という点では、ガーナ人は保守的で、バイヤーは低い利益ではあまり取引に応じず、ビジネスがスローである。これに対して、ナイジェリア人は新しい商品やサービスに対して関心を持って試し、バイヤーは少量でも取り引きしもうけようとする。例えば、OEMで販売している冷却シートは、ガーナではサンプルを手に取ってくれるものの、買ってくれる人はあまり多くない。現在はナイジェリアやコートジボワールなどの隣国を新しい商品の主なターゲットにしている。

ラゴス国際見本市におけるアルテコ ガーナのステージイベントの様子
(ジェトロ撮影)
質問:
ラゴス国際見本市の感触、および出展にあたって工夫していることは。
答え:
多くの一般消費者が来場するので、現地一般消費者の生の声が聞けた。来場者の中にはBtoBの代理店となり得る顧客もいた。BtoCとBtoBの両面でつながりが持てる展示会である。当社は広いナイジェリアを網羅するために、ナイジェリアの総代理店と一緒に出展し、下流代理店の候補が来場した場合には、すぐに商談ができるよう工夫している。
質問:
西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の恩恵は。
答え:
ECOWASでは、域内産品(加工製品)の域内輸出に対する関税が撤廃されている(ジェトロFTAデータベース参照)。ただ、ECOWAS域内産品と認定される条件は、原材料の割合が重量ベースで60%以上となっている。化学原料をECOWAS域内から調達するのは難しく、貿易自由化のコンセプト自体はよいものの、現状では活用できていない。

住友商事に聞いた、初出展の感触と西アフリカで得た経験

今回初めてジャパンパビリオンに出展した住友商事アクラ事務所長の秋山純也氏、ビジネスデベロップメントオフィサーのパトリック・アンパドゥ氏、カレブ・クオーテ氏に聞いた(取材日:2023年11月16日)。

質問:
今回出展を決めた経緯は。実際に出展した感触は。
答え:
2022年にラゴスを出張で訪れた際、ジェトロがラゴス国際見本市にジャパンパビリオンを設置していると聞いて訪問し、2023年の出展を決めた。西アフリカにおけるプレゼンスのさらなる向上、潜在顧客へのリーチ、そして新しいビジネス機会の創出が出展の目的だ。通信システムサービスや太陽熱遮断塗料、バルブの3品を出展し、現在もインクワイアリをいただいた企業とコミュニケーションを続けている。来場者から多くの質問があり、期間中78件の引き合いを受けるなど、当初の目的は達成できたと確信している。

ラゴス国際見本市での住友商事のブース
右からアンパドゥ氏、秋山氏、左から2人目がクオーテ氏(住友商事アクラ事務所提供)
質問:
ガーナから見て、西アフリカ市場をどう捉えているか。
答え:
サブサハラアフリカにはオフィスが7カ所あるが、中央・西アフリカはガーナのみだ。ナイジェリア、コートジボワール、セネガルにコンサルタントを配置し、ガーナで管轄している。ガーナに拠点を置いた背景は、クーデターがなく政治が安定していること、治安の良さ、近隣国へのアクセスのしやすさ、そして英語圏であることが挙げられる。商習慣という点では、ガーナでは意思決定者にたどりつくのが容易だが、ナイジェリアではこれが難しい。ナイジェリアでビジネスを本格的に進めるためには、コンサルタントをうまく活用して、現地に入り込むことが不可欠だ。
質問:
西アフリカへの進出を目指す日本企業にアドバイスを。
答え:
現地を訪れ、現地を見て、信じることが大事だと思う。住友商事は100を超える海外拠点があるが、日本から見て、西アフリカは地理的にも歴史的にも遠い存在だ。一方で、ビジネス拠点、そして気候、安全性、生活用品の入手のしやすさなど、日常生活の点でガーナは優れている。日本の本社に、いかに西アフリカ市場のポテンシャルを理解してもらうかが大事だと感じている。

西アフリカのゲートウェイとしてのガーナ

外務省の海外進出日系企業拠点数調査(2022年)によると、ガーナの日系企業拠点数はナイジェリアの51を上回る57であり、南アフリカ共和国、ケニア、モロッコに次いで多い。背景として、ガーナは人口約3,347万人と市場規模は大きくないものの、フランス語圏アフリカに近く、また人口2億人超のアフリカ有数の巨大市場ナイジェリアまで飛行機で1時間という地理的な優位性、安定した治安、西アフリカにおける数少ない英語国、などが挙げられる。一方で、GDPのプラス成長は維持しているものの、依然として高い水準のインフレ、債務残高の増加、生活コストの上昇など厳しい経済状況は続いている(世界貿易投資動向シリーズ2023年版「ガーナ」参照)。また、2024年12月には大統領選挙が予定されており、政治動向も見守る必要がある。西アフリカは日本から地理的にも心理的にも遠いが、ポテンシャルを見据え、政治・経済・社会情勢を注視しながら、先行的かつ戦略的に攻めていく必要があるだろう。

執筆者紹介
ジェトロ・アクラ事務所
数実 奈々(かずみ なな)
2021年、ジェトロ入構。ビジネス展開・人材支援部新興国ビジネス開発課、海外展開支援部フロンティア開拓課を経て現職。